2021年2月20日土曜日

一気読みした後の達成感は格別です ~百田尚樹『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはミステリー小説はお好きですか。
あなたにはお気に入りのミステリー作家はいらっしゃいますか。

ミステリー小説は作者と読者との対峙でもあります。
犯人のアリバイや仕掛けられたトリックの見分け方、張り巡らされた伏線の発見と、広げた風呂敷の最後のまとめ方、探偵や刑事さんたちの大胆な推理や行動などの活躍に魅了されます。
先が気になって、頁をめくる手がとまりません。
夢中になる間に、気がつけば朝になっていた……( ゚Д゚)
な~んてことがよくありますので、翌日がお仕事や学校などがある日に読まれるには充分お気をつけくださいませ。

凛は久しぶりにミステリー小説を読みました。
このジャンルが好きなのですが、読みだしたら止められずにどんどん読み進んでしまいたくなります。
睡眠不足が翌日に響くのは困りますので、最近はあまり読んでいなかったですね。
あなたはいかがですか。

さて、凛が今回ご案内させていただきます本は、百田尚樹(ひゃくた なおき)氏の初挑戦であるミステリー長編小説『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)です。
今やメディアなどで大活躍の百田尚樹氏をご存知の方は大変多いことでしょう。
凛は寝る間も惜しむほどに没頭、ついに一気読みしてしまいました!

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーを見た後、その隣の単行本の新刊コーナーの前に立ったとき、この本が目に入りました。
人気の作家さんですから、増刷されているだろうなと思って手にしたところ、なんと初版でした!
そのときは初版が4冊、棚に重ねてありました。

本好きの者にとって、初版は魅力のあるものです。
近年発刊された初版本に希少価値がどれほどあるかどうかよくわかりませんが、、(^-^;
もちろん増刷された本も良いのですけれど、凛は初版は好きなんですよね~

書店内で既に新刊の文庫本を2冊選んで手に持っていたものですから、新刊の単行本の棚の前でこの本を買おうかどうか逡巡していた凛の前に、凛よりも年上の男性客が現れて、その方が迷わずこの本を手にして、レジにさっと行かれたのです。
その男性客の動きが実に潔くて、残り3冊の中、凛も即座に1冊手にしてレジに行きました。

単行本から文庫本になるまでは最短で約2年かかることが多いので、それまで待てません……
凛は男性客の購入の様子につられたのもあり、えーい!と思い切って、久しぶりに単行本を買っちゃいました。
先に選んでいた文庫本2冊も同時に購入しました。

余談ですが、凛は書店で購入する本は大体一度に3冊くらいが多いですね~
あまり冊数が多いと重いですし、、

この本の表紙は黒を基調に、男性が傘をさして雨の路地を歩いている背中が見えます。
初版本の帯の表表紙側には「前代未聞の『劇場型』誘拐事件」と紹介されています。
帯の裏表紙側には「突如としてネット上に現れた、謎の『誘拐サイト』。」であると説明されています。

6人の男性が誘拐されて、「誘拐サイト」に突如顔写真と名前が公表されます。
これがネット上で話題となり、テレビや新聞、雑誌などの大手メディアを巻き込んで身代金要求事件と発展していきます。
ミステリー小説ですからストーリーの説明はここまでにいたします。
これから先はあなたが読まれてからのお楽しみになさってくださいね。(^-^)

478頁、こ~んなに分厚い本なのに、凛が何故すらすらと読めたのかを三点考えてみました。

第一点目は、大手テレビ局、大手新聞社、雑誌社などのメディアとネットを絡ませた事件で、デジタル社会に於ける昨今の大衆の誰もが興味をひく話題性があることです。
各メディアでご活躍で発信力もある百田尚樹氏であるからこそ描けた内容であると思います。

日本の格差社会の暗部も引き出されています。
作者はメディアの持つ虚と実を縦・横・斜めに織り交ぜて、大衆の視点を集中、或いは逸らせて、巧みに操っているのだと凛は考えました。

第二点目は、視点を変えてみると新たな発見があるという点です。
人生には実に様々な悩みがあったり、躓きをしたりと決して順調にはいかないことがあるでしょう。
その時、少し視点をずらしてみると、見え方が違ってきます。
これは生きていく上で非常に大切な点ではないでしょうか。
事象に於ける表側と裏側を考えること。
このように凛は新たな発見を覚えながら、どんどん先に読み進むことができました。

第三点目は、すっきりとした文章で、映像として同時に楽しめることです。
文学表現に必要とされる修飾や、形容などの描写を省略し、読者がすんなりと移入できるように、実に巧みに表現されています。
登場人物の描写も、余分な描写はなく、会話で心理作戦を施す技術は素晴らしい能力を要します。
読者は読みながら、映像として同時進行で進むことができます。
作者は後のドラマ化や映画化を考慮されているのかもしれないなあと想像しながら読む楽しみがあります。

百田尚樹氏は、関西の朝日放送テレビのバラエティ番組『探偵ナイトスクープ』の放送作家として長年ご活躍されました。

2006年、小説『永遠の0』(太田出版、2006年、のち講談社文庫、2009年)で小説家デビューされました。
この作品は、漫画、テレビドラマ、映画化されましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
2013年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で映画化され、大ヒットしました。

2013年、小説『海賊とよばれた男(上下)』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2014年)は第10回本屋大賞を受賞☆彡されました。
のちに映画化され、2016年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で大ヒットしました。
同様に、テレビドラマ化や漫画化されています。

両作品とも映画などでご覧になられた方も多いと思います。
凛も映画で観ましたが、日本人としての誇りを思い、胸に迫る思いをいたしました。

さらに、2009年には、小説『BOX!』(太田出版、2008年、のち上下巻として講談社文庫、2013年)が第30回吉川英治文学新人賞候補となっています。

ミリオンセラー作家である百田尚樹氏は各メディアなどで現在進行形で大変ご活躍をされています。
発信力も強いので、小説を含めてファンが多くいらっしゃいます。

凛は話題の新刊の単行本を読み終えて、気分も盛り上がりました。
「今」という時代性を感じることも大切だなと思いました。

先日、近くの書店の新刊の単行本コーナーを見ますとこの本が並べられていました。
そっと手にして奥付を見たら、第2刷でした。
初版を持っている!という気持ちと合わせて、うふふふ、既にこの作品の結末は知っているのだ!という優越感でいっぱいの凛でした。

あなたもこの作品で一気読みされませんか。
日常のいろいろなことを忘れて、作品の世界に集中しませんか。
ハラハラ、ドキドキしている内に、気がつけばあっという間にラストを迎えます!
読破した後の達成感は読書の醍醐味ですよ~

但し、翌日のことを気にしなくてすむ日、一日家にいてお出かけしない日、お休みの日か、お休みの前日などに読まれることをおすすめいたします。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)単行本-2020/12/24百田尚樹(著)
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2021年2月11日木曜日

クローゼットの中は夢がいっぱい ~千早 茜『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本のお話でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはファッションに興味がありますか。
お洋服がお好きですか。
あなたのクローゼットにはどのようなお洋服が出番を待っているでしょうか。

2月でまだまだ寒い季節ですが、ファッションの業界では早くも春物が出回っています。
冬物のセールは既に最終処分で、かなり大幅な値引きしているお店が多いので、ラッキー!とお買い得品に出合う方もいらっしゃることでしょう。
ショー・ウィンドウのマネキンが纏っている明るいパステルカラーの春服を見ると、心も軽やかになれそうな気がしてきますから、実に不思議ですよね~

凛はコロナの自粛のため、出かけることが急激に減りましたので、普段着で過ごすことが増えました。
ご近所にお買い物に行くのに、冬のコートの下はリラックスできる服のままで外出しています。
外出先でコートを脱ぐこともなく帰宅しますので、他人にはコートの中まではわからないだろうと思ってしまいます。(^-^;

このようにあまりにもだらり~んと過ごしていると、心身までビシッと引き締まることがないようにも思えてきます。
やはりファッションは気合でしょうか。
頭から足下まできちんと感があると、背筋がまっすぐに上に伸びて気持ちがシャキッとします。(^^)v
意識して適度に身体に緊張感を与えていかないといけないですね。

さて、凛が今夜ご紹介いたします本は、千早 茜(ちはや あかね)氏の小説『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)です。
小説の内容は、タイトルどおりお洋服にまつわる物語です。

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで、この文庫本を購入しました。
表紙は、石井理恵氏の装画で、全体が淡い水色を基調に、高貴な女性が纏ったドレスの下に付けるコルセットが真ん中に描かれています。
昔のお姫様や高貴な女性たちは、美しくふわりと裾が大きく広がったドレスの中に、このようなコルセットを付けていたのでしょう。

初版の文庫本の帯が紺色で、水色と紺色の青系の濃淡がすっきりとしています。
帯の表表紙側には、「消せない心の傷みに寄り添う、」の次に大きな文字で「再生の物語。」と描かれています。

裏表紙の説明文からは、十八世紀を中心にした約一万点を超える洋服類が収蔵されている服飾美術館で洋服補修士として働いている纏子(まきこ)と、デパートで働いている男性店員の芳(かおる)を中心とした話であることがわかります。
二人には子供の頃にそれぞれに傷ついた過去をもっていて、互いに何やら遠い記憶の中にあった過去が浮彫となります。
洋服を共通のテーマにした心温まるお話、という読後の期待感をもたらせてくれます。

物語は、母親の洋服がたくさん収納されているクローゼットの中が夢ふくらむとっておきの場所であった女の子の話から始まります。
本編からは芳と纏子の話が交互に描かれています。
各章で、芳の話はハンガーの絵から、纏子の話は人台(じんだい)の絵から始まります。
人台とは、洋服を縫製するときや販売するときに用いる人体の模型のことです。

芳は、子供の頃からデパートの婦人服売り場を母親に連れられて歩くのが好きな男の子でした。
彼は煌びやかなデパート、そして、女の子が身に纏う美しいドレスに興味を抱いていました。
実際に女の子のドレスを着て外に出たため、それがいじめられた原因となって、傷ついた過去をもっています。
今ではすっかり高身長でイケメンの青年に成長していますが、デパートのカフェの勤務でイマイチ満たされないものを感じながら働いていました。

纏子は、歴史のある夥しい洋服たちを後世に残すため、補修をする仕事に従事しています。
よく絵画や映画、舞台などで目にしたことがある方が多いかと思いますが、華やかな社交界で、男女問わず貴族たちの美への追求を最大限に活かした洋服たち。
様々な時代を反映させてきた洋服たちを、次の世代まで残すために、粛々と服と向き合って補修を続けている日々を送っています。

二人は芳の勤務先のデパートの展示会の準備で出会います。
芳は纏子が勤めている「青柳服飾美術館」(文庫版58頁)でバイトをすることになります。

服飾美術館では、様々な人たちが働いており、また古き時代のドレスたち、現代のデザイナーズブランドの服たちが彼を迎えます。
そして、彼はこれまで知らなかった服飾文化の歴史や決まりごとなどに触れることになります。
それは洋服だけでなく、靴や小物にも及びます。

「あら、昔の男性のレースって豪華だったのかあ」
「へえ、靴って昔は左右の概念がなかったんだね」
などと驚くことがたくさんあります。(^o^)

アパレル関係に従事する方々(デザイン、製糸、生地製造、縫製、流通、倉庫、販売など)や、服飾の歴史などを学んでいらっしゃる学生さん方にもおすすめしたい本です。
服飾に関するお仕事小説として学べる点が多いと思いますよ~

さて、纏子と芳の二人の再生とはどうなるでしょう。
それはあなたの読後のお楽しみとして残しておきますね。

文庫本の巻末には、文庫化記念として、作者の千早 茜氏と、公益法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のキュレーターの筒井直子氏との対談が掲載されています。
千早氏による財団での綿密な取材がこの小説の起爆となったことがわかります。
筒井氏の説明がとても丁寧で、小説の全容が理解できます。

小説を先に読まれてもよろしいですし、小説よりも先にこちらの財団のHPを見られると、小説のイメージづくりがよりわかりやすくなるかもしれません。
あなたのお好きな順番でどうぞ。

公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のHPはこちらです。

文庫版の解説は、作家の谷崎由依(たにざき ゆい)氏です。
洋服の歴史を知ることは、フランス革命など世界史と密接に関係していることが非常によくわかります。

谷崎由依氏は、2007年、小説「舞い落ちる村」で、第104回文學界新人賞受賞☆彡されています。
この作品は、小説「冬待ち」を併録して、2009年に『舞い落ちる村』として文藝春秋から刊行されています。
また、2019年、短編集『鏡のなかのアジア』(集英社、2018年)で、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されています。

作者の千早 茜氏は、幼少期をアフリカのザンビアで過ごされています。
2008年、『魚神(いおがみ)』(「魚」改題、集英社、2009年、のち集英社文庫、2012年)で、第21回小説すばる新人賞を受賞☆彡し、作家デビューされました。
翌2009年、同作で第20回泉鏡花文学賞を受賞☆彡されています。

2013年、連作短編集『あとかた』(新潮社、2013年、のち新潮文庫、2016年)で、第20回島清恋愛文学賞受賞☆彡されました。
また、同作品は第150回直木三十五賞の候補となっています。

さらに、2014年には、小説『男ともだち』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回直木三十五賞の候補となり、同年に、第1回新井賞を受賞☆彡されています。
また、翌年の2015年に、同作で第36回吉川英治文学新人賞の候補にもなっています。
他、多くの作品を世に出されています。

よそゆきの一張羅、とっておきのドレスを纏って心ときめきたい!\(^o^)/
洋服は着る人の心を映すものです。
綺麗に見せてくれるものです。

あなたのクローゼットのお洋服たちもあなたを美しく見せてくれるでしょう。
インスタ映えしたら、すぐにおさらば!という方もいらっしゃるのかな。

凛は、普段のカジュアルな服もよいけれど、時には素敵なドレスでお洒落をしてみたくなりました。
しかし、繊細なドレスは丁寧に扱っていきたいものです。
その前に、凛はクローゼットの中身をもう少し整理しなくては……

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/11/30千早茜(著)
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