2023年7月27日木曜日

数学が苦手な方も一気に読めます! ~岩井圭也『永遠についての証明』(KADOKAWA、2018年、のち角川文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りんです。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本は夏真っ盛り!\(^o^)/
いよいよ夏休みが始まりましたね~
ほとんどの地域が梅雨も明け、猛暑の日々が続いています。
暑さだけでなく、突然の大雨もありますね。
大雨で水害に遭われた地域の皆様、心よりお見舞い申し上げます。m(__)m

それにしても今年もものすごく暑いですねえ。(-_-;)
蒸し暑さもありますし、日光に当たるのが憚れらるほどの高い気温で、外を歩くのも大変です。
凛はエアコン無しでは過ごせません。
身体が冷えないように注意しながら、水分を上手にとっていかないといけませんねえ。
暑いときこそ室内でゆっくりと読書したい凛で~す。
あなたはいかがお過ごしですか。

ところで、あなたは数学はお得意ですか。
凛は文系なので、どちらかというと、うーん、どうでしょう……。
中学生の頃までは数学は得意だなと自負しておりましたが、、(^^;
気が付けば文学が最も好きになっていますね。

社会へ出ると、人は苦手な分野にまで時間を割いてはいられないものでしょう。
お仕事以外の貴重な時間をどう割り振りするかはあなた次第。
好きなことで自分の時間を有意義に過ごしたいと思う凛ですが、あなたは時間の使い方についてどのようにお考えですか。

自分の好きな分野で夢中になれること、時間を忘れて熱中できること。
あら、もうこんな時間だ!いけない!
ふと時計を見て、好きなことに集中して過ごした時間に充足感を感じながら、残りの時間に焦りつつも日常に戻っていくひとときの心地よさは格別です。

切ないほどに数学の世界に熱中してやまない若者たちの青春を描いた物語があります。
岩井圭也(いわい けいや)氏の長編小説『永遠についての証明』(KADOKAWA、2018年、のち角川文庫、2022年)です。

数学が苦手な方でも大丈夫で~す!(^^)v
この作品は数学の専門的分野の話ではありますが、数学が苦手な方にも全く問題ありません。
本当に読めるのかなあ、と読む前に不安を抱いていた凛でしたが、一旦読みだすと無我夢中で物語の世界に浸ることができて、一気に読んでしまいました!(^O^)

はじめに、凛がこの本を知ったのは、自宅から少しだけ離れた全国規模の大型書店で、岩井圭也氏のサイン本フェアが催されていたことによります。
凛はこれまで岩井氏の作品を読んだことがなく、今回のサイン本フェアにて多くの作品が出版されていることを知りました。
綺麗に展示されている本を一冊ずつ手にして帯などの説明を見ると、どれも読みたくなりましたねえ。
この作品のタイトルにひかれたことと、文庫本の帯の説明に興味をもったので、レジに直行しました。

次に、帯や表紙について述べます。
凛が購入した文庫本は、2022年11月30日の再販発行のものです。
文庫本の初版が、同年の1月25日ですから、評判が良かったのがわかりますね~

気になる帯ですが、凛が購入した再販の文庫本は、表紙が二枚に重なっています。
これは大変珍しいですねえ。
本来の表紙の上に、もう一枚別のデザインの表紙が重なっており、上になる表紙には帯が印刷されています。
ですから、上になっている表紙は全体が帯と捉えてもよろしいかと思います。

このような帯を兼ねているような表紙は以前にはほとんど見かけませんでした。
細長い帯がひらひらとせずに邪魔になりません。
それに、棚から出し入れする時に帯のしわや破れなど気にせずに済みますね。

上になっている表表紙の帯の部分には「とてつもなく面白かった!! 営業担当全レビュー!!!!」として、三つの項目に星が付いています。
「心揺さぶられ度」には星が5個。☆☆☆☆☆(同書)
「文章の美しさ」には星が6個。☆☆☆☆☆☆(同書)

そして、三つ目の項目!
多くの読者にとって最も気になるであろう「数学知識必要度」の星は1個です!!(同書)\(^o^)/
数学の専門的な知識がなくても読めるんだな、と安心の材料になりました。
この星1個が、凛にとって購入の決め手となったのは言うまでもありません。

文庫本の本来の表表紙は、薄い灰色をベースにして、数学の式が薄い白色の文字で描かれている中に、一人の青年がぽつんと立っています。
まるで彼を中心にして数式が渦巻いているかのようです。
良く見ると、冬の雪が積もっている林の間の道路の真ん中にマフラーを首に巻いた彼が立っており、その地点まで歩いてきた足跡が雪道に残っています。
彼はこれまで歩いてきた道を振り返っているように見えます。

カバー写真は、深町レミ(ふかまち れみ)氏です。
カバーデザインは、坂詰佳苗(さかづめ かなえ?)氏です。

本来の表紙の上に重なっているもう一枚の表紙の上半部分には、濃紺の夜空にたくさんの白い星々がキラキラと輝いています。
この表紙の下半分が先に説明した本来の帯の部分になります。

文庫本の裏表紙の説明文は、重なっている二枚とも同じです。
「圧倒的な『数覚』に恵まれた三ツ矢瞭司(みつや りょうじ)」(同書)は、大学の数学科に特別推薦生として入学します。
彼と同じ特別枠で入学した熊沢(くまざわ)と佐那(さな)の三人は共同研究をし、「画期的な成果を上げ」(同書)ます。

瞭司の数学に対する才能は、それまで築いた三人の関係に破壊を招きます。
熊沢は、瞭司が生前に遺したノートから「未解決問題の証明らしき記述」(同書)を発見して、物語は新たな展開を見せていきます。

それから、この作品は、第9回野生時代フロンティア文学賞を受賞☆彡されています。
冲方丁(うぶかた とう)氏、辻村深月(つじむら みづき)氏、森見登美彦(もりみ とみひこ)氏らの選考委員の大絶賛を受けていることが説明文に書かれています。

というわけで、これはすぐに読みたい!と凛が思った次第です。(^O^)

文庫版の解説は、作家の森見登美彦氏です。
「真理とのつながりと、他人とのつながり」(同書、279頁)から、瞭司が直面したとされる「二重の危機」(同書、同頁)についてご説明されています。
森見氏の解説文を是非お読みいただきたいですね。

では、内容に入ります。
目次を見ると、13の章に分かれています。

第1章目のタイトルが「コラッツ予想」、いきなり来ましたぞ!( ;∀;)
数学が得意な方にはなじみがあるでしょうが、凛には数学の専門分野の洗礼を受ける感じが否めませんでした。
しかし大丈夫、どうぞご安心ください!
どんどん読み進んでいけますからね。(^-^)

物語は、熊沢勇一(くまざわ ゆういち)がかつて学んだ大学の恩師であり、現在は「国数研(こくすうけん)」(同書、5頁)に所属している小沼(こぬま)の元を訪ねるところから始まります。
二人は数年ぶりの再会のようです。

熊沢は青春を共に過ごした同じ大学の友人で、今は亡き三ツ矢瞭司が遺した研究ノートを小沼に見せます。
6年前に亡くなった三ツ矢のノートには、びっしりと数式が書き込まれています。

熊沢によると、「ブルビス理論によってコラッツ予想を証明できれば、数学の風景は一変するはずだ。」(同書、13頁)という私見をもっています。
熊沢はこの仮定をもとにして証明をするために、小沼に協力を要請します。

熊沢や三ツ矢と同じく学生当時の仲間であった斎藤佐那(さいとう さな)との関係も匂わせていますが、ここではまだ詳細は明らかにしていません。

「春はまだ始まったばかりだ。」(同書、14頁)で終わる第1章目。
次の章から、物語は時系列ではなく、過去と現在を行きつ戻りつ、様々な展開を読者に提供してゆきます。

第2章目では、三ツ矢、熊沢、佐那の三人が協和大学の入学式の当日に初めて出会います。
この章のタイトルの「特別推薦生」が示すように、三人は理学部の特別推薦生枠で入学しました。
熊沢と佐那の二人は、高校生の時の数学オリンピックの成績によって、協和大学の「トクスイ」(同書、17頁)に選ばれています。
三ツ矢は彼ら二人とは別口で入学をしています。

大学の先輩である田中(たなか)と木下(きのした)との出会いもこの第2章目です。
二人の先輩は一般的な学生として描かれていますが、大変フレンドリーで後輩の面倒見がよく、後輩の三人にとっては頼れる存在です。
ホッとできる二人の先輩たちがいてこそ、優秀な後輩三人が活きてきます。

とはいえ、二人の先輩も真面目に勉強しているのですよ!
先輩たちの研究テーマは「岩澤理論の一般化」(同書、39頁)で、田中先輩は「保型(ほけい)方式」(同上)、木下先輩は「楕円(だえん)曲線」(同上)を専門にしています。

二人の先輩と新入生の三人は飲み会をします。
その時でさえ三ツ矢は「ムーンシャインの一般化」(同書、31頁)について考えているような数学まっしぐらの純朴な青年です。

三ツ矢は過去からも、この後も数学の研究ひと筋で青春を過ごしてゆきます。
その数学との向き合い方が半端ではありません。
天才というのは彼のことをいうのでしょうか。
周囲との軋轢や批判など一切気にせず、ただひたすらまっすぐ答えを求めて突き進んでゆく生き方を貫きます。

とても輝いていた大学生時代!
その数年が光の世界であるならば、後半は闇へと向かうことに、第2章目で誰が予想できるでしょうか。
やがて三人はそれぞれ別々の道へと分かれることになってゆきます……。

三ツ矢はどのようにして亡くなって、彼のノートを遺したのでしょうか。
熊沢と佐那は何を思って彼の死を受け止め、遺された彼のノートとどのように向き合ったのでしょうか。
そして、彼の遺したノートから熊沢たちは真実の解明ができたのでしょうか。

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^.^)

作者の岩井圭也氏は、2017年に岩井圭吾(いわい けいご)の名義で投稿した小説うつくしい屑」第8回野生時代フロンティア文学賞奨励賞を受賞☆彡されています。

今回ご紹介しました『永遠についての証明』はその翌年に応募し、第9回野生時代フロンティア文学賞を受賞☆彡、出版の際に岩井圭也に改名されています。
他にも多くの作品で賞の候補作となっています。
大変ご活躍されており、今後目が離せない作家のお一人です。(^O^)

最後に。
数学が好きで好きでたまらない三ツ矢瞭司は、協和大学の同期生である熊沢勇一と斎藤佐那の三人で研究成果を生み出します。
青春を謳歌している三人の大学生たちは、やがてそれぞれの道に進むことになります。
時間を止めることは誰にもできず、卒業が訪れます。

研究の道を進み続けることは大変難しいことです。
数学の問題の真実の追究と解明は研究者にとって大変な労力が求められます。
現実との折り合いをつけなければならない問題が目の前に突き付けられたとき、一人の天才はどう対処したのでしょうか。
瞭司が遺したノートには、何が描かれ、何が追究されていたのでしょうか。

この作品は、数学が大好きで青春を謳歌する学生たちと、厳しい現実社会における教授たちのそれぞれの葛藤、嫉妬、軋轢、裏切り、焦燥、協力、共生など、その時々の情景から見える各人各様の様相が見事に描かれています。

また作中で、日本の研究とアメリカの研究における捉え方の違いについて、或る教授が容赦ない形をもって示しています。
このことは、現代日本における研究職を目指す学生さんたちへの警鐘とも捉えることができる、と凛は考えます。

とはいえ、作品の最後には未来への希望が見えて感動しました。
それ故に彼らの生き方が大変切なく、胸がいっぱいになりました。

人生をかけて研究の道を究めることは、実に大変なことなのですね!
作品のタイトル『永遠についての証明』が秀逸であることに凛は感服いたします。

凛は読後すぐに、岩井圭也氏のサイン本フェアに向かいました。
新たに二冊、岩井氏の別の文庫本のサイン本を購入してきました。\(^o^)/
サイン本フェアは大変好評だったようで、展示されていたサイン本がだいぶ減っていましたよ~

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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