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2025年10月12日日曜日

受けとめ方はあなた次第です ~秋吉理香子『終活中毒』(実業之日本社文庫、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お変わりありませんか?
暑かった夏から秋への移行が年々遅くなっています。
体調には気をつけていきたいですね。

いつまでも夏を引きずっていてはいけないことに気づかされる売り場があります。
それは、文具や雑貨店の手帳やカレンダー売り場です。
既に8月の夏真っ盛りの頃から手帳やカレンダーは売り出されてはいますが、これらの在庫が年々早く減っているように感じるのは凛の気のせいかしら?
お気に入りのデザインのものはお早めにゲット!ということでしょうね。(^.^)

暑いからといっていつまでも夏ではないのですねえ。
やはり日本は四季の国。
今年もあと2か月半。
時はどんどん過ぎてゆきます……。
10月に入ると、毎年同じことを感じている凛ですねww (^^;

モノの整理や空間を活かすことの重要性が認識されてからだいぶ経ちます。
そして、「終活」も!
高齢者だけでなく、若い年齢層の方々まで「終活」は浸透してきているようです。

人生100年時代とはいうものの、誰しにも当てはまるかといえば、さにあらず。
こればかりは誰にも予測できないこと。
だからこそ「終活」は大事なのです!

「終活」とは一体誰のためのもの?
自分自身のために、残された家族のために、次世代のために。
管理を徹底して、面倒なことは後回しにせず、後悔のないように。
「今」を生きるこの自身の手ですっきりさせましょう!

などというような強迫観念が蔓延しているかのごとく、、
自己管理と自己責任の重責がどど~っと重くのしかかってくる。
はて、世の中にはおすすめしたくない終活があるのでしょうか?

あなたは「終活」について考えたことはありますか?

今回ご紹介する文庫本は、秋吉理香子(あきよし りかこ)氏の短編小説集『終活中毒』(実業之日本社文庫、2025年)です。
単行本は、2022年7月に同タイトルで実業之日本社より刊行されています。

著者による「終活」をめぐる様々な状況設定に、読者はあらためて自身の人生にあてはめて考えていくことになるでしょう。
ミステリー仕立ての「終活」に、肯定あるいは否定的に捉える方もいらっしゃるかもしれません。

はじめに、この文庫本の入手についてです。
凛が持っている文庫本は、2025年6月15日付けの初版第1刷発行です。

ある日のこと、凛はいつもの近所の書店の文庫本の新刊コーナーで、ハッと目につくタイトルの文庫本を発見しました。
それが『終活中毒』というタイトル!
え? 中毒になるほどの「終活」って一体何をすることなの?
実に印象的なタイトルに凛は興味をひかれました。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した初版本の文庫本の帯の表表紙側には、「最高の最期(エンディング)のはずが」
「まさかのどんでん返し⁉」
「人生の残り時間、あなたはどう生きる⁉」
「驚愕&感動の〈終活〉ミステリー!!」(以上、同帯)

帯の裏表紙側には、書評家の青木千恵(あおき ちえ)氏からのメッセージが、文庫本の解説から抜粋されています。
「主人公にも読者にも予測がつかない状態で展開し、着地がどうなるのか知りたくて、引き込まれる。」(同帯)

二番目は、表紙について。
まずは、表紙のデザインから。
水色をベースに、右側に白髪の女性が右側に向けて立っています。
女性は横顔で、眼を閉じて無表情。
白いユリの花数輪を胸の前に持ち、濃い茶色の服を着て、スラックスも同系色のもの。

対して、左側にはこの女性の影ともいえるシルエットが対比的に描かれています。
シルエットは黒と灰色の濃淡で描かれています。
顔は左側を向いていますが、表情は全く見えません。
白いユリは黒い色になっています。
まさに、この女性の心の裏側を描いたとも思える、意味深なデザインとなっています。

カバーデザインは、岩瀬 聡(いわせ さとし)氏です。
カバーイラストは、太田侑子(おおた ゆうこ)氏です。

次は、裏表紙のメッセージから。
水色の目立つ大きめの文字で、「遺言、片付け、まさかの復讐!? こんな終活、嫌ですか──?」
黒色の文字で、「ゾッとする終活、理想的な終活、人生を賭けた終活…4人の〈終活〉に待ち受ける衝撃&感涙のサプライズとは?」(文庫本、初版)

「終活」を巡るあらゆる事情が描かれていることが想像できます。
内容がものすごく気になるではありませんか!
これは是非とも読まないと!
凛は書店のレジに向かいました。(^O^)

それでは、内容に入ります。
文庫本3頁のContentsには、収められている4編の短編小説のタイトルが書いてあります。

「SDGsな終活」
「最後の終活」
「小説家の終活」
「お笑いの死神」

文庫本の解説は、帯にも掲載されている青木千恵氏です。

今回は2番目に収められている短編小説「最後の終活」についてご紹介します。
妻を交通事故で63歳で亡くした夫と息子との話です。
結構「あるある!」と巷にあふれていそうな話と思いきや、どんでん返しの面白さがあります。( ;∀;)

突然逝ってしまった妻の遺影を前にして、どうしたものかと途方に暮れる夫。
夫が在住している「たかの市」(同書、74頁)の防災チャイムが鳴り、「迷い人」(同書、同頁)の高齢女性についてお知らせするアナウンスが流れてきます。
「防災行政無線」(同書、同頁)から、たかの市も既に高齢化社会に突入していることが読者に明確に伝わります。

妻の遺影の前でため息をついていると、息子の広海(ひろみ)(同書、76頁)が登場します。
和室の畳の張り替えのために父と息子は座卓を移動しなければならないのですが、父親のほうは息子が幼かった頃の思い出がよぎってしまい、結局休憩をとることになります。

亡き妻と息子は仲が良くて、息子が東京の大学に入学した以後も妻が上京して交流していたようです。
妻の死後、息子と父は疎遠となってしまいました。

この息子からは「一切の連絡がなくなったのだった」のですが、「それが三日前、突然帰って来た。」(同書、79頁)のでした。
息子が帰ってきた理由は、「そろそろ三回忌だから」(同書、同頁)ということでした。

息子は、母親の三回忌を前にして、実家のリフォームをすることを父親に主張します。
息子はリフォームに関する情報はネットで調べて、「オンライン限定割引」や「BtoCで直(じか)に契約できるのが魅力だよ」(同書、83頁)などと高齢者には意味不明なことばかり述べるので、父親は驚きをもって息子に関心するばかりです。

息子は、リフォーム業者の出入りの用心のために、金庫などもネットで即座に購入します。
亡き妻の着物の処分については、買取業者には気を付けよ、と息子は父親に詳細な説明をします。
息子がこの先に進んで良いことと、悪いことを明確にわかりやすく教えてくれるので、父親としては頼りになれる息子の存在が大変ありがたいのでした。

この息子と父親との関係、果たして大丈夫かなあ、といささか危なげな感じがしますよねえ。
こう思って読み進んでいる読者の皆さん、この後、新たな展開が!( ゚Д゚)

「──あたし、ヒロミです。」(同書、92頁)という女性の声で電話がかかってきたのです。
「あのねえ、うちのヒロミは男ですよ」(同書、同頁)と応対する父親。
父親は荒く受話器を置いてから、「おい、詐欺だぞ、詐欺!」(同書、同頁)と息子に言うと、息子の広海は苦笑いして悠然としています。

さて、ここから二転三転するジェットコースターの展開に、読者がアッと驚く結末を迎えることになります。
よくありそうだな~と思われがちな話から、読者の予想を裏切る結末。

あとは、あなたが読まれてからのお楽しみに! \(^o^)/

著者の秋吉理香子氏は、2008年、短編小説「雪の花」第3回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞されました☆彡。\(^o^)/
この作品は、2009年、短編小説集『雪の花』のタイトルで小学館文庫から刊行されています。
また、2009年に、テレビ朝日からドラマ化されました。

さらに、2013年に双葉社から刊行された小説『暗黒女子』(のち、双葉文庫、2016年、双葉社ジュニア文庫、2017年)は、2017年に映画化されました。
漫画化された作品もあり、今後、ますますのご活躍を期待できるミステリー作家のお一人です。(^^)v

最後に。
「終活」が流行しているこの日本で暮らしている人々の日常について、読者に新たな視点として着目させた秀逸な短編作品集です。
著者の秋吉理香子氏による幾重にも重なるミステリー作家としての力量が活かされています。
ミステリーとはいっても、背筋が凍り付く作品もあれば、読後に心が温まる作品も収められています。

登場人物のそれぞれの立場で考えてみると、各作品の結末の捉え方は違って当然でしょう。
つまり、受けとめ方はあなた次第ということですね。

「終活」の流行は、人々が日常の不安感にさいなまれている証拠かもしれません。
「終活」という概念に恐れおののきながら生きていくありさまはいかがなものでしょうか。
しかしながら、今を生きる自身の人生を整えるための「終活」はやはり大切にしたいものです。

人生を楽しく! \(^o^)/
あまり難しく考えずに、シンプルにすすめていけたらいいなあ、と考えている凛です。
甘い!と言われそうかなあ……。(^▽^;)

読書の秋。
あなたも読書ライフを楽しんでくださいね。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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秋吉理香子(著)実業之日本社(2025/06発売)
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2025年6月9日月曜日

「暮らしをととのえる」ための覚悟とは ~阿部暁子『カフネ』(講談社、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早くも2025年の前半期も今月で終わります。
月日が経つのは本当に早いものですね!(^-^)
梅雨の前線も北上中です。
近年は大雨になったり、いきなり真夏日になったりと激しいお天気のイメージが定着しています。
体力の維持が求められますね。 
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

さて、今春4月9日に発表された2025年本屋大賞の作品はあなたは読まれましたか?
発表前から候補作品が書店の店頭にも並べられていたので、それぞれの本を手に取ってみられた方も多かったのでは。
本屋大賞については凛が時折聴いている地元のラジオ放送の本紹介のコーナーでも話題に上がっていて、とても気になっていたのでした。

今回ご紹介いたします作品は、今年の本屋大賞受賞で話題の阿部暁子(あべ あきこ)氏の長編小説『カフネ』(講談社、2024年)です。
この作品は、単行本のみの刊行となっています。

物語の前半と後半とでは、登場人物たちの生き様を通して、主人公の女性の世の中の見方や思考、生き方に対する価値観が大きく変わる物語です。
主人公の視点が変わっていく過程が丁寧に描かれています。
読んで良かった~~\(^o^)/と心から願いたい読者のためにおすすめしたい作品です!

また、お料理を作ったり、あるいは食べることが大好きな方、部屋の片づけやお掃除が好きな方はもちろんのこと、これらのことに興味がある方には是非おすすめです。
もちろん、お掃除や、お料理を作ることが全然得意ではない方にもおすすめですよ~ (^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛は本屋大賞の発表後に、自宅から30分ほど歩いた大手の書店から購入しました。
凛が持っている単行本は、2024年4月3日付の第11刷発行です。
初版が2024年5月20日付ですので、多くの読者に読まれているのがわかりますね。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
当然ですが、本屋大賞受賞発表後の購入なので、帯の表表紙側には、黄色い帯に赤い太文字で「本屋大賞受賞」と書かれています!
黄色と赤の組み合わせは目立ちますよね~ (^O^)
その文字の上には、「『おいしい』と泣くことから再生は始まる。」
「人生のお守りになる食が繋ぐ愛の物語」(同書、帯)

帯の裏表紙側には、「別れ、喪失、荒れた部屋。どん底でもおなかは空く。」(同書、帯)
確かに、人はどんな状況におかれていても、食べなければ生きてはいけません。
やはり食べることが最優先ですよね!

帯の裏表紙側には、最上段の白い部分に「友達でも恋人でも家族でもないけれど、ただあなたの髪を撫でたい。」と書かれています。
黄色の地の下の部分には赤い文字で「『元気をもらった』との声多数!大切な人を抱きしめたくなる物語」と。(同書、帯)

二番目は、表紙について。
全体的にチョコレートブラウンのような落ち着いた色合いで、木のテーブルの上に、白いティーポットと白いカップ、ガラスのミルク入れ、白いお皿にはチョコレートケーキのようなデザートを食べた後のお皿とフォークの写真になっています。
奥には観葉植物らしき植物が置いてあり、柔らかな光がのどかな雰囲気を包んでいるようです。
ゆったりとくつろいでいる午後のひとときといった感じでしょうか。

表紙の上のほうに金色の文字で「カフネ」と横書きのタイトルが出ています。
真ん中には白い文字で、今度は縦書きで著者の名前の「阿部暁子」の文字。

そもそもタイトルの「カフネ」とは何のこと?
という素朴な疑問がおこりますよね。
凛の持っている本の帯の表表紙側には、「カフネ──愛する人の髪に指を通す仕草」と書いてあります。

この表紙を外すと、モスグリーン色の地に、調理道具のフライ返しとへららしきものが金色で描かれています。
作中で活躍するアイテムなので、読者へのメッセージがこめられています。

カバー写真は、写真家のNana*(ナナ)氏です。
装丁は、岡本歌織(next door design)(おかもと かおり)氏です。

それでは、内容に入ります。
読まれる前の読者には「覚悟」をもっていただきたいですね。
何故ならば、「食」を中心にした癒し系の物語、あるいは女性陣が大好きな甘いスウィーツの物語、または片付けなどの家事関係の話なのかな、といったイメージで読みだすと、とんでもなく遠い世界にあなたを連れていってしまうことになるからです。
他人には言えない人生の生き辛さが、これでもか、これでもかと出てきて、人によっては息苦しくなって読み辛くなるかもしれません。

あらすじです。
主人公の女性の野宮薫子(のみや かおるこ)の弟、春彦(はるひこ)が急死し、その弟からある日、薫子の元に宅配便が送ってきました。
何故に亡くなった弟から?とミステリーの要素を含んだ設定になっています。

亡き弟の遺志による遺産相続の件で、薫子は彼の元恋人の小野寺せつな(おのでら せつな)とカフェで会いますが、彼女とは初対面ではありませんでした。
初めて出会ったときから、薫子はせつなには良い印象をもっていませんでした。

常に上から目線でせつなと対峙する薫子。
負けじと無愛想な態度をとるせつな。
春彦からの遺産相続を断わるせつなに対して、薫子は態度をさらに硬くします。

カフェで薫子はせつなを前にして突然倒れてしまいます。
薫子の自宅マンションの部屋まで送り届けたせつなから、「お茶はいりません。それより、お姉さん、お昼は食べましたか?さっきのカフェでも飲み物しか頼んでませんでしたけど」(同書、28頁)と問われます。
薫子が黙っていると、せつなから「冷蔵庫、見ていいですか」(同書、同頁)と訊かれます。

薫子が返事をする前に、冷蔵庫を「遠慮なしに各段の扉を開けて、じっくり中をのぞいた」(同書、同頁)せつなは、「このへんの食材、勝手に使わせてもらっていいですか」(同書、同頁)と言って、あれよという間に豆乳とコンソメとツナ缶とトマトでスープを作って、ゆでた素麺にかけて薫子と二人でいただきました。
美味しかったのでしょうねえ。
涙であふれた薫子には「やさしい味がしみて、痛いほどしみて、もう耐えられなかった。」のです。(同書、32頁)(T_T)

せつなは『カフネ』という家事代行サービス会社に所属しており、依頼者宅に行ってお料理を作り提供しています。
薫子は供託管として、東京法務局の八王子市局に勤務している公務員です。

せつなとの関係はほぐれることのないままでしたが、薫子は休日に『カフネ』で家事代行サービスの掃除係をボランティアで手伝うことになります。
料理担当のせつなと共に、様々な家庭の事情を目にすることになった薫子でした……。

貧困家庭、格差社会、高齢者、介護、人間関係、親子関係、きょうだい、結婚、不妊、孤独、仕事、学校、離婚、再婚、単身、性差、健康、病気、難病……。
法務局では相談者からの法的な手続きを担当しており、社会的な対応をしてきたのだと自負があった薫子でした。

しかし、薫子はせつなと組むことで、『カフネ』を通して初めて知る異常に歪んだ社会の面々に触れます。
それらは、薫子が勤務している法務局や、これまで当然として捉えていたシステム化、細分化、透明化された社会とは異なる価値観が渦巻いている世界だったのです。(-_-;)

この作品には、登場するどの人物たちもそれぞれに困難な事情をもっています。
個々が抱えた事情を紐解きながら、物語は進んでゆきます。
後半になると、読者の価値観は前半とは全く異なる目線に気づくことになるのです。
亡き弟、春彦のことについても……。

後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)

著者の阿部暁子氏は、2008年、短編小説『陸の魚』cobalt短編小説新人賞を受賞☆彡。
同年、小説『いつまでも』第17回ロマン大賞を受賞☆彡されました。
そして、今年の本屋大賞受賞です☆彡☆彡。 \(^o^)/
今後、最も期待される小説家のお一人です!

最後に。
「暮らしをととのえる」
簡単なことのように思えますが、実は大変難しいことなのだということがよく伝わる作品です。

せつなが勤務する家事代行サービス『カフネ』で、片付け担当として、料理担当のせつなと組むことになった薫子には、さまざまに困難な事情を抱えた訪問宅の人々との交流を通して、彼女の視点に変化が訪れます。
お料理を作る、また食べることの力とはいかに偉大なのでしょう。
食材を活かすことの大切さに気づかされます。
部屋の片付けも同じことですね。
薫子とせつなとの関係性は、『カフネ』で輝いて欲しい!と凛は願うばかりです。

薫子は、後半になるにつれて心身とも力強く、頼もしく、そして、人に優しい大人の女性に成長します。
凛には、283頁で薫子が発した言葉、これにはウルウルと感動しました!(T_T)
もしも凛が薫子の立場だとしたら、相手にこの言葉が言えるかなと。

以前にも書きましたが、これまでの凛は、話題の作品はすぐには読まずにしばらく様子を見るか、または文庫本になるまで待ってから読むことが多かったです。
この頃は、話題の作品は単行本で読みたくなることもしばしば。
評価が高い作品は、文庫本になるまで待てなくなってきたんですよねえ。
「時間」と「欲」との関係でしょうか……。 (^^;

お料理に例えると、美味しいおかずから先に食べるのか、それとも美味しさは最後に味わうのか。
さて、あなたはどちらのタイプですか?

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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阿部暁子(著)講談社(2024/05)発売
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2024年5月15日水曜日

あなたもクルマに乗って人生の冒険をしてみます? ~篠田節子『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りんです。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはGWはいかがお過ごしされましたか。
連休が長かった方には生活のリズムが乱れて、却って疲れがたまっている方もいらっしゃるのでは。
5月も後半に入りますねえ。
初夏から夏への移行期間で爽やかな季節を迎えています。
7月15日の海の日まで祭日がありませんので平坦な日々を送ることになりますが、乗り切っていきましょう!\(^o^)/

凛は部屋の模様替えをするため、蔵書の整理に追われました。
今回は文庫本を中心に多くの本を整理しました。
400冊以上です……。 
木製の文庫本ラックの1架を思い切って処分しました。

本の整理はまだ完全に終わってはいないので、部屋には段ボール箱が何箱も積み重なっていますが……。(-_-;)
どの本にも思い出が詰まっていて、泣く泣く手放すのはそれはもう辛いものがありますが、、(T_T)
保管するスペースには限りがありますので、気持ちを切り替えて前向きに捉えていきますね。(^O^)

このような重い本を運搬していただくのも運送会社と配達員の方々のおかげですね!m(__)m
流通を担っているのはクルマがあってこそです。

GW中にはクルマでドライブを楽しまれた方も多かったことでしょう。
今や自動運転など今やハイテクマシーンと化したクルマです。
最新の技術が私たちの安全を守ってくれています。
私たちの暮らしにとってクルマは絶対に欠かせない存在ですね。(^-^)
今回ご紹介します本は、ある非日常における時点で、クルマがあって良かった!と思った人々の物語です。
人生の分岐点に立つ主人公にとってクルマが重要なアイテムとなります。
クルマとの忘れられない思い出となっていることでしょう。

篠田節子(しのだ せつこ)氏の中編小説3篇が収められている作品集『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)です。
凛が持っているのは文庫本で、2023年10月10日付の初版本です。
単行本は、2021年4月に刊行されています。

はじめに、凛がこの本を入手したのは、おなじみ近所の書店の文庫本新刊の棚でした。
『田舎のポルシェ』
変わったタイトルだなあと思ったのが第一印象でしたね~

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛の文庫本の初版本の帯には、表表紙側に黒色の太字で「日常は冒険に変わる」と目立って書かれています。
その前に「ひとたびアクセルを踏み込めば」と。
おやおや穏やかではありませんね~
安全運転でお願いしますよ~

小さく黒色で「人生の岐路に立ち 秘めた思いを抱いて 一歩踏み出す人々を描く 3篇のロードノベル」
青色で「笑って、泣いて、ハラハラして 現代人へ送るエール」(以上、文庫本新刊帯)
なるほど~ これは読後に爽快感が得られそうです!

二番目は、表紙について。
表表紙は、全体に青色がかっている中で、中心部に白い軽トラがデーンと横断歩道の真ん中に鎮座しています。
その軽トラの荷台には、紫色の作業着を着た男性が白いヘルメットをかぶって立っています。
助手席には女性が座っており、窓からこちらを見ているか、あるいは他のことを考えているかのようにも見えます。
全体が青みがかっており、交差点付近の人影もまばらなので、早朝、夜明け間近かもしれませんね。

裏表紙側の説明文では、表題作の「田舎のポルシェ」についての概要が紹介されています。
主人公の翠(みどり)は「実家の米を引き取るため、助っ人の車で岐阜から東京へ向かうことになった(以後省略)」と。
彼女の前に現れたのは「軽トラに乗った強面ヤンキー!」
「さらには大型台風が迫り──。」
「往復1000キロ、波乱だらけの強行軍を描いた表題作」(以上、文庫本初刊)

Oh!これは篠田氏独特の世界。
まさしくハラハラドキドキのジェットコースターに乗っているかのごとく読者を飽きさせないロードムービーの小説ですね。

文庫本のイラストは、太田侑子(おおた ゆうこ)氏です。
デザインは、城井文平(きい ぶんぺい)氏です。

では、内容に入ります。
以下の中編3篇が収められています。
「田舎のポルシェ」
「ボルボ」
「ロケバスアリア」

文庫本の解説は、細貝さやか(ほそがい さやか)氏です。

第1話「田舎のポルシェ」
文庫本の裏表紙の説明文で概要はつかめると思います。
会社員の増島翠(ますじま みどり)は、東京郊外の実家の米農家の娘です。
事情があり、台風が迫る中、大量の米を岐阜まで運ばなければならなくなりました。
知人の紹介で瀬沼(せぬま)と名乗るヤンキーの恰好の男性と軽トラで移動するのです。

米農家や自営業の苦悩、家庭の事情など個々に事情を抱えており、クルマの走行距離が延びるうちにだんだんと明らかになってゆきます。
二人は悪天候の中で米を無事に運んでいけるのでしょうか……。
背景に台風という制限を課して、そこから脱出する術の見事さ。
篠田氏の真骨頂ともいえる作品です。

第2話「ボルボ」
共に定年組である斎藤克英(さいとう かつひで)と伊能剛男(いのう たけお)はそれぞれ異なる元大手企業の会社員でした。
二人は妻の趣味がご縁となり、定年後に知り合いました。
両者の定年後の暮らし向きは一見余裕があるように見えますが、両家の事情と懐具合が微妙に交差しています。

斎藤は伊能が長年運転してきたボルボで北海道まで同乗することになります。
旅先で思わぬ事件が発生します……。
互いの腹の探り合いがだんだんと顕著になっていく様が絶妙です。

第3話「ロケバスアリア」
畔上春江(あぜがみ はるえ)は、孫の藤森大輝(ふじもり だいき)が運転するロケバスに乗って東京から浜松市の湖月堂(こげつどう)ホールまで向かいます。
春江が趣味とするオペラをホールで歌い、画像をDVDに収録するためで、DVD制作専門家の神宮寺(じんぐうじ)も同乗しました。
ロケバスには化粧やドレスの着替えなどできるようにしつらえてあります。
ちょうどコロナが流行していた時期で、ホール並びに移動にも制約が伴いました。

ホールでは雨が降り、悪天候に見舞われました……。
そこから物語が発展してゆきます。
人生模様を語り合い、理解し、受容していく過程が読者には心地よく響きます。
物語の最後はこんなオチがあったのかと驚き、読者は感動で胸がいっぱいになること間違いありません!

作者の篠田節子氏については、2020年5月2日付の「新鮮で美味しいサラダを求めて」のタイトル(ココにてご紹介していますので割愛させていただきます。

最後に。
安定感のある篠田節子氏のクルマに関するロードノベル中編小説3篇は篠田氏の世界が堪能できます。
まずは、篠田氏特有のハラハラドキドキする設定があります。
加えて、登場人物たちが抱えている様々な事情が決して特殊なわけではなく、誰にでもあてはまりそうな部分もあるので、共感を得る読者も多いでしょう。

作中人物たちは目の前の問題をどうやって突破していくのでしょうか。
彼ら、彼女らがとった思考と行動は一見無謀かもしれませんが、成就された時の爽快感が何ともすがすがしいものです!\(^o^)/
登場人物たちにエールを送りたくなる作品です。

文庫本の巻末286頁の「謝辞」を是非お読みくださることをお勧めいたします!(^-^)
篠田氏のご執筆にあたる誠意が読者に真摯に伝わり、再度感動をもたらすのではないかと凛は考えました。

クルマとの付き合い方を大切にしたいですね。
人生の冒険とまではいかなくても、クルマがあって良かったと思うことは多いものです。
勿論、安全運転でいきましょう! (^^)v

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2024年1月29日月曜日

今年こそ読破したい!紫式部の人生と並行して読める帚木ワールドの『源氏物語』 ~帚木蓬生『香子(かおるこ)(一)紫式部物語』(PHP研究所、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらりにようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2024年がスタートして早くも一か月が過ぎようとしています。
今年の日本は元日からショッキングな出来事ばかり起きています。

ああ、今日も一日無事に過ごせました。感謝。
という安堵感で眠りに入れる日常の生活が如何にありがたいことでしょう。
平穏で過ごせる日々が最も幸せなのだと実感させられます。

合わせて、非常時のための危機感と水や食料などの備えが大事だということも再認識しないといけませんね。
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

世の中はAIなどの新しい技術を導入する時代に既に入っています。
コスパ重視の世の中、スピードは年々早くなってきています。
しかしながら、敢えて古来から受け継がれている普遍的な事柄に注目したい、という欲求がわいてくるのは生身の人間だからでしょうか。

今年のNHKの大河ドラマは『光る君へ』ですね。
凛も毎週楽しんで視聴しています。
あなたはご覧になられてますか。

主演の吉高由里子(よしたか ゆりこ)さんが後の紫式部こと「まひろ」を演じておられます。
まひろさんはどのような経緯で『源氏物語』を執筆するようになるのでしょうか。
彼女の背景でうごめく公家政治の権力とは……。
テレビドラマですので、日本史の教科書で学んだ内容とは若干異なる部分もあるでしょう。
ひとつの娯楽作品として楽しみたいですね~ (^-^)

『源氏物語』全五十四帖。
あなたは読まれましたか。
実のところ凛は最後まで読んでおりません……。(^^;
凛はこれまで谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう)訳、瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)訳、林望(はやし のぞむ)訳に挑戦してきましたが、いずれも途中までの断念組です。
これは現代語に訳された先生方の問題では決してありません。
誤解なきよう、あくまで凛個人の問題なのです。

他にも関連の解説書やガイド本など何冊も蔵書として保管しています。
とは名ばかりで、所謂万年積ん読状態ですね……。(^▽^;)

紫式部はどんなことを考えて人生をおくったのでしょうか。
『源氏物語』はどのようにして書かれたのでしょうか。
作中に出てくる和歌の内容をもう少し知りたいですね。

このような素朴な疑問を解決できるという、まるごとひとつにまとめられた小説があります。
紫式部の人生と『源氏物語』と和歌の解説などが同時に読める大変ありがたい作品が昨年末に出版されました。
帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の大長編小説『香子(かおるこ)(一)紫式部物語』(PHP研究所、2023年)です。
書下ろし作品になります。

タイトルに(一)が付いていることからわかるように、この作品は(五)になるまでの五か月の間、毎月連続して出版していくというPHP研究所の一大プロジェクトです。
第一巻は461頁と大変分厚い本ですが、慣れていくうちに気が付けば最後まで一気に読めました。\(^o^)/
漢字にルビがふってありますので読みやすくなっています。

はじめに、凛がこの本を知ったのは某ラジオ番組の本の紹介コーナーを視聴したことによります。
番組に生出演された帚木氏ご本人のお話によりますと、長い間従事されていらした精神科医院のお仕事をご卒業されて、専業の作家になられたとのことでした。

以前にNHKのテレビ番組で帚木氏を拝見した時は落ち着いた話し方の先生といった印象でしたが、ラジオのお声からは非常に明るく快活な方で、この作品への強い情熱が伝わり、新たな帚木ワールドを堪能できるなと思った凛でした。
本は市内の中心街の書店で購入しました。

そもそも「帚木蓬生」というペンネームからもわかることですが、「帚木」は『源氏物語』第二帖の「ははきぎ」、「蓬生」は第十五帖の「よもぎう」から構成されています。
帚木氏『源氏物語』に対する強い意志が伝わりますね!

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯についてです。
凛が持っている本は、2023年12月26日刊行の初版本です。

表表紙側には、「千年読み継がれる物語は、かくして生まれた」と白地に赤い文字で目立つように書いてあります。
表表紙側の左下には、赤い枠に中に白字で「大河ドラマの主人公・紫式部(香子)の生涯×『源氏物語』」と書いてあり、大河ドラマ放映と同時期の刊行ということで、非常に期待感がわきますね~

帯の裏表紙側には、「五ヵ月連続刊行!」の下に、第一巻から第五巻まで簡単な説明文が紹介されています。
第一巻のところをご紹介いたしましょう。
「香子の物語」では、「父とともに越前へ、そして物語を書き始め……」と黒字で書いてあります。
その右の『源氏物語』では、「桐壺~末摘花の帖」(以上、同書)と赤い字で書いてあり、第一巻は六帖まで読めるのだなと識別できるようになっています。


二番目は、表紙についてです。
表表紙は、紫式部の上半身が描かれています。
裏表紙は、文机の前に座っている紫式部が描かれており、『源氏物語の有名な冒頭文「いづれの御時にか、……(中略)すぐれてときめき給ふ有りけり。」という文字が書いてあります。
表表紙、裏表紙とも格調高い仕上がりになっています。

装丁は、芦澤泰偉(あしざわ たいい)氏です。
装画は、大竹彩奈(おおたけ あやな)氏です。

それでは、内容に入ります。
作品の第一巻は、第一章の「香子(かおるこ)から第十五章の「懸想文(けそうぶみ)」までが収録されています。
凛が注目した四点について挙げます。

一点目は、「香子」という名前についてです。
第一章の始まりで、香子は当初は「きょうし」「きょうこ」と呼ばれていたところが、8歳の春に、父君の藤原為時(ふじわらの ためとき)から今後は「かおるこ」と呼ぶと決めたことを告げられました。
亡き実母が命名した「香子」。
これまで改まった席においては「きょうし」で、身内の間では「きょうこ」と呼ばれていました。

香子は、呼び名を替えることになった理由を父君に尋ねます。
父君は、「そなたの資質は、誰が見ても、他より抜きん出ている。」(第一巻初版本、5頁)と言って、香子の素晴らしい資質を認めています。
その上で、「そして誰もが認める、ひとかどの人物になる。その資質が薫(かお)るからだ。ちょうど、今匂ってくる紅梅(こうばい)のようにな」と。(同、5頁)
香子はまだ8歳なので深い意味はわからない様子でしたが、父君から高い資質を認められたことは彼女の生涯の自信につながったと捉えることができます。

二点目は、血縁と文学についてです。
歌人としては、香子の父方の曽祖父である藤原兼輔(ふじわらの かねすけ)がいます。
兼輔は中納言の位に出世し、醍醐(だいご)天皇の後宮に娘の桑子(くわこ)を入内させ、章明(のりあきら)親王をもうけさせます。
その時の歌が『後撰和歌集』に収められているとして、また、桑子の入内の話が『大和物語』に収められており、さらに歌集の『兼輔集』の存在など、香子はこれらを暗唱するなど繰り返し学んできました。

父方の祖父の藤原雅正(ふじわらの まさただ)や伯父の藤原為頼(ふじわらの ためより)も歌人でした。
香子には幼い頃から、伯父の為頼が所蔵する和書だけでなく、父君が収集していた漢籍など、和漢の多くの書物に触れる機会があったことが第一章に記されています。

第一巻の後の章になりますが、香子が『源氏物語』の執筆の際、父君や母君に読ませて感想を述べてもらいます。
両親が彼女の背中を後押ししてくれたことは創作の自信につながったことでしょう。
特に、母親が積極的に感想を述べてくれることが印象深いです。
このように幼い頃から文学を嗜む家庭環境から、香子の執筆に対する意欲が増したことは大きいですね。

また、『蜻蛉日記』との関係があります。
『蜻蛉日記』の作者は、藤原道綱(ふじわらの みちつな)の母です。
第二章「蔵人(くろうど)」では、香子の祖母から『蜻蛉日記』の作者が、香子の実母の父の藤原為信(ふじわらの ためのぶ)の兄である藤原為雅(ふじわらの ためまさ)の正妻の姉にあたる女性であることを再度言われます。
要は遠い親族が女流文学の先駆者で、日記文学の作者であったことは、香子にとって「書くこと」を意識した存在であったであろうと読者に知らしめています。

三点目は、死生観です。
香子は第一巻目から身内の死に遭遇しています。
生母、姉君の朝子(あさこ)、最初の結婚をした平維敏(たいらの ただとし)との死別があります。
自分を守ってくれ、愛してくれた人との別れは辛いものです。

「誠に人の世は、野分(のわけ)や雲、雨と同じで、人の手ではどうにも動かせない。その摂理(せつり)の下(もと)で、翻弄(ほんろう)され続けるのだ。」(同、230頁)
香子はこの世のはかなさ、無常観を体験し、やるせなさを感じたのではないでしょうか。

四点目は、帚木蓬生訳の『源氏物語』についてです。
まずは、素朴な疑問点をあげましょう。

何故に香子は『源氏物語』を執筆することになったのでしょうか。
香子は何の文学作品を手本にしたのでしょうか。
香子の執筆する過程を知りたいですね。

などの疑問点が読者には持つ方も多いかと思います。
これらについては、第十一章の「起筆」前後で読者は捉えていくことでしょう。
あなたが読まれてからのお楽しみに!(^^)/

帚木蓬生氏の訳の特徴として、気づいた点が二つあります。

一つ目は、主語が明確に書かれていることです。
凛は学生時代に『源氏物語』の長い一文の中で「主語を示しなさい」と設問に出てきたことを思い出しますねえ。
『源氏物語』は主語が省略されている文が多いため、主語が明確であると理解が深まりますね。

二つ目は、和歌の説明が本文中に簡潔にされていることです。
例えば、第十二章「雨夜の品定め」には、『源氏物語』第二帖の「帚木の訳が掲載されていますが、光源氏が小君に託した歌

「帚木(ははきぎ)の心を知らでその原の
   道にあやなくまどいぬるかな」(同、293頁)

の後に、あらかじめ歌の意味を現代語で説明した後で、
『古今和歌六帖』の、園原や伏屋(ふせや)に生(お)うる帚木の ありとてゆけどあわぬ君かな、を下敷きにし、」(同、同293頁)
と、女君が返歌するまでの経緯が丁寧に書いてあります。

このように和歌の一首ずつに説明書きが訳の本文中に書いてありますので、本文に解説書が合体したような感覚で読者は自然な形で読み進むことができるのです。
凛は和歌の嗜みがありませんので、これは大いに助かりますね。(^O^)

帚木蓬生氏については、凛のりんりんらいぶらり~で2020年7月14日付「日本の文字の始まりを知る」の項で『日御子(ひみこ)上・下巻』(講談社文庫、2014年)(ココ)に掲載していますので、こちらの項では割愛させていただきます。

最後に。
帚木蓬生氏の作品『香子(一)紫式部物語』は、紫式部の生涯を描いた物語と、『源氏物語』の現代語訳と、和歌の解説が合体した大長編小説を一度に読めるという楽しみ方ができます。
PHP研究所から、2023年12月26日発刊の第一巻から第五巻まで、毎月一巻ずつ発刊されるという一大プロジェクトです。
NHKの大河ドラマ『光る君へ』と並行して読むと、歴史文学としても理解が深まるというものでしょう。

『源氏物語』をまだ読まれていないあなた、どうしようかなと迷っているあなた、凛のように途中までのあなた、是非この機会にお気軽にトライしてみませんか。
会話文など現代の話し方と同じように表現されていますので肩こりしませんよ。

第十三章「越前の春」では、香子の弟の惟通(これみち)の名前の一字違いで、『源氏物語』光源氏の従者を惟光(これみつ)と設定した点について、香子の母君から指摘されたことが書いてあります。
「図星だった。書いていて、咄嗟に浮かんだ名前が惟光だった。」(同、354頁)
そうだったのかあと、あらためて紫式部の家族に対する温かい情愛が伝わってほのぼのとしました。
この後に展開する物語もきっと新しい発見があるだろうな、と期待感でいっぱいになった凛でした。

第二巻の刊行ももうすぐです。
大変楽しみにしています!
今年こそ『源氏物語』を読破します!\(^o^)/

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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PHP研究所-2023/12/13帚木蓬生(著)
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2023年12月6日水曜日

うわっ!究極の選択!どうするあなた? ~荒木あかね『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

師走になりました。
世の中が日に日に慌ただしくなり、「急ぎなさい!」と追い立てられるような空気感でいっぱいになる時期です。
このような時こそ慌てず落ち着いて臨みたいところですね。
年内にしなければいけないことはなるべく早めに着手して、ゆとりを持ちたいと思う凛です。

まあ何とかなるだろう、その時になって対処すればいいじゃないの、という方も多くいらっしゃるかと思います。
凛は「時」に迫られて慌てるのが嫌なので、年末はなるだけ早めに行動したいと考えるタイプですねえ。(^^;
あなたは歳末をいかがお過ごしですか。

今を生きている世界が安泰な時には一日が穏やかに過ぎてゆくものです。
それを「平穏」と表現いたしましょう。

ところが、各人の性格や考え方など全く及ばず、真の選択を迫られた世界で生きなければならなくなったとしたら……。
この地球上で突然に平穏な日々を営むことができなくなった時、人々はどのように生を捉えるのでしょうか。
恐怖、絶望、悲観、諦め、閉塞感、開き直り、無の心境……。
これらは極力避けたいことばかりですが、近いうちに訪れるという負の予測がほぼ確実であるならば、あなたはどのように思考し、行動しますか。

Xdayに向かって、地球人として絶対に体験しなければならない尋常ではない日々。
これまでは非日常と漠然と捉えていたことが、突然確実な負の日常に変わった時、いわゆる最悪の状況設定の中で、日本の福岡県で連続殺人が起こる小説があります。
極限の状態で起こる連続殺人事件に、果敢にも挑む女性二人の物語です。

今回ご紹介いたします作品は、荒木(あらき)あかね氏の長編小説『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)です。
今のところ単行本のみで、文庫化はされていません。
この小説は、2022年、第68回江戸川乱歩賞を受賞☆彡作品で、著者の荒木あかね氏は史上最年少の受賞者として各メディアで話題になりました。\(^o^)/

はじめに、この本との出合いについてです。
凛がこの本を知ったのは一作目が各メディアで話題になった時でした。
「とっくに読んでますよ~」というミステリーファンも多いかと思います。

何故今頃、紹介するの?という疑問をもたれたあなたへ。
凛はベストセラー作品は話題になっている期間ではなく、少し落ち着いてから読むことが多いです。
話題性というメディアの発信の枠内から出たところで、じっくりと味わいたいという気持ちがあるからです。
文庫化されるのを待つことも本音ではありますねえ。(^^;
ということで、この作品の単行本の購入を控えておりました。

今夏の8月に、荒木氏の二作目『ちぎれた鎖と光の切れ端』(講談社、2023年)が出版されました。
しばらくして秋に某ラジオ番組で著者について高評価していたことから、少し離れた大型書店に様子を見に行ってみました。
一作目はその大型書店にはなかったこともあり、ネット書店で購入しました。
ああ、一作目を入手するまで何ともどかしい凛ですこと……。 (^^;

凛が購入した一作目の本は、2022年12月1日付の第4刷発行のものです。
初版が2022年8月22日付なので、相当話題になったことがわかりますね~ (^^)v

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した第7刷の帯の表表紙側には、赤い帯の地色に「読書メーター注目本ランキング 単行本部門2022年10月 第1位」と目立っておりますよ。
他には「第68回 江戸川乱歩賞受賞 史上最年少、満場一致」
「大重版、新人なのに5万部突破!」など、期待感がモリモリです!

帯の裏表紙側には、「正義の消えた街で、悪意の暴走が始まった。」と。
その文字の下に細かい文字で説明文が4行書いてあり、実に衝撃的な内容です! (@_@)

「小惑星『テロス』が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。」
「そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり大宰府で自動車の教習受け続けている。」
(省略)
「年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見した。」
「教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める──。」(以上、同書)

裏表紙側には、京極夏彦(きょうごく なつひこ)氏を含めて5名の著名な作家の感想が一文ずつ紹介されています。

二番目は表紙について。
水たまりのある荒廃した土地に女性が二人、遠くの空を見つめています。
一人はコンクリートらしき建造物に座り、もう一人は立っています。
青い空に、赤く染まった雲や灰色の雲が見られます。
女性たちの周囲には電柱や信号機が斜めになっているものもあり、道路は壊滅しています。

この光景は裏表紙側に続いており、裏表紙の右端の下側には、大宰府自動車学校の教習車が半分ほど描かれています。
空には白く発光した帯状の「物体」が地上に向かっており、かなりのスピードであることがわかります。

装画は、風海(かざみ)氏です。
装丁は、bookwallです。

それでは、内容に入ります。
通常は内容に少しだけ触れているのですが、今回は先に述べました帯の裏表紙側の説明文だけで十分ではないかと思います。m(__)m

読者は、小春とイサガワ先生の二人の周辺が尋常ではない環境下に置かれていることに気づきます。
小春の家族と自宅、自動車教習所、警察、個人医院など、様々な伏線が張られています。
二人は福岡県内を大胆に動き回ります。
移動には自動車教習車を使って。

ミステリー小説なので、後はあなたが読まれてからのお楽しみに~ (^O^)

凛の感想といたしまして、四点挙げます。
一点目は、舞台が福岡県という限定的な地域密着型であること。
これは、著者の荒木あかね氏が福岡県在住であることが大きいでしょう。
例えば、6頁では宝満山(ほうまんざん)や英彦山(ひこさん)に触れるなど、地元の読者が喜ぶであろう場所が多々描かれています。

二点目は、天体に関してリアリティに迫っていることです。
作品の前半25頁から通称『テロス』」について詳しい説明が入ります。
既に帯の説明文で挙げていますが、地球に小惑星が衝突することが発表されます。
人々のパニックが!
頁をめくる度に様々な登場人物とエピソードで絡み合って進んでゆきます。

三点目は、イサガワ先生の言動の切れ味がユーモラスで小気味よいことです。
地球が終わるかもしれないという極限の時に起こる残忍な連続殺人事件を追って、イサガワ先生はこう言い放ちます。
例えば、「まだ地球は終わってないんでね」(同、112頁)

要はタイトルの「此の世の果て」とはどういう状態なのかということが重要かと凛は考えした。
極限の状態でこのようなセリフが言えるなんて!
現実にはこの言葉を言う機会が訪れないことを祈るばかりですが……。(-_-;)

四点目は、巻末に江戸川乱歩賞の沿革並びに選考経過、選評が掲載されていることです。
プロの作家の見解を知ることで、読者には受賞作品の重厚感が増すでしょう。
第1回(昭和30年)からの受賞リストを見て、歴史感を凛は認識しました。

著者の荒木あかね氏に関しては、先に述べました通りです。
荒木氏は1998年生まれのZ世代。

最後に。
小惑星が衝突して地球が滅亡するかもしれないという極限状態の中で、福岡県を舞台にした連続殺人事件を追う小春とイサガワ先生の行動力が基軸となっている作品です。
また、解決を追うことで出会う人たちの個々の物語でもあります。
もう後がないことがほぼ確実であるという超極限状態の中で、人の心理と行動がわかってしまう、いわば最も恐ろしい話です。

二人は「此の世の果て」から逃れられるのでしょうか?
それとも逃げずに向かっていくのでしょうか?
では、あなたはどうしますか?

凛は、物語の最後の数行、小春とイサガワ先生の会話を何度も読み返し、表紙の絵をじっと見つめました。
映像作品にできそうですねえ。

荒木氏の二作目の本が出版されて、凛が向かった大型書店では目立つように二作目が売り場のど真ん中にデーンと難十冊も平積みされていました。
「Z世代のアガサ・クリスティー」とPOPが添えられていました。
書店の対応もお見事ですね!

凛は一作目の時と違って、二作目は即買いしました。(^_-)-☆
荒木あかね氏の今後のご活躍に大いに期待します!(^O^)

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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講談社2022/8/24荒木あかね(著)
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2023年10月2日月曜日

紙の本、好きです! ~杉井 光『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

10月に入りました。
日本では本格的な秋の到来です!
今年の夏は暑さが非常に厳しかったですね。
暑さもそろそろ落ち着いて欲しいこの頃です。
昼と夜の気温の変化がありますので、あなたも体調管理にはくれぐれもご注意くださいませ。

さて、あなたはどのような秋をお過ごしされますか。
凛は、やはり秋の夜長に読書ですね~
凛の読書は一年中、ほとんど変わりないですが……。 (^^;

さて、読書といえば「本」ですが、近年は機器の発達で電子書籍が台頭してきています。
略して「電書」。

最近、紙の本は何かと肩身が狭いようです。
重い、場所を取るので保管に困る、汚れる、破れる、ほこりがたまる、他人が触れたものを間接的に触るのがイヤだ、紙自体の価格が高くなっている、などなど……。(-_-;)

この頃は書店も売れ行きが減って、閉店に追い込まれるところも多くなっています。
書店の閉店の理由は他にもいろいろあると思いますが。 (T_T)

確かに、電子書籍はクリックひとつで瞬時に入手することができて、読みたいときにすぐに読めるので大変便利です。
また、文字の拡大のほか、さまざまな便利な機能を駆使して、利用者にとって快適な読書生活を堪能できますものね。 (^-^)

あなたは紙の本派ですか? 
それとも、電子書籍派でしょうか?
凛はどちらかといえば紙の本が好きです。 (^^)v

紙の本は「家づくり」に似ている、と凛は考えています。
一冊の本を製作し、販売するためには多くの専門家の方々が携わっていらっしゃいます。
著者、翻訳家、担当編集者は元より、表紙や帯、裏表紙の担当者、コピーライター、校正、校閲、カバーなどの装画、装幀、デザイナー、出版社、紙販売業者、印刷会社、取次会社、配送業者、書店。
もちろん電子書籍に携わる専門家も多くいらっしゃるでしょう。

各々のプロの専門家によって作られた本たち。
「さあ、どうぞ。ぜひお読みくださいませ!」
書店であなたが手にする一冊の本は、多くの方々とのご縁の賜物といえるでしょう。\(^o^)/

さて今回ご紹介いたします本は、紙の本のすばらしさ再発見!となる物語です。
杉井光(すぎい ひかる)氏のミステリー小説『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫、2023年)です。

この作品は単行本の出版はありません。
文庫本の参考文献後の文章のさらに後、奥付の前になる最後の頁に「本書は新潮文庫のために書下ろしされた。」(239頁)と書かれています。
通常の書下ろし作品とは若干表現が異なりますね。

はじめに、凛がこの本を手にしたのは、自宅から30分ほど歩いた街にある書店です。
ネタばれしないようになのか、本全体を丸ごと透明の袋で覆われていました。
この作品は既にネットやTV番組などで話題になっていたのでご存知の読者も多いでしょう。

凛は書店で実際に現本を眺めて「凛さ~ん、この本面白いですよ~」と本からのメッセージがビビビと伝わったので購入しました。
「面白そう。読んでみよう!」
これは子供のころから変わらない凛の習性ですね~ (^-^)

次に、帯や表紙についてです。
凛が持っている文庫本は、2023年の6月30日の第7刷です。
初版が同年の5月1日発行なので、わずか2か月で第7刷になっています。
この作品の人気度がいかにすごいかがわかりますね!

帯についてです。
凛が持っている第7刷の帯は通常の文庫本の帯とは若干異なる紙質になっています。
帯の表表紙側には「小説紹介クリエイター けんご氏絶賛!」「ネタバレ厳禁!予測不能の衝撃のラスト」。
確かに、ネタバレは絶対にいけません!!

帯の裏表紙側には「絶対に予測不能な衝撃のラスト──あなたの見る世界は『透きとおる』」(同書)
とても読書欲をそそります。

表紙についてです。
ベンチから立っている一人の若い男性が、空を仰ぎ見ながら何か考えているようです。
空は全体的にうすぼんやりとしており、ピンク色の様々な大きさの文字がうっすらと浮かんでいます。
男性が立っているベンチの周りにはたくさんの花が咲いています。

裏表紙の説明文には、目立つ大きな太文字で「衝撃のラストにあなたの見る世界は『透きとおる』。」(同書)と紹介されています。
帯と同じような紹介文ですね。
ラストが衝撃なのか!これは読まなくては!と、大変気になった凛でした。

カバーの装画は、ふすま氏です。
カバーデザインは、川谷 康久(川谷デザイン、かわたに やすひさ)氏です。

それでは、内容に入ります。
主人公の藤阪 燈真(ふじさか とうま)は、本の校正をしている母親と二人暮らしで育ちました。
彼が18歳の時に、突然母親が亡くなったため独り暮らしをすることになり、書店でアルバイトをしながら生計を立てておりました。

燈真は、10歳の時に患った病気で一時的に視力を失っています。
その後、視力は回復していますが、以来、彼は電子書籍派として読書を楽しんでいます。

ある日、大御所のミステリー作家の宮内 彰吾(みやうち しょうご)氏が病気で亡くなり、燈真の父親だと知らされることになりました。
燈真と生前の父親との接点はなかったので、驚くべき事実が次々と彼の目の前に迫ります。
宮内 彰吾の遺稿といわれている「世界でいちばん透きとった物語」を探すことになり、燈真の異母兄である本妻の長男、松方 朋晃(まつかた ともあき)氏や出版社の深町 霧子(ふかまち きりこ)さんたちと行動を共にすることになりますが……。

燈真の性格がとてもシャイで、朋晃の激しい性格に翻弄される姿が何とも痛々しいです。
霧子さんへの思いを素直に表に出せない燈真の心境がとてもよく読者に伝わります。

また、実在のミステリー小説の人気作家のお名前も登場します。
ミステリーファンには嬉しい作品です!

本編の最後で終わらずに、必ず奥付の前まで、素直に頁をめくって読んでくださいね!
最後に本を閉じるとき、なるほど、そうだったのか!とすぐに納得できます!
読後のあなたは、杉井 光という作家のことをもっと知りたくなるでしょう。

ミステリー作品なので、あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。

著者の杉井 光氏は、2006年、デビュー作の電撃文庫『火目の巫女』全3巻(メディアワークス、2006年)で、第12回電撃小説大賞の銀賞を受賞☆彡されています。
シリーズものの電撃文庫『神様のメモ帳』全9巻(メディアワークス、アスキー・メディアワークス・KADOKAWA、2007年~2014年)などの他、多数の作品が出版されています。
今後、大いにご活躍が期待される作家のお一人です。

最後に。
優しかった母親が突然亡くなり、独り暮らしを始めた藤阪 燈真に対して、突如として父親の存在を突き付けられることになった現実とは、「世界でいちばん透きとった物語」という父親の遺構作品探しです。
その過程で出会うさまざまな人たちを通して、彼は亡き両親についての理解を深め、自己の内面を再認識してゆきます。
彼の成長物語である、と凛は考えます。

合わせて、杉井 光氏の今後のご活躍に期待します。(^^)v

あらためて紙の本の特徴が伝わる作品です。
出版と販売に携わるたくさんのプロの方々にエールを送りたいですね!\(^o^)/

今回はミステリー作品のため、詳しい内容は敢えて避けました。
ご了承くださいませ。 m(__)m 
秋の夜長に、あなたも良質のミステリー作品をいかがでしょう。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年8月30日水曜日

文房具のことが大好きになれる老舗の専門店です! ~上田健次『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本ではまだ残暑厳しいですが、夕暮れの時間が早くなってきました。
今年の夏は全国的に灼熱列島のようでしたね。
夏バテが出やすい時期です。
あなたはいかがお過ごしですか。

子供たちの夏休みも終わって、既に二学期が始まっている小中学校がほとんどでしょう。
新学期を迎えるにあたって文房具店で学用品を購入する親子連れも多かったかと思います。

あなたは文房具並びに文房具の専門店がお好きですか。
凛は好きですねえ。 (^-^)

学習向けの文房具、シンプルな事務用品、大人向けの高級筆記具、大人の人生を満喫できそうな本革製品。
プレゼント用の可愛いキャラクター商品も多々あります。
文房具店には日常的に用いるグッズや雑貨類、珍しい商品まで多方面にわたって展示されていますね~

書籍と文房具コーナーが併設されている書店も多いので、本が好きな方は文房具も好きという方も多いでしょう。
凛にとっては書籍と同様に、文具を扱っている店内を見てまわる時間は格別です。
特に、文房具の専門店では取り扱っている専門メーカーの品揃えが豊富です。

季節を感じる便箋やカードを見つけたり、新しいデザインののし袋などを見ると、凛は大切な人のことを思います。
デジタル全盛の時代ですが、目的によって工夫されているノートや新しい筆記具を見ると、手書きもいいなと思いますね。
本にかぶせるブックカバーなどを見るとワクワクします。
凛はこのような時間を何よりも愛おしく思います。 (^O^)

さて、今回ご紹介いたします小説は、文房具専門店を訪れるお客様お一人お一人の事情や用途に応じて、専門メーカーの文房具を店主が丁寧に説明しながら紹介してくれるという物語です。
上田健次(うえだ けんじ)氏の長編小説『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)です。
この作品は小学館文庫の書下ろしです。

はじめに、凛がこの本を知ったのは、前回(ココ)ご紹介いたしました岩井圭也(いわい けいや)氏のサイン本を購入した時に、同時に書店で見つけました。
凛が上田健次氏の小説を読むのは初めてです。

広い店内の大型書店には数えきれないほどの書籍が展示されていますが、その中で、今すぐ買って読みたいな~と思う本にどれだけ出合えるかは未知数です。
書店で一冊の本を手に取ることの確率はいかばかりか。
一瞬の邂逅が次の読書につながることも多いですね。

次に、帯や表紙についてです。
凛が購入した文庫本は、2023年5月30日付の第六刷です。
文庫本書下ろしで、初版が前年2022年10月11日ですので、わずか7か月で第六刷になるとは相当人気が高い作品であることがわかりますよね~

気になる帯です。
凛の持っている文庫本の第六刷の帯の表表紙側には、「いつまでも涙がとまらない」と書いてあります。
同じ面には「文房具に秘められた大切な人との思い出に」とも書き添えてあります。

帯の裏表紙側には、「早くも反響の声ぞくぞく!」ということで、三人の読者の方々の声が紹介されています。
長くなりますので、ここでは太字の部分だけご紹介しますね。
「文房具が好きな人にぜひ読んで欲しい」
「文房具ならではの良さ」
「誰かが大切に使うことで、かけがえのない宝物」(以上、同書)

文庫本の表表紙ですが、歴史がありそうな建物に「四宝堂」と書かれた文房具店があり、そのお店の前の道に一人のセーラー服を着た女子学生が立っています。
女子学生の右手にはメモを持っています。
彼女はこれから店内に入ろうとしているように見えます。
歴史がありそうな建物というのは、お店の入り口に四段の階段があり、建物全体にどっしりとした風格がある感じがするからです。

カバーデザインは、寺田鷹樹(てらだ たかき)氏です。
カバーイラストは、KOPAKU(こぱく)氏です。

裏表紙の説明文から、東京の銀座の路地から入ったところに佇んでいる四宝堂(しほうどう)という文房具店は天保五年の創業で、建物の地下には古い活版印刷機もあるという老舗の文房具店であることがわかります。
さぞかし頑固な店主がいるのかと思いきや、さにあらず。
四宝堂の店主は、宝田硯(たからだ けん)という若い青年で、店を一人で切り盛りしていて、少しミステリアスなところがありそうだということです。

「困りごとを抱えた人々の心が、思い出の文房具と店主の言葉でじんわり解きほぐされていく。」
「心あたたまる物語」(以上、同書)
これだけでも十分に期待できそうですね。

それでは、内容に入って、銀座の四宝堂に入店いたしましょう!\(^o^)/
表紙を見ますと、五つのCONTENTSがあります。
「万年筆」
「システム手帳」
「大学ノート」
「絵葉書」
「メモパッド」

これらはほとんどの文房具の専門店で販売していますよね~
それぞれに専門メーカーが何社もあって、拘りのある商品が店内に綺麗に並べられている光景が想像できます。
一番最初の章の「万年筆」を見てみましょう。

大学を卒業して、某企業に4月1日に就職したばかりの青年が新入社員の研修を終えて銀座を歩いています。
彼は一定期間の研修中に、初任給の使い道について、会社の先輩社員から聞いた言葉があります。
「できたら、お世話になった人に何か贈り物をすると、とっても喜んでもらえるよ。私のお勧め」(同書、6頁)と。

そこで彼は、お世話になった女性に贈り物をしようと考えます。
大切な物を添えて。

彼は地方出身で東京のことはあまり知りません。
「やっぱり東京と言えば銀座だろうか。」(同書、7頁)
ネットでいくらでも検索できる時代にありながら、彼は親切に紹介してくれた方からの手書きの地図を見ながら、漸く四宝堂にたどり着きます。

店内に入ると、お香の香りがして、優しく包んでくれるように彼は感じました。
「いらっしゃいませ」という男性の声がしました。
青年は「こんなにも気持ちの良い『いらっしゃいませ』を初めて聞いた。」(同書、9頁)と感心しました。

お客様を迎える時の「いらっしゃいませ」が非常に大切であることが書かれています。
凛も接客業をしている知人から聞いたことがありますが、「いらっしゃいませ」の声掛けは大変に難しいものだそうです。
あまりにも甲高い声は鬱陶しく感じることもありますし、不愛想な声ではもっと嫌な思いをします。
逆に声掛けがないと、このお店に入るんじゃなかったなあ、と思ってしまいます。 (-_-)

店内で四宝堂の宝田店長から便箋と封筒の説明を受けるのですが、ひとつひとつ丁寧に説明をしていただきます。
宝田店長は言葉遣いだけでなく、商品の説明が実に丁寧です。
紙の種類、和洋各種類、罫線、色、縦書き、横書き……。
さすがに専門店で、便箋とお揃いの封筒が二百種類くらいあるとは驚きです!

話はモンブランの万年筆に及びます。
宝田店長による「モンブランのマイスターシュテュック クラシック」「ル・グラン146」(同書、22頁)という商品説明を読んで、凛はネットで検索してみました。
一社の万年筆でも実に多くの商品があるものだなと感心しました。

専用のインクも「ミステリーブラック」「ミッドナイトブルー」「ロイヤルブルー」(同書、25頁)の他にもたくさんあるんですね!
メーカーの歴史から種類、使い方まで実に勉強になりました。

宝田店長が案内する四宝堂の二階の奥には机と椅子があります。
店長は来店した青年にあることを勧めます……。
こんな文房具店があったらいいなあ。\(^o^)/

青年の子供時代から大人になるまでの挿話が綴られており、読者の心に響いてやみません。
心温まる話が実に自然体で描かれています。
文章が全く技巧的ではないのです。
この後はあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。 (^O^)

この後の物語もそれぞれに違った楽しみ方ができます。
銀座の老舗文房具店ではありますが、決して高級品の話題ばかりとは限りません。

例えば、三番目の「大学ノート」の章では、表紙の絵と思われる女子学生が登場します。
彼女は、部活で用いている大学ノートについて悩みを抱えて四宝堂を訪れました。
そして彼女は店内の大学ノートの種類の多さに驚きました。

「コクヨのキャンパスシリーズ」で「B5サイズのB罫はもちろん、罫線だけでもA、B、C、U、ULと五種類もある。その他にも方眼や縦罫、無地、それにドット入りなど。」(同書、158頁)
「こんなに種類があるんだ……」(同書、158頁)
この章の女子学生だけでなく、凛も読後に文房具の専門店に足を運びましたよ~

ところで、四宝堂の店主こと宝田硯の個人的な事柄については、ミステリアスに抑えています。
店長の時は言葉遣いが非常に丁寧で、嫌みも全くありません。

宝田店長と幼馴染の銀座の喫茶店『ほゝづゑ』の良子(りょうこ)さんとは大の仲良しで、ごく一般的な話し方をしています。
読者はこの二人の行方が気になることでしょう。 (^O^)

著者の上田健次氏は、2019年に第1回日本おいしい小説大賞に小説「テッパン」を投稿されています。
「テッパン」は2021年3月に小学館文庫から出版されました。

上田氏は、専業作家ではなく、某大手の衛生用品の会社の執行役員をされています。
現役バリバリのビジネスマンなのです! (^^)v
銀座四宝堂を訪れる登場人物たちの個人的な物語が秀逸なのは、上田氏個人のお人柄とお仕事の影響も大きいのでは、と凛は考えました。

最後に。
東京・銀座の老舗文房具店「四宝堂」を訪れるお客様の人生模様に丁寧に対応する宝田硯店長との触れ合いに心癒される物語です。
文房具に対する愛情が全編にわたって溢れています。
人生の様々な時点における文房具との関わりが如何に大切かが読者にジーンと伝わります。

また、文房具のメーカーについても詳細な情報や背景がよく吟味されています。
このような文房具の専門店があったらいいなあと思いますね~

読後には、文房具と文房具の専門店を愛してやまない方はもちろんのこと、これからご興味を持たれる方が増えること間違いありません!(^O^)

良いお知らせがあります!
何とこの小説の続編が出版されることがわかりました。\(^o^)/
『銀座「四宝堂」文房具店(2)』が小学館文庫から、2023年9月6日に出版予定です。
続編ではどのような文房具が紹介されているのか楽しみです!
そして宝田店長と良子さんとの今後がどうなっていくのかが気になります。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年7月27日木曜日

数学が苦手な方も一気に読めます! ~岩井圭也『永遠についての証明』(KADOKAWA、2018年、のち角川文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りんです。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本は夏真っ盛り!\(^o^)/
いよいよ夏休みが始まりましたね~
ほとんどの地域が梅雨も明け、猛暑の日々が続いています。
暑さだけでなく、突然の大雨もありますね。
大雨で水害に遭われた地域の皆様、心よりお見舞い申し上げます。m(__)m

それにしても今年もものすごく暑いですねえ。(-_-;)
蒸し暑さもありますし、日光に当たるのが憚れらるほどの高い気温で、外を歩くのも大変です。
凛はエアコン無しでは過ごせません。
身体が冷えないように注意しながら、水分を上手にとっていかないといけませんねえ。
暑いときこそ室内でゆっくりと読書したい凛で~す。
あなたはいかがお過ごしですか。

ところで、あなたは数学はお得意ですか。
凛は文系なので、どちらかというと、うーん、どうでしょう……。
中学生の頃までは数学は得意だなと自負しておりましたが、、(^^;
気が付けば文学が最も好きになっていますね。

社会へ出ると、人は苦手な分野にまで時間を割いてはいられないものでしょう。
お仕事以外の貴重な時間をどう割り振りするかはあなた次第。
好きなことで自分の時間を有意義に過ごしたいと思う凛ですが、あなたは時間の使い方についてどのようにお考えですか。

自分の好きな分野で夢中になれること、時間を忘れて熱中できること。
あら、もうこんな時間だ!いけない!
ふと時計を見て、好きなことに集中して過ごした時間に充足感を感じながら、残りの時間に焦りつつも日常に戻っていくひとときの心地よさは格別です。

切ないほどに数学の世界に熱中してやまない若者たちの青春を描いた物語があります。
岩井圭也(いわい けいや)氏の長編小説『永遠についての証明』(KADOKAWA、2018年、のち角川文庫、2022年)です。

数学が苦手な方でも大丈夫で~す!(^^)v
この作品は数学の専門的分野の話ではありますが、数学が苦手な方にも全く問題ありません。
本当に読めるのかなあ、と読む前に不安を抱いていた凛でしたが、一旦読みだすと無我夢中で物語の世界に浸ることができて、一気に読んでしまいました!(^O^)

はじめに、凛がこの本を知ったのは、自宅から少しだけ離れた全国規模の大型書店で、岩井圭也氏のサイン本フェアが催されていたことによります。
凛はこれまで岩井氏の作品を読んだことがなく、今回のサイン本フェアにて多くの作品が出版されていることを知りました。
綺麗に展示されている本を一冊ずつ手にして帯などの説明を見ると、どれも読みたくなりましたねえ。
この作品のタイトルにひかれたことと、文庫本の帯の説明に興味をもったので、レジに直行しました。

次に、帯や表紙について述べます。
凛が購入した文庫本は、2022年11月30日の再販発行のものです。
文庫本の初版が、同年の1月25日ですから、評判が良かったのがわかりますね~

気になる帯ですが、凛が購入した再販の文庫本は、表紙が二枚に重なっています。
これは大変珍しいですねえ。
本来の表紙の上に、もう一枚別のデザインの表紙が重なっており、上になる表紙には帯が印刷されています。
ですから、上になっている表紙は全体が帯と捉えてもよろしいかと思います。

このような帯を兼ねているような表紙は以前にはほとんど見かけませんでした。
細長い帯がひらひらとせずに邪魔になりません。
それに、棚から出し入れする時に帯のしわや破れなど気にせずに済みますね。

上になっている表表紙の帯の部分には「とてつもなく面白かった!! 営業担当全レビュー!!!!」として、三つの項目に星が付いています。
「心揺さぶられ度」には星が5個。☆☆☆☆☆(同書)
「文章の美しさ」には星が6個。☆☆☆☆☆☆(同書)

そして、三つ目の項目!
多くの読者にとって最も気になるであろう「数学知識必要度」の星は1個です!!(同書)\(^o^)/
数学の専門的な知識がなくても読めるんだな、と安心の材料になりました。
この星1個が、凛にとって購入の決め手となったのは言うまでもありません。

文庫本の本来の表表紙は、薄い灰色をベースにして、数学の式が薄い白色の文字で描かれている中に、一人の青年がぽつんと立っています。
まるで彼を中心にして数式が渦巻いているかのようです。
良く見ると、冬の雪が積もっている林の間の道路の真ん中にマフラーを首に巻いた彼が立っており、その地点まで歩いてきた足跡が雪道に残っています。
彼はこれまで歩いてきた道を振り返っているように見えます。

カバー写真は、深町レミ(ふかまち れみ)氏です。
カバーデザインは、坂詰佳苗(さかづめ かなえ?)氏です。

本来の表紙の上に重なっているもう一枚の表紙の上半部分には、濃紺の夜空にたくさんの白い星々がキラキラと輝いています。
この表紙の下半分が先に説明した本来の帯の部分になります。

文庫本の裏表紙の説明文は、重なっている二枚とも同じです。
「圧倒的な『数覚』に恵まれた三ツ矢瞭司(みつや りょうじ)」(同書)は、大学の数学科に特別推薦生として入学します。
彼と同じ特別枠で入学した熊沢(くまざわ)と佐那(さな)の三人は共同研究をし、「画期的な成果を上げ」(同書)ます。

瞭司の数学に対する才能は、それまで築いた三人の関係に破壊を招きます。
熊沢は、瞭司が生前に遺したノートから「未解決問題の証明らしき記述」(同書)を発見して、物語は新たな展開を見せていきます。

それから、この作品は、第9回野生時代フロンティア文学賞を受賞☆彡されています。
冲方丁(うぶかた とう)氏、辻村深月(つじむら みづき)氏、森見登美彦(もりみ とみひこ)氏らの選考委員の大絶賛を受けていることが説明文に書かれています。

というわけで、これはすぐに読みたい!と凛が思った次第です。(^O^)

文庫版の解説は、作家の森見登美彦氏です。
「真理とのつながりと、他人とのつながり」(同書、279頁)から、瞭司が直面したとされる「二重の危機」(同書、同頁)についてご説明されています。
森見氏の解説文を是非お読みいただきたいですね。

では、内容に入ります。
目次を見ると、13の章に分かれています。

第1章目のタイトルが「コラッツ予想」、いきなり来ましたぞ!( ;∀;)
数学が得意な方にはなじみがあるでしょうが、凛には数学の専門分野の洗礼を受ける感じが否めませんでした。
しかし大丈夫、どうぞご安心ください!
どんどん読み進んでいけますからね。(^-^)

物語は、熊沢勇一(くまざわ ゆういち)がかつて学んだ大学の恩師であり、現在は「国数研(こくすうけん)」(同書、5頁)に所属している小沼(こぬま)の元を訪ねるところから始まります。
二人は数年ぶりの再会のようです。

熊沢は青春を共に過ごした同じ大学の友人で、今は亡き三ツ矢瞭司が遺した研究ノートを小沼に見せます。
6年前に亡くなった三ツ矢のノートには、びっしりと数式が書き込まれています。

熊沢によると、「ブルビス理論によってコラッツ予想を証明できれば、数学の風景は一変するはずだ。」(同書、13頁)という私見をもっています。
熊沢はこの仮定をもとにして証明をするために、小沼に協力を要請します。

熊沢や三ツ矢と同じく学生当時の仲間であった斎藤佐那(さいとう さな)との関係も匂わせていますが、ここではまだ詳細は明らかにしていません。

「春はまだ始まったばかりだ。」(同書、14頁)で終わる第1章目。
次の章から、物語は時系列ではなく、過去と現在を行きつ戻りつ、様々な展開を読者に提供してゆきます。

第2章目では、三ツ矢、熊沢、佐那の三人が協和大学の入学式の当日に初めて出会います。
この章のタイトルの「特別推薦生」が示すように、三人は理学部の特別推薦生枠で入学しました。
熊沢と佐那の二人は、高校生の時の数学オリンピックの成績によって、協和大学の「トクスイ」(同書、17頁)に選ばれています。
三ツ矢は彼ら二人とは別口で入学をしています。

大学の先輩である田中(たなか)と木下(きのした)との出会いもこの第2章目です。
二人の先輩は一般的な学生として描かれていますが、大変フレンドリーで後輩の面倒見がよく、後輩の三人にとっては頼れる存在です。
ホッとできる二人の先輩たちがいてこそ、優秀な後輩三人が活きてきます。

とはいえ、二人の先輩も真面目に勉強しているのですよ!
先輩たちの研究テーマは「岩澤理論の一般化」(同書、39頁)で、田中先輩は「保型(ほけい)方式」(同上)、木下先輩は「楕円(だえん)曲線」(同上)を専門にしています。

二人の先輩と新入生の三人は飲み会をします。
その時でさえ三ツ矢は「ムーンシャインの一般化」(同書、31頁)について考えているような数学まっしぐらの純朴な青年です。

三ツ矢は過去からも、この後も数学の研究ひと筋で青春を過ごしてゆきます。
その数学との向き合い方が半端ではありません。
天才というのは彼のことをいうのでしょうか。
周囲との軋轢や批判など一切気にせず、ただひたすらまっすぐ答えを求めて突き進んでゆく生き方を貫きます。

とても輝いていた大学生時代!
その数年が光の世界であるならば、後半は闇へと向かうことに、第2章目で誰が予想できるでしょうか。
やがて三人はそれぞれ別々の道へと分かれることになってゆきます……。

三ツ矢はどのようにして亡くなって、彼のノートを遺したのでしょうか。
熊沢と佐那は何を思って彼の死を受け止め、遺された彼のノートとどのように向き合ったのでしょうか。
そして、彼の遺したノートから熊沢たちは真実の解明ができたのでしょうか。

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^.^)

作者の岩井圭也氏は、2017年に岩井圭吾(いわい けいご)の名義で投稿した小説うつくしい屑」第8回野生時代フロンティア文学賞奨励賞を受賞☆彡されています。

今回ご紹介しました『永遠についての証明』はその翌年に応募し、第9回野生時代フロンティア文学賞を受賞☆彡、出版の際に岩井圭也に改名されています。
他にも多くの作品で賞の候補作となっています。
大変ご活躍されており、今後目が離せない作家のお一人です。(^O^)

最後に。
数学が好きで好きでたまらない三ツ矢瞭司は、協和大学の同期生である熊沢勇一と斎藤佐那の三人で研究成果を生み出します。
青春を謳歌している三人の大学生たちは、やがてそれぞれの道に進むことになります。
時間を止めることは誰にもできず、卒業が訪れます。

研究の道を進み続けることは大変難しいことです。
数学の問題の真実の追究と解明は研究者にとって大変な労力が求められます。
現実との折り合いをつけなければならない問題が目の前に突き付けられたとき、一人の天才はどう対処したのでしょうか。
瞭司が遺したノートには、何が描かれ、何が追究されていたのでしょうか。

この作品は、数学が大好きで青春を謳歌する学生たちと、厳しい現実社会における教授たちのそれぞれの葛藤、嫉妬、軋轢、裏切り、焦燥、協力、共生など、その時々の情景から見える各人各様の様相が見事に描かれています。

また作中で、日本の研究とアメリカの研究における捉え方の違いについて、或る教授が容赦ない形をもって示しています。
このことは、現代日本における研究職を目指す学生さんたちへの警鐘とも捉えることができる、と凛は考えます。

とはいえ、作品の最後には未来への希望が見えて感動しました。
それ故に彼らの生き方が大変切なく、胸がいっぱいになりました。

人生をかけて研究の道を究めることは、実に大変なことなのですね!
作品のタイトル『永遠についての証明』が秀逸であることに凛は感服いたします。

凛は読後すぐに、岩井圭也氏のサイン本フェアに向かいました。
新たに二冊、岩井氏の別の文庫本のサイン本を購入してきました。\(^o^)/
サイン本フェアは大変好評だったようで、展示されていたサイン本がだいぶ減っていましたよ~

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年4月27日木曜日

あなたにとって新しくなった日常とは ~相原瑛人『ニューノーマル 1』(ファンギルド、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

初夏の爽やかな季節ですね~
さあ!日本ではGW(ゴールデン・ウィーク)がもうすぐ訪れます。
あなたはどこかへお出かけされますか。
これまでコロナ禍で外出も控えめにされていた方も多かったことでしょう。
各地のお祭りも今年からはコロナ前に戻って開催される所が多いようです。
街が活気づくのは楽しくなりますね!\(^o^)/

現在、あなたはマスクを外していますか。
凛は臨機応変で対応しておりますよ。

日本では3月13日からマスクを外すことについては個人の判断に委ねられるようになりました。
お仕事中は職場からの指示があるため外せない方々が大半ではありますが、買い物するお店や道行く人々の中にはマスクを外している方も日々見かけるようになりました。
春の花粉症でお悩みの方々も夏に向けてだんだん減っていくかと思われます。
これから暑くなってくれば、人々のマスク姿の光景に変化が訪れていくことが予想されます。

余談ですが、凛は鏡を見て、顎がコロナ前に比べて随分丸くなってきたなあと感じる今日この頃です……。(^^;
ある程度の緊張感は大事ですね~
この3年間ほどマスクで顔を覆ってきたため、ここにきて顎の輪郭が気になってくるとは……。(T_T)

あなたにとってコロナ前と現在では何か変化が生じましたか。
例えば、凛の周辺では冠婚葬祭を家族の少人数で行うようになったことが挙げられます。
それから最近、使いかけの口紅やリップクリームの古いものを処分し、新しいもので気分一新しました。
もう一つ挙げますと、少し遠出をして温泉に入る機会がありましたねえ。

世界中を震撼させたパンデミック後の新しい世界秩序はどのような新しい価値観を生み出していくのでしょうか。
世の中はどんどん変化していきます。
その速度がどんどん加速していっているように感じるのは凛だけでしょうか。

このままマスクをしたままで生涯過ごさなければならくなったとしたら……。
自分以外の他人の顔全体を見る機会が無くなったとしたら……。

今回ご紹介いたします本は、りんりんらいぶらり~で初めてのコミックとなります。
相原瑛人(あいはら あきと)氏のコミック『ニューノーマル 1』(ファンギルド、2021年)です。

コロナとは異なりますが、よく似たウィルスのパンデミックからおよそ20年くらい先のごく近い未来の日本を舞台にして、他人とは距離を置き、自分以外の人の顔はマスク姿しか知らない高校生たちがどのような価値観の中で暮らしているのかを問うている物語です。

はじめに、凛がこの作品を知ったきっかけについてご説明いたしましょう。
コミックは好きなのに最近はあまり触れることがなかった凛が何故この作品を知ったのかといいますと、YouTubeの動画を見たことからによります。

東京都書店商業組合のYouTubeチャンネル「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」(https://www.youtube.com/@tokyo-shoten)(ココ音が急激に出ることがありますのでご注意!)という動画が好きで凛は最近よく見ております。
出版不況といわれる昨今、東京で書店を営んでいる店主さんたちのインタビューと書店内を紹介している動画です。

そのYouTubeの動画の中から2022年3月5日にupされている「八王子市旭町・くまざわ書店八王子店」(https://www.youtube.com/watch?v=4AHF-iJamZs&t=3s)(ココ)(音が急激に出ることがありますのでご注意!)の書店員さんがこのコミックを紹介していました。

動画撮影の時点ではコロナ禍でしたが、早くもコロナ後の世界を描いたコミックということで、凛にはとても新鮮に思えました。
動画の中ではまだ第2巻までの刊行というお話でした。
作品は現時点では第4巻まで刊行されています。

コミックアウル(https://owl-comic.jp/book/)(ココ)は電子コミック配信の出版社ですが、凛の本は4巻とも紙の本で、街の駅ビル内の書店で購入しました。

次に、帯についてです。
凛が持っている第1巻は、2021年7月19日初版第1刷の発行になります。

帯の表表紙側では、「〈パンデミック後〉の世界を生きる若者たちを描く、最新型の‘’近未来SF青春群像劇‘’開幕──!」と描かれています。
「今、コロナ禍を生きる私たちと、未来を生きる君たちへ。」という帯のメッセージが印象深いですね。

本の裏表紙側の紹介文には、「僕たちが生まれる少し前、ひとつの感染症が世界を変えた」と描いてあります。

それでは、第1巻から帯の紹介と内容の説明に入ります。
現在から約20年後と予測される近未来、高校生たちは生まれた時からマスクで覆われた顔しか他人を見ないで育っているため、自分以外の口元に対する「見たい!」という欲求が現在を生きる我々とは計り知れなく大きな隔たりがあるものとして描かれています。

中央第二高校の女子生徒の夏木(なつき)さんと男子生徒の秦(はた)くんはクラスメートの顔だけでなく、家の中でも口元を覆うことが日常となっています。
夏木さんは自宅で両親から若かった頃の話を聞き出したり、昔の映画をこっそり見たりしています。

徹底した感染予防で管理される社会で、二人は傘に隠れてマスクを外した顔を見せ合います。
ある時、公園で二人はまたマスクを外します。
そこへ武装整備をした防疫隊が突然やって来ます……。
二人はどうなるのでしょうか!

後はあなたが読まれてからのお楽しみに!(^^)v

以下は、凛が持っている第2巻から第4巻までの発刊日と帯を裏表紙の説明文の一部を説明いたしますね。

第2巻は、2021年11月17日、初版第1刷発行です。
帯の裏表紙側には、「国内外から反響多数!!!!」
「新しい日常と変わらない、私たちの常識。」と紹介されています。
「コミックシーモア 電子コミック大賞2022エントリー作品」と紹介されています。

この巻の裏表紙側の説明文には、「僕が明日いなくなっても、世界は何事もなく続くんだろうな」と書かれています。
この巻では、防疫隊隊員の男性の過去の話が出てきて非常に興味深く読めます。

第3巻は、2022年7月19日、初版第1発行です。
帯の裏表紙側には、「第25回文化庁メディア芸術祭 審査員会推薦作品選出!!!」と紹介されています。

裏表紙側の説明文には、「今の世界はだいぶ、窮屈だ。だから、こんな場所があってもいい」という紹介文が書かれています。
この巻では、夏木さんは同じ高校の望月(もちづき)さんから誘われて某危険な集会に参加することになりますが……。

第4巻は、2023年3月17日、初版第1刷発行です。
帯の裏表紙側には、「外国語翻訳版 刊行続々!!!!」と出ています。
「フランス語、スペイン語、トルコ語、タイ語、韓国語他」と世界へ作品が紹介されているのも電子コミック配信サイトの利点でしょうか。
もしかしたら紙の本も外国で販売されているのかもしれません。

第4巻の裏表紙側の説明文では、「私たちは今、世界流行(パンデミック)の危機に再び直面している」と書いてあることから、急激な展開が予測されます。
果たして、反マスク団体‘’TEETH(ティース)‘’を取り締まる防疫隊との緊迫した世界で、夏木さんと秦くんは今後どうなっていくのでしょうか。

作者の相原瑛人氏は、2017年に講談社のモーニング・ゼロで奨励賞を受賞☆彡されています。
2018年から2019年にかけて同社のモーニングKCから『美魔女の綾乃さん』を連載、2巻に分けて2018年と2019年に発刊されました。

相原氏の作品はとても丁寧で綺麗に描かれています。(^-^)
主人公たちがのびのびとしていて動きもあり、SF的な話題で展開も早く、現代とも共通する場面も多いので、凛のようにコミックが久しぶりのに読者にも受け入れやすいのではないでしょうか。

最後に。
この『ニューノーマル』という作品は近未来の日本という設定で、現代からそう遠くはない、まさにすぐ近くに訪れる将来の物語です。
現在マスクをつけ続けて暮らしていけば、いずれはこのような未来の若者たちが出現することも想像できます。

今を生きている私たちが知らない間に、気づけば将来はこのような事態に世の中がなっているかもしれないとハラハラドキドキする場面が多い中、公園でおにぎりを一緒に食べようとマスクを外す高校生カップルの自然な姿にはとても近しい気持ちになれました。

新しくなった日常……。
現在の私たちの姿が様々な形で近未来の人々に多大な影響を及ぼしていくのかもしれません。

まだ第4巻までの刊行なので、この先がどうなっていくのか大変気になります。
コミック作者の相原瑛人氏は常に過去から未来までの地球のストーリーを俯瞰しているかの如く存在しているように感じます。
今後の展開に是非期待したいですね!(^O^)

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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