2021年3月5日金曜日

奪われてしまうことの大きさに気づくか ~桐野夏生『日没』(岩波書店、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは自由気ままな生き方を望んでいらっしゃいますか。
誰にも束縛されずに、誰からも咎められることもなく、我が道を思う如く生きていく。
ああ、自分の思うままに生きていけたらなあ。
などと、ロマンを感じる方も多いでしょう。

「自由」……とても深くて、簡単には説明ができないものですね。
この「自由」が、あるとき一瞬で奪われるとしたら!
あなたも日常における様々な「不自由」なことを想像してみましょう。

施設での一時滞在とはいえ、社会との接触を強制的に遮断されて、徹底的に管理された生活を強いられたとしたら、どうしましょう。

また、食事、睡眠、行動、言動など、これまでの生き方や考え方などを管理体制側の考えるうに方向転換させられるとしたら、窮屈なところではありません。
学校の部活の合宿や、新入社員の研修などとは違うのです。
そのようなディストピア的な体験を読者に知らしめてくれる小説があります。

今回、凛がご紹介いたします本は、桐野夏生(きりの なつお)氏の小説『日没』(岩波書店、2020年)です。

主人公の小説家であるマッツ夢井(ゆめい)は、ある時、国家の総務省文化局の文化文芸倫理向上委員会」(10頁)から召喚状が届き、施設に向かいます。
一時的な滞在であるということでしたが、そこは厳格な徹底管理主義の施設でした。
B98号という名前で、作家として、管理体制側の思考に合致する小説を書かされることになり、彼女は理解に苦しみながら、もがいていきます。

りんりんらいぶらり~では、前回に続き、今回も単行本のご紹介となりました。
今回もいつもの近所の書店の単行本の新刊コーナーで見つけました。
既に新刊ではなくなる時期だったようで、残り2冊が端っこにひっそりと佇んでいました。
「凛さ~ん、面白いですよ。買ってくださ~い」と本が自己主張しているのがわかりました。

手にとってみると、初版でした。
初版の帯の表表紙側には、「断崖に聳える収容所を舞台に(省略)戦慄の警世小説」と描いてあります。
ひゃああ、怖そう!でも、面白そう!( ;∀;)

裏表紙側には、「終わりの見えない軟禁の悪夢。」と描いてあります。
ますます怖そうで面白そう!!( ;∀;)

そして、裏表紙側の帯の上のほうに大きな文字で、「あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。」と目立つように描かれています。

そもそも小説の良し悪しとは、誰が判断するのでしょう。
出版社の編集者?
文学賞の審査員の先生方?
作家自身?
それとも読者?
ひとつの作品は、時代の変遷によっても評価は異なっていくものでしょう。

作家が主人公となる物語で、収容所に強制収監されて、いろいろと体験する物語です。
お気に入りの桐野夏生氏の作品でしたし、内容がとても気になり、凛はすぐに読んでみたくなりました。
文庫本になるまで待てません。
単行本でしたが、エイッ!と思い切ってレジに行きました。(^-^)

表紙は、大河原愛氏の油彩画「深窓の森」(2016年)で、白黒で表現された人の上半身の後ろ姿が描かれています。
その人物の周りを黒い墨のような絵の具で塗られているように見えます。

やはり、桐野作品は読みだしたら止まりません!
ミステリー仕立てですので、先が気になり、一気に読めますよ!
ストーリーはあなたが読まれてからのお楽しみになさってください。

この作品で、凛が気になった点を四つあげますね。

一点目は、主人公の生き抜いていく力強さと脆さが気になりました。
彼女は強く反抗したり、時には従順であったり、試行錯誤しながら時が過ぎていく間に、様々なことを発見し、理解していきます。
瞬間的な判断能力が研ぎ澄まされていく過程がよくわかります。

二点目は、主人公が収容所内で書かされる小説の内容が興味深いです。
架空の家族関係を書いていますが、内面を鋭くえぐっています。

三点目は、施設での人間関係の不気味なことです。
収容所の所長との対峙だけでなく、職員たちとの接触がピリピリとしており、一触即発で瞬間的にトラブルが起こるような緊張感があります。
また、仲間であるはずの者が敵か味方かも不明です。

四点目は、食事の大切さですね。
貧弱な食事内容に適合していく彼女の身体の変化がみられます。
食べることに対して、全神経が研ぎ澄まされていく主人公の変貌ぶりが激しいです。
やはり栄養摂取は大切だなと気づかされます。

以上の点から、突然自由を奪われ、軟禁状態に置かれた環境下にある閉塞感の中で、人の心身がどのように変化していくのかを執拗に読者に提示しているのだと凛は考えました。

「作家」という職業に籍をおく桐野夏生氏の筆力が、息苦しくなるほどの圧倒感をもって読者にぐんと迫ってきます。
そして、自由を失うことの意味や、あらゆるものを奪われることの不条理さに、凛は慄然となりました。

お休み前のひとときですが、あなた自身を別のシチュエーションに置き換えて考えてみるのも読者の「自由」ですよね。
例えば、もしも病院で一時的に入院することがあるとしたら、などと身近なことに考えてみるのもよいかもしれません。

時代はどんどん先へ進んでいきますので、いろいろなことに気づきを与えてくれる小説です。
作家だけでなく、読者に対しても、「大切なもの」を奪われてしまうことの大きさについて、桐野氏からの問いかけが込められています。
最後に、この作品のタイトルの意味について、痛烈に考えさせられた凛でした。

桐野夏生氏は、非常に多くの賞を受賞された人気作家です。
1998年、小説『OUT』(講談社、1997年、のち講談社文庫(上下巻)、2002年)で、第51回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞☆彡されています。
この作品は、2004年、エドガー賞最優秀賞作品賞にノミネートされています。
2002年に映画化され、平山秀幸監督、原田三枝子さん主演でご覧になられた方も多いしょう。

1999年、小説『柔らかな頬』(講談社、1999年、のち文春文庫(上下巻)、2004年)で、第121回直木三十五賞を受賞☆彡☆彡されています。

桐野氏は以上のほか、ここでは書ききれないくらい受賞歴があります。
また、2015年には紫綬褒章を受章☆彡☆彡☆彡されています。

常に時代の先端に視点を置き、鋭い感性で問題提起をされて、小説として読者に提供されている桐野氏は、女性のファンが多いです。
いつだったか忘れましたが、凛は桐野氏のサイン会で握手を求めたことがありました。
「ファンです!」とご挨拶すると、桐野氏は聞こえないくらいの小さな声で笑顔でお答えになられて、とってもシャイな方なんだなと思いました。
握手していただいた手の感触がとても柔らかでした。(^-^)

桐野氏の作家としての目線が力強く主張されている作品であると凛は捉えました。
作家・桐野夏生氏からの強力なメッセージをがっしりと受け止める体力を備えて、この本と向き合いましょう。
読み始めたら、ラストまで直行です!
あっという間に時間が経ちます。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

桐野夏生氏のHPの-BUBBLONIA-は、こちらです。

岩波書店『日没』特設サイトは、こちらです。
https://www.iwanami.co.jp/sunset/

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(日本語)単行本-2020/9/30桐野夏生(著)
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2021年2月20日土曜日

一気読みした後の達成感は格別です ~百田尚樹『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはミステリー小説はお好きですか。
あなたにはお気に入りのミステリー作家はいらっしゃいますか。

ミステリー小説は作者と読者との対峙でもあります。
犯人のアリバイや仕掛けられたトリックの見分け方、張り巡らされた伏線の発見と、広げた風呂敷の最後のまとめ方、探偵や刑事さんたちの大胆な推理や行動などの活躍に魅了されます。
先が気になって、頁をめくる手がとまりません。
夢中になる間に、気がつけば朝になっていた……( ゚Д゚)
な~んてことがよくありますので、翌日がお仕事や学校などがある日に読まれるには充分お気をつけくださいませ。

凛は久しぶりにミステリー小説を読みました。
このジャンルが好きなのですが、読みだしたら止められずにどんどん読み進んでしまいたくなります。
睡眠不足が翌日に響くのは困りますので、最近はあまり読んでいなかったですね。
あなたはいかがですか。

さて、凛が今回ご案内させていただきます本は、百田尚樹(ひゃくた なおき)氏の初挑戦であるミステリー長編小説『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)です。
今やメディアなどで大活躍の百田尚樹氏をご存知の方は大変多いことでしょう。
凛は寝る間も惜しむほどに没頭、ついに一気読みしてしまいました!

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーを見た後、その隣の単行本の新刊コーナーの前に立ったとき、この本が目に入りました。
人気の作家さんですから、増刷されているだろうなと思って手にしたところ、なんと初版でした!
そのときは初版が4冊、棚に重ねてありました。

本好きの者にとって、初版は魅力のあるものです。
近年発刊された初版本に希少価値がどれほどあるかどうかよくわかりませんが、、(^-^;
もちろん増刷された本も良いのですけれど、凛は初版は好きなんですよね~

書店内で既に新刊の文庫本を2冊選んで手に持っていたものですから、新刊の単行本の棚の前でこの本を買おうかどうか逡巡していた凛の前に、凛よりも年上の男性客が現れて、その方が迷わずこの本を手にして、レジにさっと行かれたのです。
その男性客の動きが実に潔くて、残り3冊の中、凛も即座に1冊手にしてレジに行きました。

単行本から文庫本になるまでは最短で約2年かかることが多いので、それまで待てません……
凛は男性客の購入の様子につられたのもあり、えーい!と思い切って、久しぶりに単行本を買っちゃいました。
先に選んでいた文庫本2冊も同時に購入しました。

余談ですが、凛は書店で購入する本は大体一度に3冊くらいが多いですね~
あまり冊数が多いと重いですし、、

この本の表紙は黒を基調に、男性が傘をさして雨の路地を歩いている背中が見えます。
初版本の帯の表表紙側には「前代未聞の『劇場型』誘拐事件」と紹介されています。
帯の裏表紙側には「突如としてネット上に現れた、謎の『誘拐サイト』。」であると説明されています。

6人の男性が誘拐されて、「誘拐サイト」に突如顔写真と名前が公表されます。
これがネット上で話題となり、テレビや新聞、雑誌などの大手メディアを巻き込んで身代金要求事件と発展していきます。
ミステリー小説ですからストーリーの説明はここまでにいたします。
これから先はあなたが読まれてからのお楽しみになさってくださいね。(^-^)

478頁、こ~んなに分厚い本なのに、凛が何故すらすらと読めたのかを三点考えてみました。

第一点目は、大手テレビ局、大手新聞社、雑誌社などのメディアとネットを絡ませた事件で、デジタル社会に於ける昨今の大衆の誰もが興味をひく話題性があることです。
各メディアでご活躍で発信力もある百田尚樹氏であるからこそ描けた内容であると思います。

日本の格差社会の暗部も引き出されています。
作者はメディアの持つ虚と実を縦・横・斜めに織り交ぜて、大衆の視点を集中、或いは逸らせて、巧みに操っているのだと凛は考えました。

第二点目は、視点を変えてみると新たな発見があるという点です。
人生には実に様々な悩みがあったり、躓きをしたりと決して順調にはいかないことがあるでしょう。
その時、少し視点をずらしてみると、見え方が違ってきます。
これは生きていく上で非常に大切な点ではないでしょうか。
事象に於ける表側と裏側を考えること。
このように凛は新たな発見を覚えながら、どんどん先に読み進むことができました。

第三点目は、すっきりとした文章で、映像として同時に楽しめることです。
文学表現に必要とされる修飾や、形容などの描写を省略し、読者がすんなりと移入できるように、実に巧みに表現されています。
登場人物の描写も、余分な描写はなく、会話で心理作戦を施す技術は素晴らしい能力を要します。
読者は読みながら、映像として同時進行で進むことができます。
作者は後のドラマ化や映画化を考慮されているのかもしれないなあと想像しながら読む楽しみがあります。

百田尚樹氏は、関西の朝日放送テレビのバラエティ番組『探偵ナイトスクープ』の放送作家として長年ご活躍されました。

2006年、小説『永遠の0』(太田出版、2006年、のち講談社文庫、2009年)で小説家デビューされました。
この作品は、漫画、テレビドラマ、映画化されましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
2013年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で映画化され、大ヒットしました。

2013年、小説『海賊とよばれた男(上下)』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2014年)は第10回本屋大賞を受賞☆彡されました。
のちに映画化され、2016年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で大ヒットしました。
同様に、テレビドラマ化や漫画化されています。

両作品とも映画などでご覧になられた方も多いと思います。
凛も映画で観ましたが、日本人としての誇りを思い、胸に迫る思いをいたしました。

さらに、2009年には、小説『BOX!』(太田出版、2008年、のち上下巻として講談社文庫、2013年)が第30回吉川英治文学新人賞候補となっています。

ミリオンセラー作家である百田尚樹氏は各メディアなどで現在進行形で大変ご活躍をされています。
発信力も強いので、小説を含めてファンが多くいらっしゃいます。

凛は話題の新刊の単行本を読み終えて、気分も盛り上がりました。
「今」という時代性を感じることも大切だなと思いました。

先日、近くの書店の新刊の単行本コーナーを見ますとこの本が並べられていました。
そっと手にして奥付を見たら、第2刷でした。
初版を持っている!という気持ちと合わせて、うふふふ、既にこの作品の結末は知っているのだ!という優越感でいっぱいの凛でした。

あなたもこの作品で一気読みされませんか。
日常のいろいろなことを忘れて、作品の世界に集中しませんか。
ハラハラ、ドキドキしている内に、気がつけばあっという間にラストを迎えます!
読破した後の達成感は読書の醍醐味ですよ~

但し、翌日のことを気にしなくてすむ日、一日家にいてお出かけしない日、お休みの日か、お休みの前日などに読まれることをおすすめいたします。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)単行本-2020/12/24百田尚樹(著)
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2021年2月11日木曜日

クローゼットの中は夢がいっぱい ~千早 茜『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本のお話でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはファッションに興味がありますか。
お洋服がお好きですか。
あなたのクローゼットにはどのようなお洋服が出番を待っているでしょうか。

2月でまだまだ寒い季節ですが、ファッションの業界では早くも春物が出回っています。
冬物のセールは既に最終処分で、かなり大幅な値引きしているお店が多いので、ラッキー!とお買い得品に出合う方もいらっしゃることでしょう。
ショー・ウィンドウのマネキンが纏っている明るいパステルカラーの春服を見ると、心も軽やかになれそうな気がしてきますから、実に不思議ですよね~

凛はコロナの自粛のため、出かけることが急激に減りましたので、普段着で過ごすことが増えました。
ご近所にお買い物に行くのに、冬のコートの下はリラックスできる服のままで外出しています。
外出先でコートを脱ぐこともなく帰宅しますので、他人にはコートの中まではわからないだろうと思ってしまいます。(^-^;

このようにあまりにもだらり~んと過ごしていると、心身までビシッと引き締まることがないようにも思えてきます。
やはりファッションは気合でしょうか。
頭から足下まできちんと感があると、背筋がまっすぐに上に伸びて気持ちがシャキッとします。(^^)v
意識して適度に身体に緊張感を与えていかないといけないですね。

さて、凛が今夜ご紹介いたします本は、千早 茜(ちはや あかね)氏の小説『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)です。
小説の内容は、タイトルどおりお洋服にまつわる物語です。

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで、この文庫本を購入しました。
表紙は、石井理恵氏の装画で、全体が淡い水色を基調に、高貴な女性が纏ったドレスの下に付けるコルセットが真ん中に描かれています。
昔のお姫様や高貴な女性たちは、美しくふわりと裾が大きく広がったドレスの中に、このようなコルセットを付けていたのでしょう。

初版の文庫本の帯が紺色で、水色と紺色の青系の濃淡がすっきりとしています。
帯の表表紙側には、「消せない心の傷みに寄り添う、」の次に大きな文字で「再生の物語。」と描かれています。

裏表紙の説明文からは、十八世紀を中心にした約一万点を超える洋服類が収蔵されている服飾美術館で洋服補修士として働いている纏子(まきこ)と、デパートで働いている男性店員の芳(かおる)を中心とした話であることがわかります。
二人には子供の頃にそれぞれに傷ついた過去をもっていて、互いに何やら遠い記憶の中にあった過去が浮彫となります。
洋服を共通のテーマにした心温まるお話、という読後の期待感をもたらせてくれます。

物語は、母親の洋服がたくさん収納されているクローゼットの中が夢ふくらむとっておきの場所であった女の子の話から始まります。
本編からは芳と纏子の話が交互に描かれています。
各章で、芳の話はハンガーの絵から、纏子の話は人台(じんだい)の絵から始まります。
人台とは、洋服を縫製するときや販売するときに用いる人体の模型のことです。

芳は、子供の頃からデパートの婦人服売り場を母親に連れられて歩くのが好きな男の子でした。
彼は煌びやかなデパート、そして、女の子が身に纏う美しいドレスに興味を抱いていました。
実際に女の子のドレスを着て外に出たため、それがいじめられた原因となって、傷ついた過去をもっています。
今ではすっかり高身長でイケメンの青年に成長していますが、デパートのカフェの勤務でイマイチ満たされないものを感じながら働いていました。

纏子は、歴史のある夥しい洋服たちを後世に残すため、補修をする仕事に従事しています。
よく絵画や映画、舞台などで目にしたことがある方が多いかと思いますが、華やかな社交界で、男女問わず貴族たちの美への追求を最大限に活かした洋服たち。
様々な時代を反映させてきた洋服たちを、次の世代まで残すために、粛々と服と向き合って補修を続けている日々を送っています。

二人は芳の勤務先のデパートの展示会の準備で出会います。
芳は纏子が勤めている「青柳服飾美術館」(文庫版58頁)でバイトをすることになります。

服飾美術館では、様々な人たちが働いており、また古き時代のドレスたち、現代のデザイナーズブランドの服たちが彼を迎えます。
そして、彼はこれまで知らなかった服飾文化の歴史や決まりごとなどに触れることになります。
それは洋服だけでなく、靴や小物にも及びます。

「あら、昔の男性のレースって豪華だったのかあ」
「へえ、靴って昔は左右の概念がなかったんだね」
などと驚くことがたくさんあります。(^o^)

アパレル関係に従事する方々(デザイン、製糸、生地製造、縫製、流通、倉庫、販売など)や、服飾の歴史などを学んでいらっしゃる学生さん方にもおすすめしたい本です。
服飾に関するお仕事小説として学べる点が多いと思いますよ~

さて、纏子と芳の二人の再生とはどうなるでしょう。
それはあなたの読後のお楽しみとして残しておきますね。

文庫本の巻末には、文庫化記念として、作者の千早 茜氏と、公益法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のキュレーターの筒井直子氏との対談が掲載されています。
千早氏による財団での綿密な取材がこの小説の起爆となったことがわかります。
筒井氏の説明がとても丁寧で、小説の全容が理解できます。

小説を先に読まれてもよろしいですし、小説よりも先にこちらの財団のHPを見られると、小説のイメージづくりがよりわかりやすくなるかもしれません。
あなたのお好きな順番でどうぞ。

公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のHPはこちらです。

文庫版の解説は、作家の谷崎由依(たにざき ゆい)氏です。
洋服の歴史を知ることは、フランス革命など世界史と密接に関係していることが非常によくわかります。

谷崎由依氏は、2007年、小説「舞い落ちる村」で、第104回文學界新人賞受賞☆彡されています。
この作品は、小説「冬待ち」を併録して、2009年に『舞い落ちる村』として文藝春秋から刊行されています。
また、2019年、短編集『鏡のなかのアジア』(集英社、2018年)で、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されています。

作者の千早 茜氏は、幼少期をアフリカのザンビアで過ごされています。
2008年、『魚神(いおがみ)』(「魚」改題、集英社、2009年、のち集英社文庫、2012年)で、第21回小説すばる新人賞を受賞☆彡し、作家デビューされました。
翌2009年、同作で第20回泉鏡花文学賞を受賞☆彡されています。

2013年、連作短編集『あとかた』(新潮社、2013年、のち新潮文庫、2016年)で、第20回島清恋愛文学賞受賞☆彡されました。
また、同作品は第150回直木三十五賞の候補となっています。

さらに、2014年には、小説『男ともだち』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回直木三十五賞の候補となり、同年に、第1回新井賞を受賞☆彡されています。
また、翌年の2015年に、同作で第36回吉川英治文学新人賞の候補にもなっています。
他、多くの作品を世に出されています。

よそゆきの一張羅、とっておきのドレスを纏って心ときめきたい!\(^o^)/
洋服は着る人の心を映すものです。
綺麗に見せてくれるものです。

あなたのクローゼットのお洋服たちもあなたを美しく見せてくれるでしょう。
インスタ映えしたら、すぐにおさらば!という方もいらっしゃるのかな。

凛は、普段のカジュアルな服もよいけれど、時には素敵なドレスでお洒落をしてみたくなりました。
しかし、繊細なドレスは丁寧に扱っていきたいものです。
その前に、凛はクローゼットの中身をもう少し整理しなくては……

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/11/30千早茜(著)
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2021年1月29日金曜日

宅配してくださる方々に感謝! ~山本一力『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは宅配をご利用されていらっしゃいますか。
凛はよくお世話になっています。(^-^)

新型コロナウィルスの影響により、不要不急の外出を控えてご自宅でお過ごしの方も多い昨今。
宅配とは、買物に行かずに済み、自宅や会社などで受け取ることができる便利なシステムですね。
どんな悪天候でも、年中休まずいつでもお届けしてくださる配送業者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです!m(_ _)m

ひと昔の時代ですと、自宅への配達はデパートからの贈答品、お中元やお歳暮のほか、特別なお届け物が多かったのではないでしょうか。
ネットショッピングなどの普及により、昨今では日常の食料品をはじめ、お仕事や生活に関するあらゆる物が宅配により簡単に手にすることが可能な時代になりました。

日本中だけでなく、世界中に張り巡らされた物流のシステムは、人間でいえば血流と同じで、絶えず流れ続けています。
この物流のシステムのどこかに支障をきたしますと、一瞬で普段の生活ができなくなる恐れがあります。
物流に関わる方々の努力のおかげに成り立つ宅配サービスというシステムの恩恵を、日常的に当たり前として受けられるということに、心からありがたく思う凛です。\(^o^)/

今回、凛がご紹介いたします本は、山本一力(やまもと いちりき)氏の小説『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)です。
「文庫化にあたり加筆修正」されていると、文庫版初版の奥付の前頁(462頁)に掲載されています。
時代小説で有名な作家ですが、この作品は現代小説となっています。

この文庫本とは、昨年秋に、凛がいつも利用している近くの書店の文庫本の新刊コーナーで出合いました。
文庫本の表紙は、川上和生氏のイラストです。
住宅地の石段の坂道から海が見えていて、海の向こう側にはビルなどの街が見られ、遠くに山があります。
セーラー服の女子学生が、牛乳配達の白い帽子の男性が坂道の石段を上がって行っている様子を、石段の下手から振り返って見つめている光景が描かれています。
女子学生は、石段の途中ですれ違ったであろう牛乳配達の男性の笑顔がよい表情であることから、ほっこりとして彼を振り返っているのかもしれません。

文庫本初版の帯の表表紙側には、「毎日、コツコツ。(以下省略)」と紹介されています。
裏表紙側には、「配達するひとの尊さを(以下省略)」と書いてある言葉から、凛は、ああ、そうだった!と、忘れかけていた衝撃を受けることになります。
裏表紙の説明文には、「宅配物語」と書いてあります。
表紙と帯から、お届けしてくださる方たちを巡る心豊かになれる物語であろうということが想像できます。

この小説は、牛乳の宅配業に関わる人々の物語です。
毎朝、自宅の玄関前に瓶入りの牛乳をお届けする業者を中心とするお仕事小説でもあり、また人情物語でもあります。

物語は、第一章、第二章、終章の構成になっています。
第一章では、東京都中央区の日本橋浜町で牛乳販売店を営む纏(まとい)ミルク浜町店の店長こと纏亮介(まとい りょうすけ)を中心として、家族や配達員たちの仕事を細かく描いています。
2014年を迎えたばかりの1月6日午前4時、新年の仕事始めの朝の引き締まった空気感がよく伝わります。

纏ミルクは、亮介の曽祖父が明治初期に創業した老舗で、亮介は四代目にあたります。
亮介の父である三代目から、隅田川こと大川の西側から東側に移転し、深川萬年橋付近に本店を置きます。

纏という名前は火消し組『は組』(文庫版、12頁)を受け継いでおり、江戸の伝統を重んじる家として位置付けられています。
隅田川にかかる多くの橋が出てくるのも特徴です。

牛乳配達は朝が早くて、まだ暗い夜のうちに動きます。
凛は、配達員の方が顧客の玄関先の箱に収めて、使用した瓶を回収するにに至るまで、ご近所に迷惑な騒音とならないように細やかな配慮をしていることなど、気づかされることが多かったです。
瓶の牛乳を入れる小さな箱には、顧客との交流が詰まっているものなのですね。
一人暮らしの高齢の女性のお客様のいつもと違う様子が箱からわかるなど、感動の人情物語が綴られています。

ところが人情話だけで終わらないのがこの物語の特徴です。
毎朝、通勤途中で店先で瓶入りの牛乳を飲みに立ち寄る女性を巡って、毎日玄関先に届けられる牛乳配達と新聞配達が日本独特の文化であることを、映像でアメリカ市場に伝えるという国際的な話に発展していきます。
国際ビジネスの緊張感の中で、登場する人物たちの相関図が人情がらみで描けるほどに見事な展開を示します。
もちろん、善良な人たちばかりではなく、悪い人たちも登場します。

第二章では、尾道が舞台になっています。
尾道は海の幸が大変豊かで、人情も重ねて熱い地域として描かれています。
国際ビジネスの関連から、呉、鹿児島、鎌倉などを読者は旅することもできますよ~

終章では、亮介の恋の行方もあり、どのような結末になるのかは、あなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。

全編にわたって、牛乳は人が口にするものですから、多くの関係者の愛情が込められていることがわかります。
生産者、会社、販売店を経て、消費者である玄関先に毎朝配達される牛乳の新鮮で美味しそうなことといったらたまりません!
あなたも読み進んでいくうちに、きっと瓶入り牛乳が飲みたくなりますよ~
凛はミルクコーヒーも飲みたくなってきました。(^-^)

文庫版の最後に、作者の山本一力氏から「いまだからこその、作者あとがき」(459頁~461頁)があります。
昨年の8月にご執筆されています。

2020年の新型コロナウィルス関連に寄せて、「今の時代」を共に生きている読者に対して、作者の思いが込められていて、とても納得できる文章となっています。
山本氏からコロナ禍を生きている読者への熱いメッセージが文庫版で3頁の中に凝縮されています。(^_^)v
是非、お読みくださることをお勧めします。

作者の山本一力氏は、時代劇の大人気作家として知られています。
1997年、中篇集『蒼龍』(文藝春秋、2002年、のち文春文庫、2005年)で、第77回オール讀物新人賞を受賞☆彡し、デビューされました。

2002年、時代小説『あかね空』(文藝春秋、2001年、のち文春文庫、2004年)で、第126回直木三十五賞を受賞☆彡☆彡されて、大ベストセラーとなりました!
この作品は映画化され、2007年、浜本正機監督作品で、内野聖陽さん、中谷美紀さんの出演となってヒットしました。

時代小説シリーズとして、『損料屋喜八郎始末控え』(文藝春秋、2000年、のち文春文庫、2003年)ほか多数の作品が刊行されています。

メディアにも進出されており、テレビのコメンテーターとしての一面もお持ちですので、ご存知の方も多いかと思います。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここで、ちょっとブレイクタイムです。
今回も購入しました書店のお話です。
凛がよく利用する近所のこの書店は、東京都内に本店を置き、全国に数多く出店している大手書店です。
売り場面積はさほど広くはないものの、並べ方などとても吟味されているなあと、行く度に感心しています。
本棚の本たちが居心地が良さそうなので~す。(^-^)

この書店で付けて下さる無料のオリジナルの紙製のカバーのデザインが落ち着いた感じで、凛はとてもお気に入りで~す!(^o^)
レジ袋は有料なのですが、無料の書店オリジナルの紙の袋に入れてくださって、それがなんとも昔懐かしい感じがして実に気分が良いですね。
書店巡りがお好きでしたら、どこの書店なのか、すぐにおわかりになられるかも……

以前の街の個人書店では、出版社や文具メーカーなどの紙製の袋に入れていただいてましたねえ。
今度はどんな楽しい世界がいっぱい詰まっているのだろうと、ワクワクしながら紙製の袋を胸に抱いて帰宅していました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは瓶入りの牛乳はお好きですか。
凛はとても好きです!
凛は学生の頃、瓶入りのコーヒー牛乳をよく飲んでいました。
瓶入りの乳飲料は懐かしい感じがいたします。
普段はスーパーで紙パックの牛乳を購入することが多い凛ですが、瓶入りの飲料は新鮮で美味しさが詰まっているようで特別感がありますね!(^o^)

最後に、牛乳の宅配だけでなく、あらゆる配達員の方々に感謝の気持ちを込めて。
いつもありがとうございます!!m(_ _)m
これからもよろしくお願いいたします!\(^o^)/

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/9/24山本一力(著)
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2021年1月18日月曜日

誰しも歴史の重みを刻んでいます ~柴崎友香『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2021年になりました。
令和3年、丑年。
今年もよい年でありますように!
今年も凛を何卒よろしくお願いいたします。m(_ _)m

あっという間に今年も1月の後半となりました。
時が経つのは本当に早いものですね。

今年も新型コロナウィルス感染増加により、都市部では緊急事態宣言が発令されました。
自粛生活にも慣れてきた方も多いのではありませんか。
降雪で寒さもあり、外出にも制限がある地域の方もいらっしゃるでしょう。
あなたのお住まいの周辺はいかがでしょうか。
免疫力を高めていきましょう!

社会の変化とともに暮らし方も変わりそうな2021年。
そのような社会情勢の中において、本と向き合える時間はとても幸せだと思います。
活字を追い、読書ができる、とても幸せな時間。
今年も本とともに有意義な時間をもちたいと願う凛です!(^o^)

ここでちょっとブレイクタイム、嬉しいお知らせで~す!
この度、アフィリエイト掲載を始めました!\(^o^)/

これまで公開しております全ての投稿欄の最後に、本の画像と全国大手ネット書店のサイトを掲載しています。
昨年までは文章ばかりでしたので、ちょっと地味だったかも…(-_-;)

本の表紙の画像が入りますと、パッと画面が明るくなったような気がしている凛で~す。
表紙の説明もより具体的にわかりやすくなるかと思います。

りんりんらいぶらり~はスマホなどのモバイルバージョンとPC画面のウェブバージョンと二つあります。
二つのアフィリエイトの画面が若干異なりますが、どちらもクリックされますと同じサイトに繋がりますので、ご興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします!m(_ _)m
これからもりんりらいぶらり~を何卒よろしくお願いいたしますね。(^_^)v

前置きが長くなってしまいました。(^-^;
本題に入りましょう。

凛が今回ご紹介いたします本は、柴崎友香(しばさき ともか)氏の小説『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)です。

凛はいつもの近くの書店の文庫本の新刊本コーナーで見つけました。
そのときは一度手にしてみたのですが、他の本を購入してしまい、後からこの本のことがとても気になってしまって……(-_-;)

本の帯は大事ですね!
文庫本初版本の帯の表紙側に紹介されている「戦後70年の時間を旅する」という言葉が記憶されていて、後から「読みたい!」という欲求がわきあがってきたのです。

あなたには凛と同じ体験はありませんか。
探しているものが気になって仕方ないときがありませんか。

いつもの書店では既に売り切れており、他の書店で探してもそういうときに限ってなかったりするものなのですよねえ。
ああ、しまった~!あのときに買っておけばよかった~と思い、今回はネット書店で購入いたしました。(^^♪
いつもの書店に依頼するのもよかったのですが、、
ネット書店も便利ですよね。

物語は東京都の副都心、新宿区の築40年になる都営住宅でのお話です。
大阪出身の主人公である千歳(ちとせ)が、団地内で暮らしてきた夫の祖父から、かつて団地内で関わったことがある男性を探して欲しいという「人探し」を依頼されるお話です。

団地には低層階や高層階などいくつもの棟があります。
同じ規格、同じ間取りで暮らしている住民たちの中で、特定の人物を探すことは相当困難なことでしょう。
また、個人情報の面だけでなく、防犯上からも「人探し」には相当な覚悟が必要かと思われます。

主人公の千歳も大阪の団地で育ちました。
場所は違えども同じ様な間取りの団地で、彼女が育ってきた環境と似ていて、記憶が混合するような不思議な感覚の中で夫との暮らしを始めました。
千歳の夫もこの団地で育ちました
つまり、夫の生育した環境がそのまま継続となっており、二人とも似た環境で現在進行形で暮らしているという形になっています。

小説には多くの登場人物が出てきます。
夫の友人たち、ご近所の人、団地内の飲食店、団地内に居住する中学生や高齢者、千歳の職場の人たちなどとの様々な交流の場面があります。
彼らには思い思いの暮らし方があり、それぞれに悩みも抱えています。
金属製の扉の向こう側にはどんな人たちがどんな思いで暮らしているのでしょうか。

築40年の団地には歴史が刻まれています。
夫の祖父の青年期は戦後の昭和の時代を駆け抜けています。
物語は、時系列で進んではいませんので、整理しながら読み進む技術が求められます。

また、団地にまつわる都市伝説のような不思議なお話も出てきます。
ミステリアスな要素もあり、楽しめますよ~

全編にわたって、千歳の大阪弁が読者をとても柔和にしてくれます。
果たして夫の祖父から依頼された千歳の「人探し」は成功するでしょうか。

文庫版の解説は、社会学者で、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授の岸政彦氏です。
日常の見過ごしがちな細かい視点に着目されています。

作者の柴崎友香氏は大阪府のご出身です。
小説『その街の今は』(新潮社、2006年、のち新潮文庫、2009年)で、2006年、第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞☆彡、同年、第23回織田作之助賞大賞を受賞☆彡、翌2007年、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されました。

また、小説『寝ても覚めても』(河出書房新社、2010年、のち河出文庫、2014年、のち増補新版として同文庫、2018年)では、2010年、第32回野間文芸新人賞を受賞☆彡されています。
この作品は、2018年、濱口竜介監督で映画化されています。

そして、2014年、小説『春の庭』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回芥川龍之介賞を受賞☆彡☆彡されています。

小説『きょうのできごと』(河出書房新社、2000年、のち河出文庫、2004年)は、2004年に行定勲監督で映画化されています。
他にも多数の作品が刊行されており、大変ご活躍されていらっしゃいます。

あなたはどのような住宅にお住まいですか。
戸建て、マンション、団地、アパートなど、分譲、賃貸問わず、日本には様々な住宅があります。

凛はいつも利用する駅でよく思うことがあります。
多くの方が乗降している光景を目にして、皆さんお一人お一人どこから来られて、どこに帰宅されるのかしらと。

それぞれのご自宅でそれぞれの暮らし方がありますよね。
それぞれのご家族・兄弟・姉妹・両親・祖父母……。
ご親族の生きられた歴史があり、その歴史の上に幾重も折り重なって、今の人生があるのだと凛は思います。

そして、今を生きている人たちの人生が歴史となって、未来へと継続されていくのですね。
日常の中で、滔々と流れる歴史が刻まれてゆくという思いに気づかされます。
当たり前のことなのですが、人はこの世にある日一人で突然存在したのではありませんよね。
この当たり前ということが、案外普段は忘れがちなのではないでしょうか。

柴崎友香氏のオフィシャルサイトはこちらです!
ご興味のある方はどうぞ。

今夜も凛からおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/10/12柴崎友香(著)
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2020年12月29日火曜日

シネコンのバックヤード・ツアーです! ~畑野智美『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
凛とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2020年も残すところ二日と数時間になりました。
あなたの2020年はどのような一年でしたか。

凛はおかげさまで4月に、ブログの南城 凛のりんりんらいぶらり~を立ち上げまして、8ヵ月続けることができました。
凛のりんりんらいぶらり~を訪れてくださるあなたのおかげで、励みとなって続けています。

凛は本が好きです!
街の書店巡りが好きな凛にとっては大変有益な一年でした。(^o^)

凛がご紹介させていただきました作品には、ベストセラーの有名な作家のものもあります。
またこれからきっとご活躍をされであろう期待感がある作家の作品もご紹介しています。
とても面白かった作品ばかりで、是非あなたにも読書の感動を共有していただけると嬉しく思います。

今年は新型コロナウィルスの影響で、全世界中の人々が巻き込まれ、未だ解決が見いだせておりません。
来年も引き続き、これまでの価値感など変化を求められる年になりそうですね。

ところで、あなたは映画はお好きですか。
今年は自粛の影響で、人々の生活に変化がみられました。
そのため、映画をお家で観られる方も増えたことでしょう。
レンタルショップだけでなく、ネット配信が増えてきている昨今です。

しかし、やはり、映画は映画館で観るのが最も楽しいですね!
まずは座席を予約するところから始まり、映画館に足を運ぶ時間から、映画の世界への旅は既に始まっているのです。

映画は巨大なスクリーンに映し出される映像と、ダイナミックな音声との融合がひとつの作品世界となっています。
映画に集中している約2時間前後は非日常の空間です。
映画館でご覧になられるあなたご自身の時間と空間、そして作中の時間と空間、この二重の融和があなたを映画の虜とさせてくれるでしょう。

今年は吾峠呼世晴原作、外崎春雄監督の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットで、全国の映画館が大盛況でしたね!
映画館の興行収入が大幅に増えたことは明るい話題となりました。
あなたはご覧になられましたか。
凛の友人は上映されると即座に映画館に行き、とても感動してきたと話していました。
まだまだこの映画の人気は続きそうです。

今回、凛がご紹介いたします小説は、シネマコンプレックスこと「シネコン」と呼ばれている映画館の仕事に従事している人たちのお話です。
多くの映画ファンに親しまれているシネコンでバイトをしている人たちに光をあてた作品です。

畑野智美(はたの ともみ)氏の連作短編集『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)です。
この作品は、作者の畑野智美氏がシネコンでバイトをしていた経験から描かれている小説です。

映画がお好きなあなたは、シネマコンプレックスをご利用されることもあるのではないでしょうか。
全国にあるシネコンは、単館やミニシアターとはまた違ったアミューズメントの楽しみがあるといった感じでしょう。

メディアなどの宣伝との連動で、主演俳優の舞台挨拶、ネットでの予約から、関連グッズの買い物、飲み物や食べ物の販売など、すべてがシステム化されているシネコン。
今回の作品は、このシネコンという広い空間と厳格なシステムの中で、真摯に取り組んで働く人たちのお仕事小説です。

凛は、いつもの近くの書店の文庫本の新刊コーナーでこの作品を見つけて、光文社文庫の2020年10月20日付の初版1刷を購入しました。
文庫版の表紙は、めばち氏のイラストで、映画フィルムを背景に、シネコンの制服を着た一組の男女が手を取り合っています。
女性の頭には赤いとんがり帽子が可愛らしくのっています。
二人は互いに見つめ合って、ダンスをしているようにも見えて、温もりのある雰囲気が漂っています。

文庫本初版の帯の表表紙側からは、仕事や恋、夢について一歩踏み出すことを躊躇している読者に対して勇気をもらえる小説であることがわかります。
物語は、クリスマス・イブの郊外のシネコンの舞台裏に焦点をあて、働く者たちの「等身大」(文庫本帯の表表紙側)として描かれているお仕事小説です。

帯の裏表紙には、シネコンが六つのセクションから成り立っていることが紹介されています。
「フロア」は、チケットのもぎり、案内、清掃など。
「コンセッション」は、飲食の売店。
「ボックス」は、チケット販売担当。
「ストア」は、パンフレット、関連グッズの販売。
「プロジェクション」は、映写機の操作担当。
「オフィス」は、備品管理、電話応対などをする事務所。

お客さまがシネコンで映画作品を楽しむためには、これだけのセクションがあり、様々な人たちの働きの中で「映画を楽しむ」という行為が成立しているのだということがわかります。
それらのどのセクションも重要であり、ひとつでも欠けるとお客さまが「映画を楽しむ」という行為が成り立たないということに繋がります。

文庫版の裏表紙からわかることは、この小説の舞台となっている郊外のシネコンには100人近い人たちが関わっていることに凛は大変驚きました。
実際、映画館に足を運んでも、上映される作品の時間帯の前後のスクリーンに関わる関係者しか普段は見えません。
シネコンではそれほど多くの人たちが働いているのかとあらためて思い知らされました。

映画ファンのための映画作品そのものや監督、俳優陣などに関する情報は多くありますが、シネコンの仕事に携わっている人たちの小説は、この作品で凛にとっては初めてでしたので、大変興味がわきました。
この作品は、或る年の日曜日のクリスマス・イブの日という特別な一日の舞台裏を描いています。
したがって、日常の業務に加えて、一年のうちの格段に忙しい一日であると容易に想像できます。
しかも、当日は舞台挨拶もあり、特別なイベント上映もあるという「大忙し」(文庫版、裏表紙)の日です。

物語は、七篇からなります。
六つの各セクションの細部にわたるバイトの規則が丁寧に描かれています。
シネコンでの就業規則をバイトの視点で具体的に紹介していますので、バイトのための活きた就業マニュアルのようでもあります。

バイトは学生だけでなく、主婦もいます。
各人が個々人の悩みを抱えながら、人間関係の問題ををくぐり抜けて、シネコンという職場の立ち位置に居場所を求めています。
その誰もが映画が好きであることが描かれており、彼らのシネコンに対する「映画愛」がこめられていることが伝わります。
映画がお好きな方でしたら、各人の「映画愛」に関するエピソードが楽しめるしかけが楽しめます。

シネコンにはもちろん社員もいますので、社員とバイトの間に流れている溝がみられます。
また、バイト同士の微妙な関係もあり、いろいろと考えさせられます。
郊外のシネコンですから、本社のある東京からきた社員との確執なども事細かく描かれています。
長く勤めているバイトの人たちと、新人との軋轢もあります。
実際にシネコンでバイトを体験した作者ならではの視点が活かされています。

物語には、数年前に起きたクリスマス・イブでの職場での或る出来事がミステリーの要素となって全体に流れています。
この出来事の謎の部分が最後にあかされる仕組みになっていますので、お楽しみに。

それぞれの人生をシネコンという共同の職場で、悩みながら映画に携わっている人々の生の声がよく伝わります。
各篇の最後は、なるほど、そのような道があったのか!ということも。

映画ファンにとりましては、シネコンの知られざるバックヤードがわかりますよ。
さらに、映画フィルムなどの技術変遷の歴史もわかります。
映画だけでなく、お仕事小説として捉えることができます。
映画ファンのみならず、これからシネコンでバイトする方や、映画関係で働く方には必読の書となりそうな小説だと凛は考えます。

作者の畑野智美氏は、映画館や出版社のバイトなどを体験されていらっしゃいます。
2010年、小説『国道沿いのファミレス』(集英社、2011年、のち集英社文庫、2013年)で、第23回小説すばる新人賞☆彡を受賞されて、翌年の2011年に作家デビューされました。
2013年、連作中編集『海の見える街』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2015年)で、第34回吉川英治文学新人賞の候補となりました。
また、翌年2014年にも、連作短編集『南部芸能事務所』(講談社、2013年、のち講談社文庫、2016年)で、第35回吉川英治文学新人賞の候補となっていて、シリーズ化されています。
2018年、文藝春秋刊行の小説『神さまを待っている』は、読書メーター OF THE YEAR 2019にランクインしています。

あなたの今年のクリスマス・イブはいかがでしたか。
これからお正月を迎えて、お休みの方には映画を観る機会も増えそうですね。

凛は、これからは映画の旅を楽しむときに、影の力となってくださっている映画館のスタッフに優しく接していきたいと考えました。
決して、観たばかりの映画の最後について「あーあ、つまらなかった」などと言いながら、ポップコーンをポイと投げるようにスタッフに手渡すことだけはしたくないなと思います。
席でポップコーンを落とさないように注意したいですね。

この作品でシネコンのバックヤードも知ることができ、館内のスタッフに感謝しながら、これからも映画がますます好きになっていくことでしょう。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

晩秋からブログの掲載が若干遅くなっておりまして、申し訳ございません。
今回が今年最後の更新となりました。
4月に立ち上げまして8ヵ月の間、凛にお付き合いくださり、誠にありがとうございました!
来年も続けてまいりたいと思っておりますので、今後も凛のりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたします!m(_ _)m

あなたもよいお年をお迎えくださいませ。\(^o^)/
お身体にはくれぐれもご自愛くださいませ。
あなたにとって、来年もよい年でありますように。
では2021年も南城 凛(みじょう りん)のりんりんらいぶらり~であなたとお会いしましょう。(^O^)/

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2020年12月11日金曜日

一歩前進したくなります! ~伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社、2016年、のち光文社文庫、2018年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

今年も早いもので師走となりました。
街ではクリスマスのイルミネーションがキラキラ☆☆と輝いています。
クリスマスソングが流れて、クリスマス商戦たけなわですね~

凛は賑やかな街の様子を見て、クリスマスの楽しい気分に誘われました。
あなたはいかがですか。

凛はホッとしました。
理由は、新型コロナウィルスの影響が現在も継続中であるため、クリスマスなど例年通りに楽しんでよいものかという気分になっていました。
輝くイルミネーションの光☆☆を浴びて、心身とも明るくいきましょう。(^o^)

自粛などの影響もあり、業種にもよると思いますが、お仕事で大変な方も多くいらっしゃることでしょう。
これから経済的な面での影響が出てくるのではないかと思います。
中にはクリスマス気分どころではない方もいらっしゃるかもしれません。
元々、日本では暮れがおしせまると、どうしても気ぜわしくなりがちです。
さらに、今年は漠然とした不安感や、不透明感が伴って先が見えずにすっきりしない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

読後に一歩前進できる小説が読みたいなあ。
ファイトが出る小説が読みたい。
明るく元気になれる物語と出合いたい。
爽やかな気分になれる小説が読みたい。

そのような作品をご希望のあなたに、凛が、主人公が厳しい現実から如何にして脱却していくのか、その過程を読ませてくれる小説をご紹介しましょう。
伊吹有喜(いぶき ゆき)氏の小説『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社、2016年、のち光文社文庫、2018年)です。

あなたはこのタイトルに「ええっ?今がunluckyなのは嫌だなあ」と思っていらっしゃいませんか。
実は凛も最初、よく利用している近所の書店の文庫本の書架でこの本の背表紙を見たとき、すぐにそう思ったのです。
新刊本や話題の本など平積みされている目立つ棚のところではなく、出版社別に並べられている文庫本の書架の片隅にひっそりとこの本がありました。
「凛さ~ん!読んでください。手にしてください。楽しめますよ~」とこの本からビビビと熱いメッセージが伝わりました。

そっとこの文庫本を手に取ってみますと、表紙のカバーが丹地陽子氏のイラストでした。
表紙には、40代くらいの男性が野外で座って、珈琲のマグカップを持っています。
その横顔と背中に漂う空気感に、哀愁と未来が混濁した感じが含まれています。
何よりも男性の横顔に笑みが浮かんでいたので、よい未来が待っていそうな感じがしました。

文庫本の奥付を見ますと、2018年11月の初版で、2020年9月には第5刷の発行となっています。
増刷のペースが早いというのは、それだけ売れている証拠ですね!

第5刷の文庫本の帯の表表紙側には、「このコーヒーを飲んだら、もう一回、歩き出してみようか。」と。
帯の裏表紙側に記されている「人生の中間地点」にいる人たちであるからこそ「見えた」ものとは何でしょうか。

文庫本の裏表紙の解説文には、主人公の男性が「思いがけない人生の『敗者復活戦』に挑むことになる」物語であると説明されています。
なるほど、ここから市井の人々に読んで欲しい作品であることがわかりました。

目次を開きますと、7篇の物語と、文庫本の解説が文芸評論家の北上次郎(きたがみ じろう)氏ではありませんか!
これは読みごたえがありそうだなと思い、凛はすぐに書店のレジに向かいました。

物語は、立花浩樹(たちばな ひろき)という元・自然写真家の現在から始まります。
彼は華々しいメディアの世界で人気を博した「『ネイチャリング・フォトグラファーのタチバナ・コウキ』」(文庫本、20頁)という過去をもっています。
1980年代後半に彼が東京の私立大学の学生のときに出会った所属事務所の社長が、彼のプロデューサーを手掛けていました。

しかし、バブルの終焉と共に、彼は連帯保証人であったため、社長の負債を負うことになってしまったのです。
どれくらいの借金があったのかは明確にはわかりませんが、返済し終えて、他人には言えない艱難辛苦を体験した過去を背負って、心身ともぼろぼろの状態で今に至っています。
華やかなメディアからは消えて、世の中の人々からは忘れられた存在となっています。

第一篇目は、現在の立花浩樹が主人公です。
地元に戻って荒れた生活ぶりが彼の表情や身体全体に表れており、輝かしい過去と現在との比較が容赦なく描かれています。
彼の母親の息子に対するもどかしい気持ちと、母親の友人とその息子との関わり方が非常に現実的で厳しく、読者も苦しくなります。

母親の友人の写真を撮影することがきっかけとなり、彼は再び東京に出ることになります。
そのとき、母親が彼にかけたひと言、これはあなたが読まれてのお楽しみにとっておきましょう。(^_-)-☆
読者にもよい展開となる予感を抱かせます。

第二篇目からは、彼をめぐる人々が各篇で主人公となった連作長編です。
これ以降、立花浩樹が脇役となるのが、この作品の特徴です。
それぞれの登場人物の「現実の厳しさ」がこれでもかというくらいに連打されます。

目黒区の『ナカメシェアハウス』(同書、96頁)に住むことになった彼と住人たちの関わりは、必然性ともいえるでしょう。
第二篇目では、立花浩樹の母親の友人の息子のシビアな結婚生活が描かれています。
第三篇目では、美容のスペシャリストを目指している女性に、作者は容赦なく厳しい現実を突きつけます。
この二篇で、厳しい現実の中において彼らが獲得してきた職業的特性を、写真家である立花浩樹を中心にして活かされていくのです。
この過程がぐいぐいと読者を引きつけてくれます。

第四篇目は、希望する結婚を目指すために、立花浩樹から写真を撮ってもらった女性のおかれた現実と海外旅行での甘い夢が愛おしくなります。
第五篇目は、大学で立花浩樹と同じ探検部に所属していた仲間だった男性の郷愁が切なく描かれています。
第六篇目で、大学の元仲間の男性は愛犬と共に、立花浩樹と野外活動で大活躍します。
ここまでで、人生の再生には人とのつながりが必ず必要であることと、人生の折返し地点に立ってからは、激変し続けている現代において、これまで生きて来た時代の価値感の共有が特に必要なのだと作者が描いていると、凛は考えました。

そして、第七篇目は、立花浩樹が再び登場しますが、一体彼はどのような行動をとるのでしょうか。
最後に、第一篇の母親からのひと言からの呼応として、素敵な言葉が描かれています。
これもあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。(^_-)-☆

作者の伊吹有喜氏は、2008年、永島順子の筆名で応募した小説「夏の終わりのトラヴィアータ」で第3回ポプラ社小説大賞特別賞☆彡を受賞されました。
2009年、筆名とタイトルを改めて、小説家デビューされました。
この作品は、伊吹有喜として『風待ちのひと』(ポプラ社、2009年、のちポプラ文庫、2011年)で刊行されています。

2010年、小説『四十九日のレシピ』(ポプラ社、2010年、のちポプラ文庫、2011年)では、2011年にNHKBSプレミアムでドラマ化がされています。
主演は、和久井映見さんです。
また、同作品は2013年には映画化もされて、タナダユキ監督で、主演は永作博美さんです。

伊吹氏の作品は、各文学賞の候補となっています。
2014年、小説『ミッドナイト・バス』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2016年)が、第27回山本周五郎賞の候補、並びに第151回直木三十五賞の候補となっています。
そして、2018年に映画化されており、竹下昌男監督で、主演は原田泰造さんです。

2017年、小説『彼方の友へ』(実業之日本社、2017年)で、第158回直木三十五賞の候補、並びに第39回吉川英治文学新人賞の候補となっています。

2020年、小説『雲を紡ぐ』(文藝春秋、2020年)で、第163回直木三十五賞の候補となりました。

さらに、小説『カンパニー』(新潮社、2017年、のち新潮文庫、2019年)は、2018年に宝塚歌劇団月組公演で舞台化されました。
この作品は、2021年の1月から、NHKBSプレミアムドラマで、主演が井ノ原快彦主演でドラマ化される予定です。
以上のことから、伊吹氏は大変ご活躍されている実力のある作家であることがわかります。

文庫本の解説は、北上次郎氏です。
他に、目黒考二・群一郎・藤代三郎などの筆名で、私小説、文芸評論、競馬評論などで精力的にご活躍されていらっしゃいます。
2001年に、本の雑誌社を、椎名誠氏らと設立され、初期には群ようこ氏一人が社員でした。

文庫本の解説では、さすがに大御所の書評家らしく、伊吹氏の著作リストを挙げて、番号をうって整理されていらっしゃいます。
各作品をわかりやすく解説されて、最後に共通点をきちんとまとめてあるので、凛はさすがだなと感心いたしました。
北上氏の解説も是非お楽しみに~ (^o^)

バブル期を若い青年期に体験した40代の主人公はじめとする登場人物たちの現実の姿を、等身大として描いているからこそ、多くの読者に共感を得ているのだと凛は考えます。
若さもありますが、これから老いについても考えていかなければならない年代であります。
社会の現役世代として活躍を期待される彼らに、作者は寄り添っています。

また、作者はバブル期に流行したトレンドを上手く登場させており、その共感性がもうひとつの柱となっているとも凛は考えました。

仕事、離職、結婚、離婚、家族、介護、老後、借金、住宅、転落、恋愛、友情、そして、郷愁。
これらの問題を体験して、それぞれに過去を清算していく40代の再生の物語です。

読後感はすっきりとして、あなたも一歩前進したくなりますよ!\(^o^)/
爽快感が体験できます。
伸びしろが大いに期待できる伊吹有喜氏、これからも注目したい作家の一人です。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

☆☆☆2021.1.15追加☆☆☆
追加情報で~す!
この作品は映画化されます!\(^o^)/
全国の4カ所でロケです。
監督は、柴山健次氏で、脚本も担当されます。
詳細は、こちらです!
Zipang
今年の秋以降の上映予定です。
お楽しみに~(^o^)
☆☆☆追加はここまで☆☆☆

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