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2026年1月31日土曜日

Z世代からα世代、アナログ派も楽しめる、新感覚の謎解き体験はいかが ~森 バジル『探偵小石は恋しない』(小学館、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

寒中お見舞い申しあげます

お久しぶりです。(^-^)
2026年に突入したと思ったら、もう1月も終わります。
本当に月日が経つのは早いものですね。

あなたは新しい年をどのようにお過ごしですか。
凛のりんりんらいぶらり~は昨年10月以来、実に3か月ぶりの更新となりました……。(^^;

晩秋・年末・年始と充電していた凛でございます。
「一体何度目の充電期間なんだ!!」とお叱りを受けそう……。<m(__)m>
懲りずに、今年もりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたします!!

只今、真冬の日本列島です。
寒い季節が苦手な凛は外出も控え気味となっていますが、読書するには最高ですね!
読書は贅沢な時間の贈り物。(^O^)
好きな作家や話題の作品などと共に、時空を超えたアナザーワールドに堪能できる幸福。
或いは現実からの逃避……。

AIがどんどん進化しているネット社会に生きる私たちにとって、時間との闘いはますます激しくなるばかりです。
世の中には楽しめるアイテムが豊富にありますからね。
「時間が溶ける」「時間を溶かす」
情報化社会とはいえ、決して焦る必要はないと凛は考えます。

文字を追って、時間をかけて読み進めていくという「読書」を敢えて楽しむこと。
貴重な時間を費やすわけですから、そこは外せないし、外したくないですよね。
書店やメディアなどからの本のおススメ情報はやはり日ごろからチェックしている凛です。

最近の書店に訪れる度に気づくことがあります。
新しい作家さんたちの作品が目立ってきていると思いませんか?
かつての若手作家と言われていた方々が既にベテランの域に達して、新たに新人作家さんたちの登壇。
世代交代とまでは言えませんが、それだけ時代がどんどん進んでいっていることの証でしょうか。
凛もまた一つ年齢を重ねているということは明らかな事実ですけれど、ね! (^O^)

2026年の最初の一冊、年も新たになったということで、新鮮な感覚を取り入れていきましょう!! \(^o^)/
新人作家さんたちの作品の中で、新しい感覚で謎解きを楽しめる探偵小説をご紹介いたします。

森 バジル(もり ばじる)氏の『探偵小石は恋しない』(小学館、2025年)です。
この作品は、2025年9月23日付で初版第一刷の発行です。
只今、単行本コーナーで絶賛発売中です!
凛が持っている本は、2025年12月15日付の第五刷ですので、いかに人気が高い作品であることがよくわかりますね~

読者は、登場人物たちの会話のやりとりの小気味よいテンポを楽しみながら頁がどんどん進み、気がつけば、旧来の固定観念や既成概念は取り払われています。
アナログ的な部分は根幹から外さず安心感もある上に、王道のミステリー作品名も登場するというミステリーファンにも嬉しいサービスてんこ盛りの作品です。

はじめに、この本の入手についてです。
書店の店頭やネットでも発売当初から注目を浴びていましたので、凛の「次に読む本」のチェックリストには入れていました。

最近書店でよく見かけるのが「購入者限定特典」。
サイン本や栞とか、付録みたいな読物などがついているサービスです。

いつもの近所の書店で、この本には書き下ろしの読物、「ショートストーリーペーパー」の特典がついていることに気がつきました。
しかも、特典を付ける書店は限定とのことでした。
「限定」に弱い凛はすぐさま購入を決めたのでした。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した2025年12月15日付の第5刷は、帯が「ホログラム全面帯」となっており、こちらも期間限定のものです。
最近流行っているのか、表紙全体にもう一枚上乗せした形になった帯の本を見かけますが、この本も表紙全体に帯が上乗せされています。
この帯はキラキラ光っていて、特別感のある帯です。

帯の上半分が表紙と同じデザインで、探偵の小石(こいし)が少し斜めな角度からこちらを見て微笑んでおります。
下部がピンク色を下地として、表側も裏側もそれはそれはもう読みたくてたまらなくなる言葉で読者を誘っていますよ!

帯の表表紙側には、「彼女のひと言で、世界が一変する。」「続々大重版の、驚愕体験ミステリ!!」(同帯)
裏表紙側には、「吹き荒れる小石旋風!各種メディアで大反響!!」(同帯)

「絶賛コメントが止まらない!!」として、小説家の法月 綸太郎(のりづき りんたろう)氏ほか多数の著名人からのコメントが紹介されています。
小説家の東川 篤哉(ひがしがわ とくや)氏からのコメントは、「ははん、だいたいわかったぞ!そう思った時には、もうアナタはだいたい作者の術中に嵌っているはず。この僕がそうであったように。」(同帯)と。
本当にそうなんですよ! このコメントどおり、凛も東川氏と同じでした。(^O^)

二番目は、表紙について。
第5刷では、表紙も「リバーシブルカバー」となっています。
表面と裏面が異なるデザインです。
ここでは表面のご紹介をします。

全体が紫がかった濃紺の中で、重厚な額縁の鏡の前に、長い髪の女性がいます。
白いシャツブラウスの襟元を紐状のリボンが結ばれていてアクセントとなっています。
ジャケットを羽織っている姿がとても凛々しいです。

帯のところで前述したように、探偵小石がこちらを見ながら微笑んでおりますが、何といっても眼力が強いのが特徴ですね。
「で、あなたの本心は?」「ホントのこと、わかってるのよ」と、こちらの心の奥底を覗かれているような感覚がいたします。
いえいえ、そんな、とんでもありません。疑われることなど何にもない凛なのですが……。( ;∀;)

装丁は、坂野 公一(さかの こういち)氏です。
装画は、はむメロン(はむ めろん)氏です。

それでは、内容に入ります。
プロローグから始まり、第一章から第五章、そしてエピローグという構成となっています。

探偵小石が活躍する舞台は、九州の福岡市内です。
凛の親戚や知人が多い福岡市とあって、駅名、地名や店名など実在しているので楽しく読むことができました。
もちろん福岡市をご存知でない読者も楽しめるはずです。(^-^)

小石は福岡市内で個人探偵事務所を営んでいます。
第一章の「恋は単純接触効果が九割」(同書、7頁)という冒頭の文からわかりますが、小石が代表と調査員を兼ね務める探偵事務所では、不倫などの調査を主としています。
この探偵事務所のスタッフは、小石のほかには、男性助手の蓮杖(れんじょう)と、バイトで勤務している事務員の女性、雛未(ひなみ)の二人がいます。

事務所には調査を望む依頼者が訪れます。
最初に登場するのが、佐藤 澪(さとう みお)という女子高校生です。
父親の不倫の調査をして欲しいという内容です。
Z世代である小石たちと、α世代の2010年代生まれの女子高校生たちとのやりとりが実に小気味よくて、凛はページがどんどん進みました。

読者は、探偵が実際に行っている様子を知ることができます。
探偵同士の合言葉や、具体的な追跡の仕方、そして見張りの行動など、「へえ、なるほどねえ」と。
もちろん、料金の話題もありますよ。

小石の機転に読者はアッと驚かされることが早くも起こります。
小石はタダモノではないということが!(^▽^;)

章を追うごとにあらゆる依頼者がこの事務所に訪れます。
そして、それに準ずるようにして奇妙な場面が……。
犯人と被害者との息詰まる場面に、読者は、この犯人は誰かしら?被害者は誰かしら?と推理しながら読み進めていくと……。

ミステリー小説なので、ネタバレにつながることは一切書けません。
なので、ここはさらりと軽やかに。
とにかく最初が肝心だけでなく、どの文章にも作者の思惑が込められています。
プロローグから本章まで二度読み必至です!

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに! (*^^)v

作品の特徴として、三点挙げます。
一点目は、会話のテンポの速さです。
小気味よい会話の数々。

例えば、第一章12頁での小石と蓮杖との会話に、「僕、恋愛するときは中身に惹かれるタイプなんで、マジで大丈夫です」
「え、それロジックつながってなくない?」
(省略)
「なおさら危ないじゃん、ラブたけのこがにょきにょきしちゃう」
「〝内省〟って辞書で引いて十回音読してください」など。(同書)

尚、「なおさら」には、「、」が付いていて強調されています。
以下、随所に「、」の強調箇所があります。お見逃しなく!

二点目は、アナログな一面も大事にしていることです。
探偵の調査ですから最先端の技術を用いているのかと思えば、個人としての小石はさにあらず。
しかし、蓮杖が小石の特質を上手くフォローしています。

三点目は、ミステリー作品へのリスペクトがあることです。
京極夏彦(きょうごく なつひこ)氏の『魍魎の匣』(もうりょうのはこ)(10頁)などのほかにもたくさんのミステリー小説が登場します。

次に、作者である森 バジル氏について。
2018年に、「モノクロボーイと月嫌いの少女」第23回スニーカー大賞《秋》を受賞。☆彡 \(^o^)/
後に改題・改稿して、『1/2─デュアル─死にすら値しない紅』(角川スニーカー文庫、2019年)で出版。

2023年に、『ノウイットオール あなただけが知っている』第30回松本清張賞を受賞されています。☆彡 \(^o^)/
同年、文藝春秋から単行本で発刊、2025年には文庫化されて文春文庫から出版されています。
今後、期待できる作家さんのお一人です! \(^o^)/

最後に。
新しい謎解きの感覚が堪能できる森 バジル氏のこの作品には、随所に伏線が張り巡らされています。
テンポよい会話、アナログな一面を持つ小石の特質、ミステリー作品へのリスペクトの三点の特徴が挙げられます。
読後は、多くの読者に備わっているであろう固定観念や既成概念の払拭という新たな概念が生じる作品です。

探偵小石さんや蓮杖くんに会いたいと思う読者も多いのでは。
凛も会ってみたいですね! (^O^)

今年もよろしくお願いいたします! <m(__)m>

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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森バジル(著)小学館(2025/09発売)
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2025年10月12日日曜日

受けとめ方はあなた次第です ~秋吉理香子『終活中毒』(実業之日本社文庫、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お変わりありませんか?
暑かった夏から秋への移行が年々遅くなっています。
体調には気をつけていきたいですね。

いつまでも夏を引きずっていてはいけないことに気づかされる売り場があります。
それは、文具や雑貨店の手帳やカレンダー売り場です。
既に8月の夏真っ盛りの頃から手帳やカレンダーは売り出されてはいますが、これらの在庫が年々早く減っているように感じるのは凛の気のせいかしら?
お気に入りのデザインのものはお早めにゲット!ということでしょうね。(^.^)

暑いからといっていつまでも夏ではないのですねえ。
やはり日本は四季の国。
今年もあと2か月半。
時はどんどん過ぎてゆきます……。
10月に入ると、毎年同じことを感じている凛ですねww (^^;

モノの整理や空間を活かすことの重要性が認識されてからだいぶ経ちます。
そして、「終活」も!
高齢者だけでなく、若い年齢層の方々まで「終活」は浸透してきているようです。

人生100年時代とはいうものの、誰しにも当てはまるかといえば、さにあらず。
こればかりは誰にも予測できないこと。
だからこそ「終活」は大事なのです!

「終活」とは一体誰のためのもの?
自分自身のために、残された家族のために、次世代のために。
管理を徹底して、面倒なことは後回しにせず、後悔のないように。
「今」を生きるこの自身の手ですっきりさせましょう!

などというような強迫観念が蔓延しているかのごとく、、
自己管理と自己責任の重責がどど~っと重くのしかかってくる。
はて、世の中にはおすすめしたくない終活があるのでしょうか?

あなたは「終活」について考えたことはありますか?

今回ご紹介する文庫本は、秋吉理香子(あきよし りかこ)氏の短編小説集『終活中毒』(実業之日本社文庫、2025年)です。
単行本は、2022年7月に同タイトルで実業之日本社より刊行されています。

著者による「終活」をめぐる様々な状況設定に、読者はあらためて自身の人生にあてはめて考えていくことになるでしょう。
ミステリー仕立ての「終活」に、肯定あるいは否定的に捉える方もいらっしゃるかもしれません。

はじめに、この文庫本の入手についてです。
凛が持っている文庫本は、2025年6月15日付けの初版第1刷発行です。

ある日のこと、凛はいつもの近所の書店の文庫本の新刊コーナーで、ハッと目につくタイトルの文庫本を発見しました。
それが『終活中毒』というタイトル!
え? 中毒になるほどの「終活」って一体何をすることなの?
実に印象的なタイトルに凛は興味をひかれました。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した初版本の文庫本の帯の表表紙側には、「最高の最期(エンディング)のはずが」
「まさかのどんでん返し⁉」
「人生の残り時間、あなたはどう生きる⁉」
「驚愕&感動の〈終活〉ミステリー!!」(以上、同帯)

帯の裏表紙側には、書評家の青木千恵(あおき ちえ)氏からのメッセージが、文庫本の解説から抜粋されています。
「主人公にも読者にも予測がつかない状態で展開し、着地がどうなるのか知りたくて、引き込まれる。」(同帯)

二番目は、表紙について。
まずは、表紙のデザインから。
水色をベースに、右側に白髪の女性が右側に向けて立っています。
女性は横顔で、眼を閉じて無表情。
白いユリの花数輪を胸の前に持ち、濃い茶色の服を着て、スラックスも同系色のもの。

対して、左側にはこの女性の影ともいえるシルエットが対比的に描かれています。
シルエットは黒と灰色の濃淡で描かれています。
顔は左側を向いていますが、表情は全く見えません。
白いユリは黒い色になっています。
まさに、この女性の心の裏側を描いたとも思える、意味深なデザインとなっています。

カバーデザインは、岩瀬 聡(いわせ さとし)氏です。
カバーイラストは、太田侑子(おおた ゆうこ)氏です。

次は、裏表紙のメッセージから。
水色の目立つ大きめの文字で、「遺言、片付け、まさかの復讐!? こんな終活、嫌ですか──?」
黒色の文字で、「ゾッとする終活、理想的な終活、人生を賭けた終活…4人の〈終活〉に待ち受ける衝撃&感涙のサプライズとは?」(文庫本、初版)

「終活」を巡るあらゆる事情が描かれていることが想像できます。
内容がものすごく気になるではありませんか!
これは是非とも読まないと!
凛は書店のレジに向かいました。(^O^)

それでは、内容に入ります。
文庫本3頁のContentsには、収められている4編の短編小説のタイトルが書いてあります。

「SDGsな終活」
「最後の終活」
「小説家の終活」
「お笑いの死神」

文庫本の解説は、帯にも掲載されている青木千恵氏です。

今回は2番目に収められている短編小説「最後の終活」についてご紹介します。
妻を交通事故で63歳で亡くした夫と息子との話です。
結構「あるある!」と巷にあふれていそうな話と思いきや、どんでん返しの面白さがあります。( ;∀;)

突然逝ってしまった妻の遺影を前にして、どうしたものかと途方に暮れる夫。
夫が在住している「たかの市」(同書、74頁)の防災チャイムが鳴り、「迷い人」(同書、同頁)の高齢女性についてお知らせするアナウンスが流れてきます。
「防災行政無線」(同書、同頁)から、たかの市も既に高齢化社会に突入していることが読者に明確に伝わります。

妻の遺影の前でため息をついていると、息子の広海(ひろみ)(同書、76頁)が登場します。
和室の畳の張り替えのために父と息子は座卓を移動しなければならないのですが、父親のほうは息子が幼かった頃の思い出がよぎってしまい、結局休憩をとることになります。

亡き妻と息子は仲が良くて、息子が東京の大学に入学した以後も妻が上京して交流していたようです。
妻の死後、息子と父は疎遠となってしまいました。

この息子からは「一切の連絡がなくなったのだった」のですが、「それが三日前、突然帰って来た。」(同書、79頁)のでした。
息子が帰ってきた理由は、「そろそろ三回忌だから」(同書、同頁)ということでした。

息子は、母親の三回忌を前にして、実家のリフォームをすることを父親に主張します。
息子はリフォームに関する情報はネットで調べて、「オンライン限定割引」や「BtoCで直(じか)に契約できるのが魅力だよ」(同書、83頁)などと高齢者には意味不明なことばかり述べるので、父親は驚きをもって息子に関心するばかりです。

息子は、リフォーム業者の出入りの用心のために、金庫などもネットで即座に購入します。
亡き妻の着物の処分については、買取業者には気を付けよ、と息子は父親に詳細な説明をします。
息子がこの先に進んで良いことと、悪いことを明確にわかりやすく教えてくれるので、父親としては頼りになれる息子の存在が大変ありがたいのでした。

この息子と父親との関係、果たして大丈夫かなあ、といささか危なげな感じがしますよねえ。
こう思って読み進んでいる読者の皆さん、この後、新たな展開が!( ゚Д゚)

「──あたし、ヒロミです。」(同書、92頁)という女性の声で電話がかかってきたのです。
「あのねえ、うちのヒロミは男ですよ」(同書、同頁)と応対する父親。
父親は荒く受話器を置いてから、「おい、詐欺だぞ、詐欺!」(同書、同頁)と息子に言うと、息子の広海は苦笑いして悠然としています。

さて、ここから二転三転するジェットコースターの展開に、読者がアッと驚く結末を迎えることになります。
よくありそうだな~と思われがちな話から、読者の予想を裏切る結末。

あとは、あなたが読まれてからのお楽しみに! \(^o^)/

著者の秋吉理香子氏は、2008年、短編小説「雪の花」第3回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞されました☆彡。\(^o^)/
この作品は、2009年、短編小説集『雪の花』のタイトルで小学館文庫から刊行されています。
また、2009年に、テレビ朝日からドラマ化されました。

さらに、2013年に双葉社から刊行された小説『暗黒女子』(のち、双葉文庫、2016年、双葉社ジュニア文庫、2017年)は、2017年に映画化されました。
漫画化された作品もあり、今後、ますますのご活躍を期待できるミステリー作家のお一人です。(^^)v

最後に。
「終活」が流行しているこの日本で暮らしている人々の日常について、読者に新たな視点として着目させた秀逸な短編作品集です。
著者の秋吉理香子氏による幾重にも重なるミステリー作家としての力量が活かされています。
ミステリーとはいっても、背筋が凍り付く作品もあれば、読後に心が温まる作品も収められています。

登場人物のそれぞれの立場で考えてみると、各作品の結末の捉え方は違って当然でしょう。
つまり、受けとめ方はあなた次第ということですね。

「終活」の流行は、人々が日常の不安感にさいなまれている証拠かもしれません。
「終活」という概念に恐れおののきながら生きていくありさまはいかがなものでしょうか。
しかしながら、今を生きる自身の人生を整えるための「終活」はやはり大切にしたいものです。

人生を楽しく! \(^o^)/
あまり難しく考えずに、シンプルにすすめていけたらいいなあ、と考えている凛です。
甘い!と言われそうかなあ……。(^▽^;)

読書の秋。
あなたも読書ライフを楽しんでくださいね。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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秋吉理香子(著)実業之日本社(2025/06発売)
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2025年8月31日日曜日

美味しいパンには愛があります! ~土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

いや~、今年の夏も暑いですね!!
「暑かった」と過去形ではなくて、現在も進行中の暑さです。( ;∀;)

あなたはご体調にお変わりありませんか?
日中の気温が40℃だなんて、冗談では済ませられなくなってきましたよ。
「そのうち40℃になるかもしれませんねえ」と初夏になった頃に話していましたが、本当に40℃になるとは……。
暑さ対策でエアコンが必需品になりましたね。

9月以降もまだまだこの暑さは続くのでしょうか。
お~い、日本の秋さ~ん!
涼しい秋はいつ頃訪れるのですかぁ。 (^o^)丿
この暑さでへこたれるわけにはいきません。
美味しいものを食べて、ほっこりしたいものですねえ。(^O^)

あなたはパンはお好きでしょうか。
凛はパンが大好きです!
パン屋さんに入ると、香ばしいパンがずらりと並んでいますよね。
凛もお気に入りのパン屋さんで好みのパンを選んでいるときの幸福感がたまりません!!

今回ご紹介いたします作品は、パン屋でアルバイトをしている大学生の女性が日常で遭遇した謎を解く「美味しい」ミステリー小説です。
土屋(つちや)うさぎ氏の連作ミステリー小説『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)です。
2024年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作です。☆彡
単行本のみの刊行となっています。

この作品は今年の1月24日に発行されてから人気が広がりました。
既に読まれている方も多くいらっしゃるでしょう。
ミステリーといっても全然おどろおどろしい話ではありません。
日常の身近なことや、ふとしたことから生じる疑問についての謎解きです。

また、パン屋で働くパン職人さんたちのお仕事小説でもあります。
クロワッサンやカレーパンなど人気のあるパンの紹介やプロのパン作りについてなど、パンが食べたくなる要素がふんだんに盛り込まれています。
読みながら、焼きたての香ばしいパンをほおばりたくなります。(^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛が聴いている地元のラジオ番組の本の紹介コーナーに、著者の土屋うさぎ氏が電話で登場したことで書店に直行したのでした。
各書店ではこの本が目立つようにたくさん並べられていて凛は気になっていたのですが、ラジオで著者ご本人の生の声を聴いて、読みたくなったのは言うまでもありません。
凛が持っている本は、2025年1月24日付の初版です。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
帯の表表紙側には、もちろん目立つように「『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作」とデーンと書いてあります。
その下に「クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン… 焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!」
さらに下には、「選考委員絶賛!」と翻訳家・書評家の大森 望(おおもり のぞみ)氏「全体を包む空気感が魅力的」をはじめ、著名な方々のメッセージが書いてあります。(以上、初版本帯)

帯の裏表紙側には、「"美味しい"ミステリー、召し上がれ!」と8名の書店員さんからのメッセージが実名入りで掲載されています。
こちらも本作品への愛を感じてやみません。
小説の読後に再度目を通すと「はい、確かに!」と納得した凛です。

二番目は、表紙について。
全体の色が焼いたパンの色を彷彿とさせる茶色の濃淡となっているのが印象的です。
中心部に主人公らしき女性が、オーブンから出したトレーの焼きたてのパンを店内のかごに並べている絵となっています。
女性の顔は笑顔で、パンに対する愛情が描かれています。
表紙を見ただけで、凛はパンが食べたくなりますね。 (^^;

装画は、出水(でみず)ぽすか氏です。
扉絵は、著者の土屋うさぎ氏です。
装幀は、菊池 祐(きくち ゆう)氏です。

それでは、内容に入ります。
1頁の目次を見ますと、五つの章とエピローグがあります。
各章のタイトルに思わず「パンが食べた~い!」と食欲と葛藤する凛でした。(^^;

第一章は、「焦げたクロワッサン」
第二章は、「夢見るフランスパン」
第三章は、「恋するシナモンロール」
第四章は、「さよならチョココロネ」
第五章は、「思い出のカレーパン」
最後に「エピローグ」となっています。(同書)

どのパンも好物ですね~
あなたはどのパンがお好きですか?

では、あらすじです。
第一章から。
主人公の市倉小春(いちくら こはる)は、大阪の豊中市の大学一年生で、漫画家を目指しています。
彼女は大学に入学した春から一人暮らしを始めたので、同市内にあるパン屋の『ノスティモ』でアルバイトをすることにしました。
何故パン屋のアルバイトを始めたかというと、「売れ残りのパンが貰えるからだ。」です。(同書、6頁)

ノスティモは、従業員数15名未満の個人経営店で、パンの他にケーキも製造しています。
二階にカフェがあり、「居心地のよさと上品さが合わさった」「オシャレなお店」(同書、同頁)です。
「青を基調とした店内は、いつもパンとコーヒーの香りで満たされており、大学の近くにあるため学生にも人気がある。」(同書、同頁)
ここを読んだだけでも行ってみたくなるお店ですね~

ノスティモは最寄りの駅「石橋阪大前駅から徒歩十分」(同書、同頁)と書いてありますので、もしかしたら実在する店舗なのでは?と思ってしまいます。
四十代半ばの男性、堂前(どうまえ)店長と、女性社員の福尾(ふくお)さんたちとのコミュニケーションもなかなか良い雰囲気で、ぎすぎすしていない人間関係が出ています。

美味しいパンやケーキには、作り手側の感情は経営戦略のひとつとして大切な要素であると凛は考えます。
とはいうものの、凛はパン屋やケーキ屋を営んだことはありませんので、あくまでも消費者側から見ての考え方です。
やはり美味しさあってのパンやケーキではないでしょうか。

小春の親友、由貴子(ゆきこ)は、先にノスティモにアルバイトとして入っており、小春にアルバイト先として紹介しました。
小春にとっては「恩人」(同書、15頁)の由貴子でした。
仲良しの二人だったので、小春にとってはいつまでもノスティモで一緒にアルバイトできると信じていたのでした。

ところが、由貴子がノスティモを辞めると言い出しました。
そこから二人には少しずつ距離感が出てきます。

『想剣演舞』(そうけんえんぶ)(同書、17頁)のライブビューイングを一緒に観るという約束をしていて、二人とも楽しみにしていました。
ところが、前日になって急に由貴子が行けなくなったと小春に告げます。
その理由は、由貴子がノスティモのシフトに入ることになったと言うのです。
シフト表では個性的なレナ先輩が入る予定になっていたはずです。

何故に、由貴子はレナ先輩の変わりに急にシフトを交替することになったのか?
これが第一章での謎解きのテーマになります。
この謎解きから、何故に由貴子がノスティモを辞めることになるのか?につながります。

レナ先輩の代わりにシフトの交替をすることになったと主張する由貴子。
悶々とした感情の中、サンドイッチに用いるたまごフィリングの状態があまりよくなかったことからも余計に小春の内面は落ち着きません。

合コンがあったからシフトに入れなかったというレナ先輩と小春とのやりとり。
レナ先輩は天王寺動物園に行った動画を二人のスマホに送信しましたが、由貴子はスマホの充電が少なくポケットの中にしまい込みました。

ライブビューイングが観られなかった由貴子のために、小春は由貴子の部屋でライブの見逃し配信を一緒に観ようと提案しました。
小春からの提案を受けた由貴子とバイトからの帰り道のこと。
小春は由貴子に、サーティワンのアイスクリームの誕生日無料クーポン券を使ったのかと尋ねます。

「あっ!使うの忘れてた」(同書、29頁)と由貴子の意外な返事。
そんなのあり得ない。
一人暮らしの学生にとって、無料のクーポン券は大変貴重なものなのに。
いつもとは違う由貴子の態度に、小春の心の中で呟くのでした。

「──ねえ、ゆっこ。あなたは何を隠しているの?」(同書、31頁)

由貴子の部屋には「推し」のハセピー(同書、20頁他)グッズがたくさんありました。
パソコンのディスプレーを通して『想剣演舞』に魅入る二人の会話の中に、謎解きのヒントが……。

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^.^)

このように、日常のちょっとした疑問、ふとした違和感、あれ?といった感覚を小春は細かく分析し、追究してゆきます。
章が進むにつれて、パンの作り方の他、歴史や説明、店内の人間関係、常連客とのやりとり、同業の他店舗の研究など、頁が進みます。
気がつけばあっという間にエピローグとなります。

パン屋のアルバイト体験は、小春の今後の人生に大いに役に立つことでしょう。
大学の卒業とプロの漫画家を目指す小春の活力にエールを送ります! \(^o^)/

著者の土屋うさぎ氏は、プロの漫画のアシスタントを兼ねるプロの漫画家です。
2023年、『あぁ、我らのガールズバー』で集英社・第98回赤塚賞順入選☆彡ほかにも受賞されています。
2024年、『文系のキミ、理系のあなた』(一迅社『コミック百合姫』2024年6月号)で第30回百合姫コミック大賞翡翠賞を受賞されています。☆彡

同年、本作品で第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞☆彡され、小説家としてデビューされています。\(^o^)/
土屋氏の小説、漫画と楽しみが増えますね。

巻末には、第23回『このミステリーがすごい!』大賞選考結果(同書、245頁)と、前述の大森望氏、コラムニストの香山二三郎(かやま ふみろう)氏、ライターの瀧井朝世(たきい あさよ)氏による選評(同書、246頁~253頁)が掲載されています。
ミステリー好きなあなたへ、是非こちらもお楽しみに! \(^o^)/

最後に。
大学一年生になり、親元を離れて一人暮らしを始めた市倉小春は、パン屋でアルバイトを始めました。
パン屋をめぐって起きた日常のちょっとした出来事や異変、違和感などから生じた謎解きに小春は活躍します。
そして、彼女はパン作りや販売、リサーチなどを通して社会の一員として認識をしてゆきます。

謎解きの楽しさと主人公の小春の鋭い観察眼に読者は納得するばかりです。
漫画家を目指すという小春。
著者のプロフィールと重なり、今後も読者からの応援が励みになることでしょう。

美味しいパンには愛が必要なのだなと凛は思いました。
読後はパン屋に行って、香ばしいパンの香りに包まれたくなりました! (^O^)

暑い日が続いていますが、日の入り時刻は確実に早くなっています。
あなたも秋の夜長に読書を楽しみましょう。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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土屋うさぎ(著)宝島社(2025/01発売)
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2025年6月9日月曜日

「暮らしをととのえる」ための覚悟とは ~阿部暁子『カフネ』(講談社、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早くも2025年の前半期も今月で終わります。
月日が経つのは本当に早いものですね!(^-^)
梅雨の前線も北上中です。
近年は大雨になったり、いきなり真夏日になったりと激しいお天気のイメージが定着しています。
体力の維持が求められますね。 
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

さて、今春4月9日に発表された2025年本屋大賞の作品はあなたは読まれましたか?
発表前から候補作品が書店の店頭にも並べられていたので、それぞれの本を手に取ってみられた方も多かったのでは。
本屋大賞については凛が時折聴いている地元のラジオ放送の本紹介のコーナーでも話題に上がっていて、とても気になっていたのでした。

今回ご紹介いたします作品は、今年の本屋大賞受賞で話題の阿部暁子(あべ あきこ)氏の長編小説『カフネ』(講談社、2024年)です。
この作品は、単行本のみの刊行となっています。

物語の前半と後半とでは、登場人物たちの生き様を通して、主人公の女性の世の中の見方や思考、生き方に対する価値観が大きく変わる物語です。
主人公の視点が変わっていく過程が丁寧に描かれています。
読んで良かった~~\(^o^)/と心から願いたい読者のためにおすすめしたい作品です!

また、お料理を作ったり、あるいは食べることが大好きな方、部屋の片づけやお掃除が好きな方はもちろんのこと、これらのことに興味がある方には是非おすすめです。
もちろん、お掃除や、お料理を作ることが全然得意ではない方にもおすすめですよ~ (^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛は本屋大賞の発表後に、自宅から30分ほど歩いた大手の書店から購入しました。
凛が持っている単行本は、2024年4月3日付の第11刷発行です。
初版が2024年5月20日付ですので、多くの読者に読まれているのがわかりますね。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
当然ですが、本屋大賞受賞発表後の購入なので、帯の表表紙側には、黄色い帯に赤い太文字で「本屋大賞受賞」と書かれています!
黄色と赤の組み合わせは目立ちますよね~ (^O^)
その文字の上には、「『おいしい』と泣くことから再生は始まる。」
「人生のお守りになる食が繋ぐ愛の物語」(同書、帯)

帯の裏表紙側には、「別れ、喪失、荒れた部屋。どん底でもおなかは空く。」(同書、帯)
確かに、人はどんな状況におかれていても、食べなければ生きてはいけません。
やはり食べることが最優先ですよね!

帯の裏表紙側には、最上段の白い部分に「友達でも恋人でも家族でもないけれど、ただあなたの髪を撫でたい。」と書かれています。
黄色の地の下の部分には赤い文字で「『元気をもらった』との声多数!大切な人を抱きしめたくなる物語」と。(同書、帯)

二番目は、表紙について。
全体的にチョコレートブラウンのような落ち着いた色合いで、木のテーブルの上に、白いティーポットと白いカップ、ガラスのミルク入れ、白いお皿にはチョコレートケーキのようなデザートを食べた後のお皿とフォークの写真になっています。
奥には観葉植物らしき植物が置いてあり、柔らかな光がのどかな雰囲気を包んでいるようです。
ゆったりとくつろいでいる午後のひとときといった感じでしょうか。

表紙の上のほうに金色の文字で「カフネ」と横書きのタイトルが出ています。
真ん中には白い文字で、今度は縦書きで著者の名前の「阿部暁子」の文字。

そもそもタイトルの「カフネ」とは何のこと?
という素朴な疑問がおこりますよね。
凛の持っている本の帯の表表紙側には、「カフネ──愛する人の髪に指を通す仕草」と書いてあります。

この表紙を外すと、モスグリーン色の地に、調理道具のフライ返しとへららしきものが金色で描かれています。
作中で活躍するアイテムなので、読者へのメッセージがこめられています。

カバー写真は、写真家のNana*(ナナ)氏です。
装丁は、岡本歌織(next door design)(おかもと かおり)氏です。

それでは、内容に入ります。
読まれる前の読者には「覚悟」をもっていただきたいですね。
何故ならば、「食」を中心にした癒し系の物語、あるいは女性陣が大好きな甘いスウィーツの物語、または片付けなどの家事関係の話なのかな、といったイメージで読みだすと、とんでもなく遠い世界にあなたを連れていってしまうことになるからです。
他人には言えない人生の生き辛さが、これでもか、これでもかと出てきて、人によっては息苦しくなって読み辛くなるかもしれません。

あらすじです。
主人公の女性の野宮薫子(のみや かおるこ)の弟、春彦(はるひこ)が急死し、その弟からある日、薫子の元に宅配便が送ってきました。
何故に亡くなった弟から?とミステリーの要素を含んだ設定になっています。

亡き弟の遺志による遺産相続の件で、薫子は彼の元恋人の小野寺せつな(おのでら せつな)とカフェで会いますが、彼女とは初対面ではありませんでした。
初めて出会ったときから、薫子はせつなには良い印象をもっていませんでした。

常に上から目線でせつなと対峙する薫子。
負けじと無愛想な態度をとるせつな。
春彦からの遺産相続を断わるせつなに対して、薫子は態度をさらに硬くします。

カフェで薫子はせつなを前にして突然倒れてしまいます。
薫子の自宅マンションの部屋まで送り届けたせつなから、「お茶はいりません。それより、お姉さん、お昼は食べましたか?さっきのカフェでも飲み物しか頼んでませんでしたけど」(同書、28頁)と問われます。
薫子が黙っていると、せつなから「冷蔵庫、見ていいですか」(同書、同頁)と訊かれます。

薫子が返事をする前に、冷蔵庫を「遠慮なしに各段の扉を開けて、じっくり中をのぞいた」(同書、同頁)せつなは、「このへんの食材、勝手に使わせてもらっていいですか」(同書、同頁)と言って、あれよという間に豆乳とコンソメとツナ缶とトマトでスープを作って、ゆでた素麺にかけて薫子と二人でいただきました。
美味しかったのでしょうねえ。
涙であふれた薫子には「やさしい味がしみて、痛いほどしみて、もう耐えられなかった。」のです。(同書、32頁)(T_T)

せつなは『カフネ』という家事代行サービス会社に所属しており、依頼者宅に行ってお料理を作り提供しています。
薫子は供託管として、東京法務局の八王子市局に勤務している公務員です。

せつなとの関係はほぐれることのないままでしたが、薫子は休日に『カフネ』で家事代行サービスの掃除係をボランティアで手伝うことになります。
料理担当のせつなと共に、様々な家庭の事情を目にすることになった薫子でした……。

貧困家庭、格差社会、高齢者、介護、人間関係、親子関係、きょうだい、結婚、不妊、孤独、仕事、学校、離婚、再婚、単身、性差、健康、病気、難病……。
法務局では相談者からの法的な手続きを担当しており、社会的な対応をしてきたのだと自負があった薫子でした。

しかし、薫子はせつなと組むことで、『カフネ』を通して初めて知る異常に歪んだ社会の面々に触れます。
それらは、薫子が勤務している法務局や、これまで当然として捉えていたシステム化、細分化、透明化された社会とは異なる価値観が渦巻いている世界だったのです。(-_-;)

この作品には、登場するどの人物たちもそれぞれに困難な事情をもっています。
個々が抱えた事情を紐解きながら、物語は進んでゆきます。
後半になると、読者の価値観は前半とは全く異なる目線に気づくことになるのです。
亡き弟、春彦のことについても……。

後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)

著者の阿部暁子氏は、2008年、短編小説『陸の魚』cobalt短編小説新人賞を受賞☆彡。
同年、小説『いつまでも』第17回ロマン大賞を受賞☆彡されました。
そして、今年の本屋大賞受賞です☆彡☆彡。 \(^o^)/
今後、最も期待される小説家のお一人です!

最後に。
「暮らしをととのえる」
簡単なことのように思えますが、実は大変難しいことなのだということがよく伝わる作品です。

せつなが勤務する家事代行サービス『カフネ』で、片付け担当として、料理担当のせつなと組むことになった薫子には、さまざまに困難な事情を抱えた訪問宅の人々との交流を通して、彼女の視点に変化が訪れます。
お料理を作る、また食べることの力とはいかに偉大なのでしょう。
食材を活かすことの大切さに気づかされます。
部屋の片付けも同じことですね。
薫子とせつなとの関係性は、『カフネ』で輝いて欲しい!と凛は願うばかりです。

薫子は、後半になるにつれて心身とも力強く、頼もしく、そして、人に優しい大人の女性に成長します。
凛には、283頁で薫子が発した言葉、これにはウルウルと感動しました!(T_T)
もしも凛が薫子の立場だとしたら、相手にこの言葉が言えるかなと。

以前にも書きましたが、これまでの凛は、話題の作品はすぐには読まずにしばらく様子を見るか、または文庫本になるまで待ってから読むことが多かったです。
この頃は、話題の作品は単行本で読みたくなることもしばしば。
評価が高い作品は、文庫本になるまで待てなくなってきたんですよねえ。
「時間」と「欲」との関係でしょうか……。 (^^;

お料理に例えると、美味しいおかずから先に食べるのか、それとも美味しさは最後に味わうのか。
さて、あなたはどちらのタイプですか?

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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阿部暁子(著)講談社(2024/05)発売
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2025年3月30日日曜日

若者が堕ちてゆく、その先にあるものは…… ~桐野夏生『インドラネット』(角川文庫、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

春がきました!
桜前線も北上中です。
あなたは桜のお花見にお出かけされましたか。
暖かくなったとはいえ、夜には花冷えもありますが、やはりこの時期にしか見られない桜の花を愛でたいものですね~ (^O^)

日本では4月から新学期と新年度が始まります。
多くの若者たちにとっては人生の節目となる季節でもあります。
新生活に胸を躍らせる若者たち。
新卒の新社会人にとっては初任給が恵まれているとのこと。

彼らを前にして、日本では人手不足、少子高齢化、物価上昇、人・賃金・地域間の格差などの社会問題が既に厳しい局面と対峙しなければいけません。
闇バイトなど国内の犯罪だけでなく、東南アジアなどで犯罪組織に入ってしまった若者たちの報道が増えています。

若者たちは将来に対する夢や希望など消え失せてしまったのでしょうか。
それとも最初からそのようなものは抱いていなかったのでしょうか。

夢、希望、友情、労働、対価、孤独、逃避、焦り、不信、恐れ、反省、諦め、転換、目的……。
初めはほんのちょっとした軽い考えから、本人の気づかない間に深い沼にはまり込んでしままったのかもしれません。
脱出できるチャンスがあるかと思わせておき、油断をしていたら、そこには偽りの世界を突き付けられるという現実が襲ってきます。
実は最初から入念に仕組まれた罠であったとしたら……。(*_*;

今回ご紹介いたします本は、契約社員として暮らしているどこにでもいそうな日本の青年が、突然に失踪したかつて親しかった友人とその友人の姉妹を捜して欲しいと、ある人たちから依頼されて、初めて訪れた東南アジアの国に向かった先で彷徨い傷つきながら外見も内面も変貌してゆく物語です。

桐野夏生(きりの なつお)氏の長編小説『インドラネット』(角川文庫、2024年)です。

読者は、謎めいた多くの登場人物たちと主人公の青年との危険な関係にはらはらどきどきしながら、「いや、そこは止めたほうがいい」「そっちの方向に行ってはダメだ」「急いで戻って!」「ファイトを出して!」などなど青年に声援を送りますが、物語はどんどんあらぬ方向へと進んでいきます。

それから、東南アジアの国々の旅ガイドの楽しみも味わえます。
さらに、青年の変貌していく過程にも驚かされるのです。

はじめに、この文庫本の入手についてです。
凛は近所の書店の新刊コーナーで出合いました。
凛が持っている文庫本は、2024年7月25日付の初版本です。
単行本は2021年5月にKADOKAWAから出版されています。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が持っている文庫本の初版の帯の表表紙側には、「あいつは死んだのか。それとも俺から逃げているのか。」「見るもの、聞くこと、すべて信頼できない『人捜し』」と。
何よりも「桐野文学の到達点!」と帯に紹介されているからには、これは読まなければ!と凛は即座に思ったのでした。(^O^)

余談ですが、この帯にはちょうど角川文庫75周年で「カドイカさん」が「夏休みフェア2024プレゼントキャンペーン」が掲載されています。
「カドイカさん」のコアなファンの中には応募された方もいらっしゃるかも。(^-^)

二番目は、裏表紙の説明文について。
主人公の青年、八目晃(やつめ あきら)の紹介が「平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない」から始まり、「何の取り柄もない」「非正規雇用でゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた」。(同書)
要するに、晃はヒーローではない、どこにでもいそうな青年、等身大のような身近な存在の主人公です。

彼にとって「唯一の誇り」があります。
「高校時代のカリスマ、「野々宮空知(ののみや そらち)とその美貌の姉妹と家族ぐるみで親しくしたこと。」

裏表紙の説明文には、気になるキーワードがいくつか出ています。
「野々宮家の父親の葬儀」
「空知はカンボジアで消息を絶った」
「空知を捜しに」
「東南アジアの混沌の中に飛び込む」
「彼らの壮絶な過去だった……。」などなど。(文庫本初版)

出版社の戦略に見事にはまっても構いません。
時間を忘れるほどに夢中になる作品が読みたいあなた、物語の先が気になります。
本作品を全部読了したくなりますよね~ (^-^)

三番目は、表紙について。
文庫本の表紙は、アジア系と思われる女性が顔は横向きで、裸体の背中を読者側に向けています。
女性は長くて緑色が混じった黒っぽい髪を結っており、赤い宝石が埋め込まれた髪飾りが印象的です。
うなじから背中、肩へと長い後ろ髪を垂らして、うなじ側を右手で押さえています。

彼女の長めに伸ばした爪が綺麗です。
薄い絹織物か、レースのような透明の生地を背中に充てています。
彼女の仕草は無造作のようですが、巧に計算されているようにも見えて、こちら側を意識しているのがわかります。
全体に気品があり、気高く、そして妖艶な様相です。

カバーイラストは、日本画家の木村 了子(きむら りょうこ)氏です。
カバーデザインは、鈴木 久美(すずき くみ)氏です。

尚、単行本の表紙は文庫本と違った作品となっています。

それでは、内容に入ります。
物語は、第六章で構成されています。
「第一章 野々宮父の死」(文庫本、5頁)は、主人公のルーティン化していた日常に、ある日突然に非日常な出来事が侵入していく重要な導入部分です。

発端は、契約社員で社会生活の一員として日々を送っている八目晃の元に、彼の実家の母親から、野々宮空知の父親の俊一(しゅんいち)の訃報を知らせるLINEがきたことによります。
晃と空知とは都立高校の同級生で、空知の実家に入り浸るほど親しくしていたこともあり、空知の父親の死は晃にとってショッキングな出来事でした。

成績抜群で美貌に恵まれた空知の存在は、晃にとって「心酔」(文庫本、6頁)するほど神々しい光でありました。
また、空知には「野々宮の美人姉妹」(同書、7頁)と誰もが認める姉の橙子(とうこ)と妹の藍(あい)がいました。
晃には空知と姉妹の三人との接点を持った青春時代が最も輝かしい過去でした。

空知の父親の通夜では、空知の母親の雅恵(まさえ)が喪主を務めており、晃と久しぶりの再会となりました。
母親の話では、空知とはホーチミンからが最後の連絡で、その後にカンボジアに行ったということを晃は知ります。
彼女の口からは「うちの子供たちの誰一人とも連絡がとれないのよ」(同書、16頁)と衝撃的な発言が。
「空知は『俺、オフクロ、苦手なんだよ』とよく言っていた」(同書、23頁)ことを晃は思い出し、空知が大好きだった父親の死を目にして、晃は過去の記憶を辿ります。

通夜の帰りに、安井(やすい)と名乗る男性が、空知がカンボジアにいたらしいという情報をもたらして、晃が空知たちを現地で捜すことを提案します。
安井のこれまでの動向がどこまで真実か否か、怪しさ満点でもあります。

さらには三輪(みわ)という男性も現れ、捜索の資金援助を晃に申し出ます。
晃は安井と三輪の言動に怪しみ、驚きながらも、もう行くしかないと諦め半分の境地に至ります。
晃は職場で置かれている自身の現状が悪化していることから、既に現実からの逃避、一時的でもよいので日本を脱出したい、とりあえず行けば何とかなるだろう、と緩い思考回路が働きます。

このように最初はホンのちょっとした現実逃避、それによって友人の居場所が見つけられたら最高。
一時的なのだから、また日本に戻ってやり直せばよい、という安直な発想から彼の物語は始まります。

読者は既に甘い考えの晃の行動に呆れながらも、彼の後を追いかけることになります。
空知と姉の燈子、妹の藍の三人の行方は果たして如何に……。

第一章には非常に大事なキーワードが散りばめられています。
凛は第二章以降に入っても、この第一章を何度も読み返しました。
読了した後、もう一度おさらいのように読み返してみると、なるほどね~と桐野ワールドに感心、納得しました。\(^o^)/

あなたにも是非この物語のスリルとサスペンスを楽しんでいただきたいですね。
後はあなたが読まれてからのお楽しみに! (^O^)/

桐野夏生氏については、2021年3月5日付の第28弾、「奪われてしまうことの大きさに気づくか」(ココ)の項で既にご紹介しています。

最後に。
置かれた現状に不満をもつ青年の八目晃が、慌てて日本を飛び出し、かつて親友だった野々宮空知と彼の姉妹を捜す東南アジアの旅の道連れに読者のあなたを誘います。
それは一時的な現実逃避のつもりでもありましたが、行く先々であらゆる危険な状況に遭い、さらなる前進となってゆきます。

真実と偽りとの境目が曖昧な境界線を行きつ戻りつしながら生き抜くにはどうしたらよいでしょうか。
いつの間にか青年自身が価値観の転換を図ることになりますが、彼は自身の内面の変化に気づいたでしょうか。
彼の生きる世界はさらなる泥沼へと化してゆくのです。
日本の若者がはるかに遠い所へと行き着いた先は……。

これは一体何の旅なのでしょうか。
果たして晃は友人と姉妹に再会できたのでしょうか。
そして、彼は無事に日本へ戻ることができるのでしょうか。
読者の中には、晃に課された旅の謎にハッと気づく方もいらっしゃることでしょう。

文庫本の最後に収められている「解説」は、ノンフィクション作家の高野秀行(たかの ひでゆき)氏です。
凛からのお願いですが、高野氏の「解説」は本作品を読了後に読んでいただきたいです!
高野氏からも指摘されていますが、ネタバレが入っていますので、ご注意お願いいたしますね。( ;∀;)

勿論、読み方は個人の自由ですので、読者のあなたに委ねます。
そう言われると「解説」を先に読みたくなるかもしれないですけれども。(^^;

桐野ワールドを堪能したいあなた、ジェットコースターのごとく上り下りに恐れながらもハラハラドキドキしたい読者におススメです。(@_@)
一気読み間違いありませんよ! 
桐野氏の作品は読者の予想に反する結末が多く、その楽しみもありますね。(^^)v

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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桐野夏生(著)KADOKAWA(2024/07発売)
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2025年1月31日金曜日

きらびやかな装いの影で ~黒木 亮『アパレル興亡〈上・下〉』(集英社文庫、2024年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2025年も早くも一か月が過ぎます。
あっという間の12分の1ヵ月……まさしく光陰矢の如しですね。
あなたはいかがお過ごしですか。
凛は今のところ風邪もひかずに過ごしています。

日本では春夏秋冬の四季があります。
冬の真っただ中ですが、ファッションの世界では明るい色の春服が中心となっています。
ファッションは常に季節感を先取りしますね。

現実の寒さとは裏腹に、ココロは既に一歩先に向かわせてくれる──それがファッションの役割なのでしょうか。
冬のかさばる服装から装いを新たにして、気分は春!
ウキウキと楽しく軽やかに~♪ \(^o^)/

「何を着たっていいじゃない。別に裸でなければね~」
と仰る方もいらっしゃるでしょう。
或いは「ブランドの主張する考え方に共鳴して自己実現として表現したい!」
とお考えの方もいらっしゃいます。
ファッションの世界もなかなか奥が深いものですね。(^-^)

今夜ご紹介いたします本は、凛のように着て楽しむだけの消費者をはじめ、これまでの服飾や流通業界の歴史や奥を知りたい方におすすめしたい小説です。
勿論、アパレル産業や流通業界の方々には周知の事実でしょうが、ファッション雑誌やメディア、デパート、スーパー、衣料品店から得る情報だけでなく、知識の幅が広がることでしょう。

黒木 亮(くろき りょう)氏の長編小説『アパレル興亡〈上・下〉』(集英社文庫、2024年)です。
単行本は、2020年2月に岩波書店より『アパレル興亡』のタイトルで刊行されています。
上下巻として再編集、昨年、集英社より文庫化されました。

上下巻なので長い!と読むことに躊躇される方へ。
いえいえ、そのようなご心配などありませんよ~

会話文を織り交ぜながら登場人物たちがイキイキとしていて描かれています。
読者に映像が想像できるように仕立てられています。
まるで映画かドラマを観ているかのごとく大変読みやすくなっていますので、ご興味のある方には一気読み間違いありませんよ。(^O^)

はじめに、凛がこの文庫本を入手したのは、市内中心部の書店の文庫本新刊本の棚で出合ったことによります。
凛の持っている文庫本は、上下巻とも2024年5月30日付の第1刷、初版本です。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
文庫本上下巻の帯の紹介がとても印象強いもので、購入する機会となりました。
凛は帯は大事な情報であると考えます。

文庫本上巻(第1刷)の帯の表紙側には、「業界騒然!日本経済の栄枯盛衰とファッション業界の裏側を活写!」と紹介されています。
その横には実在する服飾産業「ユニクロ、ZOZO、青山商事、三越……」(同帯)の実名が掲載されているではありませんか!
さらに「アパレル業界の栄枯盛衰を八十年以上にわたる長尺で描いた大作である。」と。

同じく上巻(第1刷)の帯の裏表紙側には、「私たちが毎日着ている服。その産業はどんな歴史をへて今の姿になったのか。」「どんな人間が作り上げてきたのか。」(同帯)と掲載されています。

下巻(第1刷)の帯の表表紙側には、「圧倒的なリアリティ!!」「巨大産業一大絵巻!」「一気読み必至長編小説」(同帯)の文字が目立っています。
上下巻まとめて読みたくなりますね~ (^.^)

二番目は、裏表紙の説明文について。
文庫本(第1刷)上巻の説明文では、「俺、東京に行きてえんだ!」(同書)という言葉から始まります。
昭和28年の山梨県在住の田谷穀一(たや きいち)は上京を志願します。
彼は東京・神田の婦人服メーカーのオリエント・レディに入社しますが……。

下巻(第1刷)の裏表紙側の説明文では、ファッション文化が栄えた時代の波に乗り「非凡な才能で婦人服メーカーオリエント・レディの社長に上り詰めた田谷穀一。」(同書)
ところが村上という「〝物言う株主〟」(同書)の出現により、「状況は一変」(同)してゆくのです。
そして「会社は誰のものか」(同書)と問われる時代に突入しますので、経済小説でもあることが読者には伝わります。

三番目は、表紙について。
上巻の表紙は、黒い服をまとったモデルたちが一列に並んで歩いている後ろ姿の写真になっています。
恐らくファッションショーでしょう。
彼女たちが着ている服のデザインはそれぞれ異なり、ハイヒールを履いて歩いています。

下巻の表紙は、やはりモデルたちが一列に並んで白いステージを読者側に向かって歩いている写真です。
カラフルな服を着たモデルを先頭に、次のモデルは白っぽい服を着ています。
彼女たちの顔はわかりませんが、綺麗な足元が見られます。
やはりファッションショーでしょう。

カバーデザインは、森デザイン室の森 裕昌(もり ひろまさ)氏です。
写真は、Catwalkphotos/Shutterstock.comです。

それでは、内容に入ります。
上巻では、プロローグから始まり、第五章までです。
上巻の主な登場人物が出ていますのでわかりやすいです。

プロローグでは、2010年(平成22年)の5月、中国上海でユニクロの上海南京西路店が開店する日から始まります。
中国では北京オリンピックに続いて、上海万博が二週間前に開幕した非常に華やかな時でした。
世界中のハイブランドが路面店に軒を連ねている市内随一の繁華街、南京西路に日本のユニクロが開店するということで、開店前から多くの若者たちや家族連れの行列で賑わっていました。
ユニクロの世界進出は四店舗目となり、海外市場の目標額は3兆5千億円から4兆億円を狙った戦略でした。

日本では、国内で最大といわれるアパレルの通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する会社の会議の模様が描かれています。

他方、オリエント・レディでは、31年もの長い間、社長の座に座っていた田谷穀一の体調に異変が生じたところでプロローグは終わります。
このわずか9頁から20頁のプロローグを読んだだけでも、アパレル業界の変遷と販売形態の多様性などがわかりますね。(^O^)

第一章では、昭和5年の春に時代が戻ります。
山梨県在住の15歳の少年、池田定六(いけだ ていろく)の出自と、池田家の裏手に在住する田谷家の人たちとの関係から物語は始まります。
池田定六は後のオリエント・レディの創業者となる人物です。

戦後の時代は和装から洋装に移ります。
三越などのデパートや、洋裁学校、ファッション誌や女性誌の台頭など、ファッションをめぐる動きが活発になります。

昭和28年の3月に田谷穀一は上京してオリエント・レディに就職し、池田の部下として働きます。
後にイトーヨーカ堂の社長となる伊藤雅俊(いとう まさとし)との出会いや服地の織物会社との交渉など田谷の着眼点は鋭いものがあり、彼の実力に磨きがかかっていきます。

第二章では、「イージー・オーダー」(同書、97頁)という言葉が出てきます。
「マネキンに服を着せた服は、目立つのでよく売れる。」(同書、97頁)
夢を売るための服という概念は時代を超えて今も変わらないようですね。
マネキンと凛のスタイルは大きく隔たっておりますが……。(^^;

第三章の「百貨店黄金時代」というタイトル(同書、102頁)からもわかるように、小田急百貨店、松坂屋銀座店、伊勢丹などデパートが婦人服販売を席巻します。
時代はさらに進み、有名デザイナーたちが脚光を浴びるようになるとファッションショーも賑やかになります。
雑誌やテレビCMで次々に各メーカーが新しい提案をして消費者の購買欲を強く刺激します。

第五章のタイトル「社長交代」(同書、220頁)で漸く田谷はオリエント・レディの社長の座を射止めます。

下巻では、第六章から第十章まで物語が続きます。
上巻で大きく押し寄せた時代の波に乗って業績を伸ばしたオリエント・レディですが、下巻では一転、次々と眼下に押し迫る深刻な問題に、社長の田谷はどのような考え方や行動を周囲に示したのでしょうか。
何故に田谷は31年間も社長の座に居座ることができたのでしょうか。

そして、下巻のエピローグの305頁から316頁で、読者は何を感じることができるでしょう。
あとはあなたが読まれてからのお楽しみに!(^-^)

上巻の巻末には「アパレル用語集」(276頁~286頁)が収録されていますので、業界に詳しくない方でも大変わかりやすくなっています。

この小説にはユニクロやオンワード樫山などの会社や経営者などの実名が多く登場していますので、ルポルタージュを読んでいるような感覚の読者がいらっしゃるかもしれません。

では「オリエント・レディとは実在している会社なの?」
「田谷穀一って実在の人物?」
という疑問が生じる方も多いことでしょう。
アパレル業界に詳しい方は「この会社だ!」「この人だ!」とすぐにわかるかもしれません。

疑問の答えは、下巻の巻末の「主要参考文献」(317頁~319頁)からわかるでしょう。
また、同じく下巻の巻末、林 芳樹(はやし よしき)氏の「解説」から詳しい情報が得られますので、是非とも最後までお読みくださりますように。(^O^)

作者の紹介です。
黒木 亮氏は、都市銀行、証券会社、総合商社など海外勤務も含めたビジネスマンを経て退職されました。
2000年に長編国際経済小説『トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て』で作家デビューされました。
この作品は、2000年に祥伝社から単行本刊行されたのち、2005年に角川文庫で刊行されています。
専業作家として多くの作品が刊行されています。
「1988年より英国在住」であると文庫本上下巻の著者紹介に掲載されています。

最後に。
アパレル業界をとりまく時代は、小説のエピローグからさらに進んでいます。
Z世代が社会人となる今から未来に向けて、新たな考え方でアパレル産業を成長させてくれることに凛は期待します。\(^o^)/

かつては季節の変わり目のセール品に群がっていた凛です。
あれもこれもと激しい物欲とのせめぎあいの結果、着られなくなった服の整理に追われることになっていました……。(-_-;)

現在では「今の凛にとって何が必要か」「それは本当に欲しいものなのか」「似合っているか」「疲れないか」「ご縁があれば」という視点で購入したいなと考える凛です。
それはファッションだけでなく、モノの購入にもあてはめているこの頃ですねえ。(^-^)

あなたにとってファッションとはどのような位置付けとなっていますか。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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黒木亮著(集英社文庫、2024/05発売)
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黒木亮著(集英社文庫、2024/05発売)
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2024年5月15日水曜日

あなたもクルマに乗って人生の冒険をしてみます? ~篠田節子『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りんです。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはGWはいかがお過ごしされましたか。
連休が長かった方には生活のリズムが乱れて、却って疲れがたまっている方もいらっしゃるのでは。
5月も後半に入りますねえ。
初夏から夏への移行期間で爽やかな季節を迎えています。
7月15日の海の日まで祭日がありませんので平坦な日々を送ることになりますが、乗り切っていきましょう!\(^o^)/

凛は部屋の模様替えをするため、蔵書の整理に追われました。
今回は文庫本を中心に多くの本を整理しました。
400冊以上です……。 
木製の文庫本ラックの1架を思い切って処分しました。

本の整理はまだ完全に終わってはいないので、部屋には段ボール箱が何箱も積み重なっていますが……。(-_-;)
どの本にも思い出が詰まっていて、泣く泣く手放すのはそれはもう辛いものがありますが、、(T_T)
保管するスペースには限りがありますので、気持ちを切り替えて前向きに捉えていきますね。(^O^)

このような重い本を運搬していただくのも運送会社と配達員の方々のおかげですね!m(__)m
流通を担っているのはクルマがあってこそです。

GW中にはクルマでドライブを楽しまれた方も多かったことでしょう。
今や自動運転など今やハイテクマシーンと化したクルマです。
最新の技術が私たちの安全を守ってくれています。
私たちの暮らしにとってクルマは絶対に欠かせない存在ですね。(^-^)
今回ご紹介します本は、ある非日常における時点で、クルマがあって良かった!と思った人々の物語です。
人生の分岐点に立つ主人公にとってクルマが重要なアイテムとなります。
クルマとの忘れられない思い出となっていることでしょう。

篠田節子(しのだ せつこ)氏の中編小説3篇が収められている作品集『田舎のポルシェ』(文藝春秋、2021年、のち文春文庫、2023年)です。
凛が持っているのは文庫本で、2023年10月10日付の初版本です。
単行本は、2021年4月に刊行されています。

はじめに、凛がこの本を入手したのは、おなじみ近所の書店の文庫本新刊の棚でした。
『田舎のポルシェ』
変わったタイトルだなあと思ったのが第一印象でしたね~

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛の文庫本の初版本の帯には、表表紙側に黒色の太字で「日常は冒険に変わる」と目立って書かれています。
その前に「ひとたびアクセルを踏み込めば」と。
おやおや穏やかではありませんね~
安全運転でお願いしますよ~

小さく黒色で「人生の岐路に立ち 秘めた思いを抱いて 一歩踏み出す人々を描く 3篇のロードノベル」
青色で「笑って、泣いて、ハラハラして 現代人へ送るエール」(以上、文庫本新刊帯)
なるほど~ これは読後に爽快感が得られそうです!

二番目は、表紙について。
表表紙は、全体に青色がかっている中で、中心部に白い軽トラがデーンと横断歩道の真ん中に鎮座しています。
その軽トラの荷台には、紫色の作業着を着た男性が白いヘルメットをかぶって立っています。
助手席には女性が座っており、窓からこちらを見ているか、あるいは他のことを考えているかのようにも見えます。
全体が青みがかっており、交差点付近の人影もまばらなので、早朝、夜明け間近かもしれませんね。

裏表紙側の説明文では、表題作の「田舎のポルシェ」についての概要が紹介されています。
主人公の翠(みどり)は「実家の米を引き取るため、助っ人の車で岐阜から東京へ向かうことになった(以後省略)」と。
彼女の前に現れたのは「軽トラに乗った強面ヤンキー!」
「さらには大型台風が迫り──。」
「往復1000キロ、波乱だらけの強行軍を描いた表題作」(以上、文庫本初刊)

Oh!これは篠田氏独特の世界。
まさしくハラハラドキドキのジェットコースターに乗っているかのごとく読者を飽きさせないロードムービーの小説ですね。

文庫本のイラストは、太田侑子(おおた ゆうこ)氏です。
デザインは、城井文平(きい ぶんぺい)氏です。

では、内容に入ります。
以下の中編3篇が収められています。
「田舎のポルシェ」
「ボルボ」
「ロケバスアリア」

文庫本の解説は、細貝さやか(ほそがい さやか)氏です。

第1話「田舎のポルシェ」
文庫本の裏表紙の説明文で概要はつかめると思います。
会社員の増島翠(ますじま みどり)は、東京郊外の実家の米農家の娘です。
事情があり、台風が迫る中、大量の米を岐阜まで運ばなければならなくなりました。
知人の紹介で瀬沼(せぬま)と名乗るヤンキーの恰好の男性と軽トラで移動するのです。

米農家や自営業の苦悩、家庭の事情など個々に事情を抱えており、クルマの走行距離が延びるうちにだんだんと明らかになってゆきます。
二人は悪天候の中で米を無事に運んでいけるのでしょうか……。
背景に台風という制限を課して、そこから脱出する術の見事さ。
篠田氏の真骨頂ともいえる作品です。

第2話「ボルボ」
共に定年組である斎藤克英(さいとう かつひで)と伊能剛男(いのう たけお)はそれぞれ異なる元大手企業の会社員でした。
二人は妻の趣味がご縁となり、定年後に知り合いました。
両者の定年後の暮らし向きは一見余裕があるように見えますが、両家の事情と懐具合が微妙に交差しています。

斎藤は伊能が長年運転してきたボルボで北海道まで同乗することになります。
旅先で思わぬ事件が発生します……。
互いの腹の探り合いがだんだんと顕著になっていく様が絶妙です。

第3話「ロケバスアリア」
畔上春江(あぜがみ はるえ)は、孫の藤森大輝(ふじもり だいき)が運転するロケバスに乗って東京から浜松市の湖月堂(こげつどう)ホールまで向かいます。
春江が趣味とするオペラをホールで歌い、画像をDVDに収録するためで、DVD制作専門家の神宮寺(じんぐうじ)も同乗しました。
ロケバスには化粧やドレスの着替えなどできるようにしつらえてあります。
ちょうどコロナが流行していた時期で、ホール並びに移動にも制約が伴いました。

ホールでは雨が降り、悪天候に見舞われました……。
そこから物語が発展してゆきます。
人生模様を語り合い、理解し、受容していく過程が読者には心地よく響きます。
物語の最後はこんなオチがあったのかと驚き、読者は感動で胸がいっぱいになること間違いありません!

作者の篠田節子氏については、2020年5月2日付の「新鮮で美味しいサラダを求めて」のタイトル(ココにてご紹介していますので割愛させていただきます。

最後に。
安定感のある篠田節子氏のクルマに関するロードノベル中編小説3篇は篠田氏の世界が堪能できます。
まずは、篠田氏特有のハラハラドキドキする設定があります。
加えて、登場人物たちが抱えている様々な事情が決して特殊なわけではなく、誰にでもあてはまりそうな部分もあるので、共感を得る読者も多いでしょう。

作中人物たちは目の前の問題をどうやって突破していくのでしょうか。
彼ら、彼女らがとった思考と行動は一見無謀かもしれませんが、成就された時の爽快感が何ともすがすがしいものです!\(^o^)/
登場人物たちにエールを送りたくなる作品です。

文庫本の巻末286頁の「謝辞」を是非お読みくださることをお勧めいたします!(^-^)
篠田氏のご執筆にあたる誠意が読者に真摯に伝わり、再度感動をもたらすのではないかと凛は考えました。

クルマとの付き合い方を大切にしたいですね。
人生の冒険とまではいかなくても、クルマがあって良かったと思うことは多いものです。
勿論、安全運転でいきましょう! (^^)v

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年12月6日水曜日

うわっ!究極の選択!どうするあなた? ~荒木あかね『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

師走になりました。
世の中が日に日に慌ただしくなり、「急ぎなさい!」と追い立てられるような空気感でいっぱいになる時期です。
このような時こそ慌てず落ち着いて臨みたいところですね。
年内にしなければいけないことはなるべく早めに着手して、ゆとりを持ちたいと思う凛です。

まあ何とかなるだろう、その時になって対処すればいいじゃないの、という方も多くいらっしゃるかと思います。
凛は「時」に迫られて慌てるのが嫌なので、年末はなるだけ早めに行動したいと考えるタイプですねえ。(^^;
あなたは歳末をいかがお過ごしですか。

今を生きている世界が安泰な時には一日が穏やかに過ぎてゆくものです。
それを「平穏」と表現いたしましょう。

ところが、各人の性格や考え方など全く及ばず、真の選択を迫られた世界で生きなければならなくなったとしたら……。
この地球上で突然に平穏な日々を営むことができなくなった時、人々はどのように生を捉えるのでしょうか。
恐怖、絶望、悲観、諦め、閉塞感、開き直り、無の心境……。
これらは極力避けたいことばかりですが、近いうちに訪れるという負の予測がほぼ確実であるならば、あなたはどのように思考し、行動しますか。

Xdayに向かって、地球人として絶対に体験しなければならない尋常ではない日々。
これまでは非日常と漠然と捉えていたことが、突然確実な負の日常に変わった時、いわゆる最悪の状況設定の中で、日本の福岡県で連続殺人が起こる小説があります。
極限の状態で起こる連続殺人事件に、果敢にも挑む女性二人の物語です。

今回ご紹介いたします作品は、荒木(あらき)あかね氏の長編小説『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)です。
今のところ単行本のみで、文庫化はされていません。
この小説は、2022年、第68回江戸川乱歩賞を受賞☆彡作品で、著者の荒木あかね氏は史上最年少の受賞者として各メディアで話題になりました。\(^o^)/

はじめに、この本との出合いについてです。
凛がこの本を知ったのは一作目が各メディアで話題になった時でした。
「とっくに読んでますよ~」というミステリーファンも多いかと思います。

何故今頃、紹介するの?という疑問をもたれたあなたへ。
凛はベストセラー作品は話題になっている期間ではなく、少し落ち着いてから読むことが多いです。
話題性というメディアの発信の枠内から出たところで、じっくりと味わいたいという気持ちがあるからです。
文庫化されるのを待つことも本音ではありますねえ。(^^;
ということで、この作品の単行本の購入を控えておりました。

今夏の8月に、荒木氏の二作目『ちぎれた鎖と光の切れ端』(講談社、2023年)が出版されました。
しばらくして秋に某ラジオ番組で著者について高評価していたことから、少し離れた大型書店に様子を見に行ってみました。
一作目はその大型書店にはなかったこともあり、ネット書店で購入しました。
ああ、一作目を入手するまで何ともどかしい凛ですこと……。 (^^;

凛が購入した一作目の本は、2022年12月1日付の第4刷発行のものです。
初版が2022年8月22日付なので、相当話題になったことがわかりますね~ (^^)v

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した第7刷の帯の表表紙側には、赤い帯の地色に「読書メーター注目本ランキング 単行本部門2022年10月 第1位」と目立っておりますよ。
他には「第68回 江戸川乱歩賞受賞 史上最年少、満場一致」
「大重版、新人なのに5万部突破!」など、期待感がモリモリです!

帯の裏表紙側には、「正義の消えた街で、悪意の暴走が始まった。」と。
その文字の下に細かい文字で説明文が4行書いてあり、実に衝撃的な内容です! (@_@)

「小惑星『テロス』が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。」
「そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり大宰府で自動車の教習受け続けている。」
(省略)
「年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見した。」
「教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める──。」(以上、同書)

裏表紙側には、京極夏彦(きょうごく なつひこ)氏を含めて5名の著名な作家の感想が一文ずつ紹介されています。

二番目は表紙について。
水たまりのある荒廃した土地に女性が二人、遠くの空を見つめています。
一人はコンクリートらしき建造物に座り、もう一人は立っています。
青い空に、赤く染まった雲や灰色の雲が見られます。
女性たちの周囲には電柱や信号機が斜めになっているものもあり、道路は壊滅しています。

この光景は裏表紙側に続いており、裏表紙の右端の下側には、大宰府自動車学校の教習車が半分ほど描かれています。
空には白く発光した帯状の「物体」が地上に向かっており、かなりのスピードであることがわかります。

装画は、風海(かざみ)氏です。
装丁は、bookwallです。

それでは、内容に入ります。
通常は内容に少しだけ触れているのですが、今回は先に述べました帯の裏表紙側の説明文だけで十分ではないかと思います。m(__)m

読者は、小春とイサガワ先生の二人の周辺が尋常ではない環境下に置かれていることに気づきます。
小春の家族と自宅、自動車教習所、警察、個人医院など、様々な伏線が張られています。
二人は福岡県内を大胆に動き回ります。
移動には自動車教習車を使って。

ミステリー小説なので、後はあなたが読まれてからのお楽しみに~ (^O^)

凛の感想といたしまして、四点挙げます。
一点目は、舞台が福岡県という限定的な地域密着型であること。
これは、著者の荒木あかね氏が福岡県在住であることが大きいでしょう。
例えば、6頁では宝満山(ほうまんざん)や英彦山(ひこさん)に触れるなど、地元の読者が喜ぶであろう場所が多々描かれています。

二点目は、天体に関してリアリティに迫っていることです。
作品の前半25頁から通称『テロス』」について詳しい説明が入ります。
既に帯の説明文で挙げていますが、地球に小惑星が衝突することが発表されます。
人々のパニックが!
頁をめくる度に様々な登場人物とエピソードで絡み合って進んでゆきます。

三点目は、イサガワ先生の言動の切れ味がユーモラスで小気味よいことです。
地球が終わるかもしれないという極限の時に起こる残忍な連続殺人事件を追って、イサガワ先生はこう言い放ちます。
例えば、「まだ地球は終わってないんでね」(同、112頁)

要はタイトルの「此の世の果て」とはどういう状態なのかということが重要かと凛は考えした。
極限の状態でこのようなセリフが言えるなんて!
現実にはこの言葉を言う機会が訪れないことを祈るばかりですが……。(-_-;)

四点目は、巻末に江戸川乱歩賞の沿革並びに選考経過、選評が掲載されていることです。
プロの作家の見解を知ることで、読者には受賞作品の重厚感が増すでしょう。
第1回(昭和30年)からの受賞リストを見て、歴史感を凛は認識しました。

著者の荒木あかね氏に関しては、先に述べました通りです。
荒木氏は1998年生まれのZ世代。

最後に。
小惑星が衝突して地球が滅亡するかもしれないという極限状態の中で、福岡県を舞台にした連続殺人事件を追う小春とイサガワ先生の行動力が基軸となっている作品です。
また、解決を追うことで出会う人たちの個々の物語でもあります。
もう後がないことがほぼ確実であるという超極限状態の中で、人の心理と行動がわかってしまう、いわば最も恐ろしい話です。

二人は「此の世の果て」から逃れられるのでしょうか?
それとも逃げずに向かっていくのでしょうか?
では、あなたはどうしますか?

凛は、物語の最後の数行、小春とイサガワ先生の会話を何度も読み返し、表紙の絵をじっと見つめました。
映像作品にできそうですねえ。

荒木氏の二作目の本が出版されて、凛が向かった大型書店では目立つように二作目が売り場のど真ん中にデーンと難十冊も平積みされていました。
「Z世代のアガサ・クリスティー」とPOPが添えられていました。
書店の対応もお見事ですね!

凛は一作目の時と違って、二作目は即買いしました。(^_-)-☆
荒木あかね氏の今後のご活躍に大いに期待します!(^O^)

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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講談社2022/8/24荒木あかね(著)
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2023年11月3日金曜日

日本茶と占いでまったりと ~標野 凪『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

11月になりましたね。
早くも今年もあと2か月となりました。
来年のカレンダーや手帳などの売れ行きも早くなっているようです。
夏から販売しているお店で、早めにお求めになるお客さんを結構見かけました。
凛も概ね揃えました。
もう気分は来年に。(^^)v
あなたはもうご準備されましたか。

秋は紅葉が綺麗な季節ですね~
あなたのお住まいの地域によっても異なりますが、暑い日中も日が暮れると冷えてきます。
身体を冷やさないように心がけたいものです。

ところで、あなたは日本茶はお好きですか。
凛は日本茶を飲むと心身とも落ち着きます。
昨今は手軽なペットボトル派も多いですね。
多忙な時代ではありますが、やはり急須で淹れた日本茶は香りも味も抜群で、疲れがとれるように思います。
中にはお茶殻の片づけが面倒という方もいらっしゃるでしょう。
毎日ではなくとも、お湯のみで日本茶をたしなむ時間をとるのもよいですよね~ (^-^)

今回ご紹介いたします本は、日本全国を巡り、その地方に合った日本茶の出張カフェを営み、訪れたお客さまの占いも行うという主人公の小説です。
日本茶の周辺にまつわる歴史や文化を学び、さらに落語なども楽しめるという歴史好きにはたまらない話題てんこ盛りの作品です。

標野 凪(しめの なぎ)氏の小説『占い日本茶カフェ「迷い猫」』(PHP文芸文庫、2021年)です。
この作品は文庫本書下ろしですので、単行本はありません。

はじめに、凛がこの文庫本を手にしたのは、数か月前のことです。
凛の自宅から少しだけ離れた書店にて、カフェをテーマにした小説ばかりを集めたフェアで出合いました。
最近はカフェや食に関する小説も多いですよね~

この本の帯には「出張カフェ」と書いてあります。
帯の裏表紙側には「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」と出張カフェで訪れた都市が書いてあります。
何とまあ、凛が暮らしている都市が出ているではありませんか!(^O^)
一体どんなことが書かれているのだろうと気になり、レジに直行しました。

凛が購入した文庫本は、2023年5月5日付の第5刷です。
初版が2021年3月18日付ですので、評判が良いことがわかりますね~
第5刷の帯の表表紙側には、「コツコツ重版、じわじわヒット中。」と紹介されています。

同じく帯の表表紙側に書いてある「疲れた心に温かいお茶を一杯いかがですか?」と、黄緑色の帯に書かれた緑色の文字が日本茶を飲みたくなるように読者を誘ってくれます。
帯の裏表紙には、「出張カフェは呼ばれたところへ参ります。」と。

「福岡、仙台、東京、米子、奈良、静岡……。」(同)の六ケ所の土地で淹れた日本茶に関することが書かれています。
「氷茶」「ほうじ茶」「新茶」「お抹茶」「茶の木」「出張カフェ」(同)と各地で淹れた日本茶に関する気になるキーワードばかりですねえ。

次に、表紙についてです。
最初は、表表紙の絵からご紹介します。
向かって正面に木製のテーブルがあり、椅子に頬杖をつきながら座っている女性は主人公の如月(きさらぎ)たんぽぽさんでしょう。
テーブルには、急須やお茶のお道具、明るいデザインの敷布の上にはタロット占いのカードが並べられています。
そのすぐそばには、愛猫の「つづみ」が丸くなっており、お客さまをお待ちしているように見えます。

出張カフェ「お茶と占い 迷い猫」の小さな看板がテーブルの上に置かれています。
椅子の背が見えるこちら側にはお客さま用の湯のみが茶托と共に。
全体的に温かい雰囲気が漂っています。
たんぽぽさんから出されたお茶とお菓子をいただきながら、悩んでいることを良い方向に導いてくれそうです。(^_-)-☆

カバーの装丁は、岡本歌織(おかもと かおり)氏(next door design)です。
カバーの装画は、あわい氏です。
 
二番目は、裏表紙の説明文です。
主人公の如月たんぽぽさんは全国各地のギャラリーやイベント会場の一角で招かれ、愛猫の「つづみ」と共に出張カフェ「迷い猫」を営んでいます。
また彼女は、占い師としての顔も持ち、出張カフェに訪れたお客さまの悩みを聞いて少しでも明るい方向へと導いていきます。
頁をめくる度に読者の心も温かくなっていくという連作短編集です。

そして、彼女は各地で「『あるもの』の行方を捜していた……。」(同書)と大変気になることが書かれているではありませんか!
どうやら癒し系のお話だけではなさそうですよ。

それでは、内容に入ります。
目次の前に、いきなり夏目漱石(なつめ そうせき)の俳句「売茶翁花に隠るゝ身なりけり」(文庫本、3頁)が出てきます。
「売茶翁(ばいさおう)」
これは本作品の重要なキーワードとなります。

本表紙のデザインとロゴは、川上茂夫(かわかみ しげお)氏です。
目次・章扉デザインは、岡本歌織氏(next door design)です。

本作品は、全6話の連作短編です。
第1話のタイトルは、「氷茶ができるまで三十分お待ちください」(同、9頁)
たんぽぽさんが訪れたのは福岡市です。

9頁には、「『茶』玉露 福岡県八女市星野村産 氷茶」
「『水』不老水 福岡県福岡市 香椎宮」
「『菓』鶏卵素麺(たばね) 松岡利右衛門」
「『器』白と黒の器 ギャラリー下川提供」
と福岡市の出張カフェで用いたお茶、水、お菓子、器が紹介されています。

うわあ、とても美味しそう!
如月たんぽぽさんというプロが淹れた日本茶を飲みたくなります!(^^)v
凛は氷茶は飲んだことがないですねえ。

福岡市の「ギャラリー下川(しもかわ)」(同、13頁他)で行われた出張カフェはお客さまで賑わっています。
読者は、お茶の葉、水、お菓子についての学びができます。

お客さまの悩みを聞きながら、たんぽぽさんはタロット占いをしました。
氷茶の説明に加え、読者にはタロットカードの説明もあります。
たんぽぽさんは、「迷い猫カード」(同、61頁他)を悩めるおお客さまにお渡しします。
そのカードは「ま」「よ」「い」「ね」「こ」(同、62頁)の頭文字になっていて、相談する各人の悩みに合うように適切な言葉が続いています。

また、たんぽぽさんの父親の趣味だったことから、落語の話題も豊富に出ます。
第1話では、『猫の皿』(同、41頁他)についての説明もあります。

たんぽぽさんは出張カフェの翌日に有田焼で有名な佐賀県の有田(ありた)を訪れ、骨董屋の店主から「売茶翁」という僧侶の「月海元昭(げっかい げんしょう」(同、67頁)について教えられました。
「伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)」(同、68頁)の描いた「売茶翁」の日本画の説明から、本格的な日本文化の話題に発展していきます。
骨董やお宝の話題がお好きな方には、この作品が癒しカフェの話題だけではないのが伝わるでしょう。

お茶所で有名な静岡県の浜松市の出身であるたんぽぽさん。
母方の祖母は、かつて茶園を営んでいました。
たんぽぽさんは移動を伴う出張カフェというお茶と関わる仕事について、「売茶翁」との運命的なつながりに気づきます。
彼女は「売茶翁」の軌跡をたどりながら、全国各地を巡り、お茶の文化と心を追求してゆきます。
第6話に至るまで、読者はあらゆる日本文化の奥深さを知ることとなるでしょう。

果たしてたんぽぽさんが各地で探していた、裏表紙の説明文に出てきた「あるもの」の行方については如何に……。
一体どんなことが彼女を待ち受けているでしょうか。
後はあなたが読まれてからのお楽しみに。 (^O^)/

著者の標野 凪氏は、浜松市のご出身で、東京、福岡、札幌などに転居されています。
実際に福岡でカフェを開業した後、東京都内で現役のカフェの店主をされています。

2018年、「第1回おいしい文学賞」で最終候補になり、2019年に終電車のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』(ポプラ文庫ピュアフル)でデビューされました。(本書より)
近年では、『今宵も喫茶ドードーのキッチンで』(双葉文庫、2022年)が好評で、書店でご覧になられた方も多いでしょう。

最後に。
日本茶を提供する出張カフェで全国各地を訪れている如月たんぽぽさんは、「売茶翁」の軌跡をたどりながら、日本文化の奥深さを知ります。
またタロット占いでお客さまとの交流を得て、自身の生き様を認識し、日本茶とのつながりを深めてゆきます。
合わせて、落語の話題など日本文化を堪能できるように読者を導いてくれます。
彼女の傍らには常に愛猫のつづみがいて、彼女を見守ってくれています。

11月3日は文化の日。
一冊の文庫本に、日本文化の話題がぎゅうっとてんこ盛りとなっています。
老若男女の読者に読んでいただきたい作品です。

それにしても猫のつづみは飼い主を困らせることもなく、たんぽぽさんに寄り添っていますねえ。
たんぽぽさんの気持ちがわかるのかなあ。(^.^)

凛は季節に関係なく、熱めの日本茶が好きです。
標野 凪氏の営んでいらっしゃる東京都内のカフェを訪れてみたいです!
あなたもご一緒にいかがですか。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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2023年8月30日水曜日

文房具のことが大好きになれる老舗の専門店です! ~上田健次『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本ではまだ残暑厳しいですが、夕暮れの時間が早くなってきました。
今年の夏は全国的に灼熱列島のようでしたね。
夏バテが出やすい時期です。
あなたはいかがお過ごしですか。

子供たちの夏休みも終わって、既に二学期が始まっている小中学校がほとんどでしょう。
新学期を迎えるにあたって文房具店で学用品を購入する親子連れも多かったかと思います。

あなたは文房具並びに文房具の専門店がお好きですか。
凛は好きですねえ。 (^-^)

学習向けの文房具、シンプルな事務用品、大人向けの高級筆記具、大人の人生を満喫できそうな本革製品。
プレゼント用の可愛いキャラクター商品も多々あります。
文房具店には日常的に用いるグッズや雑貨類、珍しい商品まで多方面にわたって展示されていますね~

書籍と文房具コーナーが併設されている書店も多いので、本が好きな方は文房具も好きという方も多いでしょう。
凛にとっては書籍と同様に、文具を扱っている店内を見てまわる時間は格別です。
特に、文房具の専門店では取り扱っている専門メーカーの品揃えが豊富です。

季節を感じる便箋やカードを見つけたり、新しいデザインののし袋などを見ると、凛は大切な人のことを思います。
デジタル全盛の時代ですが、目的によって工夫されているノートや新しい筆記具を見ると、手書きもいいなと思いますね。
本にかぶせるブックカバーなどを見るとワクワクします。
凛はこのような時間を何よりも愛おしく思います。 (^O^)

さて、今回ご紹介いたします小説は、文房具専門店を訪れるお客様お一人お一人の事情や用途に応じて、専門メーカーの文房具を店主が丁寧に説明しながら紹介してくれるという物語です。
上田健次(うえだ けんじ)氏の長編小説『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館文庫、2022年)です。
この作品は小学館文庫の書下ろしです。

はじめに、凛がこの本を知ったのは、前回(ココ)ご紹介いたしました岩井圭也(いわい けいや)氏のサイン本を購入した時に、同時に書店で見つけました。
凛が上田健次氏の小説を読むのは初めてです。

広い店内の大型書店には数えきれないほどの書籍が展示されていますが、その中で、今すぐ買って読みたいな~と思う本にどれだけ出合えるかは未知数です。
書店で一冊の本を手に取ることの確率はいかばかりか。
一瞬の邂逅が次の読書につながることも多いですね。

次に、帯や表紙についてです。
凛が購入した文庫本は、2023年5月30日付の第六刷です。
文庫本書下ろしで、初版が前年2022年10月11日ですので、わずか7か月で第六刷になるとは相当人気が高い作品であることがわかりますよね~

気になる帯です。
凛の持っている文庫本の第六刷の帯の表表紙側には、「いつまでも涙がとまらない」と書いてあります。
同じ面には「文房具に秘められた大切な人との思い出に」とも書き添えてあります。

帯の裏表紙側には、「早くも反響の声ぞくぞく!」ということで、三人の読者の方々の声が紹介されています。
長くなりますので、ここでは太字の部分だけご紹介しますね。
「文房具が好きな人にぜひ読んで欲しい」
「文房具ならではの良さ」
「誰かが大切に使うことで、かけがえのない宝物」(以上、同書)

文庫本の表表紙ですが、歴史がありそうな建物に「四宝堂」と書かれた文房具店があり、そのお店の前の道に一人のセーラー服を着た女子学生が立っています。
女子学生の右手にはメモを持っています。
彼女はこれから店内に入ろうとしているように見えます。
歴史がありそうな建物というのは、お店の入り口に四段の階段があり、建物全体にどっしりとした風格がある感じがするからです。

カバーデザインは、寺田鷹樹(てらだ たかき)氏です。
カバーイラストは、KOPAKU(こぱく)氏です。

裏表紙の説明文から、東京の銀座の路地から入ったところに佇んでいる四宝堂(しほうどう)という文房具店は天保五年の創業で、建物の地下には古い活版印刷機もあるという老舗の文房具店であることがわかります。
さぞかし頑固な店主がいるのかと思いきや、さにあらず。
四宝堂の店主は、宝田硯(たからだ けん)という若い青年で、店を一人で切り盛りしていて、少しミステリアスなところがありそうだということです。

「困りごとを抱えた人々の心が、思い出の文房具と店主の言葉でじんわり解きほぐされていく。」
「心あたたまる物語」(以上、同書)
これだけでも十分に期待できそうですね。

それでは、内容に入って、銀座の四宝堂に入店いたしましょう!\(^o^)/
表紙を見ますと、五つのCONTENTSがあります。
「万年筆」
「システム手帳」
「大学ノート」
「絵葉書」
「メモパッド」

これらはほとんどの文房具の専門店で販売していますよね~
それぞれに専門メーカーが何社もあって、拘りのある商品が店内に綺麗に並べられている光景が想像できます。
一番最初の章の「万年筆」を見てみましょう。

大学を卒業して、某企業に4月1日に就職したばかりの青年が新入社員の研修を終えて銀座を歩いています。
彼は一定期間の研修中に、初任給の使い道について、会社の先輩社員から聞いた言葉があります。
「できたら、お世話になった人に何か贈り物をすると、とっても喜んでもらえるよ。私のお勧め」(同書、6頁)と。

そこで彼は、お世話になった女性に贈り物をしようと考えます。
大切な物を添えて。

彼は地方出身で東京のことはあまり知りません。
「やっぱり東京と言えば銀座だろうか。」(同書、7頁)
ネットでいくらでも検索できる時代にありながら、彼は親切に紹介してくれた方からの手書きの地図を見ながら、漸く四宝堂にたどり着きます。

店内に入ると、お香の香りがして、優しく包んでくれるように彼は感じました。
「いらっしゃいませ」という男性の声がしました。
青年は「こんなにも気持ちの良い『いらっしゃいませ』を初めて聞いた。」(同書、9頁)と感心しました。

お客様を迎える時の「いらっしゃいませ」が非常に大切であることが書かれています。
凛も接客業をしている知人から聞いたことがありますが、「いらっしゃいませ」の声掛けは大変に難しいものだそうです。
あまりにも甲高い声は鬱陶しく感じることもありますし、不愛想な声ではもっと嫌な思いをします。
逆に声掛けがないと、このお店に入るんじゃなかったなあ、と思ってしまいます。 (-_-)

店内で四宝堂の宝田店長から便箋と封筒の説明を受けるのですが、ひとつひとつ丁寧に説明をしていただきます。
宝田店長は言葉遣いだけでなく、商品の説明が実に丁寧です。
紙の種類、和洋各種類、罫線、色、縦書き、横書き……。
さすがに専門店で、便箋とお揃いの封筒が二百種類くらいあるとは驚きです!

話はモンブランの万年筆に及びます。
宝田店長による「モンブランのマイスターシュテュック クラシック」「ル・グラン146」(同書、22頁)という商品説明を読んで、凛はネットで検索してみました。
一社の万年筆でも実に多くの商品があるものだなと感心しました。

専用のインクも「ミステリーブラック」「ミッドナイトブルー」「ロイヤルブルー」(同書、25頁)の他にもたくさんあるんですね!
メーカーの歴史から種類、使い方まで実に勉強になりました。

宝田店長が案内する四宝堂の二階の奥には机と椅子があります。
店長は来店した青年にあることを勧めます……。
こんな文房具店があったらいいなあ。\(^o^)/

青年の子供時代から大人になるまでの挿話が綴られており、読者の心に響いてやみません。
心温まる話が実に自然体で描かれています。
文章が全く技巧的ではないのです。
この後はあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。 (^O^)

この後の物語もそれぞれに違った楽しみ方ができます。
銀座の老舗文房具店ではありますが、決して高級品の話題ばかりとは限りません。

例えば、三番目の「大学ノート」の章では、表紙の絵と思われる女子学生が登場します。
彼女は、部活で用いている大学ノートについて悩みを抱えて四宝堂を訪れました。
そして彼女は店内の大学ノートの種類の多さに驚きました。

「コクヨのキャンパスシリーズ」で「B5サイズのB罫はもちろん、罫線だけでもA、B、C、U、ULと五種類もある。その他にも方眼や縦罫、無地、それにドット入りなど。」(同書、158頁)
「こんなに種類があるんだ……」(同書、158頁)
この章の女子学生だけでなく、凛も読後に文房具の専門店に足を運びましたよ~

ところで、四宝堂の店主こと宝田硯の個人的な事柄については、ミステリアスに抑えています。
店長の時は言葉遣いが非常に丁寧で、嫌みも全くありません。

宝田店長と幼馴染の銀座の喫茶店『ほゝづゑ』の良子(りょうこ)さんとは大の仲良しで、ごく一般的な話し方をしています。
読者はこの二人の行方が気になることでしょう。 (^O^)

著者の上田健次氏は、2019年に第1回日本おいしい小説大賞に小説「テッパン」を投稿されています。
「テッパン」は2021年3月に小学館文庫から出版されました。

上田氏は、専業作家ではなく、某大手の衛生用品の会社の執行役員をされています。
現役バリバリのビジネスマンなのです! (^^)v
銀座四宝堂を訪れる登場人物たちの個人的な物語が秀逸なのは、上田氏個人のお人柄とお仕事の影響も大きいのでは、と凛は考えました。

最後に。
東京・銀座の老舗文房具店「四宝堂」を訪れるお客様の人生模様に丁寧に対応する宝田硯店長との触れ合いに心癒される物語です。
文房具に対する愛情が全編にわたって溢れています。
人生の様々な時点における文房具との関わりが如何に大切かが読者にジーンと伝わります。

また、文房具のメーカーについても詳細な情報や背景がよく吟味されています。
このような文房具の専門店があったらいいなあと思いますね~

読後には、文房具と文房具の専門店を愛してやまない方はもちろんのこと、これからご興味を持たれる方が増えること間違いありません!(^O^)

良いお知らせがあります!
何とこの小説の続編が出版されることがわかりました。\(^o^)/
『銀座「四宝堂」文房具店(2)』が小学館文庫から、2023年9月6日に出版予定です。
続編ではどのような文房具が紹介されているのか楽しみです!
そして宝田店長と良子さんとの今後がどうなっていくのかが気になります。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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