南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
凛からあなたに二つの質問があります。
まず、一つ目の質問です。
あなたは年齢を感じたことがありますか。
当たり前ですが、人は誰でも年齢を重ねます。
「最近、疲れやすいなあ。目もかすんできて、小さい文字が見えにくいよ。髪も白くなってきたし、肩こりや腰痛もあるし、膝だって最近痛みだした。もう年だな……」
などと思うことはありませんか。
あなたは、ご自分の老後をどのように過ごそうとお考えでしょうか。
「どうせ自分は長生きしないよ」
などと口癖になっていらっしゃるあなたは、今の医学は日進月歩で進化していますので、案外そのようにはならないものなのです。
次に、二つ目の質問です。
あなたは一日の時間をどのようにお使いですか。
凛は、朝起きて、夜に眠るという一般的な生活時間帯の概念とは若干異なる過ごし方をしています。
凛のりんりんらいぶらり~は、夜の時間帯、あなたの眠る前のひとときに、おくつろぎいただけるようにとつとめています。
凛がどのような一日を過ごしているのかは、あなたのご想像にお任せいたしますね。
さて、人は老境に入ると、どのような心境で動き、一日をどのように過ごしているのでしょうか。
特に、日本人のご高齢の男性のご老人ですが、凛には少しわかりづらい世代であります。
現代のご高齢の男性は、随筆である鴨長明著の『方丈記』や吉田兼好著の『徒然草』に通じるものがあるのでしょうか。
凛が街で見かけるご高齢の男性方も、大抵お一人で行動されていらっしゃるようです。
無口な方が多いですし、苦虫を噛みつぶしたようなお顔を拝見すると、あら、怒っていらっしゃるのかなと、気軽に話しかけにくいようなイメージがあります。
時代劇に出てくるような武将を想像して、何だか近寄りがたくて、話しかけると説教されそうだというような、とっても気難しい印象を凛が勝手にもっているのかもしれません。
時には、ぶつぶつと何やら独り言を言いながら、ふらふらと歩いていらっしゃる方も見かけます。
駅前の居酒屋などでは、まだ陽があるうちから、お一人でほろ酔いの御仁もいらっしゃいますね。
これに比較して、ご高齢の女性陣は、お一人さまだけでなく、団体で行動されていらっしゃる方々もよく見かけます。
女性は年齢に関係なくお喋りが好きですし、話し出すと止まらない方が多いですね。
皆さん、とても華やかにお洒落して、元気にお買い物を楽しんでいらっしゃいます。
「老境」という言葉が合うのは、男性のご高齢者のように凛は思います。
高齢化社会の日本において、異なる世代が老境に入った方の心境や心理状態を知ることは、今後の日本を支えるためにも、また個人においても、大切なことであろうと凛は考えます。
世代間の断絶を無くして理解できることは、日本や個人にとって有益なことではないでしょうか。
決して難しく考えずに、読んでいて、ああ、とっても楽しいなあと、気軽に読めてしまう「老境」を綴った小説があります。
京極夏彦氏の『文庫版 オジいサン』(角川文庫、2019年)です。
この小説は、2011年に中央公論新社から『オジいサン』のタイトルで単行本で刊行されました。
2015年、中公文庫から同じ『オジいサン』のタイトルで文庫本が刊行されています。
それを京極氏が加筆・修正し、『文庫版 オジいサン』にタイトルを変えて、出版社も変わり、KADOKAWAからの刊行となっています。
京極夏彦氏は百鬼夜行シリーズの第一作である小説『姑獲鳥の夏』(講談社ノベルス、1994年、講談社文庫、1998年)がデビュー作で、映画や漫画にもなっています。
あなたも妖怪や魑魅魍魎のおどろおどろしい表紙が書店で平積みされているのをご覧になられていらっしゃるのではないでしょうか。
恐ろしくて怖いイメージの京極氏の作品とは全くかけはなれた現代のご高齢の男性が、一人でベンチに座っている表紙の文庫本を近所の書店で見たときには、凛は思わぬ発見をしたような心境に至りました。
ご高齢とはいっても、ジーンズかと思われるズボンを履き、若さも感じられます。
その男性は、どこか遠くを見つめているようでもありますし、何か思いにふけっているかのようでもあります。
そして、文庫本の帯には、解説が宮部みゆき氏であると紹介されているではありませんか。
「すごく面白い。続きが読みたい!」と。
そして帯には「なにも起きない老後。でも、それがいい。」
「一番好きな京極作品の声、多数!」
凛はすぐに文庫を手に取り、表紙をめくりました。
「老境」と筆で書かれた文字が目に入り、今度はベンチに二人のご高齢の男性が座って、それぞれ違う方向に顔を向けています。
京極夏彦氏の書字で書かれたお名前と篆刻印もあります。
奥付を見ると、令和元年(2019年)12月に初版が発行されて、令和2年(2020年)2月にはすでに3版となっていました。
やはり京極作品は人気があるのがわかります。
勿論、凛はそのままレジに進みました。
さて、ベンチに座っている表紙の主人公の72歳の益子徳一さんは、定年退職後、公団で単身世帯で暮らしています。
未婚ですから、お子さんやお孫さんはいらっしゃいません。
現役時代のお仕事の職種などもよくわかりませんが、真面目に定年まで勤めあげられたことはわかります。
この徳一さんは、非常に真摯にものごとを突き詰めて考えるお方でして、その思考の過程がとても長く、詳しく描かれており、非常に秀逸です。
京極氏の想像力を駆使されての徳一さんでありましょう。
目次を開きますと、
七十二年六箇月と1日 午前5時47分~6時35分
七十二年六箇月と2日 午前10時26分~53分
七十二年六箇月と3日 午前9時50分~10時42分
七十二年六箇月と4日 午後4時38分~5時16分
七十二年六箇月と5日 午前11時2分~午後0時27分
七十二年六箇月と6日 午後1時14分~45分
七十二年六箇月と7日 午後2時2分~58分
解説 宮部みゆき
となっていることから、徳一さんの72歳と半年過ぎた一週間の出来事が、あらゆる時間帯で描かれていることがわかります。
時間の指定が分単位で細かいのは、帯にも書いてあるように、徳一さんの日常が非常にまったりとしていることを示していると考えられます。
ところで、「オジいサン」と、片仮名の間の「い」だけが何故に平仮名なのかは、あなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。
ここで作品について、着目した点があります。
作中の益子徳一さんは72歳ですが、現在の2020年の72歳とは明らかに世代が異なる点です。
この作品は2011年に単行本で刊行されました。
ということは、その前にご執筆されたことになりますから、益子徳一さんは現在は81歳前後になっていらっしゃいます。
したがって、徳一さんは戦後生まれの団塊の世代よりも年上となりますので、現在の72歳の方々とは、テレビや新聞、電話などの情報収集や伝達に関する認識などにはギャップがあるだろうと凛は考えます。
作中には、田中電気の2代目が折々に顔を出してきます。
日本のテレビ放送が、アナログから地上デジタルテレビ放送に切り替わったのが2011年7月24日ですから、作品はその前の出来事が描かれています。
2代目は、徳一さんにテレビの買い替えを進めますが、徳一さんはなかなか首を縦にふりません。
この二人のやりとりが面白くて楽しめますよ~ (^○^)
徳一さんの日常の中で、凛が特に興味をもったのが、お昼ご飯に卵料理をする場面です。
そのときの徳一さんの心理状態が事細かく描かれています。
うん、これって、あるある、もしかしたら京極氏もそうなのかしらと、凛は勝手に想像しながら読みました。
徳一さんの老境について、当時40代だった京極氏の想像力の結集がこの作品に表れているのでしょうか。
京極夏彦氏は、1996年、小説『魍魎の匣』(講談社ノベルス、1995年、講談社、2004年、講談社文庫、2005年)で第49回日本推理作家協会賞(長編部門)☆彡を受賞されました。
また翌年の1997年には小説『嗤う伊右衛門』(中央公論社、1997年、中公文庫、2004年)で第25回泉鏡花文学賞☆彡を受賞されました。
2002年、小説『覗き小平治』(中央公論新社、2002年、角川文庫、2008年)では、第16回山本周五郎賞☆彡を受賞され、第118回直木賞候補となっています。
そして、2003年には、小説『後巷説百物語』(角川書店、2003年、角川文庫、2007年)で第130回直木賞☆彡☆彡を受賞されました。
さらに、2011年、小説『西巷説百物語』(角川書店、2010年、角川文庫、2013年)で第24回柴田錬三郎賞☆彡を受賞されています。
他にも多くの作品を受賞されており、ここでは書ききれないほどのご活躍をされてます。
また、映画化やコミックにもなっており、コアな京極ファンが多いです。
京極氏は、読者への配慮が素晴らしく、一文が頁をまたぐことがないように、必ず改行して構成されています。
この作品でも加筆修正されておりますが、一文が必ず頁内に収まっています。
書店や図書館で、是非京極氏のこだわりをお確かめくださると納得できるかと思います。
そのため、お豆腐のようにま四角で分厚い本でも、読者に優しい京極氏を堪能できるようになっているのだろうと凛は思います。
電車の中で、ころころとしたま四角の分厚い本を読んでいる若い女性を見かけたとき、カバーをかけていても、すぐに京極氏の作品だとわかるくらいです。
そして、巻末の宮部みゆき氏の解説が、また素晴らしいのです!
宮部氏がどんな状態のときに、この作品を読まれたのかが丁寧に書かれています。
これを読むと、ますます益子徳一さんのことが気になってたまらなくなります。
当代の売れっ子作家である大沢在昌氏、京極夏彦氏、宮部みゆき氏の三人で「大極宮」を結成されていらっしゃいますが、本当に仲がおよろしいようですね。(^o^)
熱心な京極ファンをはじめ、多くの読者に愛されている益子徳一さんには、どうかこのままお元気でいらして欲しいと願ってやみません。
徳一さんは凛の心の中のオジいサンです。
徳一さんの律儀で真摯に暮らしを営まれている姿には、あなたも感動ものですよ~
今夜も凛からあなたにおすすめする一冊でした。(^o^)







