2023年8月30日水曜日

文房具のことが大好きになれる老舗の専門店です! ~上田健次『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本ではまだ残暑厳しいですが、夕暮れの時間が早くなってきました。
今年の夏は全国的に灼熱列島のようでしたね。
夏バテが出やすい時期です。
あなたはいかがお過ごしですか。

子供たちの夏休みも終わって、既に二学期が始まっている小中学校がほとんどでしょう。
新学期を迎えるにあたって文房具店で学用品を購入する親子連れも多かったかと思います。

あなたは文房具並びに文房具の専門店がお好きですか。
凛は好きですねえ。 (^-^)

学習向けの文房具、シンプルな事務用品、大人向けの高級筆記具、大人の人生を満喫できそうな本革製品。
プレゼント用の可愛いキャラクター商品も多々あります。
文房具店には日常的に用いるグッズや雑貨類、珍しい商品まで多方面にわたって展示されていますね~

書籍と文房具コーナーが併設されている書店も多いので、本が好きな方は文房具も好きという方も多いでしょう。
凛にとっては書籍と同様に、文具を扱っている店内を見てまわる時間は格別です。
特に、文房具の専門店では取り扱っている専門メーカーの品揃えが豊富です。

季節を感じる便箋やカードを見つけたり、新しいデザインののし袋などを見ると、凛は大切な人のことを思います。
デジタル全盛の時代ですが、目的によって工夫されているノートや新しい筆記具を見ると、手書きもいいなと思いますね。
本にかぶせるブックカバーなどを見るとワクワクします。
凛はこのような時間を何よりも愛おしく思います。 (^O^)

さて、今回ご紹介いたします小説は、文房具専門店を訪れるお客様お一人お一人の事情や用途に応じて、専門メーカーの文房具を店主が丁寧に説明しながら紹介してくれるという物語です。
上田健次(うえだ けんじ)氏の長編小説『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)です。
この作品は小学館文庫の書下ろしです。

はじめに、凛がこの本を知ったのは、前回(ココ)ご紹介いたしました岩井圭也(いわい けいや)氏のサイン本を購入した時に、同時に書店で見つけました。
凛が上田健次氏の小説を読むのは初めてです。

広い店内の大型書店には数えきれないほどの書籍が展示されていますが、その中で、今すぐ買って読みたいな~と思う本にどれだけ出合えるかは未知数です。
書店で一冊の本を手に取ることの確率はいかばかりか。
一瞬の邂逅が次の読書につながることも多いですね。

次に、帯や表紙についてです。
凛が購入した文庫本は、2023年5月30日付の第六刷です。
文庫本書下ろしで、初版が前年2022年10月11日ですので、わずか7か月で第六刷になるとは相当人気が高い作品であることがわかりますよね~

気になる帯です。
凛の持っている文庫本の第六刷の帯の表表紙側には、「いつまでも涙がとまらない」と書いてあります。
同じ面には「文房具に秘められた大切な人との思い出に」とも書き添えてあります。

帯の裏表紙側には、「早くも反響の声ぞくぞく!」ということで、三人の読者の方々の声が紹介されています。
長くなりますので、ここでは太字の部分だけご紹介しますね。
「文房具が好きな人にぜひ読んで欲しい」
「文房具ならではの良さ」
「誰かが大切に使うことで、かけがえのない宝物」(以上、同書)

文庫本の表表紙ですが、歴史がありそうな建物に「四宝堂」と書かれた文房具店があり、そのお店の前の道に一人のセーラー服を着た女子学生が立っています。
女子学生の右手にはメモを持っています。
彼女はこれから店内に入ろうとしているように見えます。
歴史がありそうな建物というのは、お店の入り口に四段の階段があり、建物全体にどっしりとした風格がある感じがするからです。

カバーデザインは、寺田鷹樹(てらだ たかき)氏です。
カバーイラストは、KOPAKU(こぱく)氏です。

裏表紙の説明文から、東京の銀座の路地から入ったところに佇んでいる四宝堂(しほうどう)という文房具店は天保五年の創業で、建物の地下には古い活版印刷機もあるという老舗の文房具店であることがわかります。
さぞかし頑固な店主がいるのかと思いきや、さにあらず。
四宝堂の店主は、宝田硯(たからだ けん)という若い青年で、店を一人で切り盛りしていて、少しミステリアスなところがありそうだということです。

「困りごとを抱えた人々の心が、思い出の文房具と店主の言葉でじんわり解きほぐされていく。」
「心あたたまる物語」(以上、同書)
これだけでも十分に期待できそうですね。

それでは、内容に入って、銀座の四宝堂に入店いたしましょう!\(^o^)/
表紙を見ますと、五つのCONTENTSがあります。
「万年筆」
「システム手帳」
「大学ノート」
「絵葉書」
「メモパッド」

これらはほとんどの文房具の専門店で販売していますよね~
それぞれに専門メーカーが何社もあって、拘りのある商品が店内に綺麗に並べられている光景が想像できます。
一番最初の章の「万年筆」を見てみましょう。

大学を卒業して、某企業に4月1日に就職したばかりの青年が新入社員の研修を終えて銀座を歩いています。
彼は一定期間の研修中に、初任給の使い道について、会社の先輩社員から聞いた言葉があります。
「できたら、お世話になった人に何か贈り物をすると、とっても喜んでもらえるよ。私のお勧め」(同書、6頁)と。

そこで彼は、お世話になった女性に贈り物をしようと考えます。
大切な物を添えて。

彼は地方出身で東京のことはあまり知りません。
「やっぱり東京と言えば銀座だろうか。」(同書、7頁)
ネットでいくらでも検索できる時代にありながら、彼は親切に紹介してくれた方からの手書きの地図を見ながら、漸く四宝堂にたどり着きます。

店内に入ると、お香の香りがして、優しく包んでくれるように彼は感じました。
「いらっしゃいませ」という男性の声がしました。
青年は「こんなにも気持ちの良い『いらっしゃいませ』を初めて聞いた。」(同書、9頁)と感心しました。

お客様を迎える時の「いらっしゃいませ」が非常に大切であることが書かれています。
凛も接客業をしている知人から聞いたことがありますが、「いらっしゃいませ」の声掛けは大変に難しいものだそうです。
あまりにも甲高い声は鬱陶しく感じることもありますし、不愛想な声ではもっと嫌な思いをします。
逆に声掛けがないと、このお店に入るんじゃなかったなあ、と思ってしまいます。 (-_-)

店内で四宝堂の宝田店長から便箋と封筒の説明を受けるのですが、ひとつひとつ丁寧に説明をしていただきます。
宝田店長は言葉遣いだけでなく、商品の説明が実に丁寧です。
紙の種類、和洋各種類、罫線、色、縦書き、横書き……。
さすがに専門店で、便箋とお揃いの封筒が二百種類くらいあるとは驚きです!

話はモンブランの万年筆に及びます。
宝田店長による「モンブランのマイスターシュテュック クラシック」「ル・グラン146」(同書、22頁)という商品説明を読んで、凛はネットで検索してみました。
一社の万年筆でも実に多くの商品があるものだなと感心しました。

専用のインクも「ミステリーブラック」「ミッドナイトブルー」「ロイヤルブルー」(同書、25頁)の他にもたくさんあるんですね!
メーカーの歴史から種類、使い方まで実に勉強になりました。

宝田店長が案内する四宝堂の二階の奥には机と椅子があります。
店長は来店した青年にあることを勧めます……。
こんな文房具店があったらいいなあ。\(^o^)/

青年の子供時代から大人になるまでの挿話が綴られており、読者の心に響いてやみません。
心温まる話が実に自然体で描かれています。
文章が全く技巧的ではないのです。
この後はあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。 (^O^)

この後の物語もそれぞれに違った楽しみ方ができます。
銀座の老舗文房具店ではありますが、決して高級品の話題ばかりとは限りません。

例えば、三番目の「大学ノート」の章では、表紙の絵と思われる女子学生が登場します。
彼女は、部活で用いている大学ノートについて悩みを抱えて四宝堂を訪れました。
そして彼女は店内の大学ノートの種類の多さに驚きました。

「コクヨのキャンパスシリーズ」で「B5サイズのB罫はもちろん、罫線だけでもA、B、C、U、ULと五種類もある。その他にも方眼や縦罫、無地、それにドット入りなど。」(同書、158頁)
「こんなに種類があるんだ……」(同書、158頁)
この章の女子学生だけでなく、凛も読後に文房具の専門店に足を運びましたよ~

ところで、四宝堂の店主こと宝田硯の個人的な事柄については、ミステリアスに抑えています。
店長の時は言葉遣いが非常に丁寧で、嫌みも全くありません。

宝田店長と幼馴染の銀座の喫茶店『ほゝづゑ』の良子(りょうこ)さんとは大の仲良しで、ごく一般的な話し方をしています。
読者はこの二人の行方が気になることでしょう。 (^O^)

著者の上田健次氏は、2019年に第1回日本おいしい小説大賞に小説「テッパン」を投稿されています。
「テッパン」は2021年3月に小学館文庫から出版されました。

上田氏は、専業作家ではなく、某大手の衛生用品の会社の執行役員をされています。
現役バリバリのビジネスマンなのです! (^^)v
銀座四宝堂を訪れる登場人物たちの個人的な物語が秀逸なのは、上田氏個人のお人柄とお仕事の影響も大きいのでは、と凛は考えました。

最後に。
東京・銀座の老舗文房具店「四宝堂」を訪れるお客様の人生模様に丁寧に対応する宝田硯店長との触れ合いに心癒される物語です。
文房具に対する愛情が全編にわたって溢れています。
人生の様々な時点における文房具との関わりが如何に大切かが読者にジーンと伝わります。

また、文房具のメーカーについても詳細な情報や背景がよく吟味されています。
このような文房具の専門店があったらいいなあと思いますね~

読後には、文房具と文房具の専門店を愛してやまない方はもちろんのこと、これからご興味を持たれる方が増えること間違いありません!(^O^)

良いお知らせがあります!
何とこの小説の続編が出版されることがわかりました。\(^o^)/
『銀座「四宝堂」文房具店(2)』が小学館文庫から、2023年9月6日に出版予定です。
続編ではどのような文房具が紹介されているのか楽しみです!
そして宝田店長と良子さんとの今後がどうなっていくのかが気になります。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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