2020年12月29日火曜日

シネコンのバックヤード・ツアーです! ~畑野智美『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
凛とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2020年も残すところ二日と数時間になりました。
あなたの2020年はどのような一年でしたか。

凛はおかげさまで4月に、ブログの南城 凛のりんりんらいぶらり~を立ち上げまして、8ヵ月続けることができました。
凛のりんりんらいぶらり~を訪れてくださるあなたのおかげで、励みとなって続けています。

凛は本が好きです!
街の書店巡りが好きな凛にとっては大変有益な一年でした。(^o^)

凛がご紹介させていただきました作品には、ベストセラーの有名な作家のものもあります。
またこれからきっとご活躍をされであろう期待感がある作家の作品もご紹介しています。
とても面白かった作品ばかりで、是非あなたにも読書の感動を共有していただけると嬉しく思います。

今年は新型コロナウィルスの影響で、全世界中の人々が巻き込まれ、未だ解決が見いだせておりません。
来年も引き続き、これまでの価値感など変化を求められる年になりそうですね。

ところで、あなたは映画はお好きですか。
今年は自粛の影響で、人々の生活に変化がみられました。
そのため、映画をお家で観られる方も増えたことでしょう。
レンタルショップだけでなく、ネット配信が増えてきている昨今です。

しかし、やはり、映画は映画館で観るのが最も楽しいですね!
まずは座席を予約するところから始まり、映画館に足を運ぶ時間から、映画の世界への旅は既に始まっているのです。

映画は巨大なスクリーンに映し出される映像と、ダイナミックな音声との融合がひとつの作品世界となっています。
映画に集中している約2時間前後は非日常の空間です。
映画館でご覧になられるあなたご自身の時間と空間、そして作中の時間と空間、この二重の融和があなたを映画の虜とさせてくれるでしょう。

今年は吾峠呼世晴原作、外崎春雄監督の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットで、全国の映画館が大盛況でしたね!
映画館の興行収入が大幅に増えたことは明るい話題となりました。
あなたはご覧になられましたか。
凛の友人は上映されると即座に映画館に行き、とても感動してきたと話していました。
まだまだこの映画の人気は続きそうです。

今回、凛がご紹介いたします小説は、シネマコンプレックスこと「シネコン」と呼ばれている映画館の仕事に従事している人たちのお話です。
多くの映画ファンに親しまれているシネコンでバイトをしている人たちに光をあてた作品です。

畑野智美(はたの ともみ)氏の連作短編集『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)です。
この作品は、作者の畑野智美氏がシネコンでバイトをしていた経験から描かれている小説です。

映画がお好きなあなたは、シネマコンプレックスをご利用されることもあるのではないでしょうか。
全国にあるシネコンは、単館やミニシアターとはまた違ったアミューズメントの楽しみがあるといった感じでしょう。

メディアなどの宣伝との連動で、主演俳優の舞台挨拶、ネットでの予約から、関連グッズの買い物、飲み物や食べ物の販売など、すべてがシステム化されているシネコン。
今回の作品は、このシネコンという広い空間と厳格なシステムの中で、真摯に取り組んで働く人たちのお仕事小説です。

凛は、いつもの近くの書店の文庫本の新刊コーナーでこの作品を見つけて、光文社文庫の2020年10月20日付の初版1刷を購入しました。
文庫版の表紙は、めばち氏のイラストで、映画フィルムを背景に、シネコンの制服を着た一組の男女が手を取り合っています。
女性の頭には赤いとんがり帽子が可愛らしくのっています。
二人は互いに見つめ合って、ダンスをしているようにも見えて、温もりのある雰囲気が漂っています。

文庫本初版の帯の表表紙側からは、仕事や恋、夢について一歩踏み出すことを躊躇している読者に対して勇気をもらえる小説であることがわかります。
物語は、クリスマス・イブの郊外のシネコンの舞台裏に焦点をあて、働く者たちの「等身大」(文庫本帯の表表紙側)として描かれているお仕事小説です。

帯の裏表紙には、シネコンが六つのセクションから成り立っていることが紹介されています。
「フロア」は、チケットのもぎり、案内、清掃など。
「コンセッション」は、飲食の売店。
「ボックス」は、チケット販売担当。
「ストア」は、パンフレット、関連グッズの販売。
「プロジェクション」は、映写機の操作担当。
「オフィス」は、備品管理、電話応対などをする事務所。

お客さまがシネコンで映画作品を楽しむためには、これだけのセクションがあり、様々な人たちの働きの中で「映画を楽しむ」という行為が成立しているのだということがわかります。
それらのどのセクションも重要であり、ひとつでも欠けるとお客さまが「映画を楽しむ」という行為が成り立たないということに繋がります。

文庫版の裏表紙からわかることは、この小説の舞台となっている郊外のシネコンには100人近い人たちが関わっていることに凛は大変驚きました。
実際、映画館に足を運んでも、上映される作品の時間帯の前後のスクリーンに関わる関係者しか普段は見えません。
シネコンではそれほど多くの人たちが働いているのかとあらためて思い知らされました。

映画ファンのための映画作品そのものや監督、俳優陣などに関する情報は多くありますが、シネコンの仕事に携わっている人たちの小説は、この作品で凛にとっては初めてでしたので、大変興味がわきました。
この作品は、或る年の日曜日のクリスマス・イブの日という特別な一日の舞台裏を描いています。
したがって、日常の業務に加えて、一年のうちの格段に忙しい一日であると容易に想像できます。
しかも、当日は舞台挨拶もあり、特別なイベント上映もあるという「大忙し」(文庫版、裏表紙)の日です。

物語は、七篇からなります。
六つの各セクションの細部にわたるバイトの規則が丁寧に描かれています。
シネコンでの就業規則をバイトの視点で具体的に紹介していますので、バイトのための活きた就業マニュアルのようでもあります。

バイトは学生だけでなく、主婦もいます。
各人が個々人の悩みを抱えながら、人間関係の問題ををくぐり抜けて、シネコンという職場の立ち位置に居場所を求めています。
その誰もが映画が好きであることが描かれており、彼らのシネコンに対する「映画愛」がこめられていることが伝わります。
映画がお好きな方でしたら、各人の「映画愛」に関するエピソードが楽しめるしかけが楽しめます。

シネコンにはもちろん社員もいますので、社員とバイトの間に流れている溝がみられます。
また、バイト同士の微妙な関係もあり、いろいろと考えさせられます。
郊外のシネコンですから、本社のある東京からきた社員との確執なども事細かく描かれています。
長く勤めているバイトの人たちと、新人との軋轢もあります。
実際にシネコンでバイトを体験した作者ならではの視点が活かされています。

物語には、数年前に起きたクリスマス・イブでの職場での或る出来事がミステリーの要素となって全体に流れています。
この出来事の謎の部分が最後にあかされる仕組みになっていますので、お楽しみに。

それぞれの人生をシネコンという共同の職場で、悩みながら映画に携わっている人々の生の声がよく伝わります。
各篇の最後は、なるほど、そのような道があったのか!ということも。

映画ファンにとりましては、シネコンの知られざるバックヤードがわかりますよ。
さらに、映画フィルムなどの技術変遷の歴史もわかります。
映画だけでなく、お仕事小説として捉えることができます。
映画ファンのみならず、これからシネコンでバイトする方や、映画関係で働く方には必読の書となりそうな小説だと凛は考えます。

作者の畑野智美氏は、映画館や出版社のバイトなどを体験されていらっしゃいます。
2010年、小説『国道沿いのファミレス』(集英社、2011年、のち集英社文庫、2013年)で、第23回小説すばる新人賞☆彡を受賞されて、翌年の2011年に作家デビューされました。
2013年、連作中編集『海の見える街』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2015年)で、第34回吉川英治文学新人賞の候補となりました。
また、翌年2014年にも、連作短編集『南部芸能事務所』(講談社、2013年、のち講談社文庫、2016年)で、第35回吉川英治文学新人賞の候補となっていて、シリーズ化されています。
2018年、文藝春秋刊行の小説『神さまを待っている』は、読書メーター OF THE YEAR 2019にランクインしています。

あなたの今年のクリスマス・イブはいかがでしたか。
これからお正月を迎えて、お休みの方には映画を観る機会も増えそうですね。

凛は、これからは映画の旅を楽しむときに、影の力となってくださっている映画館のスタッフに優しく接していきたいと考えました。
決して、観たばかりの映画の最後について「あーあ、つまらなかった」などと言いながら、ポップコーンをポイと投げるようにスタッフに手渡すことだけはしたくないなと思います。
席でポップコーンを落とさないように注意したいですね。

この作品でシネコンのバックヤードも知ることができ、館内のスタッフに感謝しながら、これからも映画がますます好きになっていくことでしょう。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

晩秋からブログの掲載が若干遅くなっておりまして、申し訳ございません。
今回が今年最後の更新となりました。
4月に立ち上げまして8ヵ月の間、凛にお付き合いくださり、誠にありがとうございました!
来年も続けてまいりたいと思っておりますので、今後も凛のりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたします!m(_ _)m

あなたもよいお年をお迎えくださいませ。\(^o^)/
お身体にはくれぐれもご自愛くださいませ。
あなたにとって、来年もよい年でありますように。
では2021年も南城 凛(みじょう りん)のりんりんらいぶらり~であなたとお会いしましょう。(^O^)/

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