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2024年1月29日月曜日

今年こそ読破したい!紫式部の人生と並行して読める帚木ワールドの『源氏物語』 ~帚木蓬生『香子(かおるこ)(一)紫式部物語』(PHP研究所、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらりにようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2024年がスタートして早くも一か月が過ぎようとしています。
今年の日本は元日からショッキングな出来事ばかり起きています。

ああ、今日も一日無事に過ごせました。感謝。
という安堵感で眠りに入れる日常の生活が如何にありがたいことでしょう。
平穏で過ごせる日々が最も幸せなのだと実感させられます。

合わせて、非常時のための危機感と水や食料などの備えが大事だということも再認識しないといけませんね。
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

世の中はAIなどの新しい技術を導入する時代に既に入っています。
コスパ重視の世の中、スピードは年々早くなってきています。
しかしながら、敢えて古来から受け継がれている普遍的な事柄に注目したい、という欲求がわいてくるのは生身の人間だからでしょうか。

今年のNHKの大河ドラマは『光る君へ』ですね。
凛も毎週楽しんで視聴しています。
あなたはご覧になられてますか。

主演の吉高由里子(よしたか ゆりこ)さんが後の紫式部こと「まひろ」を演じておられます。
まひろさんはどのような経緯で『源氏物語』を執筆するようになるのでしょうか。
彼女の背景でうごめく公家政治の権力とは……。
テレビドラマですので、日本史の教科書で学んだ内容とは若干異なる部分もあるでしょう。
ひとつの娯楽作品として楽しみたいですね~ (^-^)

『源氏物語』全五十四帖。
あなたは読まれましたか。
実のところ凛は最後まで読んでおりません……。(^^;
凛はこれまで谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう)訳、瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)訳、林望(はやし のぞむ)訳に挑戦してきましたが、いずれも途中までの断念組です。
これは現代語に訳された先生方の問題では決してありません。
誤解なきよう、あくまで凛個人の問題なのです。

他にも関連の解説書やガイド本など何冊も蔵書として保管しています。
とは名ばかりで、所謂万年積ん読状態ですね……。(^▽^;)

紫式部はどんなことを考えて人生をおくったのでしょうか。
『源氏物語』はどのようにして書かれたのでしょうか。
作中に出てくる和歌の内容をもう少し知りたいですね。

このような素朴な疑問を解決できるという、まるごとひとつにまとめられた小説があります。
紫式部の人生と『源氏物語』と和歌の解説などが同時に読める大変ありがたい作品が昨年末に出版されました。
帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の大長編小説『香子(かおるこ)(一)紫式部物語』(PHP研究所、2023年)です。
書下ろし作品になります。

タイトルに(一)が付いていることからわかるように、この作品は(五)になるまでの五か月の間、毎月連続して出版していくというPHP研究所の一大プロジェクトです。
第一巻は461頁と大変分厚い本ですが、慣れていくうちに気が付けば最後まで一気に読めました。\(^o^)/
漢字にルビがふってありますので読みやすくなっています。

はじめに、凛がこの本を知ったのは某ラジオ番組の本の紹介コーナーを視聴したことによります。
番組に生出演された帚木氏ご本人のお話によりますと、長い間従事されていらした精神科医院のお仕事をご卒業されて、専業の作家になられたとのことでした。

以前にNHKのテレビ番組で帚木氏を拝見した時は落ち着いた話し方の先生といった印象でしたが、ラジオのお声からは非常に明るく快活な方で、この作品への強い情熱が伝わり、新たな帚木ワールドを堪能できるなと思った凛でした。
本は市内の中心街の書店で購入しました。

そもそも「帚木蓬生」というペンネームからもわかることですが、「帚木」は『源氏物語』第二帖の「ははきぎ」、「蓬生」は第十五帖の「よもぎう」から構成されています。
帚木氏『源氏物語』に対する強い意志が伝わりますね!

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯についてです。
凛が持っている本は、2023年12月26日刊行の初版本です。

表表紙側には、「千年読み継がれる物語は、かくして生まれた」と白地に赤い文字で目立つように書いてあります。
表表紙側の左下には、赤い枠に中に白字で「大河ドラマの主人公・紫式部(香子)の生涯×『源氏物語』」と書いてあり、大河ドラマ放映と同時期の刊行ということで、非常に期待感がわきますね~

帯の裏表紙側には、「五ヵ月連続刊行!」の下に、第一巻から第五巻まで簡単な説明文が紹介されています。
第一巻のところをご紹介いたしましょう。
「香子の物語」では、「父とともに越前へ、そして物語を書き始め……」と黒字で書いてあります。
その右の『源氏物語』では、「桐壺~末摘花の帖」(以上、同書)と赤い字で書いてあり、第一巻は六帖まで読めるのだなと識別できるようになっています。


二番目は、表紙についてです。
表表紙は、紫式部の上半身が描かれています。
裏表紙は、文机の前に座っている紫式部が描かれており、『源氏物語の有名な冒頭文「いづれの御時にか、……(中略)すぐれてときめき給ふ有りけり。」という文字が書いてあります。
表表紙、裏表紙とも格調高い仕上がりになっています。

装丁は、芦澤泰偉(あしざわ たいい)氏です。
装画は、大竹彩奈(おおたけ あやな)氏です。

それでは、内容に入ります。
作品の第一巻は、第一章の「香子(かおるこ)から第十五章の「懸想文(けそうぶみ)」までが収録されています。
凛が注目した四点について挙げます。

一点目は、「香子」という名前についてです。
第一章の始まりで、香子は当初は「きょうし」「きょうこ」と呼ばれていたところが、8歳の春に、父君の藤原為時(ふじわらの ためとき)から今後は「かおるこ」と呼ぶと決めたことを告げられました。
亡き実母が命名した「香子」。
これまで改まった席においては「きょうし」で、身内の間では「きょうこ」と呼ばれていました。

香子は、呼び名を替えることになった理由を父君に尋ねます。
父君は、「そなたの資質は、誰が見ても、他より抜きん出ている。」(第一巻初版本、5頁)と言って、香子の素晴らしい資質を認めています。
その上で、「そして誰もが認める、ひとかどの人物になる。その資質が薫(かお)るからだ。ちょうど、今匂ってくる紅梅(こうばい)のようにな」と。(同、5頁)
香子はまだ8歳なので深い意味はわからない様子でしたが、父君から高い資質を認められたことは彼女の生涯の自信につながったと捉えることができます。

二点目は、血縁と文学についてです。
歌人としては、香子の父方の曽祖父である藤原兼輔(ふじわらの かねすけ)がいます。
兼輔は中納言の位に出世し、醍醐(だいご)天皇の後宮に娘の桑子(くわこ)を入内させ、章明(のりあきら)親王をもうけさせます。
その時の歌が『後撰和歌集』に収められているとして、また、桑子の入内の話が『大和物語』に収められており、さらに歌集の『兼輔集』の存在など、香子はこれらを暗唱するなど繰り返し学んできました。

父方の祖父の藤原雅正(ふじわらの まさただ)や伯父の藤原為頼(ふじわらの ためより)も歌人でした。
香子には幼い頃から、伯父の為頼が所蔵する和書だけでなく、父君が収集していた漢籍など、和漢の多くの書物に触れる機会があったことが第一章に記されています。

第一巻の後の章になりますが、香子が『源氏物語』の執筆の際、父君や母君に読ませて感想を述べてもらいます。
両親が彼女の背中を後押ししてくれたことは創作の自信につながったことでしょう。
特に、母親が積極的に感想を述べてくれることが印象深いです。
このように幼い頃から文学を嗜む家庭環境から、香子の執筆に対する意欲が増したことは大きいですね。

また、『蜻蛉日記』との関係があります。
『蜻蛉日記』の作者は、藤原道綱(ふじわらの みちつな)の母です。
第二章「蔵人(くろうど)」では、香子の祖母から『蜻蛉日記』の作者が、香子の実母の父の藤原為信(ふじわらの ためのぶ)の兄である藤原為雅(ふじわらの ためまさ)の正妻の姉にあたる女性であることを再度言われます。
要は遠い親族が女流文学の先駆者で、日記文学の作者であったことは、香子にとって「書くこと」を意識した存在であったであろうと読者に知らしめています。

三点目は、死生観です。
香子は第一巻目から身内の死に遭遇しています。
生母、姉君の朝子(あさこ)、最初の結婚をした平維敏(たいらの ただとし)との死別があります。
自分を守ってくれ、愛してくれた人との別れは辛いものです。

「誠に人の世は、野分(のわけ)や雲、雨と同じで、人の手ではどうにも動かせない。その摂理(せつり)の下(もと)で、翻弄(ほんろう)され続けるのだ。」(同、230頁)
香子はこの世のはかなさ、無常観を体験し、やるせなさを感じたのではないでしょうか。

四点目は、帚木蓬生訳の『源氏物語』についてです。
まずは、素朴な疑問点をあげましょう。

何故に香子は『源氏物語』を執筆することになったのでしょうか。
香子は何の文学作品を手本にしたのでしょうか。
香子の執筆する過程を知りたいですね。

などの疑問点が読者には持つ方も多いかと思います。
これらについては、第十一章の「起筆」前後で読者は捉えていくことでしょう。
あなたが読まれてからのお楽しみに!(^^)/

帚木蓬生氏の訳の特徴として、気づいた点が二つあります。

一つ目は、主語が明確に書かれていることです。
凛は学生時代に『源氏物語』の長い一文の中で「主語を示しなさい」と設問に出てきたことを思い出しますねえ。
『源氏物語』は主語が省略されている文が多いため、主語が明確であると理解が深まりますね。

二つ目は、和歌の説明が本文中に簡潔にされていることです。
例えば、第十二章「雨夜の品定め」には、『源氏物語』第二帖の「帚木の訳が掲載されていますが、光源氏が小君に託した歌

「帚木(ははきぎ)の心を知らでその原の
   道にあやなくまどいぬるかな」(同、293頁)

の後に、あらかじめ歌の意味を現代語で説明した後で、
『古今和歌六帖』の、園原や伏屋(ふせや)に生(お)うる帚木の ありとてゆけどあわぬ君かな、を下敷きにし、」(同、同293頁)
と、女君が返歌するまでの経緯が丁寧に書いてあります。

このように和歌の一首ずつに説明書きが訳の本文中に書いてありますので、本文に解説書が合体したような感覚で読者は自然な形で読み進むことができるのです。
凛は和歌の嗜みがありませんので、これは大いに助かりますね。(^O^)

帚木蓬生氏については、凛のりんりんらいぶらり~で2020年7月14日付「日本の文字の始まりを知る」の項で『日御子(ひみこ)上・下巻』(講談社文庫、2014年)(ココ)に掲載していますので、こちらの項では割愛させていただきます。

最後に。
帚木蓬生氏の作品『香子(一)紫式部物語』は、紫式部の生涯を描いた物語と、『源氏物語』の現代語訳と、和歌の解説が合体した大長編小説を一度に読めるという楽しみ方ができます。
PHP研究所から、2023年12月26日発刊の第一巻から第五巻まで、毎月一巻ずつ発刊されるという一大プロジェクトです。
NHKの大河ドラマ『光る君へ』と並行して読むと、歴史文学としても理解が深まるというものでしょう。

『源氏物語』をまだ読まれていないあなた、どうしようかなと迷っているあなた、凛のように途中までのあなた、是非この機会にお気軽にトライしてみませんか。
会話文など現代の話し方と同じように表現されていますので肩こりしませんよ。

第十三章「越前の春」では、香子の弟の惟通(これみち)の名前の一字違いで、『源氏物語』光源氏の従者を惟光(これみつ)と設定した点について、香子の母君から指摘されたことが書いてあります。
「図星だった。書いていて、咄嗟に浮かんだ名前が惟光だった。」(同、354頁)
そうだったのかあと、あらためて紫式部の家族に対する温かい情愛が伝わってほのぼのとしました。
この後に展開する物語もきっと新しい発見があるだろうな、と期待感でいっぱいになった凛でした。

第二巻の刊行ももうすぐです。
大変楽しみにしています!
今年こそ『源氏物語』を読破します!\(^o^)/

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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PHP研究所-2023/12/13帚木蓬生(著)
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2023年3月29日水曜日

「夢」の旅の始まりは屋根からだった

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

春になりました。日本では桜前線が急上昇中です。
あなたはお花見にお出かけされますか。
陽気な春の暖かさの中、どこかへ旅に出かけて行きたくなられる方も多いのではないでしょうか。\(^o^)/

旅に関するエッセイや小説、或いは壮大な冒険の旅の物語は数多くありますが、凛が今回おススメいたします作品は少々異なります。
恋人ではなく分別ある中高年の男女の大人が、互いの夢の中で自由自在に旅を重ねてゆく物語で、純文学の旅はいかがでしょう。(^o^)
もちろんおどろおどろしい幻想小説とも異なりますので、怖い話が苦手な方も安心して楽しんでいただけますよ。

村田喜代子(むらた きよこ)氏の長編小説『屋根屋』(講談社、2014年、のち中公文庫、2022年)です。

凛からあなたへ二つの質問があります。

一つ目の質問です。
あなたのお住まいは戸建てですか。
建て主の意向によって建物の様相は各々で異なりますよね。
屋根ひとつとっても地域によっての異なりもありますし、その時々の流行であったり、業界の流れという影響もあり、また築年数によっても実に様々です。
最近では屋根にソーラーパネルを付けるなど住宅への話題は尽きません。

凛はマンションの中層階に居住しているためか、住宅の屋根に関しては日頃直接関りがなく暮らしています。
凛の親族宅は築年数の古い戸建てが多く、時折訪ねて行くと、夏は二階がものすごく暑くなったり、冬は一階の床が冷えたりします。
また風雨の音も直に気になりますね。
昨今の新しい戸建ては機能的にできているようなので、そのようなことはないかもしれませんね。(^-^)

二つ目の質問です。
あなたは寝ている時に夢を見ますか。
凛も夢は時々見ますが、起きる時には覚えていないことが多いものです。
たまに見た夢を覚えていても、起きて活動しているうちに忘れてしまうことがほとんどです。
人生を変えるほどの夢のお告げなどは、凛にはこれまでご縁がないですね~ (^-^;

今回の小説は、これら「屋根」と「夢」の二つが重なった物語です。
戸建てに住む専業主婦が屋根の修理を依頼した個人で営んでいる業者との何気ない会話の中から、お互いに見る夢の中で待ち合わせをして共に旅を始める、というお話です。

凛が持っている文庫本は、2022年7月25日発刊の初版本です。
凛は以前から村田喜代子氏の大ファンで、今回は街の中心部の駅ビルにある書店で文庫本を購入しました。

まず、文庫本の帯と表紙からご紹介します。
凛の持っている初版本の帯は赤い地色で、表表紙側には「さあ。飛びますか」と大きな文字で書かれています。
「夢を自在に操る屋根屋の永瀬と『私』は夢の中で落ち合い、共に旅を重ねてゆくが……」(同)
なぬなぬ、これは主婦と屋根の修理業者との恋愛、不倫小説なのか?
とちょっと興味をそそられますが。(*^^*)

帯の裏表紙側には、本文からの抜粋で、「眠るということは水深の深い所へ下りていくことに似ている。」(同)
「奥さんと私と、どっちが先に着くかはわかりまっせんが、向こうの屋根で落ち合いまっしょう。」(同)
「夢のドッキングですたい」(同)と。

カバーの裏表紙の解説文には、雨漏りの修理を依頼された永瀬は妻が亡くなった後、夢日記を付け始めたことが紹介されています。
主婦である「私」は永瀬と夢の中で旅を始め、「現実とのあわいの」(同)中の「場所なき場所」(同)で二人の時間を深めていくことになってゆきます。

カバーの表表紙は、大変格調高い絵で、日本画のようです。
二人の人間が一羽の鳥になって飛んでいる姿のように見えます。
それもそのはず、カバー画が江戸末期の狩野一信(かのう かずのぶ)の「五百羅漢図」で、六道・天(部分)、増上寺蔵であると紹介されています。
ひゃあ、お宝のような表紙ですね!\(^o^)/
カバーデザインは、毛利一枝(もうり かずえ)氏です。

カバーの裏表紙には、黒い鳥の羽が1本描かれています。
何やら意味深ですね……。
読後にはその意味がわかる仕掛けになっています。
是非、あなたが読まれてからのお楽しみに。(^-^)

解説は、芥川賞作家の池澤夏樹(いけざわ なつき)氏です。
文学界の重鎮の解説もなるほどと納得できます!(^_^)v

次に、内容に入ります。
専業主婦の「私」は、築18年になる木造二階建の住宅の雨漏りの修理を専門業者「永瀬工務店」に依頼しました。
業者は数あれど、隣町に住んでいる兄の紹介なので「私」や家族には安心感があったのも当然といえます。
「永瀬屋根屋」(文庫版初版、10頁他)は、50代半ばの大柄で、実直そうな職人さんです。

「私」はご主人と長男の三人家族で戸建てに住んでいます。
ご主人は仕事で大変忙しく、ゴルフが好きな会社員で不在がち、身長が180cmに成長した長男は塾通いで部活や勉学の日々を送っています。

家事に勤しんでいる専業主婦にとって、ダイニングキッチンは日常の居場所。
突然雨が降ったので、食卓テーブルで職人さんの休憩にお茶を提供するのはよくある光景でしょう。
「私」は永瀬から専門家としての屋根の話題を提供されます。

さらに、永瀬が妻を亡くして10年経つこと、彼が心に不安を抱えたことや、独立した過去の話などを「私」は彼から聞きます。
これまでの専業主婦として生きてきた日常に対して、静寂だった池の中にピシッと小さな石ころが投げ入れられたような、ほんの少しの変化が生じたことに「私」はまだ気づいていません。
しかし、まだここまでは常識の範囲であると凛は思います。

ところが、ここからが村田氏の物語の世界へと読者を誘ってくれるのです!
永瀬は治療の一環として、医者から「夢日記」を勧められ、毎日付けていることを「私」に話し始めます。
「夢日記?」(同、29頁)と「私」が尋ねます。
「どんなことを書くんですか」(同、30頁)
永瀬の提供する話題に「私」の興味は尽きません。

「屋根の上で彼は人形(ひとがた)の影絵になって動いている。」(同、35頁)
屋根の上で働いている永瀬の姿を表していますが、この一文が物語全体を象徴するのだな、と凛は捉えました。

「私」はフランスの町の屋根に上がっていた夢を見ました。
それには「私」が心にひっかかる何かがあったのかもしれません。
そのことを「私」は永瀬に話します。
永瀬は一気に話さず、徐々に「私」が気になるように夢の旅へと誘ってゆきます……。

いよいよ屋根の修理が終わり、支払いをしますが、その時に「私」と永瀬は夢の話を続けます。
二人には名残惜しさがあったのか、夢についての話題は現実味を帯びてきます。

これは決して「同床異夢」の元の意味ではありません。
永瀬と「私」が夢を見る状態は、互いに別々の住居で眠り、夢の向こうで落ち合って共に旅をしましょう、ということなのです。

「私」と永瀬の夢の話はどんどん飛躍していきます。
日本国内の歴史的建造物の屋根の話からフランスの大聖堂まで。
屋根にまつわる話題だけでなく、とんでもない方向へ進んでゆきますが……。

村田氏の力量は素晴らしいの一言です!(^o^)
物語の面白さを読者に直球で投げてくれます。

「私」とは誰なのか。
永瀬はどうなるのか。
二人には友情が芽生えたのか、若しくは大人の恋愛の対象として意識しているのか。
謎の部分もしっかり残してあるので、読後の余韻もあります。

さらに、屋根や建造物に関する蘊蓄的な要素も網羅されていますので、老若男女どなたにも楽しめる物語です。
文庫本の本文の後に、参考資料と村田氏のメッセージが掲載されています。
そこからは、村田氏のこの作品に対する真摯さが出ていることが大変よく伝わります。

作者の村田喜代子氏は、1977年、小説「水中の声」で第7回九州芸術祭文学賞最優秀作を受賞☆彡、本格的に執筆活動に入られました。

1987年、小説「鍋の中」で第97回芥川賞を受賞☆彡☆彡されました。
この作品は、1991年に黒澤明監督、リチャード・ギア主演『八月の狂詩曲』として映画化されています。

「水中の声」と「鍋の中」は、1987年に出版された『鍋の中』(文藝春秋、1987年、のち文春文庫、1990年)に収録されています。

その後のご活躍は大変素晴らしく、女流文学賞、紫式部賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞、泉鏡花文学賞他多数の受賞歴をお持ちです。☆彡☆彡☆彡
また、2007年に紫綬褒章、そして2016年には旭日章綬章を受けていらっしゃます。☆彡☆彡☆彡

最後に。
主婦の「私」と自宅の屋根の修理を担った「永瀬屋根屋」(同)との互いの夢の中で国内外を自在に旅をしていく物語です。
二人が飛び立った空間から自在に俯瞰して見るのは、屋根だけでなく、建造物の構造にも及びます。
「私」と永瀬にあるものは大人としての友情なのでしょうか。
または、そこから二人の愛情が芽生えていくのでしょうか。
二人が同時に見る「夢」はどんどん膨らみ、進んでゆきますが……。

そもそも時間と空間が自由自在に繰り広げられる「夢」とは一体何なのでしょうか。
「夢」をずっと見続けることはできないからこそ楽しくもあり、また儚いものです。
もしかしたら、物語全体が「夢」なのかもしれません。
原点に回帰する瞬間、「夢」の余韻をあなたはどのように受けとめるでしょう。

凛は村田喜代子氏の放つ文学世界に酔いしれました。
あなたもお休み前のひととき、村田氏の「夢」の物語を堪能しませんか。(^-^)

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2021年7月27日火曜日

ドローンと名探偵が大活躍します ~早坂 吝『ドローン探偵と世界の終わりの館』(文藝春秋、2017年、のち文春文庫、2020年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

東京2020オリンピック競技大会が始まりましたね。
7月23日夜の開会式では1800機以上ものドローンが夜空を舞い、大変話題になりましたね~
あなたはその場面をTVなどでご覧になられましたか。
ドローンたちはキラキラと輝いていてとても綺麗でした!\(^o^)/

凛はちょうどドローンが活躍するミステリー小説を読み終えたばかりでしたので、これは奇遇だなととても驚きました。(^o^)
早速その小説をご紹介いたしましょう。

今回の本は、早坂 吝(はやさか やぶさか)氏のミステリー小説『ドローン探偵と世界の終わりの館』(文藝春秋、2017年、のち文春文庫、2020年)です。
大学の探検部の部員たちが訪れた廃墟で、迷宮ともいえる中で起こる殺人事件に、探偵がドローンを駆使して犯人に挑むミステリー小説です。

まずは、本の入手についてです。
凛が持っている本は、2020年7月10日付の文庫版の初版です。
この文庫本は、ちょうど一年前の夏、いつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで見つけて購入しました。
書店で手にして「ドローンと探偵」、ミステリー小説は数あれど、最新の技術のドローンを用いた小説を凛はこれまで読んだことがなかったので珍しいなと思ったものです。

この文庫本も出番を待っている本たちの仲間でした。
一年待たせてしまいました。
でも、まだ早いほうで、何年も待ち続けている本たちがいっぱいです……。(^-^;

次に、本の装丁です。
文庫本の表紙に描かれているアイドルっぽい若い男性の横顔がとってもキュートです。
主人公の飛鷹六騎(ひだか ろっき)でしょう。
彼を空から見守っているように見えるドローンがいます。

イラストは、焦茶(こげちゃ)氏です。
昨年、25歳の若さで亡くなられています。
デザインは、山本翠(やまもと みどり)氏です。

凛が持っている文庫本初版では、帯の表表紙側に「ドローン×名探偵」と書かれています。

同じく文庫本の帯の裏表紙側には著者の早坂 吝氏の読者へのメッセージが書かれています。
「今回諸君らに取り組んでいただくのは、そのトリックが何かを当てるということである。」(帯の裏表紙側)
その文章の次の行に、「騙されたくなければ、あなたも飛ぶしかない。」と。(同上)
早坂氏からの挑戦的な言葉に、それならば、飛んでやろうじゃありませんか!と思った凛でした。(^o^)

それでは内容に入ります。
文庫本の目次より、本作品は第5章で構成されていることがわかります。

目次の次の頁には、「ヴァルハラ周辺図」(文庫版4~5頁)が掲載されています。
2頁の見開きにわたる図には、事件の舞台である廃墟の館の内部と周辺が表されています。

次の頁では、「主な登場人物」(同6頁)が紹介されています。
東京都立北神(ほくしん)大学の探検部員として7名。
最初に紹介されている主人公のドローン探偵こと飛鷹六騎のところに《黒羽(くろばね)を継ぐ者》(同6頁)と書いてあります。
彼は北神大学の学生ではありませんが、迷宮の館を探検する探検部の一員として仲間になります。

他の部員が六名紹介されていますが、どの部員も名前に凝っています。
例えば、兵務足彦(へいむ たるひこ)は、二年生で副部長、ヴァルハラの館がある三豆ヶ村(みずがむら)の出身です。

部員の他には、三名の男性の名前が出ています。
この人たちも名前と職業が少々凝っていますよ。
御出院(おでいん)氏はヴァルハラを建てた資産家で、残りの二人は内閣官房長官と俳優です。

本編に入っていきなり、著者の早坂氏から「読者への挑戦状」が文庫版2頁にわたり掲載されています。
まずドローンの説明がなされ、次に読者に対するトリックの挑戦について、二つの理由を書いてあります。
先に紹介しました帯の部分でもわかりますように、この挑戦状には作者の編み出したトリックに対する自信がとても強く込められているというのが凛の印象ですね。

第一章から読み進むにつれて、だんだんと主人公の飛鷹六機の生い立ちと、ドローン探偵と呼ばれるようになったのかがわかってきます。
彼は「黒羽」を継ぐことをとても意識しています。
それから、テレビに出るほどの有名人になっていることも。

小説では、ドローンと人間は会話ができるんですって!
「Hel(ヘル)」(同20頁他)と名付けられた「彼女」はとても六騎のことを思ってくれる心優しいドローンさんです。
他にも2機のドローンたちが登場します。

部員の国府玲亜(こくふ れいあ)は、二年生です。
彼女の父親が政府の内閣官房長官であるため、お嬢様として他の部員たちから一目置かれています。
彼女は「ノブレス・オブリージュ」(同26頁他)というフランス語を用いて、富裕層としての責務ということで、他の部員よりも多くの支出をしますが、主人公の六騎を除いた部員一人一人に彼女に対する複雑な思いがあります。

物語は「北欧神話」がキーワードになって進行します。
三豆ヶ村にある高台の明日ヶ台(あすがだい)に資産家の御出院氏が、やがて来る「最終戦争(ラグナロク)」(同47頁)に備えて「核シェルター(ギムレー)付きの洋館(ヴァルハラ)」(同48頁)を建てます。

探検部員たちはその館を探検することになります。
彼らが訪れると、いきなり天候も荒れてきました。
もう館の外には出られません。
いかにもミステリー小説らしい怪しい設定ができました。
これからは読者が作者からの挑戦に向かっていかなければなりません。

探検部の部員たちが、一人殺され、また次に殺され……。
一体何人が殺されていくのでしょうか……。
犯人は誰?
犯人は何のために殺人を犯すのでしょう?

部員の一人一人に動機がありそう……。
他にも館に誰かが隠れていそう……。
もちろん六騎とドローンは大活躍します。

怖いけれど、先に読み進みたいのは読者の心理ですね~
ミステリー小説ですから、詳しくはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^_-)-☆

ところで帯や本編の最初に書かれている作者からのトリックに対する挑戦の言葉を思い出してみましょう。
作者はあらゆるところに伏線をはっています。
それを見つけることができるでしょうか。
読者は自ら物語の主人公になった感覚で作者に挑みましょう。

うーん、凛は予想したトリックは見事にはずしてしまいました……。(T_T)
ええーーーっ、そうだったのぉーーー?? (◎_◎;)

最近は映像化できそうな文学作品が多いですよね。
しかし、この小説はトリックを考えると、果たして映像化できるか、どうか……。
映像化はかなり難しいのでは。
つまり、唯一小説だけで楽しめるミステリーであると凛は考えました。
おっと、いけない、いけない、これ、大きなヒントに繋がってしまいそう……。(-_-;)

文庫本の解説は、文芸評論家の細谷正充(ほそや まさみつ)氏です。

作者の早坂 吝氏は、2014年、ミステリー小説『○○○○○○○○殺人事件』(講談社ノベルス、2014年、のち講談社文庫、2017年)で第50回メフィスト賞を受賞☆彡されてデビューされました。
同作で、2015年版「ミステリが読みたい!」新人賞を受賞☆彡されています。
ノベルス版と文庫版では殺人事件の数が異なっているとか。
他にも本格ミステリーなど多くの作品を発表されています。

最後に、まとめです。
冒頭の作者からの読者への挑戦状には天晴れです!(^○^)
探検場所の設定や、荒天、北欧神話との絡みも含み、登場人物の誰もが怪しく、読者を大いに惑わせてくれます。
最新技術を用いたドローンを駆使して殺人事件に挑む主人公飛鷹六騎の生き様と、ドローンとの友情ともいえる交流がとても和やかで新鮮でした。

トリックは作者にしてやられましたが、頁を戻してはられた伏線を辿ると、なるほど~と思える箇所がいくつもありました。
自由な発想ができることが求められますね。
凛はあっという間の読書時間で、退屈することなく楽しめましたよ~
あなたも早坂 吝氏からの挑戦状に挑んでみられてはいかがでしょう。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(文春文庫)文庫-2020/7/8早坂吝(著)
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2021年2月11日木曜日

クローゼットの中は夢がいっぱい ~千早 茜『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本のお話でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはファッションに興味がありますか。
お洋服がお好きですか。
あなたのクローゼットにはどのようなお洋服が出番を待っているでしょうか。

2月でまだまだ寒い季節ですが、ファッションの業界では早くも春物が出回っています。
冬物のセールは既に最終処分で、かなり大幅な値引きしているお店が多いので、ラッキー!とお買い得品に出合う方もいらっしゃることでしょう。
ショー・ウィンドウのマネキンが纏っている明るいパステルカラーの春服を見ると、心も軽やかになれそうな気がしてきますから、実に不思議ですよね~

凛はコロナの自粛のため、出かけることが急激に減りましたので、普段着で過ごすことが増えました。
ご近所にお買い物に行くのに、冬のコートの下はリラックスできる服のままで外出しています。
外出先でコートを脱ぐこともなく帰宅しますので、他人にはコートの中まではわからないだろうと思ってしまいます。(^-^;

このようにあまりにもだらり~んと過ごしていると、心身までビシッと引き締まることがないようにも思えてきます。
やはりファッションは気合でしょうか。
頭から足下まできちんと感があると、背筋がまっすぐに上に伸びて気持ちがシャキッとします。(^^)v
意識して適度に身体に緊張感を与えていかないといけないですね。

さて、凛が今夜ご紹介いたします本は、千早 茜(ちはや あかね)氏の小説『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)です。
小説の内容は、タイトルどおりお洋服にまつわる物語です。

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで、この文庫本を購入しました。
表紙は、石井理恵氏の装画で、全体が淡い水色を基調に、高貴な女性が纏ったドレスの下に付けるコルセットが真ん中に描かれています。
昔のお姫様や高貴な女性たちは、美しくふわりと裾が大きく広がったドレスの中に、このようなコルセットを付けていたのでしょう。

初版の文庫本の帯が紺色で、水色と紺色の青系の濃淡がすっきりとしています。
帯の表表紙側には、「消せない心の傷みに寄り添う、」の次に大きな文字で「再生の物語。」と描かれています。

裏表紙の説明文からは、十八世紀を中心にした約一万点を超える洋服類が収蔵されている服飾美術館で洋服補修士として働いている纏子(まきこ)と、デパートで働いている男性店員の芳(かおる)を中心とした話であることがわかります。
二人には子供の頃にそれぞれに傷ついた過去をもっていて、互いに何やら遠い記憶の中にあった過去が浮彫となります。
洋服を共通のテーマにした心温まるお話、という読後の期待感をもたらせてくれます。

物語は、母親の洋服がたくさん収納されているクローゼットの中が夢ふくらむとっておきの場所であった女の子の話から始まります。
本編からは芳と纏子の話が交互に描かれています。
各章で、芳の話はハンガーの絵から、纏子の話は人台(じんだい)の絵から始まります。
人台とは、洋服を縫製するときや販売するときに用いる人体の模型のことです。

芳は、子供の頃からデパートの婦人服売り場を母親に連れられて歩くのが好きな男の子でした。
彼は煌びやかなデパート、そして、女の子が身に纏う美しいドレスに興味を抱いていました。
実際に女の子のドレスを着て外に出たため、それがいじめられた原因となって、傷ついた過去をもっています。
今ではすっかり高身長でイケメンの青年に成長していますが、デパートのカフェの勤務でイマイチ満たされないものを感じながら働いていました。

纏子は、歴史のある夥しい洋服たちを後世に残すため、補修をする仕事に従事しています。
よく絵画や映画、舞台などで目にしたことがある方が多いかと思いますが、華やかな社交界で、男女問わず貴族たちの美への追求を最大限に活かした洋服たち。
様々な時代を反映させてきた洋服たちを、次の世代まで残すために、粛々と服と向き合って補修を続けている日々を送っています。

二人は芳の勤務先のデパートの展示会の準備で出会います。
芳は纏子が勤めている「青柳服飾美術館」(文庫版58頁)でバイトをすることになります。

服飾美術館では、様々な人たちが働いており、また古き時代のドレスたち、現代のデザイナーズブランドの服たちが彼を迎えます。
そして、彼はこれまで知らなかった服飾文化の歴史や決まりごとなどに触れることになります。
それは洋服だけでなく、靴や小物にも及びます。

「あら、昔の男性のレースって豪華だったのかあ」
「へえ、靴って昔は左右の概念がなかったんだね」
などと驚くことがたくさんあります。(^o^)

アパレル関係に従事する方々(デザイン、製糸、生地製造、縫製、流通、倉庫、販売など)や、服飾の歴史などを学んでいらっしゃる学生さん方にもおすすめしたい本です。
服飾に関するお仕事小説として学べる点が多いと思いますよ~

さて、纏子と芳の二人の再生とはどうなるでしょう。
それはあなたの読後のお楽しみとして残しておきますね。

文庫本の巻末には、文庫化記念として、作者の千早 茜氏と、公益法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のキュレーターの筒井直子氏との対談が掲載されています。
千早氏による財団での綿密な取材がこの小説の起爆となったことがわかります。
筒井氏の説明がとても丁寧で、小説の全容が理解できます。

小説を先に読まれてもよろしいですし、小説よりも先にこちらの財団のHPを見られると、小説のイメージづくりがよりわかりやすくなるかもしれません。
あなたのお好きな順番でどうぞ。

公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のHPはこちらです。

文庫版の解説は、作家の谷崎由依(たにざき ゆい)氏です。
洋服の歴史を知ることは、フランス革命など世界史と密接に関係していることが非常によくわかります。

谷崎由依氏は、2007年、小説「舞い落ちる村」で、第104回文學界新人賞受賞☆彡されています。
この作品は、小説「冬待ち」を併録して、2009年に『舞い落ちる村』として文藝春秋から刊行されています。
また、2019年、短編集『鏡のなかのアジア』(集英社、2018年)で、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されています。

作者の千早 茜氏は、幼少期をアフリカのザンビアで過ごされています。
2008年、『魚神(いおがみ)』(「魚」改題、集英社、2009年、のち集英社文庫、2012年)で、第21回小説すばる新人賞を受賞☆彡し、作家デビューされました。
翌2009年、同作で第20回泉鏡花文学賞を受賞☆彡されています。

2013年、連作短編集『あとかた』(新潮社、2013年、のち新潮文庫、2016年)で、第20回島清恋愛文学賞受賞☆彡されました。
また、同作品は第150回直木三十五賞の候補となっています。

さらに、2014年には、小説『男ともだち』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回直木三十五賞の候補となり、同年に、第1回新井賞を受賞☆彡されています。
また、翌年の2015年に、同作で第36回吉川英治文学新人賞の候補にもなっています。
他、多くの作品を世に出されています。

よそゆきの一張羅、とっておきのドレスを纏って心ときめきたい!\(^o^)/
洋服は着る人の心を映すものです。
綺麗に見せてくれるものです。

あなたのクローゼットのお洋服たちもあなたを美しく見せてくれるでしょう。
インスタ映えしたら、すぐにおさらば!という方もいらっしゃるのかな。

凛は、普段のカジュアルな服もよいけれど、時には素敵なドレスでお洒落をしてみたくなりました。
しかし、繊細なドレスは丁寧に扱っていきたいものです。
その前に、凛はクローゼットの中身をもう少し整理しなくては……

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/11/30千早茜(著)
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2020年7月14日火曜日

日本の文字の始まりを知る

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
とご一緒にどうぞおくつろぎくださいませ~(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

世界中で新型コロナウィルスの影響が続いています。
日本国内では、豪雨で被害に遭われた方もいらっしゃいます。
あなたの生活には変化が生じていらっしゃいませんか。
くれぐれもお身体の管理にはご留意くださいますように。

自粛は解除になりましたが、雨のため、おうちで過ごすことが増えた方も多いのではないでしょうか。
退屈などと感じるのはいかがなものでしょう。
自分と向き合える時間にいたしましょう。

あなたにも、凛にも、与えられた時間は同じ一日24時間。
凛はこれまでと変わらず本とふれあう時間を大切にしています。
本から多くの事柄を学び、考え、そして、時空の旅を楽しんでいます。(^o^)

凛は、どうしたら不安を払拭して、未来に立ち向かう勇気が得られるかを考えてみました。
古代の日本の人たちはどうやって困難を乗り越えてきたのでしょうか。
そこで、日本の文字の始まりについて学び直して、原点に還ってみようと思いました。

何が原点であるかは、個々人の考え方や価値感が違うので、異なると思います。
あなたにとっての原点とは何でしょう。

さて、今回は古代の文学について、お勉強をいたしましょう。
え?寝る前に?と思われているあなた、ご心配要りませんよ。
お休み前のおくつろぎのひとときですので、さらりといきますね。

凛の机の棚にデーンと並べている蔵書から『改訂増補 最新国語便覧』(浜島書店、2009年改定版発行、2017年印刷・発行)を開いてみました。
オールカラーで、大人になっても「学んでいるぞ!」という気持ちになれます。(^^)v

この本の「上代の文学」の項、70頁~71頁には、「口承文学の発生」「文化の伝来」「記載文学」の三つの項目が掲載されています。
「上代」というのは、大和政権が成立する以前の多くの小国が分立した頃から、桓武天皇の平安京遷都(794年)までの時代をいいます。
では、簡単におさらいをいたしましょう。

まず、70頁には、「口承文学の発生」が掲載されています。
古代人にとって、自然の神さまたちと密接なため神事が発達したことから、文学の発生になる基盤が始まったとされています。
言霊信仰から、呪詞(じゅし)が生まれました。
まだ文字がない時代でしたから、歌謡だけでなく、人々の口から語り継がれていった神話や説話が生まれました。
これらは口承文学といわれます。

次に、「文化の伝来」(70頁~71頁)にいきましょう。
遣隋使と遣唐使の派遣によって、大陸からの文化の影響を受けて、飛鳥文化・白鳳文化・天平文化などが栄えました。
6世紀半ばごろに、大陸から仏教が伝来したと推定されています。

この項で凛が注目したのが、5世紀頃に、大陸から漢字と漢籍が伝来していたと推定されていることです。
外国語であったものを、漢字の音に日本語の意味をあてはめて訓とし、工夫されました。
漢字の音から「万葉仮名」や「宣命(せんみょう)書き」などが発明されたということです。

なんとすばらしい発明でしょう!\(^o^)/
これらの先人たちによる努力がなければ、あなたも凛も日本語で書かれた本を読むことができないのです。

最後に、「記載文学」(71頁)の項に入ります。
日本に文字ができたことにより、口から伝わる口承文学から、記載文学へと時代が推移します。
8世紀初頭、『古事記』『日本書紀』『風土記』などの優れた文学が生まれました。
751年に編まれた『懐風藻』は、現存する最古の漢詩集です。

そして、令和になり、今の時代を生きる私たちに、その存在をあらためて国民に知らしめた『万葉集』は、760年前後に成立されたとされる、現存する日本で最古の和歌集です。

以上、まとめますと、「上代の文学」は、「まことの文学」と呼ばれて、素朴な古代人の姿が表われていることが特徴とされています。(71頁参照)

ここで、凛のおさらいは終わりますよ~
凛にお付き合いくださり、ありがとうございました。
お疲れさまでした。
「上代の文学」にご興味を抱かれたあなたは、専門書でさらに詳しく学んでくださいね。(^-^)

まだ凛のブログは終わりませんよ~
ここで閉じないでくださいね。(^o^)

さて、大陸から漢字や漢籍が伝来して日本の文字文化が生まれたといわれていますが、それは、凛が上記でごく数行にしかまとめていない「上代の文学」の中のほんのわずかな部分でしかありません。
このごくわずかな文字数の中に、人々の壮大な歴史ロマンがあるのです。
今夜は、日本の文字の伝来・伝承という黎明期において、一族九代に渡って通訳として大活躍した物語をご紹介いたしましょう。

箒木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の長篇小説『日御子(ひみこ、上・下巻)』(講談社文庫、2014年)です。
2012年、講談社より単行本として刊行されています。

この作品の中心となる<あずみ>の一族は、中国と日本とを結ぶ使譯(しえき)という通訳を務める役目を代々受け継いでいきます。
言葉を媒介にして、大陸との外交を担っている<あずみ>一族には、代々伝わる四つの教えがありました。

凛が持っている文庫本初版の上巻の帯には、その四つの教えが紹介されています。
「人を裏切らない。─」
「人を恨まず、戦いを挑まない。─」
「良い習慣は才能を超える。─」
「骨休めは仕事と仕事の転換にある。─」

文庫本の上巻を開くと、まず「2~3世紀頃 倭国想像図」(4頁)が掲載されています。
那国、伊都国、弥摩大国、求奈国、壱岐国など、現在の北部九州の福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県であることがわかるようになっています。
箒木蓬生氏は福岡県のご出身で、畿内説などの邪馬台国における様々な論争には触れずに、九州を舞台にした歴史ロマンの物語として描いていらっしゃいます。

この小説は三部構成となっています。
文庫本上巻の第一部は、「朝貢」で、<あずみ>一族の針が、祖父の灰から漢への使者となった体験談を告げられた話から始まります。
文庫本下巻からの第二部は、「日の御子」として弥摩大国の日御子女王に仕える炎女が中心となり、女王の不思議な力に魅せられます。
同巻第三部の「魏使」では、銘が、265年に建国された晋への使者となって大陸へ向かいます。
以上、三部の構成によって、灰、圧、針、江女、朱、炎女、在、銘、治の九代にいたる<あずみ>一族の200年に及ぶ壮大な歴史物語が展開されます。

第一部の祖父の灰が孫の針に語る体験談は、これから始まる歴史のうねりが予感されます。
何よりも那国の使者・灰が謁見した漢の光武帝に授かった「漢委奴国王印」である金印が出てくるところから、歴史上に物語るミステリー・ロマンとしてどんどん上書きされていき、読者の想像力が大いにかきたてられます。
<あずみ>一族は、先進国の漢から鉄や馬車や紙などの技術と文化を日本に伝えようと大変な努力をします。
<あずみ>の先祖が書き残した竹簡の文字から記録という概念がどれだけ貴重であるかを読み取れます。

凛は、針が大陸に渡っていく様子から、周辺国の海路と陸路が充実していたことに感動しました。
また、四つの教えを信念として子孫に伝えていく姿に、一族代々の誇りをもっていることに感銘しました。
それから、生口(せいこう)と呼ばれた人たちの存在にも驚きをもちました。
日常的に日本語の文字の読み書きをしている凛は、この作品のおかげで古代を生きた人たちの誇りを受け継ぎ、感謝して、原点に還った思いをいたしました。

精神科医で作家の箒木蓬生氏のこの作品は2012年、『週刊朝日』歴史・時代小説ベスト10の第2位☆彡になり、また、2013年、第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞☆彡を受賞しています。

帚木蓬生氏は、開業医を続けながら、多くの作品をご執筆されていらっしゃいます。
小説『三たびの海峡』(新潮社、1992年、のち新潮文庫、1995年)で、1993年、第14回吉川栄治文学新人賞を受賞☆彡され、小説『閉鎖病棟』(新潮社、1994年、のち新潮文庫、1997年)では、1995年、第8回山本周五郎賞を受賞☆彡の他、書ききれないほどたくさんの受賞歴があります。
ここにあげた二作品は映画化されて、ご存じの方も多いでしょう。

近年では、小説『守教(上・下)』(新潮社、2017年、のち新潮文庫、2020年)で、2018年、第52回吉川栄治文学賞受賞☆彡、第24回中山義秀文学賞受賞☆彡をされています。

帚木蓬生氏からの贈り物、古代歴史ロマンをあなたもご堪能されてはいかがでしょう。
読後には、言葉の大切さを知り、爽快な気分になれましょう。
凛は、読書を楽しめていることにあらためて感謝の念をもつことができました。

そして、困難に打ち勝つ勇気をもって明日へ臨んでいきましょう。\(^o^)/
それでは、あなたもよい夢をごらんになられて下さいね。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
今夜も凛からあなたにおすすめの作品でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2014/11/14帚木蓬生(著)

(日本語)文庫-2014/11./14帚木蓬生(著)
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