2023年11月3日金曜日

日本茶と占いでまったりと ~標野 凪『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

11月になりましたね。
早くも今年もあと2か月となりました。
来年のカレンダーや手帳などの売れ行きも早くなっているようです。
夏から販売しているお店で、早めにお求めになるお客さんを結構見かけました。
凛も概ね揃えました。
もう気分は来年に。(^^)v
あなたはもうご準備されましたか。

秋は紅葉が綺麗な季節ですね~
あなたのお住まいの地域によっても異なりますが、暑い日中も日が暮れると冷えてきます。
身体を冷やさないように心がけたいものです。

ところで、あなたは日本茶はお好きですか。
凛は日本茶を飲むと心身とも落ち着きます。
昨今は手軽なペットボトル派も多いですね。
多忙な時代ではありますが、やはり急須で淹れた日本茶は香りも味も抜群で、疲れがとれるように思います。
中にはお茶殻の片づけが面倒という方もいらっしゃるでしょう。
毎日ではなくとも、お湯のみで日本茶をたしなむ時間をとるのもよいですよね~ (^-^)

今回ご紹介いたします本は、日本全国を巡り、その地方に合った日本茶の出張カフェを営み、訪れたお客さまの占いも行うという主人公の小説です。
日本茶の周辺にまつわる歴史や文化を学び、さらに落語なども楽しめるという歴史好きにはたまらない話題てんこ盛りの作品です。

標野 凪(しめの なぎ)氏の小説『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文芸文庫、2021年)です。
この作品は文庫本書下ろしですので、単行本はありません。

はじめに、凛がこの文庫本を手にしたのは、数か月前のことです。
凛の自宅から少しだけ離れた書店にて、カフェをテーマにした小説ばかりを集めたフェアで出合いました。
最近はカフェや食に関する小説も多いですよね~

この本の帯には「出張カフェ」と書いてあります。
帯の裏表紙側には「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」と出張カフェで訪れた都市が書いてあります。
何とまあ、凛が暮らしている都市が出ているではありませんか!(^O^)
一体どんなことが書かれているのだろうと気になり、レジに直行しました。

凛が購入した文庫本は、2023年5月5日付の第5刷です。
初版が2021年3月18日付ですので、評判が良いことがわかりますね~
第5刷の帯の表表紙側には、「コツコツ重版、じわじわヒット中。」と紹介されています。

同じく帯の表表紙側に書いてある「疲れた心に温かいお茶を一杯いかがですか?」と、黄緑色の帯に書かれた緑色の文字が日本茶を飲みたくなるように読者を誘ってくれます。
帯の裏表紙には、「出張カフェは呼ばれたところへ参ります。」と。

「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」(同)の六ケ所の土地で淹れた日本茶に関することが書かれています。
「氷茶」「ほうじ茶」「新茶」「お抹茶」「茶の木」「出張カフェ」(同)と各地で淹れた日本茶に関する気になるキーワードばかりですねえ。

次に、表紙についてです。
最初は、表表紙の絵からご紹介します。
向かって正面に木製のテーブルがあり、椅子に頬杖をつきながら座っている女性は主人公の如月(きさらぎ)たんぽぽさんでしょう。
テーブルには、急須やお茶のお道具、明るいデザインの敷布の上にはタロット占いのカードが並べられています。
そのすぐそばには、愛猫の「つづみ」が丸くなっており、お客さまをお待ちしているように見えます。

出張カフェ「お茶と占い 迷い猫」の小さな看板がテーブルの上に置かれています。
椅子の背が見えるこちら側にはお客さま用の湯のみが茶托と共に。
全体的に温かい雰囲気が漂っています。
たんぽぽさんから出されたお茶とお菓子をいただきながら、悩んでいることを良い方向に導いてくれそうです。(^_-)-☆

カバーの装丁は、岡本歌織(おかもと かおり)氏(next door design)です。
カバーの装画は、あわい氏です。
 
二番目は、裏表紙の説明文です。
主人公の如月たんぽぽさんは全国各地のギャラリーやイベント会場の一角で招かれ、愛猫の「つづみ」と共に出張カフェ「迷い猫」を営んでいます。
また彼女は、占い師としての顔も持ち、出張カフェに訪れたお客さまの悩みを聞いて少しでも明るい方向へと導いていきます。
頁をめくる度に読者の心も温かくなっていくという連作短編集です。

そして、彼女は各地で「『あるもの』の行方を捜していた……。」(同書)と大変気になることが書かれているではありませんか!
どうやら癒し系のお話だけではなさそうですよ。

それでは、内容に入ります。
目次の前に、いきなり夏目漱石(なつめ そうせき)の俳句「売茶翁花に隠るゝ身なりけり」(文庫本、3頁)が出てきます。
「売茶翁(ばいさおう)」
これは本作品の重要なキーワードとなります。

本表紙のデザインとロゴは、川上茂夫(かわかみ しげお)氏です。
目次・章扉デザインは、岡本歌織氏(next door design)です。

本作品は、全6話の連作短編です。
第1話のタイトルは、「氷茶ができるまで三十分お待ちください」(同、9頁)
たんぽぽさんが訪れたのは福岡市です。

9頁には、「『茶』玉露 福岡県八女市星野村産 氷茶」
「『水』不老水 福岡県福岡市 香椎宮」
「『菓』鶏卵素麺(たばね) 松岡利右衛門」
「『器』白と黒の器 ギャラリー下川提供」
と福岡市の出張カフェで用いたお茶、水、お菓子、器が紹介されています。

うわあ、とても美味しそう!
如月たんぽぽさんというプロが淹れた日本茶を飲みたくなります!(^^)v
凛は氷茶は飲んだことがないですねえ。

福岡市の「ギャラリー下川(しもかわ)」(同、13頁他)で行われた出張カフェはお客さまで賑わっています。
読者は、お茶の葉、水、お菓子についての学びができます。

お客さまの悩みを聞きながら、たんぽぽさんはタロット占いをしました。
氷茶の説明に加え、読者にはタロットカードの説明もあります。
たんぽぽさんは、「迷い猫カード」(同、61頁他)を悩めるおお客さまにお渡しします。
そのカードは「ま」「よ」「い」「ね」「こ」(同、62頁)の頭文字になっていて、相談する各人の悩みに合うように適切な言葉が続いています。

また、たんぽぽさんの父親の趣味だったことから、落語の話題も豊富に出ます。
第1話では、『猫の皿』(同、41頁他)についての説明もあります。

たんぽぽさんは出張カフェの翌日に有田焼で有名な佐賀県の有田(ありた)を訪れ、骨董屋の店主から「売茶翁」という僧侶の「月海元昭(げっかい げんしょう」(同、67頁)について教えられました。
「伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)」(同、68頁)の描いた「売茶翁」の日本画の説明から、本格的な日本文化の話題に発展していきます。
骨董やお宝の話題がお好きな方には、この作品が癒しカフェの話題だけではないのが伝わるでしょう。

お茶所で有名な静岡県の浜松市の出身であるたんぽぽさん。
母方の祖母は、かつて茶園を営んでいました。
たんぽぽさんは移動を伴う出張カフェというお茶と関わる仕事について、「売茶翁」との運命的なつながりに気づきます。
彼女は「売茶翁」の軌跡をたどりながら、全国各地を巡り、お茶の文化と心を追求してゆきます。
第6話に至るまで、読者はあらゆる日本文化の奥深さを知ることとなるでしょう。

果たしてたんぽぽさんが各地で探していた、裏表紙の説明文に出てきた「あるもの」の行方については如何に……。
一体どんなことが彼女を待ち受けているでしょうか。
後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)/

著者の標野 凪氏は、浜松市のご出身で、東京、福岡、札幌などに転居されています。
実際に福岡でカフェを開業した後、東京都内で現役のカフェの店主をされています。

2018年、「第1回おいしい文学賞」で最終候補になり、2019年に終電車のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』(ポプラ文庫ピュアフル)でデビューされました。(本書より)
近年では、『今宵も喫茶ドードーのキッチンで』(双葉文庫、2022年)が好評で、書店でご覧になられた方も多いでしょう。

最後に。
日本茶を提供する出張カフェで全国各地を訪れている如月たんぽぽさんは、「売茶翁」の軌跡をたどりながら、日本文化の奥深さを知ります。
またタロット占いでお客さまとの交流を得て、自身の生き様を認識し、日本茶とのつながりを深めてゆきます。
合わせて、落語の話題など日本文化を堪能できるように読者を導いてくれます。
彼女の傍らには常に愛猫のつづみがいて、彼女を見守ってくれています。

11月3日は文化の日。
一冊の文庫本に、日本文化の話題がぎゅうっとてんこ盛りとなっています。
老若男女の読者に読んでいただきたい作品です。

それにしても猫のつづみは飼い主を困らせることもなく、たんぽぽさんに寄り添っていますねえ。
たんぽぽさんの気持ちがわかるのかなあ。(^.^)

凛は季節に関係なく、熱めの日本茶が好きです。
標野 凪氏の営んでいらっしゃる東京都内のカフェを訪れてみたいです!
あなたもご一緒にいかがですか。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

************
************