2022年5月30日月曜日

この地球に生まれて何を思う ~三島由紀夫『美しい星』(新潮社、1962年、のち新潮文庫、1967年、42刷改訂版、2003年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お久しぶりです。
日本は春から初夏の爽やかな季節を経て、これから梅雨、やがて猛暑が予想できる夏を迎えようとしています。
あなたはお元気でお過ごしでしょうか。
凛は充電期間……、おっと前回から結構長~く充電しておりますねえ。(^-^;

この間、地球はまさに揺れ動いている状況です。
戦争、流行病、政治、経済不安、株価、半導体、労働、飢餓、貧困、格差、気候変動、地震、大規模火災、火山噴火、海底火山噴火、食糧不足、水問題、洪水、脱炭素、民族問題、宗教、メディア、多様性……。
多くの人々を不安にし、暮らしの営みを窮地に陥れる項目を挙げればきりがありません。

混沌としているこの地球に生まれて、あなたは何を思われますか。
凛はこの先も健康で日々を平穏無事に暮らしてゆきたいと願っています。
恐らくはほとんどの人々が凛と同じ思いを抱いているのではないでしょうか。

凛はよく空を見上げます。
特に夜空の星々を眺めるのが好きです。
星の光の具合の変化を楽しみながら……。(^_-)-☆

あの星の向こうには何があるのだろう。
天体に浮かび上がる星々から地球はどのように見えているのだろう。
宇宙人はいるのかな。

凛はSF的なアニメや物語が好きです。
『スター・ウォーズ』などのSF映画も楽しんでますね~

さて、今回の本は、三島由紀夫(みしま ゆきお)著の小説『美しい星』(新潮社、1962年、のち新潮文庫、1967年、42刷改訂版、2003年)です。
初出は雑誌『新潮』の1962年1月号~11月号に掲載され、同年に新潮社から単行本で出版されました。
その後、文庫化されて、改訂版の後も増刷されています。

凛が持っている文庫本は、この春に整理した凛の書棚からタイトルに惹かれて手にしました。
「美しい星」とは地球のことなのかな。
今、読みたい!
「凛さ~ん、どうぞ読んでくださ~い!」
「は~い!わかりました!あなたの出番ですよ~」
本からおすすめの声が聞こえてきましたよ~ (^_^)v

凛が持っている文庫本は、2013年(平成25年)53刷です。
街の中心部にある全国大手書店の一角で時折催される古書祭りで入手したものです。

表表紙には、男性2名と女性2名の上半身の絵が描かれており、彼らの上空には3機の円盤らしき謎の物体が飛行しています。
装画は、牧野伊三夫(まきの いさお)氏です。

帯の表表紙側には、「没後45年── 新しい三島を体験する。」
「(省略)に怯える日本をミシマは予見していた!」(文庫版53刷)

帯の裏表紙側には長い文章が書かれています。
「今や人類は自ら築き上げた高度の文明との対決を迫られており、(省略)二つに一つの決断を迫られている」(同上)

裏表紙の紹介文には、「宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、(省略)人類の滅亡をめぐる現代的な不安を」描き、「大きな反響を呼んだ作品。」と書かれています。(同上)

何やら難しそう……。
今から9年前の文庫本ですので、現在の表紙は装丁が若干変わっていますが、絵は同じですね。
帯も変わっているかもしれません。
以上に掲げた(省略)の部分がとても重要になっていると凛は考えています。
これらの重要な部分は、あなたが作品を読まれてから、改めてお考えいただくことをおすすめいたします。

では、内容に入ります。
埼玉県飯能市在住の大杉家の家族四人は各人別々の星から来た宇宙人だと信じています。
父の大杉重一郎は火星、母の伊余子(いよこ)は木星、長男の一雄は水星、長女の暁子(あきこ)は金星から、この地球に飛来してきたと家族間で信じています。

自分たち家族四人は地球の人間ではなく、地球の滅亡の危機から救うために動き始めます。
周囲からは変人扱いされている一家ですが、父の重一郎は世間からの評判など一切気にせず、自分の主義を曲げません。
彼は「宇宙友朋会」(うちゅうゆうほうかい)(同上、126頁他)を立ち上げて世界平和のために活動します。

長女の暁子は美しい娘で、彼女と同じ金星人という竹宮青年と文通で知り合い、金沢まで会いに行きます。
後に妊娠がわかり、彼女は処女懐胎であると主張します。

大学生の長男の一雄は、衆議院議員・黒木の私設秘書になります。
一雄は、黒木との関係から、仙台市の羽黒助教授、銀行員の栗田、理髪師の曽根という三人が上京した際に、彼らの東京案内をします。

羽黒ら三人は、一雄の父の重一郎を敵視しており、そこからの展開が圧巻です!
政治、経済、社会、文化、宗教……。
三人と重一郎との激しい応酬を、三島は作品の後半で多くの頁を割いています。
欲望にうごめく人間の醜さを抉り出しています。

以上、あらすじとして説明するには不透明すぎてわかりにくいかもしれませんね。

作品の内容が硬くて、当時の政治や世界情勢が絡み、難解な部分もありますが、結構ユーモラスな箇所も多々あります。
例えば、第二章で、長男の一雄が女性とデートしているところに妹の暁子が表れて女性に嫉妬している場面はとても愉快で笑えます。

人間の普遍的であろうと思われる点もたくさんあります。
例えば、同じ第二章で、「地球人の病的傾向」(同上、60頁)として、「民衆というものは、どこの国でも、まことに健全で、適度に新しがりで適度に古めかしく吝嗇(けち)で情(じょう)に脆(もろ)く、危険や激情を警戒し、しんそこ生ぬるい空気が好きで、……しかもこれらの特質をのこらず保ちながら、そのまま狂気に陥るのだった。」(同上、60頁)
という考えを重一郎に語らせています。
さすが、三島による鋭い洞察力です。

果たして、この地球上に人間がいなくなったら……。
宇宙人から見た地球は「美しい星」なのでしょうか。

文庫本53刷巻末の解説、奥野健男(おくの たけお)氏によると、作品発表時37歳の三島由紀夫は、「地球の外に、地球を動かす梃子(てこ)の支店を設定」(同、367頁)したことにより、結果、宇宙人の視点によって、客観的に地球を眺めることができると説明しています。

作者の三島由紀夫に関しては、世に出された多々の作品が幅広い年代層に支持され、また論じられてきました。
ここでの説明は省略させていただきます。

最後に、45歳で亡くなった三島由紀夫がもしも現代に蘇っているならば、2022年のこの地球上に起きている様々なことを見て何と思うのでしょうか。
「当時と全く変わっていないじゃないか」
それとも「人間力が弱くなってはいないか」

読後、凛はあらためて帯の説明文に納得しました。
再読すると、また違った発見があるように思えてなりません。

余談ですが、この作品は同じタイトルの『美しい星』で2017年に映画化されています。
吉田大八(よしだ だいはち)監督、リリー・フランキーさんの主演です。
作品のHPはここ!です。
原作とは異なり、地球の危機を「地球温暖化」として脚色されています。

凛は映画はまだ観てませんが、この機会に是非観たいなと思います。
映画鑑賞も読書ができることも地球が平和であることが大前提ですね。

本日も凛からおすすめの一冊でした。(^-^)

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