2023年2月28日火曜日

やはりお金のことは気になりますよねえ ~原田ひ香『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早いもので2023年も6分の1を過ごしました。
まだまだ寒さがありますが、街では春色のふんわりやさしい色合いのお洋服がディスプレイされています。

日本の春は、卒業・入学・入社・転勤など異動が多い季節です。
別れと出会いを体験することで、あなたを強くさせてくれるかもしれませんね。
これから新しい世界があなたを待っていま~す!\(^o^)/

などと期待感のある中、一方では、確定申告や医療費還付申告など税務署に関わる現実の世界があります。
今年から「インボイス制度」の導入により、事業者の方々には新たな知識と対応が必要となります。
コロナ融資の返済で厳しい環境に置かれ、対策を考えていらっしゃる方々も多いのではないかとお察しいたします。

また、昨年からあらゆる商品の物価の値上げが実施されています。
凛もスーパーにお買い物に行く度に、あれあれ?前回と価格が違うような気がするけど底値はいくらだったかなあ、と商品棚に付いているプライスカードを前にして考えることが増えました。(-_-;)
さらに、電気代やガス代などインフラ関係の値上げにより、生活者として圧迫を受けていらっしゃる方も多い昨今です。

スーパーやコンビニではセルフレジ設置のお店も日に日に増えてきています。
支払方法も現金払いだけではなく、クレジットカード払い、「~PAY」などスマホを用いた電子決済、交通系ICカード払いなどなど、実に様々な支払いのアイテムが増えてきました。

凛はお店で支払う時、お財布から直接現金を出すことが減ってきています。
キャッシュレスの時代が当たり前になってきていることの証でしょうか。
凛は金色の貯金箱を持っていますが、最近は小銭を入れる時に鳴るチャリ~ン♪という音を聞くことが減りましたねえ……。(^-^;
それは実に心地よい音なのですが……。

あなたは日頃お金とどのように向き合っていらっしゃいますか。

今回は、ずばり!お金の使い方をテーマにした小説をご紹介いたします。
原田ひ香(はらだ ひか)氏の連作長編小説『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)です。

この小説の文庫本は、街のあらゆる書店の店頭に並べられていることが多く、大ベストセラーとなっています。
小説を読みながら節約できる、とネットでも話題になっているようです。

凛は大ベストセラーの本は話題になっている時は読まずにいて、後になり少し落ち着いてから読むタイプです。
理由は、流行している時のキラキラしたフィルターを外して、本当に多くの読者に読まれる価値のある本なのかを見定めたいからです。
ですから、この本が書店で平積みされている光景を横目にして、いつも後になってから読もう、と思っておりました。

ところがある日、タイトルが気になって、やはり読んでみようかな、と街の書店で文庫本を購入しました。
読みだしたら頁をめくる手が早くなり、あっという間に読了しました。

凛が持っている文庫本は、2023年1月25日付の第22刷発行です。
文庫本の初版が2021年8月25日ですので、うひゃあ、やはりすごく売れているのがわかりますよね~ (*'▽')

まず、文庫本の帯と表紙からご紹介いたします。
凛の文庫本の第22刷では、縦に幅広い帯で、表表紙側には、「2022年 年間ベストセラー第1位 80万部突破!」と大きく目立つように紹介されています。
民放の東海テレビ・フジテレビ系列の全国ネットでドラマ化されており、主演の葵 わかな(あおい わかな)さんの写真が掲載されています。

帯の裏表紙側には、こちらも大ベストセラー作家の垣谷美雨(かきや みう)氏が「絶賛!」とお言葉を寄せていらっしゃるではありませんか。
「知識が深まり絶対『元』もとれちゃう『節約』家族小説!」と帯の表現にひかれたのか、日頃からお金のことで気になっている凛を呼び寄せたのでした。

表紙には、千円札風の三枚のお札に絵が描かれています。
一番上は、夫婦と女の子が公園で笑顔でいる姿、真ん中には、女性が自宅らしき部屋でティータイムをしている姿が描かれています。
一番下は、キッチンにエプロン姿の女性が二人立ち、高齢者の女性が一人椅子に座っており、テーブルに並べられたたくさんのお料理を前にして三人で楽しく会話をしている様子が描かれています。
このような優しいタッチの絵が描かれた千円札ですと、お財布の中がほっこりしそうな感じがしますね~

カバーイラストは、ながしま ひろみ氏です。
カバーデザインは、田中 久子(たなか ひさこ)氏です。

裏表紙の説明文では、就職して一人暮らしをしている妹の美帆(みほ)の貯金が30万円、結婚している姉・真帆(まほ)の貯金額が600万円、母の智子(ともこ)の貯金が100万円弱、祖母の琴子(ことこ)の貯金は1千万円と具体的に数字で示されており、御厨(みくりや)家の女性陣がどのように今後の人生を歩んでいくのかということが紹介されています。

「お金を貯めて、どう使うのか?」(文庫本、22刷)
この小説はお金に関する指南書なのでしょうか。
なるほど、「読みたい!」と読者の興味をひきますよね。(^○^)
第3話は、「目指せ!貯金一千万!」
第4話は、「費用対効果」
第5話は、「熟年離婚の経済学」
第6話は、「節約家の人々」(以上、同書、3頁) 
目次からも大変興味がそそられますよね。

解説は、作家の垣谷 美雨氏です。
「『他人(ひと)は他人、自分は自分』と、あなたは心の底から割り切れていますか?」(同書、339頁)というタイトルの解説です。
垣谷氏は帯にも登場されていらっしゃいますが、この解説は是非ともおすすめします!(^^)v
垣谷氏の創作に関わる意見も納得のいく文章で描かれていますよ。
垣谷氏のファン必読です! (^o^)

では、内容に入ります。
第1話は、御厨家の次女、美帆の物語です。
彼女は中学生の時に、祖母の琴子から「三千円の使い方」(同書、9頁)をどのようにするのか、それは人生を決めるほどの大きな意味を成す、というアドバイスを受け取ったことを思い出しました。
24歳の彼女は就職して念願の一人暮らしを始めたものの、職場で先輩が退職を余儀なくされる姿を目にして、先々のことを真剣に考えることになります。
ここから御厨家の人々のお金に関しての物語が始まります。

第2話は、祖母の琴子の物語です。
73歳の琴子は1千万円を貯金していますが、老いた先のことを不安に思い、仕事を探そうかと考えます。

第3話では、美帆の姉の真帆が中心となります。
真帆は結婚を機に証券会社を辞めて専業主婦となり、公務員である夫と娘の3歳になる佐帆(さほ)と三人で暮らしています。
彼女は娘の子育てをしながら節約に励み、「プチ稼ぎ」や「ポイ活」(同書、114頁)に勤しんでおりました。
短大時代の友人たちとの女子会での会話から、幸せだと思っていた結婚生活に不安がよぎりました。

第4話では、祖母の琴子と知り合った40代の男性が登場します。
彼は、定職に就かず、自由を求めてバイト生活をしています。
所謂しがらみに束縛されたくないタイプの男性ですが、交際している彼女との今後がどうなりますか……。

第5話は、母親の智子の物語になります。
智子は会社員の夫の妻として、戸建てに住み、夫と二人暮らしで専業主婦を続けていましたが、55歳で手術を終えて退院した時、目の前の家事についてあらためて見つめます。
友人が熟年離婚をすることになり、智子は今後の人生について熟慮することになりました。

最終話では、美穂と交際している男性が背負っている大学時代の奨学金返済の問題から、御厨家の人々は解決策をどのように見出すのかが描かれています。

6話を読んで良かった点として、三点あげます。
一点目は、御厨家の女性たちが主となって、人生のパートナーとの問題、結婚、仕事、暮らし、健康、住宅、老後など様々な問題を抱えて生きており、幅広い年代ですので、彼女たちが直面している問題のどこかに当てはまる点を発見し、共感を得ることです。
二点目として、家計や年金、貯蓄額など具体的な数字で表してありますので、そうなのか、と読者に直接伝わることです。
三点目は、物語に登場する専門家の助言が読者に活かされていくことです。

凛が気づいたのが、御厨家のご主人は常に脇役である、ということですね。
第4話では、祖母の琴子と知り合った男性が登場してきますが、御厨家の智子のご主人として、また真帆と美帆の父親の視点で描かれる章を読みたくなりました。
定年を前にして現役で働いている男性の意見も聞きないなあ、と素直に思った凛です。
合わせて、真帆のご主人、現役公務員としての視点で読みたいな、と思います。

家族の姿はどんどん変化していくものです。
御厨家の数年後の姿の続編も期待したいです。

男性の読者には、女性たちが暮らしそのものや暮らし方について、どのように考えているのか、彼女たちの本音が伝わってくるのではないか、と大いに期待いたします。

作者の原田ひ香氏については、「ラジオはお好き?」(ココ)の項でご紹介しています。
是非ご覧くださいね~ (^o^)

最後に。
全編にわたり、お金を背景にして、登場人物の生き方のどこかに読者の共感を得られる物語です。
お金は人生の目的か、手段なのか。
読者に、人生の主役は何なのかという大切なことをあらためてつきつけます。
「ラジオ小説」でご活躍された原田ひ香氏ならではの伝達の具体性が効果を表している小説である、と凛は考えます。
本当にそうだよね~、と多くの読者に共感を得られる作品であることに納得いたしました。

あなたは三千円をどのように使われますか。
凛は本の購入に充てるでしょうねえ。 (^_-)-☆

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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