2020年8月14日金曜日

隠れ家夜食カフェに行きたい!(その1)

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたには大切にしたい本がありますか。
何度も読み返しては、その本の世界に浸っていたい。
それは小説だけでなく、How To本だったり、専門書であったりといろいろでしょう。
傍らにいつもその本があれば安心できる、あなたの心の見守りグッズのような役割を担っている友人のような本。

凛にも大切にしている本があります。
絶対に手放したくない本は何冊もあります。

例えば、小説ですと、主人公にまた会える楽しみがあります。
その本を手放したら、とても大切にしている親友と別れてしまう寂しさがまとうのではないかと。
その寂しさには耐えられず、いつも読まなくても、凛と同じ空間にいてくれるという存在に対する安心感には代えられないのではないかと、凛は思うのです。

紙の本は保管場所が必要ですし、重くて嵩張るので、収納の点で考えてしまいますよね。
特に、単行本や専門書ですとそれは顕著です。
しかしながら、手放せない、手放したくない、いつまでも大切にしていたい本は、その本が放っている価値感という点で別格です。

凛がよく利用している大型書店の単行本の小説のコーナーに、長い期間、並べられている本があります。
その本はシリーズになっていて、全部で4巻、仲良く横に並べられています。
まるで書架の指定席のような、同じ棚に並べられています。
指定席になっているのは、売れないからその場所から本を動かさないということではないのです。
売れているから、或いは、書店員さんがおすすめしたいから、または出版社の意向もあるのでしょうか。
とにかく目立つところに「皆さん、私の世界を楽しんでね」というように本たちが主張しているのが窺えます。

それらの本たちは、シリーズの第1巻の刊行から既に5年も経過しているのに、文庫化されずにずっと単行本のままなのです。
出版不況と言われて久しい出版界において、単行本で増刷されている本たちです。
出版社の事情もあるのかもしれませんが、このシリーズ本が多くの読者に愛されていることがわかります。

その第1巻の本が、古内一絵氏の小説『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』(中央公論新社、2015年)です。
凛が持っている本は、2020年の2月発行の12版です。

凛はその大型書店を訪れる度に、この本がずっと気になっていました。
正直言いますと、いつかは文庫本になるのだろうと思っていたのです。
それがある日、いつものように大型書店のそれらの本の指定席を訪れて、第1巻を手に取ると、限定数の特製のポストカードが特別に封入されているのがわかり、得した気分になったことが購入の決め手となりました。

限定……。
この言葉にとっても弱い凛です。(^-^;
表紙と同じ絵のポストカード。
何て美味しそうな野菜のお料理の絵でしょう!
見ただけで心も身体もほっこりしてくる感じがいたします。

この作品は、書き下ろしとなっています。
初版は2015年の11月25日の刊行となっていますので、著者の古内一絵氏がご執筆されたのはその年か、少し前になるでしょう。
このことを念頭におきますと、読み進んでいくうちに、なるほどと見えてくるものがありました。

時を少し遡ってみましょう。
2020東京オリンピック開催が決定したのが、2013年の9月7日でした。
国際オリンピック委員会がブエノスアイレスで、2020年の夏のオリンピック・パラリンピックに東京の開催地を発表しました。
1964年から56年ぶり、東京での開催は2度目とあって、ビックなニュースでした!
そこから東京都の再開発が進みます。
生憎、今年は新型コロナウィルスの関係で、開催は来年に延期となり、57年ぶりになりますが……。

元エリートサラリーマン、今はドラァグクイーンのシャールさんが営んでいる、東京の某駅の改札口から商店街を歩き、路地裏に入った某場所の隠れ家夜食カフェ「マカン・マラン」。
昼間はダンス用のドレスを受注、縫製して販売しているお店ですが、夜になると夜食カフェに変わります。
「マカン・マラン」の開店は不定期ですので、まずは、この場所との出あいにご縁があればご常連さんになること間違いなしでしょう。
しかし、ご縁がなければ、ただの路地裏の迷い人で終わってしまいます。

悩めるお客さんのために、シャールさんの手作りで提供してくれるメニューは天下一品!
とっても美味しそうで、胃やお腹だけでなく、心も満腹にしてくれるお料理に、凛も訪れてみたいなあと思わずにはいられませんでした。
ご縁は大事にしたいものですね。

第1巻には、四つのお話が描かれています。
第1話は、「春のキャセロール」
悩める40代キャリア女性の早期退職の肩たたきにあうかもしれないという不安は、如何にして解消されますでしょうか。

第2話は、「金のお米パン」
中学生男子の突然の食生活の変化と、生徒が通学する学年主任の男性の先生とのふれあいにほろりとします。

第3話は、「世界で一番女王なサラダ」
20代の女性の下請けライターの仕事に対する悲哀と本音が交錯していきます。

第4話は、「大晦日のアドベントスープ」
みんな、シャールさんが大好きなのです。
兎にも角にも、シャールさんに元気になってもらわないといけないのです。

凛が持っている12版の帯には、「思いきり泣きたい夜にいらしてください」と書いてあります。
「ここは"運命が変わる"夜食カフェ」とも書いてありますよ~
「マカン・マラン」のシャールさんに出会えて、シャールさんの手作りの夜食メニューをいただけたら、あなたや凛の運命はどのように変わるのでしょうか。
作中には、食材、レシピの説明も丁寧に書いてあります。

古内一絵氏は、2010年、『銀色のマーメイド』(中公文庫、2018年)で、第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞☆彡されて、翌年、作家デビューをされました。
この作品は、『快晴フライング』(ポプラ社、2011年、ポプラ文庫、2013年)で刊行された後、改題、加筆・改稿されています。
2017年、『フラダン』(小峰書店、2016年、小学館文庫、2020年)で、第6回JBBY賞(文学作品部門)を受賞☆彡されています。
作家デビューされる前は、映画会社に勤務、退職後、中国語の翻訳家としてご活躍されるという経歴をお持ちです。

文体は大変読みやすく、登場人物に親しみがわく設定になっています。
また、主要な漢字にルビがふってあるので大変読みやすく、幅広い年代の読者層への配慮が窺えます。
しかし、内容は大変深く、人生の悲喜こもごもが丁寧に描かれていて、どの世代にも心にズキンと響いてくるのではないかと凛は思います。

帯には、「第1位 読書メーター OF THE YEAR シリーズランキング」と出ています。
読者にずっと大切にされている幸せな本というのがわかりますねえ。

『マカン・マラン』シリーズは、第4巻まで続きます。
凛のりんりんらいぶらり~では、今後、1巻ずつご紹介していく予定です。
しかし、この企画はシャールさんの隠れ家夜食カフェの「マカン・マラン」と同様に不定期ですので、いつ続編のご紹介が出てくるかは、今後のお楽しみにということで、末永くご愛顧よろしくお願いいたします!(^_-)-☆

あなたも泣きたい夜には「マカン・マラン」へ。
個性的なシャールさんが、あなたの話をとことん聞いてくれて、あなたに合ったとっておきのメニューを提供してくれるでしょう。
思い切り悩みを吐き出した後は、もう、泣きません。

それに、食事の大切さがわかります。
身体に優しい食事はあなたを笑顔に導いてくれます。
そして、あなたも凛も、この本で元気になりましょう!

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^o^)

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4 件のコメント:

Kohta さんのコメント...

昨日やっと雨らしい雨が降ってくれました。でも猛暑は続きます。お変わりありませんか?こちらは何とか元気にジョギングを続けています。

田んぼの稲穂が黄色に色づきはじめました。S池近くのお宅では、栗の実が弾けんばかりに膨らみ、ザボンの木には緑の実がハンドボール大にまで育っています。コロナ騒動にかまけている間に自然は着々と時を重ねて、実りの秋へと移行しています。当たり前といえば当たり前なのですが、やはり自然は凄いなあと感じてしまいます。

古内一絵さんの『マカン・マラン二十三時の夜食カフェ』を紹介して頂きありがとうございます。1話目の『春のキャセロール』を読み始めていくらもたたないうちに、これは必ず残り3巻も読みたくなるなと思いました。案の定、1巻を読み終えると、矢も楯もたまらずアマゾンに残り3巻を注文、二日後に到着、そして二日もたたないうちに全巻読み終えてしまいました。しかし私は本に関して「待て!お座り」ができない人間だなと、改めて実感しました。(アマゾンがあるのも良し悪しですね。本人が悪いのは分かっていますが)
設定も面白いし、なにより登場人物の造型が際だっています。シャール、ジャダ、柳田先生、塔子、璃久、…シャールさん以外は、なぜか立体的な感じがして、読んでいる最中に彼らが動き回っている気がしました。そして出てくる料理がすべて美味しそう。適度に、シュール、ドタバタ、しんみり、説教くさい。バランスの良さがほっこり感じを生み出しているのだと思います。そして粒が揃ってレベルが高い。(ただ一点、グレン・グールドのバッハは今となっては時代遅れでしょう。私が好きではないだけですが、アンドレアス・シュタアーなど素晴らしいチェンバロ奏者が輩出しています)

最近の収穫は、ドン・ウィンズロウの『壊れた世界の者たちよ』です。最近は『犬の力』『野蛮なやつら』『ザ・カルテル』などメキシコとの麻薬戦争を描いた大作ばかりでしたが、この作品は中編小説集です。なぜか銃で武装したチンパンジーと新米警察官とのドタバタを描いた『サンディエゴ動物園』と、ある国境警備隊員が、不法入国者収容施設にいた少女のすがるような目つきが忘れられず、やむにやまれぬ衝動に駆られ、違法は承知の上で、メキシコにいる母親のもとに届けるべく、少女と年老いた愛馬に乗って国境を越えようとする『ラスト・ライド』目指す方向は同じなのに、個人で少女を国境を越えて届けることが違法行為になり、同じ国の当局との不条理な戦いとなるむなしさ。平和ボケ?している我々には頭の中でしか理解できない中編小説ばかりです。

また長々とお邪魔しました。お元気で。では。

南城 凛 さんのコメント...

Kohtaさん、こんばんは。(^-^)
コメント、ありがとうございました!

残暑厳しき折、変わらずにジョギングを続けていらっしゃることに敬服いたします。
Kohtaさんには夏バテは関係なさそうですね。

お近くの稲穂も順調に育ち、収穫が楽しみになってきましたね。
栗やザボンですか!
秋が確実に訪れているのですねえ。

古内一絵氏の本をご購入していただき、作者も出版社も大変喜んでいらっしゃることでしょう。
出版不況で本がなかなか売れないという時代に、本をご購入していただき、ありがとうございます!
凛も嬉しくなりました。

本は読みたいから買う、そして読んでいる時間が至福のひとときですよね。
「待て!お座り」ができないことが悪いだなんて、Kohtaさん、そんなことは絶対にないですから。
注文してから配達されるまでの時間はとてもワクワクしますね。

シャールさんの周囲の人々もそれぞれに個性的ですよね。
「続き」は不定期にご紹介する予定にしていますので、今後のお楽しみに~

Kohtaさんは文学だけでなく、クラシック音楽もお詳しいのですね。
さすがです!

いつもご教示ありがとうございます。
コメントをお読みくださっているあなたも読書のご参考になさってください。

これからも凛の「りんりんらいぶらり~」をよろしくお願いいたします。(^-^)

Kohta さんのコメント...

一つ訂正させてください。
コメントに書いたチェンバロ奏者の名前は、アンドレアス・シュタイアーです。
グレン・グールドが時代遅れだと申したのは、バッハの生きていた時代には、ピアノが発明されたばかりで、鍵盤楽器はチェンバロが主体であったので、おそらくバッハもチェンバロを想定して作曲したと思われること。現代はオリジナルが尊重される風潮であること。更に、チェンバロの最大の弱点であったダイナミズムの弱さを克服し獲得した素晴らしいチェンバロ奏者、シュタイアー、ルセ、エガーなどが輩出していること。従ってバッハの鍵盤楽器演奏はチェンバロが主体となっていると思います。
ただし、優れたピアノ演奏は数多くあります。例えば、ピアノ演奏の精華を求めるなら、ポリーニの平均律クラビーア曲集第1巻、ヒューマンな暖かさなら、ポーランドの女流ピアニスト、ポブウォツカのパルティータやインヴェンションとシンフォニアなど。

ちなみに、ドビュッシーのアラベスク第1番ですが、私が今まで聞いた数十種の演奏の中では、日本の冨田勲さんのシンセサイザー演奏『ドビュッシーによるメルヘンの世界』に収録されている演奏が一番気にいっています。
訂正と蛇足?でした。では。

南城 凛 さんのコメント...

Kohtaさん、ご教示ありがとうございます。
クラシック音楽にも造詣が深くていらっしゃるとは大変素晴らしいですね!
ご興味のある方は是非ご参考になさってください。(^-^)