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2025年8月31日日曜日

美味しいパンには愛があります! ~土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

いや~、今年の夏も暑いですね!!
「暑かった」と過去形ではなくて、現在も進行中の暑さです。( ;∀;)

あなたはご体調にお変わりありませんか?
日中の気温が40℃だなんて、冗談では済ませられなくなってきましたよ。
「そのうち40℃になるかもしれませんねえ」と初夏になった頃に話していましたが、本当に40℃になるとは……。
暑さ対策でエアコンが必需品になりましたね。

9月以降もまだまだこの暑さは続くのでしょうか。
お~い、日本の秋さ~ん!
涼しい秋はいつ頃訪れるのですかぁ。 (^o^)丿
この暑さでへこたれるわけにはいきません。
美味しいものを食べて、ほっこりしたいものですねえ。(^O^)

あなたはパンはお好きでしょうか。
凛はパンが大好きです!
パン屋さんに入ると、香ばしいパンがずらりと並んでいますよね。
凛もお気に入りのパン屋さんで好みのパンを選んでいるときの幸福感がたまりません!!

今回ご紹介いたします作品は、パン屋でアルバイトをしている大学生の女性が日常で遭遇した謎を解く「美味しい」ミステリー小説です。
土屋(つちや)うさぎ氏の連作ミステリー小説『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)です。
2024年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作です。☆彡
単行本のみの刊行となっています。

この作品は今年の1月24日に発行されてから人気が広がりました。
既に読まれている方も多くいらっしゃるでしょう。
ミステリーといっても全然おどろおどろしい話ではありません。
日常の身近なことや、ふとしたことから生じる疑問についての謎解きです。

また、パン屋で働くパン職人さんたちのお仕事小説でもあります。
クロワッサンやカレーパンなど人気のあるパンの紹介やプロのパン作りについてなど、パンが食べたくなる要素がふんだんに盛り込まれています。
読みながら、焼きたての香ばしいパンをほおばりたくなります。(^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛が聴いている地元のラジオ番組の本の紹介コーナーに、著者の土屋うさぎ氏が電話で登場したことで書店に直行したのでした。
各書店ではこの本が目立つようにたくさん並べられていて凛は気になっていたのですが、ラジオで著者ご本人の生の声を聴いて、読みたくなったのは言うまでもありません。
凛が持っている本は、2025年1月24日付の初版です。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
帯の表表紙側には、もちろん目立つように「『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作」とデーンと書いてあります。
その下に「クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン… 焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!」
さらに下には、「選考委員絶賛!」と翻訳家・書評家の大森 望(おおもり のぞみ)氏「全体を包む空気感が魅力的」をはじめ、著名な方々のメッセージが書いてあります。(以上、初版本帯)

帯の裏表紙側には、「"美味しい"ミステリー、召し上がれ!」と8名の書店員さんからのメッセージが実名入りで掲載されています。
こちらも本作品への愛を感じてやみません。
小説の読後に再度目を通すと「はい、確かに!」と納得した凛です。

二番目は、表紙について。
全体の色が焼いたパンの色を彷彿とさせる茶色の濃淡となっているのが印象的です。
中心部に主人公らしき女性が、オーブンから出したトレーの焼きたてのパンを店内のかごに並べている絵となっています。
女性の顔は笑顔で、パンに対する愛情が描かれています。
表紙を見ただけで、凛はパンが食べたくなりますね。 (^^;

装画は、出水(でみず)ぽすか氏です。
扉絵は、著者の土屋うさぎ氏です。
装幀は、菊池 祐(きくち ゆう)氏です。

それでは、内容に入ります。
1頁の目次を見ますと、五つの章とエピローグがあります。
各章のタイトルに思わず「パンが食べた~い!」と食欲と葛藤する凛でした。(^^;

第一章は、「焦げたクロワッサン」
第二章は、「夢見るフランスパン」
第三章は、「恋するシナモンロール」
第四章は、「さよならチョココロネ」
第五章は、「思い出のカレーパン」
最後に「エピローグ」となっています。(同書)

どのパンも好物ですね~
あなたはどのパンがお好きですか?

では、あらすじです。
第一章から。
主人公の市倉小春(いちくら こはる)は、大阪の豊中市の大学一年生で、漫画家を目指しています。
彼女は大学に入学した春から一人暮らしを始めたので、同市内にあるパン屋の『ノスティモ』でアルバイトをすることにしました。
何故パン屋のアルバイトを始めたかというと、「売れ残りのパンが貰えるからだ。」です。(同書、6頁)

ノスティモは、従業員数15名未満の個人経営店で、パンの他にケーキも製造しています。
二階にカフェがあり、「居心地のよさと上品さが合わさった」「オシャレなお店」(同書、同頁)です。
「青を基調とした店内は、いつもパンとコーヒーの香りで満たされており、大学の近くにあるため学生にも人気がある。」(同書、同頁)
ここを読んだだけでも行ってみたくなるお店ですね~

ノスティモは最寄りの駅「石橋阪大前駅から徒歩十分」(同書、同頁)と書いてありますので、もしかしたら実在する店舗なのでは?と思ってしまいます。
四十代半ばの男性、堂前(どうまえ)店長と、女性社員の福尾(ふくお)さんたちとのコミュニケーションもなかなか良い雰囲気で、ぎすぎすしていない人間関係が出ています。

美味しいパンやケーキには、作り手側の感情は経営戦略のひとつとして大切な要素であると凛は考えます。
とはいうものの、凛はパン屋やケーキ屋を営んだことはありませんので、あくまでも消費者側から見ての考え方です。
やはり美味しさあってのパンやケーキではないでしょうか。

小春の親友、由貴子(ゆきこ)は、先にノスティモにアルバイトとして入っており、小春にアルバイト先として紹介しました。
小春にとっては「恩人」(同書、15頁)の由貴子でした。
仲良しの二人だったので、小春にとってはいつまでもノスティモで一緒にアルバイトできると信じていたのでした。

ところが、由貴子がノスティモを辞めると言い出しました。
そこから二人には少しずつ距離感が出てきます。

『想剣演舞』(そうけんえんぶ)(同書、17頁)のライブビューイングを一緒に観るという約束をしていて、二人とも楽しみにしていました。
ところが、前日になって急に由貴子が行けなくなったと小春に告げます。
その理由は、由貴子がノスティモのシフトに入ることになったと言うのです。
シフト表では個性的なレナ先輩が入る予定になっていたはずです。

何故に、由貴子はレナ先輩の変わりに急にシフトを交替することになったのか?
これが第一章での謎解きのテーマになります。
この謎解きから、何故に由貴子がノスティモを辞めることになるのか?につながります。

レナ先輩の代わりにシフトの交替をすることになったと主張する由貴子。
悶々とした感情の中、サンドイッチに用いるたまごフィリングの状態があまりよくなかったことからも余計に小春の内面は落ち着きません。

合コンがあったからシフトに入れなかったというレナ先輩と小春とのやりとり。
レナ先輩は天王寺動物園に行った動画を二人のスマホに送信しましたが、由貴子はスマホの充電が少なくポケットの中にしまい込みました。

ライブビューイングが観られなかった由貴子のために、小春は由貴子の部屋でライブの見逃し配信を一緒に観ようと提案しました。
小春からの提案を受けた由貴子とバイトからの帰り道のこと。
小春は由貴子に、サーティワンのアイスクリームの誕生日無料クーポン券を使ったのかと尋ねます。

「あっ!使うの忘れてた」(同書、29頁)と由貴子の意外な返事。
そんなのあり得ない。
一人暮らしの学生にとって、無料のクーポン券は大変貴重なものなのに。
いつもとは違う由貴子の態度に、小春の心の中で呟くのでした。

「──ねえ、ゆっこ。あなたは何を隠しているの?」(同書、31頁)

由貴子の部屋には「推し」のハセピー(同書、20頁他)グッズがたくさんありました。
パソコンのディスプレーを通して『想剣演舞』に魅入る二人の会話の中に、謎解きのヒントが……。

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^.^)

このように、日常のちょっとした疑問、ふとした違和感、あれ?といった感覚を小春は細かく分析し、追究してゆきます。
章が進むにつれて、パンの作り方の他、歴史や説明、店内の人間関係、常連客とのやりとり、同業の他店舗の研究など、頁が進みます。
気がつけばあっという間にエピローグとなります。

パン屋のアルバイト体験は、小春の今後の人生に大いに役に立つことでしょう。
大学の卒業とプロの漫画家を目指す小春の活力にエールを送ります! \(^o^)/

著者の土屋うさぎ氏は、プロの漫画のアシスタントを兼ねるプロの漫画家です。
2023年、『あぁ、我らのガールズバー』で集英社・第98回赤塚賞順入選☆彡ほかにも受賞されています。
2024年、『文系のキミ、理系のあなた』(一迅社『コミック百合姫』2024年6月号)で第30回百合姫コミック大賞翡翠賞を受賞されています。☆彡

同年、本作品で第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞☆彡され、小説家としてデビューされています。\(^o^)/
土屋氏の小説、漫画と楽しみが増えますね。

巻末には、第23回『このミステリーがすごい!』大賞選考結果(同書、245頁)と、前述の大森望氏、コラムニストの香山二三郎(かやま ふみろう)氏、ライターの瀧井朝世(たきい あさよ)氏による選評(同書、246頁~253頁)が掲載されています。
ミステリー好きなあなたへ、是非こちらもお楽しみに! \(^o^)/

最後に。
大学一年生になり、親元を離れて一人暮らしを始めた市倉小春は、パン屋でアルバイトを始めました。
パン屋をめぐって起きた日常のちょっとした出来事や異変、違和感などから生じた謎解きに小春は活躍します。
そして、彼女はパン作りや販売、リサーチなどを通して社会の一員として認識をしてゆきます。

謎解きの楽しさと主人公の小春の鋭い観察眼に読者は納得するばかりです。
漫画家を目指すという小春。
著者のプロフィールと重なり、今後も読者からの応援が励みになることでしょう。

美味しいパンには愛が必要なのだなと凛は思いました。
読後はパン屋に行って、香ばしいパンの香りに包まれたくなりました! (^O^)

暑い日が続いていますが、日の入り時刻は確実に早くなっています。
あなたも秋の夜長に読書を楽しみましょう。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

************
土屋うさぎ(著)宝島社(2025/01発売)
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2025年7月31日木曜日

本当に遺したいモノやコトは何か?と自身に問うてみる ~森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

暑中お見舞い申し上げます。

毎日暑い日々が続いている日本の夏です。
あなたはいかがお過ごしですか。
毎年夏の暑さが厳しくなってきていますね。
凛は夏に生まれたということもあって夏は好きなのですが、こんなにも気温が上昇すると一日を無事に乗り切るだけで精一杯になりそう……。

暑さはこれからが本番。 (^^;
夏バテしないように気をつけていきたいですね。

情報が手軽に入手できる昨今。
ところが、世の中が便利になればなるほど「時間がない!」と常に何かに追われているかのような切羽詰まった感覚におののく凛です。
あなたはこのような感覚にみまわれたことはありませんか?

シンプルに暮らしたい。
モノを減らしたい。
コトも減らして「ねばならぬ」義務感から解放されたい。
幾度も繰り返して自問自答してきたことですが、一時的に整理して安心してしまいがちです。
気がつけば、モノやコトは増えている凛ですねえ。(^▽^;)

世の中には整理や片付けに関する情報や本などが多くあります。
それらは元気な方々からの発信が多いかと思います。
もちろん、体力があるうちに整えていくのが理想です。

突然病気やケガなどで時間的にも体力的にも片付けの余裕がなくなるかもしれません。
余命いくばくもない方がご執筆された本には、心から読者に伝えたい情報が詰まっているのではないか、と凛は思いました。

今回ご紹介いたします本は、森永卓郎(もりなが  たくろう)氏の『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館、2024年)です。

森永卓郎氏は、2025年1月28日にご逝去されました。
心からお悔やみ申し上げます。

著者の森永卓郎氏はご自分の命と向き合い、限られた時間の中で、どのように身辺の整理に向き合えばよいのか、本当に必要なモノやコトとは何か、などとこの本で読者にわかりやすく伝えていらっしゃいます。
経済アナリストで、メディアにもよく出演されていた方です。
「モリタクさん」と呼ばれて、CMにも出演されていらっしゃたので、ご存知の方も多いでしょう。

森永氏はがんを宣告されましたが、治療と同時進行で精力的にご活動され、多くの本をご執筆されました。
YouTubeで晩年の森永氏の「伝えたい」という姿勢に驚いた凛です。
経済についての詳しいことは凛にはよくわかりませんので、ここではこの本についてのみご紹介いたしますね。

はじめに、この本の入手についてです。
限られた時間の中で、森永氏が本当に伝えたいことがこの本に込められていると思い、凛はネット書店で購入いたしました。

この本の初版は、2024年10月15日付です。
凛が持っている本は、同年10月17日付の第2刷です。
初版からわずか二日後に既に第2刷ですよ!
いかに注目された本であるかがよくわかりますね。

次に、帯や表紙についてです。
一番目の帯について。
帯の表表紙側には、「いきなり、ステージ4のがん告知を受けた、森永卓郎の『遺言』。」
「迷惑をかけずに、跡形もなく消え去りたい。」
「渾身の『死に支度』ドキュメント」(以上、第2刷帯)
ここだけでも凛のココロにずしりと響くんですよねえ。(T_T)

帯の裏表紙側には、「問題は生きているあいだをどう生きるのかなのだ。」(同帯)
モノの整理だけでなく、人の生き方について、真剣に向き合わないといけないのだ、ということが伝わりますね。

二番目の表紙について。
表表紙側には、森永氏が段ボールに本を詰めている姿が真ん中に描かれています。
左上では、氏が梱包した段ボールを積み上げている姿。
右下では、氏が壁らしきものを押している姿が描かれています。
表紙全体に白地が基調となって柔らかい印象の中、黄色い服を着た森永氏に意識の高さを感じます。

裏表紙側には、森永氏が机上で原稿をご執筆されている姿があり、左上にはたくさんの本が積み重なっている絵、右上にはロングヘアの女性のフィギュアが描かれています。

ブックデザインは、原田恵都子(はらだ えつこ)氏です。
イラストは、大嶋奈都子(おおしま なつこ)氏です。

同書には、森永氏が「モリオのペンネームで創作された童話「クラゲとペンギンが編入されています。(同書、189頁)
この童話のイラストは、前島花音(まえじま かのん)氏です。

それでは、内容に入ります。
表紙をめくると、森永氏からのメッセージが書いてあります。

「もしあなたが
いきなり余命を宣告されたら、
何をするだろうか?
限られた時間の中で
死ぬまでにやらなければならないこととは

何だろうか?」(同書、4頁)

これが本書のテーマでしょう。
高齢者の多い日本でも、明日も今日と同じで元気でいられるのか、ましてや寿命など誰にも予測できません。

序章は、「私が身辺整理を進める理由」(同書、5頁)
序章の長さからわかるように、この序章に森永氏が伝えたいことがまとめてあります。

序章の中の「いきなりの余命宣告」(同書、8頁)
森永氏は2023年11月7日に、がんステージⅣという末期がんの告知を受けたことが明記されています。
自覚症状がなかったそうで、告知を受けたご本人の内面、葛藤やご家族との関係、医療機関、仕事のことなど本音で書いてあると思います。

「あなたは明日死ぬとしたら、今日何をするだろう?」(同書、27頁)
と序章の終わりに太字で書かれています。
その後に、「本書がみなさんの悔いなき人生を実現するためのヒントになれば嬉しい。」(同書、27頁)
と序章が締めくくってあります。

内容は、帯の裏表紙側にも掲載されています。
以下は、目次です。(同書、28頁~35頁)

第1章 モノは捨てる
第2章 コレクターのケジメ
第3章 資産整理
第4章 仕事の終活
第5章 人間関係を片付ける
第6章 好きなように自由にやる
第7章 人は死んだらどうなるのか

「あとがき」として197頁から「遺言」の項が掲載されています。

どの章も気になるテーマばかりです。
重要なことは太字で書いてありますので、後から再読する場合も確認しやすい工夫がなされています。

全体的に文章に優しさがあり、読者に話しかけているような感覚がいたします。
文字も大きいので大変読みやすいです。(^O^)
読者を目覚めさせてくれるヒントが随所に込められています。

凛が参考にしたい具体的な例として、第1章の「モノは捨てる」
その最初の項は、「数千冊の本を処分する」(同書、38頁から)
愛読書を処分するという行為は、自身の執着心との闘いでもあるんですよね。(-_-;)

「こうしたコストを考えれば、モノはどんどん捨てるに限る。」
「もしも必要が生じれば、その時はまた買えばいいと考えるのが得策だ。」(以上、同書、49頁)
太字でしっかり目に入ってきたこの2行は当たり前のことなのですが、なかなか実行にうつすのは至難。
もし凛が命の限界を告知されたら、いえ、告知などされていなくても、命には誰にも限界がありますから、やはり実行することが賢明ですね。

凛が最も気になった頁があります。
「遺言」の1頁前、第7章の最後の頁、196頁あたる頁に太字ではないですが、他の頁よりもフォントを大きくして書いてあるメッセージです。
このメッセージは恐らく森永氏の死生観でしょう。
また、ご家族に最も伝えたいメッセージでありましょう。
是非、あなたも読まれてください。

また、写真もたくさん掲載されています。
実際にたくさんの本を片づけている写真はリアルです。

本書の最も最後に掲載されている森永氏の顔を拝見すると、とても切なくなり、こみ上げてくるものがあります。(T_T)
それと同時に、命を大切にして、モノの整理をしようと思う凛でありました。(^^)v

最後に。
誰にも命の限界は訪れます。
限られた時間の中で、人はモノやコトを整理していかなければなりません。
その行為は、どう生きていくのかにつながります。
何が大切か、何を遺したいのかが明らかに見えてくるでしょう。

森永卓郎氏によれば、家族や他人に迷惑をかけないためには、生ある今、考えて行動することが大事だということです。
頭の中で理解はしていても、いざ実践することは案外と難しいものです。
コスパ、タイパを意識するならばなおさらのこと、不要なモノや面倒なコトはさっさと片づけましょう。
後悔しないために。

凛も不要なモノから片づけていきま~す! (^-^)

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

************
森永卓郎(著)興陽館(2024/10発売)
************

2025年6月9日月曜日

「暮らしをととのえる」ための覚悟とは ~阿部暁子『カフネ』(講談社、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早くも2025年の前半期も今月で終わります。
月日が経つのは本当に早いものですね!(^-^)
梅雨の前線も北上中です。
近年は大雨になったり、いきなり真夏日になったりと激しいお天気のイメージが定着しています。
体力の維持が求められますね。 
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

さて、今春4月9日に発表された2025年本屋大賞の作品はあなたは読まれましたか?
発表前から候補作品が書店の店頭にも並べられていたので、それぞれの本を手に取ってみられた方も多かったのでは。
本屋大賞については凛が時折聴いている地元のラジオ放送の本紹介のコーナーでも話題に上がっていて、とても気になっていたのでした。

今回ご紹介いたします作品は、今年の本屋大賞受賞で話題の阿部暁子(あべ あきこ)氏の長編小説『カフネ』(講談社、2024年)です。
この作品は、単行本のみの刊行となっています。

物語の前半と後半とでは、登場人物たちの生き様を通して、主人公の女性の世の中の見方や思考、生き方に対する価値観が大きく変わる物語です。
主人公の視点が変わっていく過程が丁寧に描かれています。
読んで良かった~~\(^o^)/と心から願いたい読者のためにおすすめしたい作品です!

また、お料理を作ったり、あるいは食べることが大好きな方、部屋の片づけやお掃除が好きな方はもちろんのこと、これらのことに興味がある方には是非おすすめです。
もちろん、お掃除や、お料理を作ることが全然得意ではない方にもおすすめですよ~ (^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛は本屋大賞の発表後に、自宅から30分ほど歩いた大手の書店から購入しました。
凛が持っている単行本は、2024年4月3日付の第11刷発行です。
初版が2024年5月20日付ですので、多くの読者に読まれているのがわかりますね。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
当然ですが、本屋大賞受賞発表後の購入なので、帯の表表紙側には、黄色い帯に赤い太文字で「本屋大賞受賞」と書かれています!
黄色と赤の組み合わせは目立ちますよね~ (^O^)
その文字の上には、「『おいしい』と泣くことから再生は始まる。」
「人生のお守りになる食が繋ぐ愛の物語」(同書、帯)

帯の裏表紙側には、「別れ、喪失、荒れた部屋。どん底でもおなかは空く。」(同書、帯)
確かに、人はどんな状況におかれていても、食べなければ生きてはいけません。
やはり食べることが最優先ですよね!

帯の裏表紙側には、最上段の白い部分に「友達でも恋人でも家族でもないけれど、ただあなたの髪を撫でたい。」と書かれています。
黄色の地の下の部分には赤い文字で「『元気をもらった』との声多数!大切な人を抱きしめたくなる物語」と。(同書、帯)

二番目は、表紙について。
全体的にチョコレートブラウンのような落ち着いた色合いで、木のテーブルの上に、白いティーポットと白いカップ、ガラスのミルク入れ、白いお皿にはチョコレートケーキのようなデザートを食べた後のお皿とフォークの写真になっています。
奥には観葉植物らしき植物が置いてあり、柔らかな光がのどかな雰囲気を包んでいるようです。
ゆったりとくつろいでいる午後のひとときといった感じでしょうか。

表紙の上のほうに金色の文字で「カフネ」と横書きのタイトルが出ています。
真ん中には白い文字で、今度は縦書きで著者の名前の「阿部暁子」の文字。

そもそもタイトルの「カフネ」とは何のこと?
という素朴な疑問がおこりますよね。
凛の持っている本の帯の表表紙側には、「カフネ──愛する人の髪に指を通す仕草」と書いてあります。

この表紙を外すと、モスグリーン色の地に、調理道具のフライ返しとへららしきものが金色で描かれています。
作中で活躍するアイテムなので、読者へのメッセージがこめられています。

カバー写真は、写真家のNana*(ナナ)氏です。
装丁は、岡本歌織(next door design)(おかもと かおり)氏です。

それでは、内容に入ります。
読まれる前の読者には「覚悟」をもっていただきたいですね。
何故ならば、「食」を中心にした癒し系の物語、あるいは女性陣が大好きな甘いスウィーツの物語、または片付けなどの家事関係の話なのかな、といったイメージで読みだすと、とんでもなく遠い世界にあなたを連れていってしまうことになるからです。
他人には言えない人生の生き辛さが、これでもか、これでもかと出てきて、人によっては息苦しくなって読み辛くなるかもしれません。

あらすじです。
主人公の女性の野宮薫子(のみや かおるこ)の弟、春彦(はるひこ)が急死し、その弟からある日、薫子の元に宅配便が送ってきました。
何故に亡くなった弟から?とミステリーの要素を含んだ設定になっています。

亡き弟の遺志による遺産相続の件で、薫子は彼の元恋人の小野寺せつな(おのでら せつな)とカフェで会いますが、彼女とは初対面ではありませんでした。
初めて出会ったときから、薫子はせつなには良い印象をもっていませんでした。

常に上から目線でせつなと対峙する薫子。
負けじと無愛想な態度をとるせつな。
春彦からの遺産相続を断わるせつなに対して、薫子は態度をさらに硬くします。

カフェで薫子はせつなを前にして突然倒れてしまいます。
薫子の自宅マンションの部屋まで送り届けたせつなから、「お茶はいりません。それより、お姉さん、お昼は食べましたか?さっきのカフェでも飲み物しか頼んでませんでしたけど」(同書、28頁)と問われます。
薫子が黙っていると、せつなから「冷蔵庫、見ていいですか」(同書、同頁)と訊かれます。

薫子が返事をする前に、冷蔵庫を「遠慮なしに各段の扉を開けて、じっくり中をのぞいた」(同書、同頁)せつなは、「このへんの食材、勝手に使わせてもらっていいですか」(同書、同頁)と言って、あれよという間に豆乳とコンソメとツナ缶とトマトでスープを作って、ゆでた素麺にかけて薫子と二人でいただきました。
美味しかったのでしょうねえ。
涙であふれた薫子には「やさしい味がしみて、痛いほどしみて、もう耐えられなかった。」のです。(同書、32頁)(T_T)

せつなは『カフネ』という家事代行サービス会社に所属しており、依頼者宅に行ってお料理を作り提供しています。
薫子は供託管として、東京法務局の八王子市局に勤務している公務員です。

せつなとの関係はほぐれることのないままでしたが、薫子は休日に『カフネ』で家事代行サービスの掃除係をボランティアで手伝うことになります。
料理担当のせつなと共に、様々な家庭の事情を目にすることになった薫子でした……。

貧困家庭、格差社会、高齢者、介護、人間関係、親子関係、きょうだい、結婚、不妊、孤独、仕事、学校、離婚、再婚、単身、性差、健康、病気、難病……。
法務局では相談者からの法的な手続きを担当しており、社会的な対応をしてきたのだと自負があった薫子でした。

しかし、薫子はせつなと組むことで、『カフネ』を通して初めて知る異常に歪んだ社会の面々に触れます。
それらは、薫子が勤務している法務局や、これまで当然として捉えていたシステム化、細分化、透明化された社会とは異なる価値観が渦巻いている世界だったのです。(-_-;)

この作品には、登場するどの人物たちもそれぞれに困難な事情をもっています。
個々が抱えた事情を紐解きながら、物語は進んでゆきます。
後半になると、読者の価値観は前半とは全く異なる目線に気づくことになるのです。
亡き弟、春彦のことについても……。

後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)

著者の阿部暁子氏は、2008年、短編小説『陸の魚』cobalt短編小説新人賞を受賞☆彡。
同年、小説『いつまでも』第17回ロマン大賞を受賞☆彡されました。
そして、今年の本屋大賞受賞です☆彡☆彡。 \(^o^)/
今後、最も期待される小説家のお一人です!

最後に。
「暮らしをととのえる」
簡単なことのように思えますが、実は大変難しいことなのだということがよく伝わる作品です。

せつなが勤務する家事代行サービス『カフネ』で、片付け担当として、料理担当のせつなと組むことになった薫子には、さまざまに困難な事情を抱えた訪問宅の人々との交流を通して、彼女の視点に変化が訪れます。
お料理を作る、また食べることの力とはいかに偉大なのでしょう。
食材を活かすことの大切さに気づかされます。
部屋の片付けも同じことですね。
薫子とせつなとの関係性は、『カフネ』で輝いて欲しい!と凛は願うばかりです。

薫子は、後半になるにつれて心身とも力強く、頼もしく、そして、人に優しい大人の女性に成長します。
凛には、283頁で薫子が発した言葉、これにはウルウルと感動しました!(T_T)
もしも凛が薫子の立場だとしたら、相手にこの言葉が言えるかなと。

以前にも書きましたが、これまでの凛は、話題の作品はすぐには読まずにしばらく様子を見るか、または文庫本になるまで待ってから読むことが多かったです。
この頃は、話題の作品は単行本で読みたくなることもしばしば。
評価が高い作品は、文庫本になるまで待てなくなってきたんですよねえ。
「時間」と「欲」との関係でしょうか……。 (^^;

お料理に例えると、美味しいおかずから先に食べるのか、それとも美味しさは最後に味わうのか。
さて、あなたはどちらのタイプですか?

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

************
阿部暁子(著)講談社(2024/05)発売
************

2024年5月15日水曜日

あなたもクルマに乗って人生の冒険をしてみます? ~篠田節子『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りんです。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはGWはいかがお過ごしされましたか。
連休が長かった方には生活のリズムが乱れて、却って疲れがたまっている方もいらっしゃるのでは。
5月も後半に入りますねえ。
初夏から夏への移行期間で爽やかな季節を迎えています。
7月15日の海の日まで祭日がありませんので平坦な日々を送ることになりますが、乗り切っていきましょう!\(^o^)/

凛は部屋の模様替えをするため、蔵書の整理に追われました。
今回は文庫本を中心に多くの本を整理しました。
400冊以上です……。 
木製の文庫本ラックの1架を思い切って処分しました。

本の整理はまだ完全に終わってはいないので、部屋には段ボール箱が何箱も積み重なっていますが……。(-_-;)
どの本にも思い出が詰まっていて、泣く泣く手放すのはそれはもう辛いものがありますが、、(T_T)
保管するスペースには限りがありますので、気持ちを切り替えて前向きに捉えていきますね。(^O^)

このような重い本を運搬していただくのも運送会社と配達員の方々のおかげですね!m(__)m
流通を担っているのはクルマがあってこそです。

GW中にはクルマでドライブを楽しまれた方も多かったことでしょう。
今や自動運転など今やハイテクマシーンと化したクルマです。
最新の技術が私たちの安全を守ってくれています。
私たちの暮らしにとってクルマは絶対に欠かせない存在ですね。(^-^)
今回ご紹介します本は、ある非日常における時点で、クルマがあって良かった!と思った人々の物語です。
人生の分岐点に立つ主人公にとってクルマが重要なアイテムとなります。
クルマとの忘れられない思い出となっていることでしょう。

篠田節子(しのだ せつこ)氏の中編小説3篇が収められている作品集『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)です。
凛が持っているのは文庫本で、2023年10月10日付の初版本です。
単行本は、2021年4月に刊行されています。

はじめに、凛がこの本を入手したのは、おなじみ近所の書店の文庫本新刊の棚でした。
『田舎のポルシェ』
変わったタイトルだなあと思ったのが第一印象でしたね~

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛の文庫本の初版本の帯には、表表紙側に黒色の太字で「日常は冒険に変わる」と目立って書かれています。
その前に「ひとたびアクセルを踏み込めば」と。
おやおや穏やかではありませんね~
安全運転でお願いしますよ~

小さく黒色で「人生の岐路に立ち 秘めた思いを抱いて 一歩踏み出す人々を描く 3篇のロードノベル」
青色で「笑って、泣いて、ハラハラして 現代人へ送るエール」(以上、文庫本新刊帯)
なるほど~ これは読後に爽快感が得られそうです!

二番目は、表紙について。
表表紙は、全体に青色がかっている中で、中心部に白い軽トラがデーンと横断歩道の真ん中に鎮座しています。
その軽トラの荷台には、紫色の作業着を着た男性が白いヘルメットをかぶって立っています。
助手席には女性が座っており、窓からこちらを見ているか、あるいは他のことを考えているかのようにも見えます。
全体が青みがかっており、交差点付近の人影もまばらなので、早朝、夜明け間近かもしれませんね。

裏表紙側の説明文では、表題作の「田舎のポルシェ」についての概要が紹介されています。
主人公の翠(みどり)は「実家の米を引き取るため、助っ人の車で岐阜から東京へ向かうことになった(以後省略)」と。
彼女の前に現れたのは「軽トラに乗った強面ヤンキー!」
「さらには大型台風が迫り──。」
「往復1000キロ、波乱だらけの強行軍を描いた表題作」(以上、文庫本初刊)

Oh!これは篠田氏独特の世界。
まさしくハラハラドキドキのジェットコースターに乗っているかのごとく読者を飽きさせないロードムービーの小説ですね。

文庫本のイラストは、太田侑子(おおた ゆうこ)氏です。
デザインは、城井文平(きい ぶんぺい)氏です。

では、内容に入ります。
以下の中編3篇が収められています。
「田舎のポルシェ」
「ボルボ」
「ロケバスアリア」

文庫本の解説は、細貝さやか(ほそがい さやか)氏です。

第1話「田舎のポルシェ」
文庫本の裏表紙の説明文で概要はつかめると思います。
会社員の増島翠(ますじま みどり)は、東京郊外の実家の米農家の娘です。
事情があり、台風が迫る中、大量の米を岐阜まで運ばなければならなくなりました。
知人の紹介で瀬沼(せぬま)と名乗るヤンキーの恰好の男性と軽トラで移動するのです。

米農家や自営業の苦悩、家庭の事情など個々に事情を抱えており、クルマの走行距離が延びるうちにだんだんと明らかになってゆきます。
二人は悪天候の中で米を無事に運んでいけるのでしょうか……。
背景に台風という制限を課して、そこから脱出する術の見事さ。
篠田氏の真骨頂ともいえる作品です。

第2話「ボルボ」
共に定年組である斎藤克英(さいとう かつひで)と伊能剛男(いのう たけお)はそれぞれ異なる元大手企業の会社員でした。
二人は妻の趣味がご縁となり、定年後に知り合いました。
両者の定年後の暮らし向きは一見余裕があるように見えますが、両家の事情と懐具合が微妙に交差しています。

斎藤は伊能が長年運転してきたボルボで北海道まで同乗することになります。
旅先で思わぬ事件が発生します……。
互いの腹の探り合いがだんだんと顕著になっていく様が絶妙です。

第3話「ロケバスアリア」
畔上春江(あぜがみ はるえ)は、孫の藤森大輝(ふじもり だいき)が運転するロケバスに乗って東京から浜松市の湖月堂(こげつどう)ホールまで向かいます。
春江が趣味とするオペラをホールで歌い、画像をDVDに収録するためで、DVD制作専門家の神宮寺(じんぐうじ)も同乗しました。
ロケバスには化粧やドレスの着替えなどできるようにしつらえてあります。
ちょうどコロナが流行していた時期で、ホール並びに移動にも制約が伴いました。

ホールでは雨が降り、悪天候に見舞われました……。
そこから物語が発展してゆきます。
人生模様を語り合い、理解し、受容していく過程が読者には心地よく響きます。
物語の最後はこんなオチがあったのかと驚き、読者は感動で胸がいっぱいになること間違いありません!

作者の篠田節子氏については、2020年5月2日付の「新鮮で美味しいサラダを求めて」のタイトル(ココにてご紹介していますので割愛させていただきます。

最後に。
安定感のある篠田節子氏のクルマに関するロードノベル中編小説3篇は篠田氏の世界が堪能できます。
まずは、篠田氏特有のハラハラドキドキする設定があります。
加えて、登場人物たちが抱えている様々な事情が決して特殊なわけではなく、誰にでもあてはまりそうな部分もあるので、共感を得る読者も多いでしょう。

作中人物たちは目の前の問題をどうやって突破していくのでしょうか。
彼ら、彼女らがとった思考と行動は一見無謀かもしれませんが、成就された時の爽快感が何ともすがすがしいものです!\(^o^)/
登場人物たちにエールを送りたくなる作品です。

文庫本の巻末286頁の「謝辞」を是非お読みくださることをお勧めいたします!(^-^)
篠田氏のご執筆にあたる誠意が読者に真摯に伝わり、再度感動をもたらすのではないかと凛は考えました。

クルマとの付き合い方を大切にしたいですね。
人生の冒険とまではいかなくても、クルマがあって良かったと思うことは多いものです。
勿論、安全運転でいきましょう! (^^)v

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2024年3月1日金曜日

人生の無駄遣いではないよ ~町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論社、2020年、のち中公文庫、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

3月、春の季節の到来ですね!
暖かくなれば着る服も軽くなります。
優しい色合いの服に包まれて、心も軽~くなりたい凛です。(^O^)

「いえいえ凛さん、花粉症で体調がすぐれず、春のファッションを楽しむどころではないんですよー」
確かに花粉症の季節ですよねえ。(-_-;)
身体と向き合って、体調に気をつけていきましょう。
あなたはいかがお過ごしですか。

この3月に映画が公開されるということでメディアで話題になり、原作の小説を読んでみました。
町田そのこ(まちだ そのこ)氏の小説『52ヘルツのクジラたち』(中央公論社、2020年のち中公文庫、2023年)です。
この作品は2021年、第18回本屋大賞の第1位を受賞☆彡しています。\(^o^)/

はじめに、凛がこの本を知ったのは、2021年の本屋大賞の受賞☆彡からです。
以来ずっと読みたいなと思っておりましたが、町田氏の他の作品を先に読んでいました。
3月からの映画公開を機に、近所の書店で購入いたしました。
凛が購入したのは文庫本で、2023年の12月15日発行の第9刷です。
文庫本の初版が同年5月25日ですから、人気度の高さがわかりますね!

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯からです。
凛が持っている文庫本の第9刷は、映画公開前ということで帯も映画の宣伝になっています。
「映画化決定!」
「2024年3月全国公開」
表表紙側には、主演の杉咲花(すぎさき はな)さんの写真が掲載されています。
監督の成島出(なるしま いずる)氏のお名前も紹介されています。
ワクワクしますね~!(^O^)

第9刷の帯の裏表紙側には、「2022年本屋大賞 連続ノミネート!」で単行本の小説星を掬う(すくう)』(中央公論新社、2021年)の概要が掲載されています。

二番目は、表紙についてです。
凛の第9刷の文庫本の表表紙は、紺色を地色として動物たちや小物などがたくさん描かれています。
中には生ビールやソフトクリームも!
小説を読めばどこで登場するのかがわかりますよ~
温かみのある可愛いイラストです。
見方によっては、イラストの全体が教会のステンドグラス風にも思えます。

裏表紙側の説明文では、「52ヘルツのクジラとは、」から始まり、その説明が書いてあります。
それが何なのか気になる方は、是非文庫本を手にして読まれてください。
「孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。」(同書)で終わっています。

カバーイラストは、福田利之(ふくだ としゆき)氏です。
カバーデザインは、鈴木久美(すずき くみ)氏です。

解説は、ブックジャーナリストの内田剛(うちだ たけし)氏です。
「感動の先を見せてくれる『絶景本』」というタイトルの解説文です。

それでは、内容に入ります。
物語は全8章で成立しています。

第1章の「最果ての街に雨」は、大分県の海の見える町で、主人公の貴湖(きこ)が越してきた古民家の修繕をする場面から始まります。
住宅の修繕業者の村中真帆(むらなか まほろ)は彼女に不躾な質問をします。
驚いている彼女を見て、村中の部下のケンタは申し訳なさそうに上司の村中をけん制しながら村中を擁護します。
地元の住人たちにとっては、突然東京から移住してきた貴湖を謎めいていて訳ありだと思っています。
彼女は東京での辛い過去の体験を秘めていました。

食料品や日用日を買うにしてもお店は「コンドウマート」(文庫本第9刷、9頁他)しかない集落なので、スマホも運転免許も持っていない貴湖にはなかなか不便な所です。
働いていないにも関わらず経済的には余裕のあるように見える彼女にまつわる噂は、コンドウマートに集まる高齢者の間でもちきりとなっていました。
そのことを村中は彼女に直接的に伝えます。
彼女にとって村中は貴重な情報提供者ともいえましょう。

「あんた、人生の無駄遣いやがね」(同書、27頁)
ある日、貴湖がコンドウマートで買い物をすると、その店で売られている派手なムームーを着た高齢の女性から強く言われました。
どうやら若い女性が働かずにしてのんびり過ごしている姿に腹を立てている様子なのです。
移住者に対してよそ者扱いをしているのは見え見えと受け取られても当然です。

ここで凛は疑問をもちました。
「人生の無駄遣い」とは何を根拠にして捉えるのでしょうか?
時間や労働、経済の視点からでは、少しの猶予も与えられないものでしょうか?

貴湖は何故に他人からこのようなことを言われないといけないのかと戸惑ってしまいました。
価値観の違いにおいて、人との距離の難しさがわかる箇所です。
近年は都会から地方への移住を奨励している自治体もあります。
移住を決断するには一時的な滞在の旅行者とは全く異なる覚悟をもたなければいけない、と凛は考えました。

貴湖の記憶の中から度々蘇る「アンさん」(同書、16頁)という人物がいます。
迷ったり、困ることがあると必ず「アンさん」と彼女はアンさんに問いかけて、アンさんからの答えを探ります。
アンさんとは一体何者なのでしょうか。

第2章の「夜空に溶ける声」では、古民家の住人となった貴湖の家に少年が訪れます。
彼女は少年に「キナコ」(同書、61頁他)と自己紹介をします。
少年は喋ることができない模様で、庭の地面に自分の名前を『ムシ』(同書、同頁他)と書きます。
少年ムシはどうも虐待を受けているのではないか、と貴湖は直感します。
何故ならば、彼女にも家族から受けた耐え難い過去の体験があるからです。

ここからキナコと少年の物語が始まるのです!(^O^)

貴湖や少年、そしてアンさんなどの経歴については、読んでいくうちに追い追い読者は知ることとなります。
彼女らにまつわる複雑な事情は、壮絶な辛い過去の鋭利な刃となって読者に突き付けます。
章が進む度に彼女たちの過去と現在が交錯しながら進みます。
貴湖の過去は度々フラッシュバックとなって彼女を苦しめます。

この表現形式は町田氏の小説の特徴である、と凛は考えます。
ある時は、ダイレクトにこれでもかというくらいにドーンと激しい言葉を用いて読者を刺激します。
次々に知ることとなる驚愕な過去と現在進行形の現実に読者はおののくでしょう。
これほどまでに辛い仕打ちを登場人物に体験させないで欲しい、と願ってしまうほどにです。

またある時は、謎めいた形で描き、オブラートに包んだような印象を与えます。
え?登場人物たちは何を秘めているのだろう?
もっと先が知りたい!という欲求が生じます。 
それはそれはじれったいほどに……。(^^;

町田氏は物語の随所に伏線を張り巡らせています。
作者からの強弱のあるメッセージ性を読み取ることは、複雑な伏線があるからこそ成立する技法といえましょう。
伏線は様々なグッズも含まれます。
これらの技法によって、読者は先が気になって頁をめくる手がやまないのがわかりますね。

作者の町田そのこ氏について。
町田氏は、2016年、小説「カメルーンの青い魚」で第15回女による女のためのR-18文学賞の大賞を受賞☆彡されました。\(^o^)/
この作品は『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(新潮社、2017年、のち新潮文庫、2021年)に収録されています。
今後のご活躍が大いに期待される作家のお一人です。

最後に。
貴湖は東京から大分県の海の見える町に移住した当初は自ら孤独を求めていました。
ある日、彼女の家に少年が現れてから彼女は再生してゆきます。
彼女の友人や地元の人たちなどが仲間となって物語はどんどん進みます。
人とのご縁の大切さがわかる小説です。
読後には、タイトルの「52ヘルツのクジラたち」の意味がわかり、感動となってあなたに迫ってくるでしょう。

「人生の無駄遣い」について、読者の心の在り方によって答えはその人それぞれの胸のうちにあるのではないでしょうか。
コスパ、タイパに絡めとられることなく、その自身にとっての価値観を求めていくことこそ人生における必要な時間ではないか、と凛は考えます。

文庫本の表紙の裏には、もう一つの物語が印刷されていますよ!
爽やかな読後感まちがいありません!!\(^o^)/
とても得した気分になれます。
あなたも文庫本の表紙を外して読まれてくださいね!

そして、映画も楽しみです!
是非劇場で観たいですね。(^O^)

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年11月3日金曜日

日本茶と占いでまったりと ~標野 凪『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

11月になりましたね。
早くも今年もあと2か月となりました。
来年のカレンダーや手帳などの売れ行きも早くなっているようです。
夏から販売しているお店で、早めにお求めになるお客さんを結構見かけました。
凛も概ね揃えました。
もう気分は来年に。(^^)v
あなたはもうご準備されましたか。

秋は紅葉が綺麗な季節ですね~
あなたのお住まいの地域によっても異なりますが、暑い日中も日が暮れると冷えてきます。
身体を冷やさないように心がけたいものです。

ところで、あなたは日本茶はお好きですか。
凛は日本茶を飲むと心身とも落ち着きます。
昨今は手軽なペットボトル派も多いですね。
多忙な時代ではありますが、やはり急須で淹れた日本茶は香りも味も抜群で、疲れがとれるように思います。
中にはお茶殻の片づけが面倒という方もいらっしゃるでしょう。
毎日ではなくとも、お湯のみで日本茶をたしなむ時間をとるのもよいですよね~ (^-^)

今回ご紹介いたします本は、日本全国を巡り、その地方に合った日本茶の出張カフェを営み、訪れたお客さまの占いも行うという主人公の小説です。
日本茶の周辺にまつわる歴史や文化を学び、さらに落語なども楽しめるという歴史好きにはたまらない話題てんこ盛りの作品です。

標野 凪(しめの なぎ)氏の小説『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文芸文庫、2021年)です。
この作品は文庫本書下ろしですので、単行本はありません。

はじめに、凛がこの文庫本を手にしたのは、数か月前のことです。
凛の自宅から少しだけ離れた書店にて、カフェをテーマにした小説ばかりを集めたフェアで出合いました。
最近はカフェや食に関する小説も多いですよね~

この本の帯には「出張カフェ」と書いてあります。
帯の裏表紙側には「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」と出張カフェで訪れた都市が書いてあります。
何とまあ、凛が暮らしている都市が出ているではありませんか!(^O^)
一体どんなことが書かれているのだろうと気になり、レジに直行しました。

凛が購入した文庫本は、2023年5月5日付の第5刷です。
初版が2021年3月18日付ですので、評判が良いことがわかりますね~
第5刷の帯の表表紙側には、「コツコツ重版、じわじわヒット中。」と紹介されています。

同じく帯の表表紙側に書いてある「疲れた心に温かいお茶を一杯いかがですか?」と、黄緑色の帯に書かれた緑色の文字が日本茶を飲みたくなるように読者を誘ってくれます。
帯の裏表紙には、「出張カフェは呼ばれたところへ参ります。」と。

「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」(同)の六ケ所の土地で淹れた日本茶に関することが書かれています。
「氷茶」「ほうじ茶」「新茶」「お抹茶」「茶の木」「出張カフェ」(同)と各地で淹れた日本茶に関する気になるキーワードばかりですねえ。

次に、表紙についてです。
最初は、表表紙の絵からご紹介します。
向かって正面に木製のテーブルがあり、椅子に頬杖をつきながら座っている女性は主人公の如月(きさらぎ)たんぽぽさんでしょう。
テーブルには、急須やお茶のお道具、明るいデザインの敷布の上にはタロット占いのカードが並べられています。
そのすぐそばには、愛猫の「つづみ」が丸くなっており、お客さまをお待ちしているように見えます。

出張カフェ「お茶と占い 迷い猫」の小さな看板がテーブルの上に置かれています。
椅子の背が見えるこちら側にはお客さま用の湯のみが茶托と共に。
全体的に温かい雰囲気が漂っています。
たんぽぽさんから出されたお茶とお菓子をいただきながら、悩んでいることを良い方向に導いてくれそうです。(^_-)-☆

カバーの装丁は、岡本歌織(おかもと かおり)氏(next door design)です。
カバーの装画は、あわい氏です。
 
二番目は、裏表紙の説明文です。
主人公の如月たんぽぽさんは全国各地のギャラリーやイベント会場の一角で招かれ、愛猫の「つづみ」と共に出張カフェ「迷い猫」を営んでいます。
また彼女は、占い師としての顔も持ち、出張カフェに訪れたお客さまの悩みを聞いて少しでも明るい方向へと導いていきます。
頁をめくる度に読者の心も温かくなっていくという連作短編集です。

そして、彼女は各地で「『あるもの』の行方を捜していた……。」(同書)と大変気になることが書かれているではありませんか!
どうやら癒し系のお話だけではなさそうですよ。

それでは、内容に入ります。
目次の前に、いきなり夏目漱石(なつめ そうせき)の俳句「売茶翁花に隠るゝ身なりけり」(文庫本、3頁)が出てきます。
「売茶翁(ばいさおう)」
これは本作品の重要なキーワードとなります。

本表紙のデザインとロゴは、川上茂夫(かわかみ しげお)氏です。
目次・章扉デザインは、岡本歌織氏(next door design)です。

本作品は、全6話の連作短編です。
第1話のタイトルは、「氷茶ができるまで三十分お待ちください」(同、9頁)
たんぽぽさんが訪れたのは福岡市です。

9頁には、「『茶』玉露 福岡県八女市星野村産 氷茶」
「『水』不老水 福岡県福岡市 香椎宮」
「『菓』鶏卵素麺(たばね) 松岡利右衛門」
「『器』白と黒の器 ギャラリー下川提供」
と福岡市の出張カフェで用いたお茶、水、お菓子、器が紹介されています。

うわあ、とても美味しそう!
如月たんぽぽさんというプロが淹れた日本茶を飲みたくなります!(^^)v
凛は氷茶は飲んだことがないですねえ。

福岡市の「ギャラリー下川(しもかわ)」(同、13頁他)で行われた出張カフェはお客さまで賑わっています。
読者は、お茶の葉、水、お菓子についての学びができます。

お客さまの悩みを聞きながら、たんぽぽさんはタロット占いをしました。
氷茶の説明に加え、読者にはタロットカードの説明もあります。
たんぽぽさんは、「迷い猫カード」(同、61頁他)を悩めるおお客さまにお渡しします。
そのカードは「ま」「よ」「い」「ね」「こ」(同、62頁)の頭文字になっていて、相談する各人の悩みに合うように適切な言葉が続いています。

また、たんぽぽさんの父親の趣味だったことから、落語の話題も豊富に出ます。
第1話では、『猫の皿』(同、41頁他)についての説明もあります。

たんぽぽさんは出張カフェの翌日に有田焼で有名な佐賀県の有田(ありた)を訪れ、骨董屋の店主から「売茶翁」という僧侶の「月海元昭(げっかい げんしょう」(同、67頁)について教えられました。
「伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)」(同、68頁)の描いた「売茶翁」の日本画の説明から、本格的な日本文化の話題に発展していきます。
骨董やお宝の話題がお好きな方には、この作品が癒しカフェの話題だけではないのが伝わるでしょう。

お茶所で有名な静岡県の浜松市の出身であるたんぽぽさん。
母方の祖母は、かつて茶園を営んでいました。
たんぽぽさんは移動を伴う出張カフェというお茶と関わる仕事について、「売茶翁」との運命的なつながりに気づきます。
彼女は「売茶翁」の軌跡をたどりながら、全国各地を巡り、お茶の文化と心を追求してゆきます。
第6話に至るまで、読者はあらゆる日本文化の奥深さを知ることとなるでしょう。

果たしてたんぽぽさんが各地で探していた、裏表紙の説明文に出てきた「あるもの」の行方については如何に……。
一体どんなことが彼女を待ち受けているでしょうか。
後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)/

著者の標野 凪氏は、浜松市のご出身で、東京、福岡、札幌などに転居されています。
実際に福岡でカフェを開業した後、東京都内で現役のカフェの店主をされています。

2018年、「第1回おいしい文学賞」で最終候補になり、2019年に終電車のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』(ポプラ文庫ピュアフル)でデビューされました。(本書より)
近年では、『今宵も喫茶ドードーのキッチンで』(双葉文庫、2022年)が好評で、書店でご覧になられた方も多いでしょう。

最後に。
日本茶を提供する出張カフェで全国各地を訪れている如月たんぽぽさんは、「売茶翁」の軌跡をたどりながら、日本文化の奥深さを知ります。
またタロット占いでお客さまとの交流を得て、自身の生き様を認識し、日本茶とのつながりを深めてゆきます。
合わせて、落語の話題など日本文化を堪能できるように読者を導いてくれます。
彼女の傍らには常に愛猫のつづみがいて、彼女を見守ってくれています。

11月3日は文化の日。
一冊の文庫本に、日本文化の話題がぎゅうっとてんこ盛りとなっています。
老若男女の読者に読んでいただきたい作品です。

それにしても猫のつづみは飼い主を困らせることもなく、たんぽぽさんに寄り添っていますねえ。
たんぽぽさんの気持ちがわかるのかなあ。(^.^)

凛は季節に関係なく、熱めの日本茶が好きです。
標野 凪氏の営んでいらっしゃる東京都内のカフェを訪れてみたいです!
あなたもご一緒にいかがですか。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2021年9月21日火曜日

行間にこめられた思いを読む ~山崎ナオコーラ『美しい距離』(文藝春秋、2016年、のち文春文庫、2020年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

過ごしやすくなってきた秋の季節、あなたはいかがお過ごしですか。
夕暮れもすっかり早くなりましたねえ。
おうち時間が増えた秋の夜長、眠る前のひとときは最高のくつろぎタイムですね!(^○^)

体調を整えて、免疫力をつけたいというのは誰しも考えるでしょう。
しかし、いくら健康に気をつけてはいても病にふせることはあります。
好きで病になる方はいませんものね。

日本人の二人に一人ががんになると言われています。
あなたのご家族、特に配偶者ががんに侵されていて、しかも末期がんであったとしたら、あなたはどのように受け止め、対応するでしょうか。

今回の本は、山崎ナオコーラ(やまざき なおこーら)氏の小説『美しい距離』(文藝春秋、2016年、のち文春文庫、2020年)です。

40代の妻が末期がんで入院しているため、働き盛りの夫は生命保険会社の仕事をしながら病院に通い詰めて妻を看護しています。
静かに流れる二人の時間の中で、夫の視点から彼の葛藤や心の機微を見事に描き切っている小説です。

しかも、行間に熱い思いがこめられています。
それは夫の言葉だけでなく、妻の言葉でもあります。
この小説の主人公は、末期がんの妻を看護する夫になります。

あなたがお読みになる前に、凛からご注意していただきたいことが2点あります。(-_-)

1点目は、今回の小説はずばり内容が重いです。
「末期がん」がキーワードになり、「介護」がテーマの物語と同様、あなたのご家族にご病気の方がいらっしゃったり、或いはあなたご自身がご入院されていらっしゃる場合などはかなり重いかもしれません。

2点目は、新型コロナ以前の小説であることです。
初出は、文芸誌『文學界』2016年3月号ですので、それ以前に描かれた作品です。
コロナ禍の現在は入院されているご家族の面会などはできない場合も多いでしょう。
ご家族でなくても、親戚・知人・友人など病室にお見舞いに行けていた頃とは一線を画していることを考慮して読んでいただければと思います。

まずは、本の入手についてです。
凛が持っている本は文庫本の初版です。
昨年、街の中心の地元の書店で購入して「いつか必ず読む本」として出番を待っていた本です。(^-^;

帯の表表紙側には、「芥川賞候補作」「島清恋愛文学賞受賞作」と描かれています。
帯からの情報で、しっとりとした夫婦の時間が流れている作品であることがわかりますね。

本の裏表紙の紹介文では、「がん患者が最期まで社会人でいられるのかを問う、新しい病院小説。」(文庫版、初版)と描かれています。
「病院小説」という表現は、医者と患者と家族の物語なのでしょうか。

次に、本の装丁についてです。
凛の文庫本初版の表紙は、黄色い菜の花が大きく描かれています。
「菜の花」のデザインは作品の中で重要な位置を占めています。

文庫本の表紙のイラストは、中上あゆみ(なかうえ あゆみ)氏です。
文庫本の表紙のデザインは、大久保明子(おおくぼ あきこ)氏です。

では、内容に入ります。
文庫本で195頁、巻末の解説まで含めても205頁とさほど厚くはありません。
しかも文庫版では文字が大きめで読みやすいです。
しかし、行間を読むと倍の厚さくらいになるのではというのが凛の印象です。

物語は、夫がカフェで食事を済ませ、バスに揺られて妻が入院している病院に向かうところから始まっています。
季節は春。
穏やかな陽気の中、カフェでのんびり過ごしたいところですが、時間は容赦せず病院行きのバスが待っています。

夫は生命保険会社に勤務しながら、妻の看護のため週に数回、妻の病室を訪れます。
初めは輪郭がぼやけていますが、読んでいるうちに読者にはこの夫婦がおかれている現実がだんだんと見えてきます。

時間軸は常に夫の視点にあり、妻と出逢った頃に戻ったと思えば、また妻がいる病室に戻ったりします。
働き盛りの夫の会社での仕事のやりくりや、労働条件である制度を利用しての病院通いなど、身につまされる読者もいらっしゃることでしょう。

妻は夫の上司の娘さんです。
夫からみると義母にあたる「妻の母」(文庫版初版、39頁他)と交代で病室を訪れています。
夫の義父にあたる妻の父親のことを、夫は常に「元上司」(同、15頁他)と表現しているところなど、夫の微妙な感情であると推測できます。

「来たよ」
「来たか」(同、17頁他)

夫が病室を訪れたときのたったこれだけの会話の中には、二人だけにしかわからないどれだけの思いがぎゅうっと詰まっているのでしょう。
それを思うと、凛は胸が締め付けられてなりません。
この夫婦には子供はいません。
病室では二人だけの時間が静かにゆっくりと流れてゆきます。

妻は結婚後にサンドウィッチ屋さんの経営を始めたことがわかってきます。
そして妻の仕事関係の方たちが各々病室を訪れます。
病室で彼らとの交流を目にして、妻には社会とのつながりが必要なことを夫は悟ります。
時には夫は見舞客にやきもちをやくこともありますが、もちろん彼の心の中での波です。

それから「妻の母」との接点から、妻は娘であることも悟ります。
夫は妻や義母にも理解を示します。

しかし、夫の本音がちらりと表れている箇所がいくつかあります。
そこで行間が活きてくるのです。
常にジレンマに陥っている夫の苦悩と妻への思いが交錯しているのです。

夫の意見が最も強く描かれている場面は主治医との会話でしょう。(*_*)
余命宣告、延命治療など……。
医療従事者である主治医と、「対話」(同、131頁)を望む患者の家族である夫の立ち位置のずれが大きく、夫の葛藤は続きます。
これは、文庫本の「著者紹介」のところで、「2014年に父親をがんで亡くし、(省略)」(同)とあることから、作者の体験からきていると考えることができます。

文庫版の157頁からか、或いは158頁からは、妻との関係が別の次元に移動します。(T_T)
ここで凛が案内する「曖昧な頁の境目」については、体験された作者ならではの時間軸の捉え方によるものであると考えます。
夫は妻の容体が急変する場面に遭遇します。
夫には予期することのなかった、あまりにも突然の出来事なのです。
作者は、愛する人の最期を迎えた方だけにしかわからない「その場面」を適格に捉えています。

しかし、小説はここで終わりません。
それは妻との関係が終わっていないことを意味しています。

「その後」の淡々と流れてゆく時間。
まるでベルトコンベアーに乗ったような色彩のない感覚。
これは多くの方が体験されていることと思います。

夫は旅立った妻との関係をどのように捉えて過ごすのでしょうか。
後はあなたの読書体験にお任せいたしましょう。

文庫版解説は、書評家の豊崎由美(とよざき ゆみ)氏です。
「解説 固有の物語を丁寧に紡ぐ小説」(同、198頁~205頁)というタイトルです。
病と死、仕事、人との距離について、書評家として長くご活躍されている豊崎氏の文章はとても心温まります。(^-^)

作者の山崎ナオコーラ氏は、2004年、小説『人のセックスを笑うな』(河出書房新社、2004年、のち河出文庫、2006年)で第41回文藝賞を受賞☆彡されました。(^_^)v
同作品で、第132回芥川賞候補となっています。
この作品は、2008年、井口奈巳(いぐち なみ)監督、松山ケンイチ(まつやま けんいち)さん、永作博美(ながさく ひろみ)さん主演で映画化されています。

山崎氏は、多くの作品をご執筆されており、これまで5回の芥川賞の候補となっています。

今回ご紹介した『美しい距離』は、2016年、第155回芥川賞の候補作となっています。
さらに2017年、第23回島清恋愛文学賞を受賞☆彡されています。(^_^)v

今後も山崎ナオコーラ氏のご活躍を期待したいですね!(^o^)

最後に。
末期がんである妻との時間を大切に守りながら、彼女を巡る社会を尊重している夫の心理的葛藤は、妻の死後にどのように変化していくのでしょうか。
タイトルの「美しい距離」に込められた作者の思いを、行間で読み取れる秀逸な文学作品です。
最後の一文に至るまで読者は目が離せません。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2021年9月7日火曜日

好きなものの羅列で読書好きにはたまりません! ~柳瀬みちる『神保町・喫茶ソウセキ 文豪カレーの謎解きレシピ』(宝島社文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

秋になりましたね~
これから毎日秋が深まってゆきます。
あなたはどのような秋をお過ごしされますか。
夏の疲れが出やすい時期ですね。
凛は読書の秋はもちろんのこと、食事や運動に気をつけて、さらに免疫力をつけたいところです。

凛は書店巡りが好きで、書店にいるとつい時間が経つのを忘れてしまいがちです。
毎日たくさんの新刊本が出ている中、書店員さんのお仕事は大変なんだろうなあと思いながら、店頭に並べられている本の乱れをそっと直してほんの少しだけお手伝いした気分でいます。

書店の街といえば、東京の神田神保町ですよね。
地方在住の凛は東京に出向いたときは必ず神保町を訪れます。
どうしてこんなに書店が必要なのかしらと思うくらいに様々な書店がありますよね。

神保町で可能な限り時間をかけて書店を見て廻り、お気に入りの本を購入した後は、喫茶店でブレイクタイム。
購入した本を開いて、カレーやパスタ、食後のコーヒーとデザートをいただく至福のひとときは最高です!\(^o^)/

今はコロナ禍でもあるため、凛は行けてません……。
また訪れたいな~といつも思っています。

そんな中、先日、三省堂書店が神田神保町にある本社ビルの建て替えのため、来年の3月で現在の営業を終了するというニュースが流れました。
(三省堂書店のHPより)

ひゃあ、これは大変だあ! ((+_+))
しばらくの期間、失われてゆく寂しさと新しいビルへの期待感とが交錯しそうですね。
三省堂書店の本社の神田神保町一丁目1番という住所には重みを感じます。

今回の本は、柳瀬みちる氏の小説『神保町・喫茶ソウセキ 文豪カレーの謎解きレシピ』(宝島社文庫、2021年)です。
タイトルでズバリわかると思いますが、本好きとカレー好きにはたまらない世界で、さらにミステリーのエッセンスが込められています。
この作品は書き下ろしですので、単行本はありません。

本好きが集まる神田神保町にて、喫茶店を営業し、文豪の名前をつけたカレーをお客様に提供している女性が奮闘する小説です。
カレーが大好きな作家が登場し、彼女と共に文豪の古書をめぐり謎解きを始めることになります。
さらに、二人の謎解きは彼女の出自にまつわるところまで発展します。

まずは、本の入手についてです。
今回は全国大手新聞の広告から偶然にこの本を知りました。
新聞の片隅に載っている小さな広告でしたが、偶然凛の目に留まり、「わあ!面白そう!すぐに読みた~い!」と凛のアンテナがピピピと反応しました。
本当に偶然としか言いようがなく、これもひとつのご縁といえましょう。
凛は新聞広告の切り抜きを持って街の書店に出向き、この文庫本を購入しました。

次に、本の装丁についてです。
凛が持っている文庫本初版の帯の表表紙側には、印度カリー子(いんど かりーこ)さんの笑顔の画像と「新感覚!カレー×ミステリーの共鳴」というメッセージが掲載されています。

帯の裏表紙側には、「喫茶ソウセキのカレーメニュー」として、「漱石カレー」「百閒カレー」「思ひ出カレー」の説明されています。
時代がかっているカレーが美味しそう!
「文豪カレー」にワクワクしてきますね~ (^○^)

表紙には、喫茶ソウセキの店主こと緒川千晴(おがわ ちはる)がカウンターの向こうでカレーを温めている様子と、イケメン作家の葉山トモキ(はやま ともき)がテーブル席で古書らしき本を読んでいる姿が描かれています。
もちろん彼が座っているテーブルには美味しそうなカレーが置かれています。
千晴は、真剣に本を読んでいる葉山を優しそうなまなざしで見つめています。
この二人の距離感がいいですね~

表紙のカバーイラストは、前田ミック(まえだ みっく)氏です。
カバー・本文デザインは、菊池 祐(きくち ゆう?)氏です。

では、内容に入ります。
目次を見ますと、四つの話とエピローグがあります。(以下、文庫本初版3頁)
第1話は、「三四郎はライスカレーの夢を見る」
第2話は、「冥途に咲くや、鬱金の花」
第3話は、「銀の皿に仰臥漫録」
第4話は、「神の灯が照らす石油カレー」
最後に、「エピローグ」となっています。

目次を見るだけで、カレーと文豪がつながっている感じがしますね。
はて、「石油カレー」とはどんなカレーなのでしょう?
まさか石油を食べるのではないでしょうね?

イラストを見る限り、緒川千晴が経営する喫茶ソウセキは、カレーなどをいただきながら読書ができるくつろぎのある印象がします。
しかし、千晴が出店した店は閑古鳥が鳴く有り様で、現実は厳しいところから物語は始まります。
確かに神田神保町は書店だけでなく、カフェや食事のお店の競争が激しい街だと考えられるので、27歳で出店した千晴は相当な努力家であることが想定できます。

読者は、千晴の成長とともに、古書や文豪、カレーの知識を得ることができます。
つまり、千晴の成長物語に読者は寄り添って読み進むことができるのです。

喫茶ソウセキには毎日カレーをいただきに訪れる男性、小説家の葉山トモキの存在が大きいです。
彼が店の看板メニューの「漱石カレー」を酷評したことから、千晴の文豪の旅が始まります。

作品には、夏目漱石だけでなく、内田百閒などの文豪の作品が多く出てきます。
千晴は葉山トモキの自宅を訪問して、彼の夥しい蔵書や無類の本の知識に驚きます。
読者は文豪の作品を再読したくなります。

さらに或る女性が千晴の店に置き忘れた古書を紐解く楽しみが芽生えます。
この古書は作品の重要なアイテムになりますが、あなたが読まれてからのお楽しみに。

また、千晴のカレーの新作メニュー開発に基づき、スパイスなどの知識も読者は知ることができます。
読みながら、スパイスの香りがし、カレーが無性に食べたくなります!!
凛の頭の中は、「ああ、カレーが食べたい!!」でいっぱいになりました!!(^○^)」を発見できるかどうかは、あなたが読まれてからのお楽しみに!

作者の柳瀬みちる氏は、2015年、小説「美大探偵(仮)─《カジヤ部》部長の小推理─」第1回角川文庫キャラクター小説大賞を受賞☆彡されました。
この作品は、改題して『樫乃木美大の奇妙な住人 長原あざみ、最初の事件』(角川文庫、2016年)で刊行され、作家デビューされました。

シリーズ化されて、小説『樫乃木美大の奇妙な住人 白の名画は家出する』(角川文庫、2017年)があります。

他には小説『横浜元町 コレクターズ・カフェ』(角川文庫、2017年)など活躍されています。

最後に、この小説は、文豪とカレー、古書、神田神保町、小説家の五点セットで読者を大いに楽しませてくれる作品です。
読書好きにはたまらない作品です!! \(^o^)/

文学好きなあなた、文豪の作品がたくさん出てきますよ~
また、カレー好きなあなた、スパイスの勉強ができますよ~
古書がお好きなあなた、東京都千代田区の神田神保町という日本最大の書店の街で繰り広げられる謎解きを大いに楽しみましょう!
小説家に興味があるあなた、作家である葉山の暮らしぶりを覗いてどのように感じるでしょうか。

戦争の時代を生きた祖父母からの繋がり、千晴を育てた両親の時代、そして現代を生きる千晴の世界を応援したくなる作品です。
小説家の葉山との関係や、千晴の喫茶ソウセキの今後がとても気になり、続編を期待したいです。
喫茶ソウセキはカレーの専門店ではないらしいので、他のメニューも紹介していただきたいですね。 (^o^)

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2021年8月24日火曜日

「好き」の向こうに見えるものは、、 ~窪 美澄『じっと手を見る』(幻冬舎、2018年、のち幻冬舎文庫、2020年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりましてありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

本日から東京2020パラリンピック競技大会が始まりました。
各国からの参加選手の皆さま、ファイトです!!\(^o^)/

今夏は猛暑だと思っていましたが、8月は全国的な大雨にみまわれてしまいました。
あなたの周辺では大雨の被害などはありませんでしたか。
気がつけばもうすぐ夏も終わりますねえ。

天候不順のため、最近は夏野菜が高くなっています。
こういうときは冷凍食品の野菜が活躍しそうですよ。
お料理も工夫していきたいですね。 (^o^)

そういえば、今年から郵便局の「かもめ~る」の販売がなくなりましたね。
凛は昨年まで「かもめ~る」で数名の知人や友人たちと夏のご挨拶のやりとりをしていましたが、今年はご無沙汰することにしました。
コロナ禍で今夏も花火大会や地域のお祭りやイベントも減って寂しくなる一方、日常が淡々と過ぎてゆくことに慣れっこになっているのも事実です。

あなたは夏の休暇はいかがお過ごしされましたか。
帰省を避けた方もいらっしゃったのではないでしょうか。
普段から顔を合わせることも少ないが故に、会いたい人たちの顔が思い浮かびませんか。
「会いたいのはやまやまだけど。どうしているだろうか。本当に元気なのだろうか」と思いを馳せながら……。

都会と地方、この境界を越えてしまうことについて、仕事を絡めた恋愛模様を細かい心理描写で描いた小説があります。
今回の本は、窪 美澄(くぼ みすみ)氏の小説『じっと手を見る』(幻冬舎、2018年、のち幻冬舎文庫、2020年)です。

まずは、本の入手についてです。
凛が持っているのは文庫本で、2020年4月10日付けの初版本です。

時々訪れる隣町の全国大手の書店で昨年購入しました。
この書店は芸術関係や旅行などの本が比較的多く、雑貨なども豊富に揃っていてとてもお洒落な雰囲気です。
新刊本の平台の端っこにひっそりと並べられていた文庫本ですが、タイトルに惹かれて購入しました。
凛の書棚で一年間出番を待っていた本です。
出番は案外早いほうかも……。(-_-;)

次に、本の装丁についてです。
凛が持っている文庫本初版の帯には「幻冬舎文庫の春まつり」が印刷されています。

帯には、EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹(さとう だいき)さんの顔写真が掲載されています!(^o^)
一年経ていますので、現在は異なる帯が付いていることでしょう。

帯の表表紙側には、作家の朝井リョウ(あさい りょう)氏が「見知ったハッピーエンドとは違う人生だって、きっと、愛することができる。(省略)」(初版)と。
文庫本の裏表紙側の説明文には、「富士山を望む町で暮らす介護士の(省略)」「ショッピングモールだけが息抜き(省略)」(同)と書いてあります。
恋人たちを引き寄せてしまうショッピングモール。
ショッピングモールは凛も時々利用しますが、あなたもお買い物されますか。
「自分の弱さ、人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説。」(同)と紹介されています。

表紙の「じっと手を見る」の文字の下には、若い女性、或いは少女かもしれませんが、両膝を合わせて、左腕を寄せているような姿勢、恐らく座っている写真が掲載されています。
その両膝の間にはレンズがあり、かぼすのような柑橘系の果物を手で絞って画像が写っています。
切なさを求めたい方には期待できそうです。

文庫本表紙のカバーデザインは、アルビレオで、装丁事務所のようです。
カバーフォトは、Zigian Liuさんで、写真家です。

では、内容に入ります。
目次を見ますと、7篇の短編が収録されていますが、連作でひとつの物語になっています。(文庫本初版、5頁)

「そのなかにある、みずうみ」
「森のゼラチン」
「水曜の夜のサバラン」
「暗れ惑う虹彩」
「柘榴のメルクマール」
「じっと手を見る」
「よるべのみず」

車で運転して東京まで片道4時間くらいの富士山が望める町に住み、介護士をしている日奈(ひな)と海斗(かいと)は恋人でしたが、東京のデザイナーの宮澤(みやざわ)が二人の前に現れます。
宮澤に漂う「東京」との距離感を日奈は憧れをもって縮めようとします。

他方、海斗は職場の後輩である畑中(はたなか)と付き合うようになります。
彼女にも複雑な事情を抱えています。

そこから始まる登場人物たちの関係のもつれと複雑な心情に、作者はそっと寄り添いながらも、次第に深く切り込んでいきます。
どこまでも深く、抜け出すことができない底なし沼のように、容赦なく……。
彼女らや彼らの家庭環境から抉り出し、ほどけないまでに交錯して、時には苦しいことも思い切り吐き出させます。
「ええーっ、ここまで書いていいの?」と。

ところが読者はそれらの暗部にしっかりついていけるのです。
それらは決して暴走ではありません。
作者の登場人物たちへの優しいまなざしがあるからで、読者が納得できる形に収まるようになっているのは窪 美澄氏の技量であると凛は思います。

凛はこれらの連作短編について、五つの特徴を考えました。

一つ目は、短編の一つ一つのタイトルがとても凝っていて印象的な点です。
それぞれの物語には、タイトルにつながる箇所が出ていますので、それを見つけながら読むのも楽しいですね。

二つ目は、それぞれの短編の主人公が異なる点です。
最初の主人公は日奈から始まり、彼女の視点で描かれています。
次は、海斗の視点で描かれていて、同じ事象についても日奈とは異なる心理を読者は体験できます。
その次は、畑中が主人公になります。

という風に、各短編で主人公が異なるため、視点にずれが生じます。
では、タイトルの「じっと手を見る」のは、一体誰が誰の手を見るのでしょうか。
これはあなたが読まれてからのお楽しみに。

三つ目は、介護士という職業について詳細に描かれている点です。
介護士が日頃どのような気持ちで仕事に臨んでいるのかなどがわかります。
また、介護福祉士など資格取得についてもふれています。
それから、利用者側の家庭問題なども抉られています。

四つ目は、地方のショッピングモールの位置付けについて考えさせられる点です。
地方においてショッピングモールはその町の核となる重要な所でしょう。
そこに来れば食料品の他、日用の品々が何でも揃います。
さらに都会との接点を求める人たちのために、ブランドショップがキラキラと輝いています。
その輝きをもって恋人たちを引きつけていますが、会いたくない人まで視界に入る危険な場所でもあります。

五つ目は、富士山です。
この作品は毎日富士山を見ながら暮らしている方々の心情と、日帰りができる東京との距離感が絶妙に綴られています。
富士山を筆頭に持って行かないというのは、凛が富士山のお膝元に住んでいないからです。
富士山を見ると、凛は「わあ、富士山だあー。すごく高いなあ。美しいなあ」と思い、特別感がありますねえ。

以上、五つの特徴をあげました。

文庫版の解説は、直木賞作家の朝井リョウ氏です。
窪 美澄氏とは同年デビュー作家だということを初めて知りました。
解説を読んで、作家は同業者として意識するのだなあと思いました。(^-^)

作者の窪 美澄氏は、多くの作品を受賞されています。
2009年、小説「ミクマリ」(新潮社、2011年、電子書籍版)で、第8回R-18文学賞を受賞☆彡、作家デビューされました。

2011年、小説『ふがいない僕は空を見た』(新潮社、2010年、のち新潮文庫、2012年)で、第24回山本周五郎賞を受賞☆彡されました。
尚、この本に「ミクマリ」も収録されています。
この作品は映画化されており、2012年、タナダユキ監督、永山絢斗(ながやま けんと)さん、田畑智子(たばた ともこ)さん主演で、第37回トロント国際映画祭に出品☆彡されました。

尚、今回の小説『じっと手を見る』は、第159回直木賞候補作となっています。

他にも多くの受賞歴があり、大変ご活躍の作家ですが、とても長くなりますので省略させていただきます。(^-^;

最後に。
この作品は読後に切なさがこみあげてくる恋愛小説であり、介護に携わる方たちのお仕事小説でもあると凛は考えます。
人を好きになることと、仕事をして暮らしていくことの狭間で、「時間」という現実が目の前にたちはだかります。
それを超越したところにある「好き」の感情。
ただひたすらに切ないのです……。

是非映画化して欲しいなと思いますねえ。
俳優さんたちの顔を思いうかべながら読みました。

介護士たち、恋愛、青春、家庭環境、家、富士山と東京、ショッピングモール、結婚と離婚、子育て、老人、利用者たち、引きこもりなど、多くの「今」を生きている人たちの生の声が聞こえてくるような読書体験ができますよ。

タイトルの『じっと手を見る』が読後、あなたにはどのように伝わるでしょうか。
凛は思わず自分の両掌を見てしまいました。(^○^)

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2021年6月8日火曜日

やはり人が財産ですね ~山本甲士『ひなたストア』(小学館文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたにとってスーパーマーケットは身近な存在ですか。
「そんなの当たり前だ!」とは限りません。
日々の暮らし方には各々違いがありますから、一概にスーパーでお買い物される方ばかりでないでしょう。
それでも「食」は毎日のことですから、やはり生活必需品を扱うスーパーの存在は大きいですよね。

凛は生活圏にあるスーパーの話題についてはいつも気になっています。
毎日のセールだけでなく、近所に新しいスーパーが開店したとか、リニューアルしたとか、とても気になりますねえ。
A店とB店は昔からライバルだけど、A店のほうがスタッフの対応が良いとか、最近客入りが増えているのは綺麗に改装したC店だとか、或いは新規参入の薬局D店の食料品の価格が安いとか、E店は狭いけど野菜や果物が新鮮だとか、F店はセルフレジが使いにくいなどなど、、
それはもう消費者の立場で、勝手気ままに各店を客観視しながら、買い物の度に注目しています。(^-^;

経営者やスタッフの努力は大変なものであろうと思います。
特に昨年からのコロナ禍で、エッセンシャル・ワーカーと呼ばれるスタッフさんたちに、いつも「ありがとう!」と感謝の気持ちをこの場で伝えたいですね。\(^o^)/

今回の本は、山本甲士(やまもと こうし)氏の小説『ひなたストア』(小学館文庫、2020年)です。
廃業寸前の地域密着型のスーパーが、転職したサラリーマンの男性主人公らの活躍によって蘇っていく過程を愉しめる再生物語です。
再生するのはスーパーだけではありません。
転職した主人公の男性のお仕事小説でもあり、また周囲の人々との人情物語でもあり、それぞれの立場で再生します。

この作品は、2018年にハルキ文庫から『がんこスーパー』として出版されたものを改題、加筆改稿して、新たに『ひなたストア』として小学館文庫から2020年2月に刊行されたものです。
『ひなたストア』では、巻末に作者の「あとがき」が加わっています。

まず、この本の入手についてです。
凛は街の書店で見かけたものの購入はせずにメモだけとっていたのですが、後日になってからやはり読みたくなり、大手ネット書店から購入しました。
街の書店さん、今回はごめんなさい。
凛はもちろん書店巡りは大好きですし、ネットからの購入もしますよ~

次に、本の装丁などについてです。
凛が購入した文庫初版本の帯の表表紙側には、「廃業必至!店をV字回復させるには?」と赤い文字で目立つように掲載されています。
その文言の前には小さな赤い文字で「転職早々難題が!」と。
「ここでダメなら、おれもクビ!」とも小さな黒い文字で……。
「わあ、主人公は大変な状況だあ!」ということが一目瞭然です。

裏表紙には、「早期退職勧奨に応じた主人公の青葉一成。」の転職先について概略が説明されています。
ここで、主人公は自ら望んで転職したわけではなく、最初は仕方なく会社の方針に「応じ」なければならなかったことがわかります。

裏表紙側の帯とも合わせて読むと、青葉一成の転職した先の会社の事情で、閑古鳥が鳴いている廃業ぎりぎり間近かとみられる一店舗だけで営業しているスーパーで、見学に来た奥さんや中学生の娘とも絶句状態!
家族もいて、家の住宅ローンもあり、娘の進学も控えているし、中高年になっての転職は大変というのに、将来への希望も一気に瓦解してしまいました。
さて、お先真っ暗な状態から、主人公はどうやって前に進むのでしょうか、というお話です。

表紙のカバーイラストは、おとないちあき氏で、カバーデザインは、高柳雅人(たかやなぎ まさと)氏です。
表紙には、恐らく主人公と思われるエプロン姿の男性の背中が中心に配置されています。
この男性はお客さんとみられる方とお話しているようですねえ。
ここは野菜売り場で、人参やキャベツ、ピーマン、トマト、ネギなどがカゴにたくさん盛られていて、どれも新鮮で美味しそうです。
とても閑古鳥が鳴いているようなスーパーには見えません。

それでは、内容についてです。
主人公の青葉一成(あおば かずなり)は、福岡市に本社を置くサプリメント会社の営業課長職ですが、冒頭から人事部長から退職勧告を言いわたされる場面から始まります。
雇用されている者にとっては「ついに来たか!」と肩たたきを受ける恐怖の場面でしょう。
会社の都合により、業績の悪化を原因にされて、人員整理へと会社は容赦なく社員を切ります。
退職金の上乗せという条件も与えられますが、これから先を考えると、なかなか難しいところでしょう。
主人公の置かれた厳しさに身につまされる読者もいらっしゃるかもしれません。

青葉一成は退職勧告を受けます。
退職の日の情景は「あばよ、会社」といった感じでしょうか。
実に潔い場面です。
彼は過去を振り返ることもなく、前に進みます。

彼の再就職先については旧友のおかげで決まっていたこともあり、新しい環境でうまくスタートができるというところで、予想が見事に外れてしまいました。
呆然とする主人公と家族。
ここからが本当の再生の物語が始まるのです。

転職先の都合で、開発課長として在籍のまま、青葉一成が配属されたのは佐賀県の某地方の廃業寸前のスーパーの「ひなたストア」で、副店長という肩書でした。
このスーパーは一店舗だけの営業で、周囲には全国展開の大手スーパーと、地方で複数店舗も展開している勢いのあるスーパーに囲まれて、ライバルにも匹敵しないという立ち位置の廃れようです。
店舗には空気というのは消費者も感じますよねえ。
つぶれる寸前のお店というのは、活気がなくて品薄で、スタッフも暗くて笑顔がなく入りづらいし、人を寄せ付けない空気感がどよ~んと漂っています。

彼はご家族とも離れ、単身赴任で、重い気持ちで会社の寮である平屋の一軒家に住みます。
そこからが人のご縁が始まります。
あれよ、あれよと、後半は一気読みでした!! (^o^)

最初の改革はスタッフの笑顔から始まります。
「がんこ野菜」(128頁)という無農薬野菜、これが後半の重要なキーワードになります。

そして、人が人を呼ぶのです。
経営者、スタッフ、お客様、野菜農家、ラーメン店、習い事のメンバーなどなど。
メディアやインターネットも活用しますが、評判の持続性には努力が必要です。

「ええーっ!こんなにうまくいくかなあ」
「現実の事業経営は甘いものではありません」
「一店舗だからできるのでしょう」
「大手スーパーにも悩みはあるのだ」
「中高年の転職は厳しいものだよ」
などと批判の視点をもたれる読者も多くいらっしゃるでしょう。
しかし、この小説の中で何かひとつでもポジティブになれるヒントが見いだされるかもしれませんよ。

合わせて、主人公の青葉一成の成長物語でもあります。
主人公の日々を懸命に生きる姿に共感し、応援したくなる小説です。
凛は、この小説は働く者たちへの応援歌でもあると考えます。(^^)v

最後には、転職先の会社から青葉一成に「ある話」がきますが、彼はどう判断し、どのような決断を下すのでしょうか。

また巻末の作者である山本甲士氏による「あとがき」が、まるでエッセイのようで、この作品について実に分かりやすく解説されています。
作者のお住まいの周辺の複数のスーパーに対して、一消費者としての厳しい視点とあたたかなまなざしがみられます。
それらが作品につながっていくことが丁寧に綴られています。

作者の山本甲士氏は、1996年、小説『ノーペイン、ノーゲイン』(角川書店、1996年)で、第16回横溝正史ミステリ大賞優秀作を受賞☆彡してデビューされています。
山本ひろしの筆名で、2004年、小説『君だけの物語』(小学館、2006年)で、第13回小川未明文学賞優秀賞を受賞☆彡されています。
他にも受賞され、多くの作品を刊行されています。

短編集『わらの人』(文藝春秋、2006年、のち文春文庫、2009年、のち改題して『かみがかり』(小学館文庫、2014年)は、2008年に『髪がかり』のタイトルで、河崎実氏監督、夏木マリさんの主演で映画化されています。
他にも映画ノベライズなどご活躍されています。

また、会社からリストラされた中高年の男性が大変に努力するお仕事小説の『ひなた弁当』(中央公論新社、2009年、のち中公文庫、2011年、のち小学館文庫、2017年)もおすすめです。

人と人とのつながりを大切にすることで、たとえどんなに些細なことでも問題解決につながっていく過程が実によく描かれています。
人が財産ですね。

「ひなたストア」はどんどん応援したくなる地域密着型スーパーですねえ。
コロナ禍で「ひなたストア」はどんな策略を練り、展開しているでしょうか。
是非とも続編が読みたくなる物語です。(^o^)

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(小学館文庫)文庫-2020/2/6山本甲士(著)
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