2021年6月28日月曜日

SF古典名作を愉しみました ~アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』(池田真紀子訳、光文社古典新訳文庫、2007年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださいましてありがとうございます。
凛とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お久しぶりです。
お変わりありませんか。
凛はいろいろと野暮用が続いたため、ブログの更新がとっても気になりつつも、すっかりご無沙汰してしまいました。(^-^;
この期間にりんりんらいぶらり~を訪れてくださったあなたには感謝の気持ちでいっぱいです。(^-^)

夏至も過ぎ、本格的な夏になりましたね。
今年も暑い日々が続きそうですねえ。
これからの季節は感染対策はもちろんのこと、熱中症にも気をつけていかなければと思っている凛です。

では、本題に入りましょう。

あなたは異星人の存在を信じますか。
宇宙船らしき謎の物体を見たことがありますか。

凛は二度、夜空をふわふわと飛んでいる宇宙船らしき謎の物体を見たことがあります。

今から5・6年ほど前になるでしょうか。
春の訪れが待ち遠しい季節、夜のウォーキングをしていたときに、そこは街中の公園で、ふと夜空を見上げたら、数色の光を帯びてふわふわと飛んでいる宇宙船みたいな何だかよくわからない物体X(凛がここで勝手に名付けています)がいたのです!
SF映画に出てくるような丸くて平べったい円盤型で、お煎餅のようにところどころふっくらと膨らんだ部分が上下にいくつかあって、底から数色の光を地上に向けて発しているのです。

謎のお煎餅型物体Xは空間に数秒停まっているかと思いきや、ふわりふわりと上下にゆっくり浮遊しながら、するすると音もたてずにビル群の向こうへと飛んで行ってしまいました。
とっても不思議な時間でしたねえ。
X……あれはドローンだったのかなあ。

その時間帯は夜にも関わらず結構公園に人がいて、各々ウォーキングをしていたり、走っていたりしていたので、凛の周囲は一人ではありませんでした。
誰か他の人たちも気づいていたかもしれませんが、どうなのでしょう。
こういうときに凛は想像力をいっぱいに膨らませて、Xが見えているのは凛だけかもしれない……と物語をつくったりするのです。(^-^;

それから約一か月後、すっかり桜の季節の春真っ盛りになった頃、やはり同じ公園ですが、夜空から数色の光で地上を照らしている謎の飛行物体らしき大きなお煎餅型Y(こちらも凛が勝手に名付けています)が数分間空中に浮かんでいるのを発見しました!
前回のお煎餅型Xを見たときよりも地上からもう少し近い高さだったからなのか、Yはとても大きく見えました。

謎の飛行物体らしきお煎餅型Yをその真下に近い所から見上げると、本当に映画の撮影ではないかと思うくらいに丸くて広くて、異星人が乗っているのではという気がしてなりませんでした。

凛の周囲の人々も「あれは何だ?」と言いながら大きなお煎餅型Yを見上げていましたが、Yはとりたてて変わった様子もなくじっと浮いたままだったので、撮影用のドローンかと思ったのか、人々はまた「現在」の意識に移っていきました。

凛は、お煎餅型Yから「特別の時間」を与えられたような感覚がしてなりませんでした。
しばらくの間、じーっと見上げていましたが、だんだん首が疲れてきて、他の人々と同じように「現在」の意識に戻りました。

やはり何かの撮影用のドローンだったのかもしれませんねえ。
一体誰がYを操作していたのでしょう。
周りを見渡しても、撮影している人たちの姿が見られませんでした。
どこか別の場所からの遠隔操作だったのでしょうか。

何だかわからない謎の飛行物体みたいなお煎餅型のXやYには異星人がいたのかもしれないと想像するだけでスケールの大きな話になり、凛はワクワクします。
今から考えると、吸い込まれることもなく、攻撃もされずに良かったと思います。

前置きが長くなってしまいました。

今回の本は、アーサー・C・クラーク氏のSF小説『幼年期の終わり』(池田真紀子訳、光文社古典新訳文庫、2007年)です。
SF小説の古典と言われている名作で、SF好きな方には大変人気の高い作品です。

この作品は、1953年にアメリカで初版が刊行されて以来、世界中のファンに魅了され続けています。
日本では、1964年、早川書房から『幼年期の終り』(福島正実訳、ハヤカワ・SF・シリーズ)として刊行され、その後、複数の出版社から刊行されています。

まず、この本の入手についてです。
凛が入手したのは光文社古典新訳文庫版で、街の書店で新訳版のほうを購入しました。
この新訳版では、第1部の第1章の改稿された作品が収録されています。
凛の文庫本は、2020年10月20日発行の第10刷です。

次に、本の装丁などについてです。
光文社の古典新訳文庫はシリーズ化されていて、装画は、全て望月道陽(もちづき みちあき)氏によるものです。
線画で描かれているのは、地球の人間なのでしょうか。

古典新訳文庫の装丁は、言語圏によって青・赤・緑・茶・桃色の5色に分類されています。
この文庫本は緑色なので英語圏で、装丁家の木佐塔一郎(きさ とういちろう)氏によります。

凛の文庫本の第10刷の帯の表表紙側には、「初版から36年後に書き直された第1章(以下、省略)」「哲学小説」と書いてあります。
帯の裏表紙側には、「黙示録的文学の古典」とも書いてあります。

実は、凛はSF小説は初めての体験なのです。(-_-;)
SF映画はとても好きなのですが、これまでSF小説は難しそうだなあと敬遠してきました。
何故だかわかりませんが、ある日突然、SF小説を読んでみたい!と思って、今回SF小説の初体験となりました。
まさか、異星人からのメッセージ?( ;∀;)

本編の前に、著者のクラーク氏による「まえがき」が掲載されています。

本編は、以下の通り、三部に分かれています。
第1部 「地球とオーヴァーロードたち」
第2部 「黄金期」
第3部 「最後の世代」

海外文学の場合、登場人物の名前がわかりづらく、しっくりこない場合がありませんか。
目次の次に「おもな登場人物」の一覧が掲載されています。
本に添付されている栞には主な登場人物の名前が書いてあります。
栞で確認しながら読むと、登場人物の名前がすんなりと頭に入りやすくなると思うので、この栞は大変便利ですよ~

第1部の第1章は、21世紀のロシア系と思われる宇宙飛行士たちが登場します。
書き直す前の東西冷戦を背景にしたものから、改稿によって約30年ほど時代が進んでいます。

第1部の第2章からは筆者による書き直しは一切ないとのことです。
国連事務総長のストルムグレン氏の登場から、これは地球規模の話なのだということがわかります。
最高君主であるオーヴァーロードと称される地球総督の異星人カレランとの接点が何より興味深いですね。

地球は彼らオーヴァーロードに支配されているのだろうという設定ですが、まだ地球人には支配されている側の意識にゆとりがあるような印象を凛はもちました。
第3章で、「懐中電灯」(60頁他)というグッズが出てきたのが、時代を感じさせるなと思いました。
カレランたちの容姿や思考などはまだ不透明です。

第2部では、第1部から50年経た地球。
時代も世代も変わり、人々の生活も高度な技術によるものに進化しています。
オーヴァーロードのラシャベラクが登場して、容姿が明らかになります。

第3部では、コミュニティに住む一部の人たちとその子供たちとオーヴァーロードとの接点は如何に。
ジャンという青年が重要な役割を果たします。
オーヴァーロードと地球の運命は……。
有名な作品ですが、凛のSF小説初体験のようにまだ未読な方もいらっしゃるでしょうから、あとは読まれてからのお楽しみに。

巻末の解説は、慶應義塾大学文学部教授・アメリカ文学専攻(2007年当時、現在は慶應義塾大学名誉教授)の巽 孝之(たつみ たかゆき)氏す。
「──人類の未来と平和」という題目で、非常に熱く詳しく述べていらっしゃいます。
詳細に解説されており、凛のようなSF小説入門者にもわかりやすく、また読んでみよう!という気持ちになりました。
巽教授による丁寧な講義を聴講している学生のような面持ちで大変勉強になりました。

この後に、クラーク氏の「年譜」が続きます。
最後は訳者の池田真紀子氏による「訳者あとがき」で作品についてまとめられています。

著者のアーサー・C・クラーク氏については、映画『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督、1968年公開)でキューブリック監督と共に1968年のアカデミー賞脚本賞☆彡☆彡にノミネートされ、アカデミー賞特殊視覚効果賞☆彡☆彡☆彡を受賞しました。
また、同映画は1969年、ヒューゴー賞☆彡☆彡を受賞しました。
小説『2001年宇宙の旅』は映画公開後、1968年発表されました。
他にも多数ありますが、ここでは省略させていただきます。

20世紀を代表するSF小説の大家、クラーク氏の作品に触れて、凛は地球人としての自己について考えてみました。
人類は進化していくのでしょうか。
それから地球の運命についても……。
壮大な宇宙からのメッセージがクラーク氏を通して作品に込められているような印象をもちました。

ところで、書き直す前の第1部第1章も是非読んでみます。
21世紀を生きている読者には作品の印象が変わるでしょうか。

時空を超えた不思議な旅ができる!
これこそ文学の愉しみですね。\(^o^)/

またいつもの公園で夜空を見上げてみよう。
昼間にも何か見えるかな。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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文庫-2007/11/8クラーク(著)池田真紀子(翻訳)
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2021年6月8日火曜日

やはり人が財産ですね ~山本甲士『ひなたストア』(小学館文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

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あなたにとってスーパーマーケットは身近な存在ですか。
「そんなの当たり前だ!」とは限りません。
日々の暮らし方には各々違いがありますから、一概にスーパーでお買い物される方ばかりでないでしょう。
それでも「食」は毎日のことですから、やはり生活必需品を扱うスーパーの存在は大きいですよね。

凛は生活圏にあるスーパーの話題についてはいつも気になっています。
毎日のセールだけでなく、近所に新しいスーパーが開店したとか、リニューアルしたとか、とても気になりますねえ。
A店とB店は昔からライバルだけど、A店のほうがスタッフの対応が良いとか、最近客入りが増えているのは綺麗に改装したC店だとか、或いは新規参入の薬局D店の食料品の価格が安いとか、E店は狭いけど野菜や果物が新鮮だとか、F店はセルフレジが使いにくいなどなど、、
それはもう消費者の立場で、勝手気ままに各店を客観視しながら、買い物の度に注目しています。(^-^;

経営者やスタッフの努力は大変なものであろうと思います。
特に昨年からのコロナ禍で、エッセンシャル・ワーカーと呼ばれるスタッフさんたちに、いつも「ありがとう!」と感謝の気持ちをこの場で伝えたいですね。\(^o^)/

今回の本は、山本甲士(やまもと こうし)氏の小説『ひなたストア』(小学館文庫、2020年)です。
廃業寸前の地域密着型のスーパーが、転職したサラリーマンの男性主人公らの活躍によって蘇っていく過程を愉しめる再生物語です。
再生するのはスーパーだけではありません。
転職した主人公の男性のお仕事小説でもあり、また周囲の人々との人情物語でもあり、それぞれの立場で再生します。

この作品は、2018年にハルキ文庫から『がんこスーパー』として出版されたものを改題、加筆改稿して、新たに『ひなたストア』として小学館文庫から2020年2月に刊行されたものです。
『ひなたストア』では、巻末に作者の「あとがき」が加わっています。

まず、この本の入手についてです。
凛は街の書店で見かけたものの購入はせずにメモだけとっていたのですが、後日になってからやはり読みたくなり、大手ネット書店から購入しました。
街の書店さん、今回はごめんなさい。
凛はもちろん書店巡りは大好きですし、ネットからの購入もしますよ~

次に、本の装丁などについてです。
凛が購入した文庫初版本の帯の表表紙側には、「廃業必至!店をV字回復させるには?」と赤い文字で目立つように掲載されています。
その文言の前には小さな赤い文字で「転職早々難題が!」と。
「ここでダメなら、おれもクビ!」とも小さな黒い文字で……。
「わあ、主人公は大変な状況だあ!」ということが一目瞭然です。

裏表紙には、「早期退職勧奨に応じた主人公の青葉一成。」の転職先について概略が説明されています。
ここで、主人公は自ら望んで転職したわけではなく、最初は仕方なく会社の方針に「応じ」なければならなかったことがわかります。

裏表紙側の帯とも合わせて読むと、青葉一成の転職した先の会社の事情で、閑古鳥が鳴いている廃業ぎりぎり間近かとみられる一店舗だけで営業しているスーパーで、見学に来た奥さんや中学生の娘とも絶句状態!
家族もいて、家の住宅ローンもあり、娘の進学も控えているし、中高年になっての転職は大変というのに、将来への希望も一気に瓦解してしまいました。
さて、お先真っ暗な状態から、主人公はどうやって前に進むのでしょうか、というお話です。

表紙のカバーイラストは、おとないちあき氏で、カバーデザインは、高柳雅人(たかやなぎ まさと)氏です。
表紙には、恐らく主人公と思われるエプロン姿の男性の背中が中心に配置されています。
この男性はお客さんとみられる方とお話しているようですねえ。
ここは野菜売り場で、人参やキャベツ、ピーマン、トマト、ネギなどがカゴにたくさん盛られていて、どれも新鮮で美味しそうです。
とても閑古鳥が鳴いているようなスーパーには見えません。

それでは、内容についてです。
主人公の青葉一成(あおば かずなり)は、福岡市に本社を置くサプリメント会社の営業課長職ですが、冒頭から人事部長から退職勧告を言いわたされる場面から始まります。
雇用されている者にとっては「ついに来たか!」と肩たたきを受ける恐怖の場面でしょう。
会社の都合により、業績の悪化を原因にされて、人員整理へと会社は容赦なく社員を切ります。
退職金の上乗せという条件も与えられますが、これから先を考えると、なかなか難しいところでしょう。
主人公の置かれた厳しさに身につまされる読者もいらっしゃるかもしれません。

青葉一成は退職勧告を受けます。
退職の日の情景は「あばよ、会社」といった感じでしょうか。
実に潔い場面です。
彼は過去を振り返ることもなく、前に進みます。

彼の再就職先については旧友のおかげで決まっていたこともあり、新しい環境でうまくスタートができるというところで、予想が見事に外れてしまいました。
呆然とする主人公と家族。
ここからが本当の再生の物語が始まるのです。

転職先の都合で、開発課長として在籍のまま、青葉一成が配属されたのは佐賀県の某地方の廃業寸前のスーパーの「ひなたストア」で、副店長という肩書でした。
このスーパーは一店舗だけの営業で、周囲には全国展開の大手スーパーと、地方で複数店舗も展開している勢いのあるスーパーに囲まれて、ライバルにも匹敵しないという立ち位置の廃れようです。
店舗には空気というのは消費者も感じますよねえ。
つぶれる寸前のお店というのは、活気がなくて品薄で、スタッフも暗くて笑顔がなく入りづらいし、人を寄せ付けない空気感がどよ~んと漂っています。

彼はご家族とも離れ、単身赴任で、重い気持ちで会社の寮である平屋の一軒家に住みます。
そこからが人のご縁が始まります。
あれよ、あれよと、後半は一気読みでした!! (^o^)

最初の改革はスタッフの笑顔から始まります。
「がんこ野菜」(128頁)という無農薬野菜、これが後半の重要なキーワードになります。

そして、人が人を呼ぶのです。
経営者、スタッフ、お客様、野菜農家、ラーメン店、習い事のメンバーなどなど。
メディアやインターネットも活用しますが、評判の持続性には努力が必要です。

「ええーっ!こんなにうまくいくかなあ」
「現実の事業経営は甘いものではありません」
「一店舗だからできるのでしょう」
「大手スーパーにも悩みはあるのだ」
「中高年の転職は厳しいものだよ」
などと批判の視点をもたれる読者も多くいらっしゃるでしょう。
しかし、この小説の中で何かひとつでもポジティブになれるヒントが見いだされるかもしれませんよ。

合わせて、主人公の青葉一成の成長物語でもあります。
主人公の日々を懸命に生きる姿に共感し、応援したくなる小説です。
凛は、この小説は働く者たちへの応援歌でもあると考えます。(^^)v

最後には、転職先の会社から青葉一成に「ある話」がきますが、彼はどう判断し、どのような決断を下すのでしょうか。

また巻末の作者である山本甲士氏による「あとがき」が、まるでエッセイのようで、この作品について実に分かりやすく解説されています。
作者のお住まいの周辺の複数のスーパーに対して、一消費者としての厳しい視点とあたたかなまなざしがみられます。
それらが作品につながっていくことが丁寧に綴られています。

作者の山本甲士氏は、1996年、小説『ノーペイン、ノーゲイン』(角川書店、1996年)で、第16回横溝正史ミステリ大賞優秀作を受賞☆彡してデビューされています。
山本ひろしの筆名で、2004年、小説『君だけの物語』(小学館、2006年)で、第13回小川未明文学賞優秀賞を受賞☆彡されています。
他にも受賞され、多くの作品を刊行されています。

短編集『わらの人』(文藝春秋、2006年、のち文春文庫、2009年、のち改題して『かみがかり』(小学館文庫、2014年)は、2008年に『髪がかり』のタイトルで、河崎実氏監督、夏木マリさんの主演で映画化されています。
他にも映画ノベライズなどご活躍されています。

また、会社からリストラされた中高年の男性が大変に努力するお仕事小説の『ひなた弁当』(中央公論新社、2009年、のち中公文庫、2011年、のち小学館文庫、2017年)もおすすめです。

人と人とのつながりを大切にすることで、たとえどんなに些細なことでも問題解決につながっていく過程が実によく描かれています。
人が財産ですね。

「ひなたストア」はどんどん応援したくなる地域密着型スーパーですねえ。
コロナ禍で「ひなたストア」はどんな策略を練り、展開しているでしょうか。
是非とも続編が読みたくなる物語です。(^o^)

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(小学館文庫)文庫-2020/2/6山本甲士(著)
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