2020年6月23日火曜日

「多様性」とは画一的ではないことだけなの?

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

本がお好きなあなたは、お家でお過ごしされることも多いのではありませんか。
凛は、相変わらず読書にいそしんでいます。

日本では新型コロナウィルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言は解除されました。
それにしても暑くなってきました。
マスクが鬱陶しくなりました。

今年に入って、世界を恐怖に陥れた新型コロナウィルスの感染拡大による影響で、日本からは外国人観光客が大幅に減りました。
観光地だけでなく、あらゆる街で、またはお店で、外国人の姿を見かけなくなりました。
あらためて、これまでインバウンドで如何に国内が賑やかになっていたかを実感することが増えました。

世界的なウィルスの感染状況の地図を見る度に、グローバルな世の中を認識せざるをえません。
人の移動が増えただけでなく、人と人との関係も国家という枠組みを超えて、新型コロナウィルスの感染という形で、私たち人間に対して何かを訴えているのではないかと考えさせられる今日この頃です。

凛は、日本人として日本で生まれて育ちました。
これまで他府県に転居を数回してきた体験では、県民性の違いに戸惑うこともありました。
外国を旅したことは多くはありませんが、一応日本から脱出して旅に出たことはあります。

「多様性」について、凛はきちんと向き合ってきたでしょうか。
或いは、直面することがあったでしょうか。
ふとこれまでの来し方を考えると、ほとんどそれは皆無に近かったのではないかと、凛は胸の奥が痛むのです。

何故に、凛は胸の奥が痛むのでしょうか。
凛は、表面では、人はそれぞれに違いがあると言ってきました。
個性を認め、人として考えが違うのは当然です。
頭では理解しているつもりで、言葉に出すのは簡単なことです。

しかしながら、果たして凛がとってきた行動は机上の空論ではなかったかと思うのです。
流行を少しだけ取り入れたファッションに身を包み、誰もが認める生き方を求める思考パターン。
それらが画一的である枠の中におさまっている安心感に浸っていたこと。
思考と志向との違いの垣根を曖昧にして、周囲に同調しながら、凛は何となく生きてきたように思います。
つまり、「多様性」について、頭で考えていることと行動とがかみあっていなかったのではないかと思います。

これまで何も疑問に思わず、当たり前として生きてきたことに対して、「ちょっと待てよ」と、自己を見つめ直す機会がありました。
それは、凛がかつてお世話になった英語の先生からおすすめだと大絶賛された一冊の本との出合いでした。

ブレイディみかこ氏のノンフィクション『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社、2019年)です。
2019年6月に刊行されて以来、瞬く間にベストセラーとなっています。

あなたも書店の店頭にこの本がたくさん並べられている光景をご覧になられたのではないでしょうか。
凛が書店で初めて見かけたときは、黄色い表紙に帽子をかぶっている男の子の絵がとても可愛くて、すぐに目に入りました。
本の緑色の帯には、黄色の文字で「一生モノの課題図書」と出ているのがとても気になりました。
凛が持っている本は、2019年11月刊行の第11刷です。

日本人として生まれ育ったブレイディみかこ氏は、息子さんと白い肌のご主人との三人で、英国で暮らしていらっしゃいます。
息子さんが進学した公立の中学校で日々直面する出来事を通して、息子さんとご主人と共に話し合い、考え、乗り越えていく姿勢が具体的な事実をもって綴られています。

ブレイディみかこ氏は、日本のメディアにも多く出演されていらっしゃるので、今後もますます多くの方に読まれていくでしょう。
「母ちゃん」「父ちゃん」などと親しみのある文章はとても読みやすく、読者への配慮が感じられます。
会話文も多く、自然体な言葉で描かれているからか、日本で中学生の男子を子育て中のご近所のママといった親近感があります。

凛がこれまで抱いていた英国という国家ですが、エリザベス女王や故ダイアナ妃、ビートルズ、それに世界史で学んだかつての大英帝国、古典のシェークスピア劇などによる伝統とは大きく異なる印象を突きつけられました。

階級社会、移民、人種、貧困、格差社会、アイデンティティ、教育システム、性差など。

あらゆる違いが「多様性」という言葉の中で、渦を巻いて、息子さんの前に現実のものとして大きく立ちはだかります。
そして、それらの問題をひとつひとつ真剣に考え、壁を乗り越えながら、成長する息子さんを見守っていく母親と、それを大きな視野をもって見守るご主人との三人のご家族との関係がとてもまぶしいほどの光を放っています。

凛の胸がとても痛んだのが、母親と息子さんの日本での出来事の場面でした。
みかこ氏の故郷の居酒屋で、日本語が話せない息子さんへのいら立ちを母親にぶしつけな態度であたった会社員、そしてレンタルビデオ店での店長の応対。
これらの場面は、凛ももしかしたら、この登場人物たちと同じ対応をしていたかもしれないと思ったからです。
みかこ氏からの指摘がなければ、凛には気づかない点でした。

「多様性」この言葉の答えは簡単には見つかりません。
体験しなければわからない大きな意味を含んでいるのではないでしょうか。
まさに地球規模の言葉でしょう。

しかし、「多様性」を用いるのは、良い意味ばかりではないとも凛は考えます。
簡単に答えが見つからないからこそ、あらゆる場面で用いられて、都合のよいように悪用される懸念も含まれているのではないかと危惧します。

例えば、企業が規模を拡大するとき、または縮小するとき、「多様性」という言葉を用いて社員を異動させたり、リストラさせたりすることなども想定できるからです。
それだけに、教育現場で子供たちの成長期に「多様性」について考える機会を与えることは必要なことであると凛は考えます。

「多様性」とは、画一的ではないことだけなのでしょうか。
それとも画一的であることも含めてもよいのでしょうか。
答えは、各人各様で求めていきましょう。

第2回Yahoo!ニュース│本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞受賞☆彡、第73回毎日出版文化賞特別賞受賞☆彡、第7回ブクログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)受賞!☆彡、キノベス!2020 第1位!☆彡などなど、まだまだ書ききれないほど多く受賞された本です。

黄色い表紙の男の子が靴の紐を触っている絵、これにはブレイディみかこ氏からのメッセージがこめられています。
その答えは本の中に書かれています。

書店にて、黄色い表紙の単行本はとっても目立ちますよ!
文庫本になってから読もうと思うのは、少し時間がもったいないように思います。
あなたにとっての「多様性」とは何かを考えさせらる本です。

新型コロナウィルス関連から地球全体を考えるよい機会です。
あなたもこの地球上の住民として、「一生モノの課題」と取り組みませんか。
あなたに是非おすすめしたい一冊です。(^o^)

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2020年6月13日土曜日

あなたの人生はあなたのもの

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださいまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは、あなた自身の人生について考えたことがありますか。
人生。
とても重みのある言葉ですよね。
人生とは、文字通り、人が生きることでありますし、人がこの世に生まれて死ぬまでの期間のことでもあります。

凛もよく凛自身の人生について考えます。
もちろん生きているからこそ考えるのですが、子ども時代からの過去の体験から、今、置かれている現状を捉え、そして未来への凛の姿を思い描くのです。

人は誰しも幸せになりたいと願うでしょう。
あなたは今が幸せだと感じていらっしゃいますか。
幸せなあなたは、このままずっと幸福感に満たされていたいと思うでしょう。
そのためには、どうすればよいのか、どうしたら幸福感が続くのかと考えることは大事なことだと思います。

そもそも幸せな人生とは何なのでしょう。
それは人生観につながり、個人によって異なるものです。
あなたの生来の性格に加えて、これまでの体験や環境、教養などの積み重ねが織りなしていくものでしょう。

ふとした時に、今の自分のこの人生は、果たして本当のものなのだろうかと、立ち止まって考えることはありませんか。
いや、もっと違った人生を生きている自分がいるのではないかしらと。
或いは、今はまだ知らない世界に本当の人生があるのではないのかと、将来を考えることもあるかもしれません。

現実とは何でしょう。
人生の分岐点とは何でしょう。
ああ、あのときがそうだったと、ふりかえることが訪れたとき、ええ、これで良かったのだと凛は肯定したいです。
何故ならば、もし、ああ、これは違う、こんなはずではなかったと思うならば、これまで生きてきたことの全てを否定することにつながるからです。
今のこの瞬間を生きている、それが幸せであると実感するには、日常の修練が求められるのではないかと、凛は考えています。

今の私が生きている世界、これが私の「本当の人生なのか」と疑問に思う人々のお話、それが大島真寿美氏の小説『あなたの本当の人生は』(文春文庫、2017年)です。
初出は『別冊文藝春秋』303号(2013年1月)~311号(2014年5月)です。
2014年に文藝春秋から単行本が刊行されています。
この作品は、2014年の第152回直木賞の候補作☆彡になりました。

凛が持っている第2刷(2019年8月)の文庫本の帯には、「『書くこと』に囚われた女たち」と紹介されています。
小説を書きたい新人作家の若い國崎真実が、書くことができなくなっている老作家の森和木ホリー氏の館で住み込みの弟子となり、その館でホリー氏の秘書として仕えている宇城圭子と出会います。
物語は、これらの三人の女性たちの奇妙な生活がユーモアたっぷりに描かれています。

「書くこと」について深く考える三人の女性たちは、各人が自分の人生について、果たしてこれが「本当の人生」なのだろうかと疑問に思いながら、物語は進んでいきます。
彼女たちは、それぞれに過去があり、分岐点があり、そして現在があるのですが、各人ともそれぞれの時点で奇妙な行動をします。
そして、未来に向かって、彼女たちはどのように思考し、行動していくのでしょうか。

三人の女性たちの生き方に寄り添って読み進みながら、今を生きている人生とは本当のものなのだろうかと、作者である大島氏と共に考える、つまり、登場人物と作者と読者との三位一体で時間の共有ができるのが、読者への最高の贈り物であろうと、凛は思いました。

また、彼女たちの周囲には、編集者、森和木ホリー氏の別れた元ご主人とその息子の三人の男性が登場して、彼女たちとの関係にピリッとしたエッセンスをふりまいてくれます。

この作品は、2014年の第152回直樹三十五賞の候補作☆彡にもなっています。
文庫本の巻末には、直木賞作家の角田光代氏の解説が掲載されています。
この角田氏の解説で、「本当の人生とは何だろう」ともう一度考えさせられるという、読者への素敵なプレゼントがありますよ。(^-^)

大島氏は、1992年、「春の手品師」で第74回文學界新人賞を受賞☆彡されました。
この作品は、『ふじこさん』(講談社文庫、2012年)に掲載されています。
2019年、時代小説『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋社、2019年)で第161回直木三十五賞を受賞☆彡されています。
受賞歴も多く、これからも注目したい作家のひとりです。

凛は、森和木ホリー氏の館にあるとっても広いお風呂に入って、國崎真実が揚げるさまざまな素材のコロッケを食べたいですねえ。
人生について考えたいあなた、幸せを願うあなた、そして、コロッケが大好きなあなたには、是非おすすめしたい小説です。
揚げたてのコロッケをはふはふと頬張りながら幸せだと感じるあなたの人生は、あなたのものに違いないのですから。(^-^)

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(日本語)文庫-2017/10/6大島真寿美(著)
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2020年6月2日火曜日

近未来の日本を猛毒ウィルスが襲う!

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださいまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

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あなたは今、おうちでゆっくりなさっていらっしゃることでしょうか。
一日の終わりに、ほっとできるくつろぎタイムを迎えるのは幸せを感じますねえ。(^o^)

新型コロナウィルスの影響による緊急自粛宣言が解除されて、これまでの暮らしを取りもどしながら、新しい生活様式を迎えることになりました。
この自粛期間に、あなたの周りには様々なことが起きませんでしたか。
第2波や第3波の襲来が懸念されていることもあり、凛も新しい生活様式をどのようにするのかを自身に問いながら暮らしているこの頃です。

今回の新型コロナウィルスは世界中の人々に脅威を示しました。
基本の第一は、衛生に気をつけることのようです。
まだ終息したわけではありませんし、これからもまた新しいウィルスが出てくるかもしれません。
人間はウィルスとうまく共存してゆかなければならないことを再認識せざるをえません。

このような時期だからこそ、新型コロナウィルスが終息した後の世界はどう変わるのかと、不安に思うのは凛だけでしょうか。
既にいろいろな憶測もあるようです。
ウィルスが蔓延する前と後ではどのような違いが起こるのでしょう。

そのようなことを考えつつ、凛が時折通っている書店であなたにご紹介する本を見つけました。
このようなふとした出合いがリアル書店にはあります。(^-^)

福田和代氏の小説『バベル』(文春文庫、2019年)です。
この作品の初出は、『別冊文藝春秋』2012年11月号~2013年11月号となっています。
2014年に、文藝春秋から単行本として発刊されました。
強毒性のウィルス蔓延前後の世界が交互に描かれている作品です。

作品の舞台は、近未来の日本です。
新型の最強ウィルス「バベル」が日本を襲います。
原因不明で、感染が瞬く間に爆発し、日本は行き場を失います。
「バベル」は、外国では弱毒性のウィルスでしたが、何故か日本では強毒性のウィルスとなり、猛威を奮うのです。
ワクチンも薬もない事態で、次々と日本国内在住の人々が感染していきます。

出血して亡くなる感染者が増えます。
生存している感染者の中で、さらに二つに分かれるのが「バベル」の特徴です。
それは、感染の後遺症として、言語能力を失う人たちと、そうでない人たちです。
すなわち、言語のコミュニケーションがとれるか、否か。
わかりやすく言えば、会話ができるか、できないかに二分されます。

人間にとって、言葉を失うというのはどういう状況になるでしょうか。
理解を示しているようでも、言葉を発することができません。
数字の概念がわからない人もいます。

このような状況が日本を襲うのです。
そこで、日本政府はある重大な決断をします。
それは、全世界の人々を驚かせるような究極の判断でした。

小説では、最強ウィルス「バベル」が日本を襲ったときのことを「あのこと」と称します。
「あのこと」の「前」と「後」を交互に描いていく構造になっています。

読者は、「バベル」ウィルスが人々を襲っていく様子を「あのこと」の「前」で知り、「後」では全く様相が変わってしまった日本を知ることになります。
凛は、この「前」と「後」との対比に、背筋が凍るような恐怖を感じつつ、頁をめくる手が早くなりました。

「前」では、如月悠希という女性が、恋人の渉の突然の感染によって、生活に大きく変化が生じます。
「後」で、アメリカ人ジャーナリストのウィリアムが来日して、ユウキという女性に会います。
「後」では、パンサーという怪しげな集団が登場します。

ウィルスの「バベル」という名前が示す意味は。
悠希と渉の運命は如何に。
この小説には構造だけでなく、さまざまな工夫がなされています。

作者の福田和代氏は、2007年、ハイジャック犯の航空謀略を描いた小説『ウィズ・ゼロ』(青心社、2007年)でデビューしました。
2011年、東京をテロリストが襲う小説『ハイ・アラート』(徳間書店、2010年、のち徳間文庫、2013年)では大藪春彦賞候補☆彡となりました。
以後、多くの作品が発表されています。
元金融機関のシステム・エンジニアの視点を活かし、ご活躍が期待される作家です。

人と言葉を交わすのは、口から発するものだけではないことを、凛はこの小説で納得しました。
もちろん、ウィルス感染予防に注意することは根底にあります。

凛は、この作品が予言書にならないことを願います。
しかし、絶対にこのようなことが起こらないとは断言できません。
人類に対するひとつの警告として、読んでみられてはいかがでしょうか。
強毒な新型ウィルスの猛威を描いた小説として、あなたにお勧めの一冊です。(^-^)

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(日本語)文庫-2019/3/8福田和代(著)
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