2021年1月29日金曜日

宅配してくださる方々に感謝! ~山本一力『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは宅配をご利用されていらっしゃいますか。
凛はよくお世話になっています。(^-^)

新型コロナウィルスの影響により、不要不急の外出を控えてご自宅でお過ごしの方も多い昨今。
宅配とは、買物に行かずに済み、自宅や会社などで受け取ることができる便利なシステムですね。
どんな悪天候でも、年中休まずいつでもお届けしてくださる配送業者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです!m(_ _)m

ひと昔の時代ですと、自宅への配達はデパートからの贈答品、お中元やお歳暮のほか、特別なお届け物が多かったのではないでしょうか。
ネットショッピングなどの普及により、昨今では日常の食料品をはじめ、お仕事や生活に関するあらゆる物が宅配により簡単に手にすることが可能な時代になりました。

日本中だけでなく、世界中に張り巡らされた物流のシステムは、人間でいえば血流と同じで、絶えず流れ続けています。
この物流のシステムのどこかに支障をきたしますと、一瞬で普段の生活ができなくなる恐れがあります。
物流に関わる方々の努力のおかげに成り立つ宅配サービスというシステムの恩恵を、日常的に当たり前として受けられるということに、心からありがたく思う凛です。\(^o^)/

今回、凛がご紹介いたします本は、山本一力(やまもと いちりき)氏の小説『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)です。
「文庫化にあたり加筆修正」されていると、文庫版初版の奥付の前頁(462頁)に掲載されています。
時代小説で有名な作家ですが、この作品は現代小説となっています。

この文庫本とは、昨年秋に、凛がいつも利用している近くの書店の文庫本の新刊コーナーで出合いました。
文庫本の表紙は、川上和生氏のイラストです。
住宅地の石段の坂道から海が見えていて、海の向こう側にはビルなどの街が見られ、遠くに山があります。
セーラー服の女子学生が、牛乳配達の白い帽子の男性が坂道の石段を上がって行っている様子を、石段の下手から振り返って見つめている光景が描かれています。
女子学生は、石段の途中ですれ違ったであろう牛乳配達の男性の笑顔がよい表情であることから、ほっこりとして彼を振り返っているのかもしれません。

文庫本初版の帯の表表紙側には、「毎日、コツコツ。(以下省略)」と紹介されています。
裏表紙側には、「配達するひとの尊さを(以下省略)」と書いてある言葉から、凛は、ああ、そうだった!と、忘れかけていた衝撃を受けることになります。
裏表紙の説明文には、「宅配物語」と書いてあります。
表紙と帯から、お届けしてくださる方たちを巡る心豊かになれる物語であろうということが想像できます。

この小説は、牛乳の宅配業に関わる人々の物語です。
毎朝、自宅の玄関前に瓶入りの牛乳をお届けする業者を中心とするお仕事小説でもあり、また人情物語でもあります。

物語は、第一章、第二章、終章の構成になっています。
第一章では、東京都中央区の日本橋浜町で牛乳販売店を営む纏(まとい)ミルク浜町店の店長こと纏亮介(まとい りょうすけ)を中心として、家族や配達員たちの仕事を細かく描いています。
2014年を迎えたばかりの1月6日午前4時、新年の仕事始めの朝の引き締まった空気感がよく伝わります。

纏ミルクは、亮介の曽祖父が明治初期に創業した老舗で、亮介は四代目にあたります。
亮介の父である三代目から、隅田川こと大川の西側から東側に移転し、深川萬年橋付近に本店を置きます。

纏という名前は火消し組『は組』(文庫版、12頁)を受け継いでおり、江戸の伝統を重んじる家として位置付けられています。
隅田川にかかる多くの橋が出てくるのも特徴です。

牛乳配達は朝が早くて、まだ暗い夜のうちに動きます。
凛は、配達員の方が顧客の玄関先の箱に収めて、使用した瓶を回収するにに至るまで、ご近所に迷惑な騒音とならないように細やかな配慮をしていることなど、気づかされることが多かったです。
瓶の牛乳を入れる小さな箱には、顧客との交流が詰まっているものなのですね。
一人暮らしの高齢の女性のお客様のいつもと違う様子が箱からわかるなど、感動の人情物語が綴られています。

ところが人情話だけで終わらないのがこの物語の特徴です。
毎朝、通勤途中で店先で瓶入りの牛乳を飲みに立ち寄る女性を巡って、毎日玄関先に届けられる牛乳配達と新聞配達が日本独特の文化であることを、映像でアメリカ市場に伝えるという国際的な話に発展していきます。
国際ビジネスの緊張感の中で、登場する人物たちの相関図が人情がらみで描けるほどに見事な展開を示します。
もちろん、善良な人たちばかりではなく、悪い人たちも登場します。

第二章では、尾道が舞台になっています。
尾道は海の幸が大変豊かで、人情も重ねて熱い地域として描かれています。
国際ビジネスの関連から、呉、鹿児島、鎌倉などを読者は旅することもできますよ~

終章では、亮介の恋の行方もあり、どのような結末になるのかは、あなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。

全編にわたって、牛乳は人が口にするものですから、多くの関係者の愛情が込められていることがわかります。
生産者、会社、販売店を経て、消費者である玄関先に毎朝配達される牛乳の新鮮で美味しそうなことといったらたまりません!
あなたも読み進んでいくうちに、きっと瓶入り牛乳が飲みたくなりますよ~
凛はミルクコーヒーも飲みたくなってきました。(^-^)

文庫版の最後に、作者の山本一力氏から「いまだからこその、作者あとがき」(459頁~461頁)があります。
昨年の8月にご執筆されています。

2020年の新型コロナウィルス関連に寄せて、「今の時代」を共に生きている読者に対して、作者の思いが込められていて、とても納得できる文章となっています。
山本氏からコロナ禍を生きている読者への熱いメッセージが文庫版で3頁の中に凝縮されています。(^_^)v
是非、お読みくださることをお勧めします。

作者の山本一力氏は、時代劇の大人気作家として知られています。
1997年、中篇集『蒼龍』(文藝春秋、2002年、のち文春文庫、2005年)で、第77回オール讀物新人賞を受賞☆彡し、デビューされました。

2002年、時代小説『あかね空』(文藝春秋、2001年、のち文春文庫、2004年)で、第126回直木三十五賞を受賞☆彡☆彡されて、大ベストセラーとなりました!
この作品は映画化され、2007年、浜本正機監督作品で、内野聖陽さん、中谷美紀さんの出演となってヒットしました。

時代小説シリーズとして、『損料屋喜八郎始末控え』(文藝春秋、2000年、のち文春文庫、2003年)ほか多数の作品が刊行されています。

メディアにも進出されており、テレビのコメンテーターとしての一面もお持ちですので、ご存知の方も多いかと思います。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここで、ちょっとブレイクタイムです。
今回も購入しました書店のお話です。
凛がよく利用する近所のこの書店は、東京都内に本店を置き、全国に数多く出店している大手書店です。
売り場面積はさほど広くはないものの、並べ方などとても吟味されているなあと、行く度に感心しています。
本棚の本たちが居心地が良さそうなので~す。(^-^)

この書店で付けて下さる無料のオリジナルの紙製のカバーのデザインが落ち着いた感じで、凛はとてもお気に入りで~す!(^o^)
レジ袋は有料なのですが、無料の書店オリジナルの紙の袋に入れてくださって、それがなんとも昔懐かしい感じがして実に気分が良いですね。
書店巡りがお好きでしたら、どこの書店なのか、すぐにおわかりになられるかも……

以前の街の個人書店では、出版社や文具メーカーなどの紙製の袋に入れていただいてましたねえ。
今度はどんな楽しい世界がいっぱい詰まっているのだろうと、ワクワクしながら紙製の袋を胸に抱いて帰宅していました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは瓶入りの牛乳はお好きですか。
凛はとても好きです!
凛は学生の頃、瓶入りのコーヒー牛乳をよく飲んでいました。
瓶入りの乳飲料は懐かしい感じがいたします。
普段はスーパーで紙パックの牛乳を購入することが多い凛ですが、瓶入りの飲料は新鮮で美味しさが詰まっているようで特別感がありますね!(^o^)

最後に、牛乳の宅配だけでなく、あらゆる配達員の方々に感謝の気持ちを込めて。
いつもありがとうございます!!m(_ _)m
これからもよろしくお願いいたします!\(^o^)/

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/9/24山本一力(著)
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2021年1月18日月曜日

誰しも歴史の重みを刻んでいます ~柴崎友香『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2021年になりました。
令和3年、丑年。
今年もよい年でありますように!
今年も凛を何卒よろしくお願いいたします。m(_ _)m

あっという間に今年も1月の後半となりました。
時が経つのは本当に早いものですね。

今年も新型コロナウィルス感染増加により、都市部では緊急事態宣言が発令されました。
自粛生活にも慣れてきた方も多いのではありませんか。
降雪で寒さもあり、外出にも制限がある地域の方もいらっしゃるでしょう。
あなたのお住まいの周辺はいかがでしょうか。
免疫力を高めていきましょう!

社会の変化とともに暮らし方も変わりそうな2021年。
そのような社会情勢の中において、本と向き合える時間はとても幸せだと思います。
活字を追い、読書ができる、とても幸せな時間。
今年も本とともに有意義な時間をもちたいと願う凛です!(^o^)

ここでちょっとブレイクタイム、嬉しいお知らせで~す!
この度、アフィリエイト掲載を始めました!\(^o^)/

これまで公開しております全ての投稿欄の最後に、本の画像と全国大手ネット書店のサイトを掲載しています。
昨年までは文章ばかりでしたので、ちょっと地味だったかも…(-_-;)

本の表紙の画像が入りますと、パッと画面が明るくなったような気がしている凛で~す。
表紙の説明もより具体的にわかりやすくなるかと思います。

りんりんらいぶらり~はスマホなどのモバイルバージョンとPC画面のウェブバージョンと二つあります。
二つのアフィリエイトの画面が若干異なりますが、どちらもクリックされますと同じサイトに繋がりますので、ご興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします!m(_ _)m
これからもりんりらいぶらり~を何卒よろしくお願いいたしますね。(^_^)v

前置きが長くなってしまいました。(^-^;
本題に入りましょう。

凛が今回ご紹介いたします本は、柴崎友香(しばさき ともか)氏の小説『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)です。

凛はいつもの近くの書店の文庫本の新刊本コーナーで見つけました。
そのときは一度手にしてみたのですが、他の本を購入してしまい、後からこの本のことがとても気になってしまって……(-_-;)

本の帯は大事ですね!
文庫本初版本の帯の表紙側に紹介されている「戦後70年の時間を旅する」という言葉が記憶されていて、後から「読みたい!」という欲求がわきあがってきたのです。

あなたには凛と同じ体験はありませんか。
探しているものが気になって仕方ないときがありませんか。

いつもの書店では既に売り切れており、他の書店で探してもそういうときに限ってなかったりするものなのですよねえ。
ああ、しまった~!あのときに買っておけばよかった~と思い、今回はネット書店で購入いたしました。(^^♪
いつもの書店に依頼するのもよかったのですが、、
ネット書店も便利ですよね。

物語は東京都の副都心、新宿区の築40年になる都営住宅でのお話です。
大阪出身の主人公である千歳(ちとせ)が、団地内で暮らしてきた夫の祖父から、かつて団地内で関わったことがある男性を探して欲しいという「人探し」を依頼されるお話です。

団地には低層階や高層階などいくつもの棟があります。
同じ規格、同じ間取りで暮らしている住民たちの中で、特定の人物を探すことは相当困難なことでしょう。
また、個人情報の面だけでなく、防犯上からも「人探し」には相当な覚悟が必要かと思われます。

主人公の千歳も大阪の団地で育ちました。
場所は違えども同じ様な間取りの団地で、彼女が育ってきた環境と似ていて、記憶が混合するような不思議な感覚の中で夫との暮らしを始めました。
千歳の夫もこの団地で育ちました
つまり、夫の生育した環境がそのまま継続となっており、二人とも似た環境で現在進行形で暮らしているという形になっています。

小説には多くの登場人物が出てきます。
夫の友人たち、ご近所の人、団地内の飲食店、団地内に居住する中学生や高齢者、千歳の職場の人たちなどとの様々な交流の場面があります。
彼らには思い思いの暮らし方があり、それぞれに悩みも抱えています。
金属製の扉の向こう側にはどんな人たちがどんな思いで暮らしているのでしょうか。

築40年の団地には歴史が刻まれています。
夫の祖父の青年期は戦後の昭和の時代を駆け抜けています。
物語は、時系列で進んではいませんので、整理しながら読み進む技術が求められます。

また、団地にまつわる都市伝説のような不思議なお話も出てきます。
ミステリアスな要素もあり、楽しめますよ~

全編にわたって、千歳の大阪弁が読者をとても柔和にしてくれます。
果たして夫の祖父から依頼された千歳の「人探し」は成功するでしょうか。

文庫版の解説は、社会学者で、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授の岸政彦氏です。
日常の見過ごしがちな細かい視点に着目されています。

作者の柴崎友香氏は大阪府のご出身です。
小説『その街の今は』(新潮社、2006年、のち新潮文庫、2009年)で、2006年、第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞☆彡、同年、第23回織田作之助賞大賞を受賞☆彡、翌2007年、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されました。

また、小説『寝ても覚めても』(河出書房新社、2010年、のち河出文庫、2014年、のち増補新版として同文庫、2018年)では、2010年、第32回野間文芸新人賞を受賞☆彡されています。
この作品は、2018年、濱口竜介監督で映画化されています。

そして、2014年、小説『春の庭』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回芥川龍之介賞を受賞☆彡☆彡されています。

小説『きょうのできごと』(河出書房新社、2000年、のち河出文庫、2004年)は、2004年に行定勲監督で映画化されています。
他にも多数の作品が刊行されており、大変ご活躍されていらっしゃいます。

あなたはどのような住宅にお住まいですか。
戸建て、マンション、団地、アパートなど、分譲、賃貸問わず、日本には様々な住宅があります。

凛はいつも利用する駅でよく思うことがあります。
多くの方が乗降している光景を目にして、皆さんお一人お一人どこから来られて、どこに帰宅されるのかしらと。

それぞれのご自宅でそれぞれの暮らし方がありますよね。
それぞれのご家族・兄弟・姉妹・両親・祖父母……。
ご親族の生きられた歴史があり、その歴史の上に幾重も折り重なって、今の人生があるのだと凛は思います。

そして、今を生きている人たちの人生が歴史となって、未来へと継続されていくのですね。
日常の中で、滔々と流れる歴史が刻まれてゆくという思いに気づかされます。
当たり前のことなのですが、人はこの世にある日一人で突然存在したのではありませんよね。
この当たり前ということが、案外普段は忘れがちなのではないでしょうか。

柴崎友香氏のオフィシャルサイトはこちらです!
ご興味のある方はどうぞ。

今夜も凛からおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/10/12柴崎友香(著)
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