2021年4月28日水曜日

元気印の迷老探偵コンビ ~中山七里『静おばあちゃんと要介護探偵』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりましてありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたの周辺に元気なご高齢者はいらっしゃいますか。

恐らく「はい!」が多いのでは。
この日本は少子高齢化社会の真っ只中を進んでいますからね。
元気溌剌なご高齢者は多いと思います。

凛の周囲にも「超」がつくほど元気な100歳を超えた方がいますよ~
凛の知人のベトナムから来ている留学生が「日本ノお年寄リハトッテモ元気デスネ!」と驚いていました。

凛が今回ご紹介いたします小説は、80歳の元判事の女性と、名古屋市在住の経済界の重鎮である70歳の男性の迷老探偵コンビが大活躍するミステリー小説です。
中山七里(なかやま しちり)氏の連作ミステリー短編集『静おばあちゃんと要介護探偵』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)で、全五話が収録されている連作短編集です。
まあ!兎に角全編にわたってこのお二人が大活躍されています。
事件の解決後は「お見事!天晴れ!」と称賛ものです。

凛が相変わらずいつも利用しています近所の書店の文庫本の新刊本コーナーでこの本をみつけました。
表紙は、柴田純与(しばた すみよ)氏のイラストで、野中深雪(のなか みゆき)氏のデザインです。

文庫本初版の帯の表表紙側には「80歳の元女性判事」と「70歳の経済界のドン」の「老老コンビ」と紹介されています。
凛は「老老コンビ」と呼ぶのは、主役のお二人に失礼ではないかと思うほど、お二人とも大変若々しいですよ。
特に、お二人とも気概が半端ありません!!(^○^)

主役の一人目は、80歳になる高遠寺静(こうえんじ しずか)さん。
元東京高裁の判事を退官して16年になります。
静さんは、日本で20番目の女性裁判官としてご活躍されたとのことです。
そして今回、名古屋市の名古屋法科大学の客員教授に就任するため、名古屋市の賃貸マンションに単身で住むことになりました。
ご主人は既に他界されています。

二人目は、70歳の香月玄太郎(こうづき げんたろう)さん。
不動産会社〈香月地所〉の代表取締役並びに商工会議所の会頭、町内会の会長ほかたくさんの肩書をお持ちの名古屋圏の経済界の重鎮で、所謂「地元の名士」なのです。
玄太郎さんは脳梗塞で倒れたため車椅子で、介護士の綴喜みち子(つづき みちこ)さんと共に行動することが多いです。

収録作品は、全五話です。
第一話 「二人で探偵を」
第二話 「鳩の中の猫」
第三話 「邪悪の家」
第四話 「菅田荘の怪事件」
第五話 「白昼の悪童」

ミステリー短編小説ということもあり、各篇お話の中身はあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。
殺人、万引、親子の断絶、詐欺、老々介護、外国人就労、地元開発に伴う闇……
現代日本の諸問題が浮き彫りに描かれています。
合わせて、名古屋圏の経済、言葉や習慣、文化についても描かれています。

「ええーーっ!まさか!この人が犯人??」
「あらまあ、こんなトリックが!!」
と各篇で驚かされますよ~ (◎_◎;)

全編を通しての凛の印象は、登場人物の「静」と「動」の対照です。
「静」の静さんと「動」の玄太郎さんの微妙な関係が、行間から読みとれて面白いです。

名前でわかるように、静さんは普段は物静かですが、法曹界に在籍された方だからなのか、生来の性格なのか、とても思慮が深く、すぐには言葉には発しません。
ところが講演の壇上では、日本社会の問題をわかりやすく理路整然と説き、力説します。
凛は矍鑠とした静さんがとても素敵だなと思います。

対して、玄太郎さんは口が悪くて、がんがん怒鳴ります。
地元のドンということもあり、警察にも顔がきき、警察の上層部からまだ若い警察官まで呼び捨てで階級による差別をいたしません。
つまり、誰に対しても言いたいことを言い、真剣に怒り、どなる人です。
読者は彼の言質になるほどと唸ります。

玄太郎さんはストレートに発しますので一見口が悪い人に見えますが、彼独特の愛情が込められていることが読者には伝わります。
行動力もあり、素早く、まさに「動」の玄太郎さんです。
彼は介護士のみち子さんや神楽坂美代(かぐらざか みよ)さんにはとても優しく接するところから、男心の切なさが見られます。

静さんは玄太郎さんの性格や言動をよく理解しているように凛は思います。
彼女は玄太郎さんをうまく前面に出して、決して自分が目立たないようにしながら、二人で事件を解決に導きます。

この作品が文藝春秋から単行本が発刊されたのが、2018年11月ですから、執筆はそれ以前になります。
初出は、小説誌『オール讀物』2017年2月号、5月号、6月号、8月号、9月号、12月号、2018年3月号、4月号です。
文庫本として今年の2月に刊行されたので、静さんと玄太郎さんはもう少し加齢されていらっしゃるでしょうか。
いいえ、お二人はとても若々しいので、実年齢などは気にせずに、読者も接しましょう。

文庫本の解説は、瀧井朝世(たきい あさよ)氏です。
解説でわかることは、このお二人は既に刊行された作品で登場していることです。
二人の過去がわかり、読書の幅が広がりますよね~

高円寺静さんは、連作短編集『静おばあちゃんにおまかせ』(文藝春秋、2012年、のち文春文庫、2014年)で登場済みです。

香月玄太郎さんは、『さよならドビュッシー前奏曲(プレリュード) 要介護探偵の事件簿』(宝島社文庫、2012年)で登場済みです。
この作品は、『要介護探偵の事件簿』として、2011年、宝島社から単行本で刊行後、改題・加筆修正して文庫化されています。

さらに二人には続編があり、2020年、文藝春秋から『銀嶺探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』が単行本で刊行されています。
二人の周辺にはどれだけの事件が発生するのかわかりませんが、お二人のご活躍が続いていますね。

作者の中山七里氏は、2009年、小説『さよならドビュッシー』(宝島社、2010年、のち宝島社文庫、2011年)で第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞☆彡されています。
2013年には、利重剛氏監督、橋本愛さんの主演で同名で映画化されましたので、ファンも多いでしょう。
他に多数のミステリー作品をご執筆、複数の作品が映画化やテレビドラマ化されています。

主役のお二人にはいつまでもこのまま元気でいて欲しい。
若者たちから老害と呼ばれないためにも、元気印の迷老探偵を続けて欲しいと願う凛です。
二人の過去とその後も読めるなんて、作品展開が楽しめますね。(^○^)

ズバズバ容赦なく言葉に出す玄太郎さんと、思慮深く判断力を発揮する静さん。
二人のキャラクターがますますパワーアップされますように。

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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(文春文庫な71-4)(日本語)文庫-2021/2/9中山七里(著)
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2021年4月11日日曜日

隠れ家夜食カフェに行きたい!(その2) ~古内一絵『女王さまの夜食カフェ ─マカン・マラン ふたたび』(中央公論新社、2016年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

春ですね~
あなたはいかがお過ごしでしょうか。
そろそろ気分も変えていきたいところですね。
ウィルスから狙われませんように、免疫力を高めていきましょう。

おかげさまでこの4月で凛のりんりんらいぶらり~は2年目に入りました。
凛は昨年の4月にこのブログを立ち上げました。
訪れてくださった皆様には大変感謝いたしております。
ご閲覧ありがとうございます!
あっという間の1年間でした!
本当に月日の経つのは早いものですね。

この1年間に凛のブログでご紹介いたしました本は30作品になります。
いろいろなジャンルの本もご紹介したいですね。
これからも凛のりんりんらいぶらり~を何卒よろしくお願いいたします!m(_ _)m

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたには大切にしたい本がありますか。

昨年2020年の8月14日配信の「隠れ家夜食カフェに行きたい!(その1)」で、凛からあなたにこの質問をいたしました。
あなたは覚えていらっしゃいますでしょうか。

今回、初めて凛のブログを訪れていただいた方は、「隠れ家夜食カフェに行きたい!(その1)をご覧になられていただけると幸いです。
凛が大切にしている本について書いています。
その本は、古内一絵氏の小説『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』(中央公論新社、2015年)でした。
単行本で4巻シリーズとなっているうちの第1巻で、今でも4巻とも文庫化されていません。
多くのファンから長く愛されている本ですね~ (^-^)

書店に足を運び、日本の小説の単行本の棚の前に立ちますと、あらあら不思議!
古内一絵氏の小説『マカン・マラン』シリーズ第1巻~第4巻までの4冊から、ほんわかとした光が放たれているのがわかりますよ~ (^o^)
多くの書店の棚には4巻がきちんと揃って並んでいます。
4巻たちは、あなたから手にとっていただくのを待っているかのように。

元エリートサラリーマンで、今はドラァグクイーンのシャールさんが営んでいる「マカン・マラン」という夜食カフェ。
スタッフのダジャさんやお客さまたちとの温もりのある会話に、いつしかお客さまは個々の悩みを吐露し、シャールさんの心のこもった手作りの料理の数々に、すっかりこのカフェの虜となってゆきます。
ここでは昼間はダンスのドレスの受注と販売をしています。
スタッフのダジャさんは頼もしい役割を担っています。

今回凛がご紹介いたします本は、続く第2巻で、古内一絵氏の小説『女王様の夜食カフェ ─マカン・マラン ふたたび』(中央公論新社、2016年)です。

シャールさんのカフェ「マカン・マラン」の不定期な開店と同様、凛からもこの本のシリーズは不定期な間隔にての配信としています。
凛は決して忘れていたわけではありませんので、ご了承くださいませ。
面白くて既に全巻読んでしまわれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

凛が持っている第2巻は2020年6月の第9刷です。
こちらの本はデパート内にあった書店で購入しました。

表紙は、イラストレーターの西淑氏の絵です。
美味しそうなトルコライス!
凛の胃袋にスイッチが入りそうです。(^○^)

帯は赤い色で、表表紙側には、「自分のことを"つまらない"とか言っちゃ駄目。」と書いてあります。
今回も悩みを抱えたお客さまたちのご登場のようです。
帯の裏表紙側には、4種類のメニューが紹介されています。

第2巻も、4話の構成で、4人の悩める人たちが登場します。
第1巻でシャールさんは病気になりますが、第2巻では元気になって戻ってきます!
よかった!!
読み進んでいくうちに、シャールさんの過去や現在が少しずつわかってきます。

第一話 「蒸しケーキのトライフル」
派遣社員として働いている女性が、職場での曖昧な立場に自信を失くしています。
彼女は憂鬱な社内ランチをどのようにして乗り越えていくのでしょうか。

第二話 「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」
東京で漫画家になる夢に向かって、漫画家アシスタントとして働いている男性がいます。
ある日突然、地方で旅館業を営んでいる実家の兄が亡くなったという知らせがありました。
夢と現実との間で、彼がとった行動は……。

第三話 「秋の夜長のトルコライス」
タワーマンションに居住し、一人息子の子育てに悩む専業主婦にはあらゆるしがらみがありました。
一時はシャールさんの店「マカン・マラン」の敵側となってシャールさんたちを糾弾します。
彼女はどのようにしてしがらみからの呪縛を解いていくのでしょう。

第四話 「冬至の七種うどん」
シャールさんの旧友である柳田先生は、高校生の娘さんの大学進学について悩みます。
彼はシャールさんから「冬至の七種(ななくさ)」(262頁)についての意味を教えられます。

第二話から第四話まで、「親子のありかたについて」が隠れたテーマであると凛は考えました。
作者から「あなたならどうしますか?」と読者に問いかけていくのが伝わります。

悩める四人の登場人物だけでなく、シャールさんにも自身の病気やご家族との軋轢など深刻な悩みがあります。
彼らの悩める姿勢が等身大のように読者の心の鏡に映し出されて、「うん、ある、ある!わかる!」と共感できる方も多いのではないでしょうか。
だからこそ多くのファンから支持されているのでしょう。

タイトルに「ふたたび」とついているのが納得できます。
「つまらない」なんて言わずに、自信をもって生きていこう!

それにしても、今回の第2巻全編に登場する「マカン・マラン」の様々なメニューも、どれも美味しそうですよ~!!(^o^)
上記の四つのメニュー以外にもいただきたいメニューばかりです。

シャールさんは言います。
「私の賄いは一応、マクロビオティックを基本にしてるけど、それだっていい加減なものなのよ。」(209頁)
彼の料理に対するスタンスから美味しさと心地よさが上手く調和されて、程よい味わいを作り出しているのでしょう。
隠れ家夜食カフェの「マカン・マラン」のファンが増えるはずですね!

以上、第2巻のご紹介でした。
次回の第3巻もお楽しみに~(不定期ですが……。)(^-^;

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

「マカン・マラン」の特設ページは、こちらです。

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中央公論新社(日本語)単行本-2016/11/16古内一絵(著)
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2021年3月29日月曜日

ビールと料理と謎解きの三点セット ~北森 鴻『花の下にて春死なむ 香菜里屋シリーズ1〈新装版〉』(講談社文庫、2021年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださいましてありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

春になりましたね~ (^o^)
桜前線も北上。
自粛緩和での花見ですが、あなたはどのように楽しまれましたか。
凛は混雑している場所には行かず、ご近所を散策しながら桜見物をしました。

早いもので、満開の桜も春の嵐であっという間に葉桜になりそうです。
満開を迎えるまでのワクワク感も良いけれど、散り際の桜も風情がありますね。
見事に咲ききった満開の桜!
ああ、何て美しいのでしょう!
いつまでもこのまま咲き続けて欲しい!

満開の桜の花々はあっという間に過ぎてゆきます。
桜の花びらがひらひらと風になびいて散ってゆく姿に、日本人は自分の人生を折り重ねて思いにふけるのでしょう。
来年もまた美しい桜の開花が楽しめますように。(^-^)

日本には四季のうつろいがあります。
春の「木の芽時」の頃には体調にも変化がみられがちです。
このような季節の変わり目には気分転換が必要ですね~

美味しいお料理の一品にビールを添えて、上質な大人のミステリー小説を堪能するのはいかがでしょう。
凛が今回ご紹介いたします本は、北森 鴻(きたもり こう)氏の連作短編小説『花の下にて春死なむ 香菜里屋シリーズ1〈新装版〉』(講談社文庫、2021年)です。
(はなのもとにてはるしなむ かなりやシリーズ1 しんそうばん)
この作品は、1998年11月に講談社から単行本で刊行、のち2006年4月に講談社文庫で文庫化されたものを、2021年2月に新装版として刊行されました。

凛はいつもの近所の書店の文庫本の新刊コーナーで発見しました。
満開を過ぎた桜の花の下で、ベンチに座って花を眺めている若い女性の表紙の絵に魅入ってしまいました。
イラストレーターのtoi8(といはち)氏の装画で、桜色の優しさの中に切なさが込められていて、散っている桜の花びらが印象的です。

文庫本の帯の表表紙側には、「人生に必要なのは、(省略)料理とビール、それから、ひとつまみの謎。」と紹介されています。
わーお!凛が大好きな三点セットで~す!\(^o^)/
料理とビールに謎解きですって!!
なるほど、この三点セットは人生に必要なアイテムなのかあ!

帯の裏表紙側には、香菜里屋(かなりや)シリーズとして、今年の2月から5月まで毎月4ヵ月連続で講談社文庫から刊行するとのこと。
「♯北森 鴻を忘れない」と書いてあります。
え?どういうことでしょう?

後に知りましたが、北森 鴻氏は2010年に48歳でお亡くなりになられています。
凛はこれまで北森氏の作品を全く読んだことがなく、今回初めて読むことになりました。
近年、出版不況と言われる状況下において、きっと良い作品だからこそ、北森氏の没後10年以上経過しても、出版社は新たに新装版として刊行するのでしょうね。
これもひとつの出合いですね。

この本は、以下6篇の連作短編集となっています。
「花の下にて春死なむ」
「家族写真」
「終の棲み家」
「殺人者の赤い手」
「七皿は多すぎる」
「魚の交わり」

東京の三軒茶屋にあるビヤバー「香菜里屋(かなりや)」のマスター・工藤が提供するビールと美味しそうな一皿に舌鼓をうちながら、店に集う人々との会話の中から謎解きの面白さを満喫できる設定になっています。

作中の謎には様々な種類があります。
常連客同士の共通の知人の死にまつわる謎、客同士の会話の中から生じる間接的な謎、客が過去に出会った人物に対する謎、現在発生している事件にまつわる謎、葬られたはずの過去の謎解きなど、様々な謎が出てきます。
謎ときの中心人物は常連客で、マスターの工藤は実にさりげなく、目立たない存在で、対比となっています。

しかし、工藤の推理の思考回路は瞬時に働いており、彼の時間軸の中において、彼が打ち出した結論の確認が大半であると捉えることができます。
謎解きの結論にたどり着くまでの客同士や工藤との会話がとても面白く、読者はまるでその場に同席しているかのように時間の共有を楽しめます。
工藤が導き出した結論が見事な論理展開を示してくれ、客だけでなく、最後には必ず読者を唸らせてくれますよ。

凛は以下の四点に注目しました。

まずは、三段階のアルコール度数のビールです。
工藤は客の様子を把握して、適切な度数のビールを提供しています。
凛も工藤が選んでくれたビールをいただきたいものです!
決して酔い過ぎず、心地よくほろ酔わせてくれそうです。(#^^#)

二点目は、お料理です。
工藤が提供する料理のピリリとしたエッセンスが、謎解きの小道具のようにも思えて、実にピタリと合うのです。

例えば、合鴨の脂身でつくられたお吸い物。
白髪葱を添えているため、とてもさっぱりしているとのこと。(文庫本新装版、110頁参照)
濃い味付けだけれども、アルコールの疲れを適度に流してくれて、謎解きを巡る余地を充分に残してくれる、そんな工藤の配慮が何よりも有難いです。(*'▽')

三点目は、文化の香りです。
表題作の「花の下にて春死なむ」を例に挙げますと、この表題はある歴史上の歌人が詠んだ短歌がベースとなっています。

俳句の自由律句の同人仲間である片岡草魚(かたおか そうぎょ)の死に関しての謎解きが始まります。
身元引受人がおらずに、しかも本籍地も不明という故人をめぐり、「彼は一体何者であったのか?」という疑問に対して、フリーライターの飯島七緒が故人の過去を丹念に調べてゆきます。
故人が残した日記に綴られた俳句を基に、出身地であろう某地方の図書館での調査など実に地道に細かく調べていく過程が素晴らしいです。
この他、各篇の随所に文化の香りが込められています。

四点目は、時間の流れです。
この作品が単行本で刊行されたのが、1998年11月。
ということは、北森氏が作品をご執筆されたのは刊行年の前ですから、現在から遡って二十数年前の物語世界が展開しています。

新装版の巻末の文庫版解説で、ライターの瀧井朝世(たきい あさよ)氏が述べていらっしゃいますが、当時の「新玉川線」の呼称で、田園都市線に組み込まれる2000年以前の話です。(同書、306頁参照)

第六篇目の「魚の交わり」にも手書きのノートが重要アイテムとなっていて、緩やかな時間の推移を基軸にして推理を突き進めてゆきます。
そして、表題作である第一篇目の「花の下にて春死なむ」とリンクしていきます。

作品全体に流れる緩やかな時間は、ネットなどで直ぐに検索できる現代社会との違いを認識せざるを得ません。
これが読者には心地よく、読書の楽しみといえるでしょう。

以上、凛の四つの注目点でした。

北森 鴻氏は、1995年、小説『狂乱廿四考』(東京創元社、1995年、のち角川文庫、2001年)で、第6回鮎川哲也賞☆彡を受賞して作家デビューされました。
今回ご紹介しました『花の下にて春死なむ』で、1999年、第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞☆彡されました。
他にも多くの作品を遺していらっしゃいます。

ご存命であるならば、計り知れないほどの小説の楽しさを読者にご提供してくださっていることでしょう。
凛にはとても残念でなりません。
ご活躍当時の北森氏との時間の共有はできませんでしたが、今に至り良い出合いがあったことを節に嬉しく思います。

いつの間にか過ぎ去ってしまい、どこかに置き忘れてきたかのような時間の流れにふと気づかせてくれるビアバーの「香菜里屋」で、工藤がそっと差しだしてくれるビールとお料理と謎解きの愉楽をこの後も続けていきたいと思う凛です。
上質な大人のミステリーとして楽しめます。

ビールと料理と謎解き、人生に必要な三点セット、あなたもいかがですか。
5月までの4ヵ月連続刊行が楽しみです!

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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2021年3月16日火曜日

お墓について考えてみる ~堀川アサコ『ある晴れた日に、墓じまい』(角川文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

唐突ですが、今回はお墓についてのテーマです。

あなたは人生の終着駅をどうしたいのか決めていらっしゃいますか。
あなたが現在健康そのもので、何ら先行きに不安がなければ、あれこれと考える機会は少ないかもしれません。
ところが、あなたご自身が健康を害されたときや、ご家族などに変化が生じた場合、これまでの安定した関係性が崩れる可能性が起こり得ることが考えられます。

凛の周辺には、最近は家族葬や直葬のお葬式が増えているようです。
それから、親戚が集まる法事も少人数で簡素化される傾向になっています。
少子・高齢化の影響で空き家が増えていますし、お墓の管理も大変になってきました。
お墓が遠方にありますと、なかなかお参りに行けないという話も耳にします。

最近は「終活」が盛んになってきましたね。
葬儀だけでなく、お墓も本人やご家族が元気に生きている間に納得いくような形で進めたいと願う方が増えています。
宗教観や倫理観、土地やご親族の慣習などがありますので、皆が納得できるようにまとめるにはさまざまなことを克服しなければならないのが現状でしょう。
これは中高年以上の方々の課題だけではなく、若い方にも当てはまることに普段はなかなか気づきません。

昨年、凛はとっても大切な友人を病気で失いました。(T_T)
今まで彼女の存在が当たり前のように思っていただけに、喪失感がとても大きいです。

凛は今のところ不自由なく動けていますが、いつ、どこで、どうなるかは誰にもわかりませんよね。
それだけに健康でいるときにこそ、人生の終着駅をどのようにするのかを考えてみるのは必要なことではないでしょうか。
それが大人としての必須条件ではないかと思う今日この頃です。

後のことは残った人が自由に決めればよい、ということではないでしょう。
このようなとても大切なことを、亡くなった友人が教えてくれているのだなと思っています。

決して今すぐに結論を求めなくてもよく、漠然とした輪郭だけでもよいと思います。
時が過ぎてゆく中で、凛を巡る環境も、自身の気持ちにも変化が生じて、価値感も変わることも考えられます。
納得できる候補としていくつかあげて、条件を満たすものを選択するという方法もありますよね。

人生の終着駅に対して、具体的には、お墓をどうするのかについて、まだ考えていらっしゃらない方や、これから考えたい方、また、現在悩んでいらっしゃる方におすすめの小説があります。

凛が今回ご紹介いたします本は、堀川アサコ(ほりかわ あさこ)氏の小説『ある晴れた日に、墓じまい』(角川文庫、2020年)です。
この小説は、書き下ろし作品です。

とてもわかりやすいタイトルですね。
バツイチの44歳の古書店を経営する女性が、乳癌の摘出手術後に、実家のお墓を整理するというお話です。

この本とは、いつもの近所の書店で、昨秋頃、文庫本の新刊コーナーで出合いました。
凛はこの本を購入してからすぐには読まずにいましたが、春のお彼岸を前にしたからなのか、急に読みたくなりました。

文庫本新刊の帯に「イマドキの家族小説!」と描かれていますように、いろいろな難題が彼女の前に立ちはだかります。
カバーのイラストは、茂刈 恵(もがり けい)氏で、主人公の正美(まさみ)さんを中心にして、彼女の周囲に5人と犬が1匹描かれています。
黒いワンピースを着ている正美の頭の上には「和」と刻まれているお墓が乗っているではありませんか!( ゚Д゚)
きゃああ~~!これ、まじでシビアだわ!(@_@。

ご安心ください。(^o^)
ホラー小説ではありませんよ~
正美の柔和な性格があるからか、全体的に穏やかでほっこりできる世界となっています。

正美さんの実家は小児科の医院ですが、頑固で気難しい父親が院長のためか、患者さんが非常に少ないです。
兄夫婦は父親と喧嘩して家を出て別の事業を営んでいますし、姉は障害者の施設に入居しています。
正美さんも兄夫婦と同様、実家の父親とは疎遠になっています。
ですから実家の医院の跡継ぎはいません。
ある日突然、この厳格な父親が急逝し、弁護士から父親からの遺言内容が言い渡されるのですが……。

タイトルや表紙のイラストからも想像できますように、現代日本のお墓を巡る事情を読者に伝えてくれます。
家族間のもめごとや、故人を巡る他者との関係があからさまに噴出します。
ご先祖様代々のお墓の移転に伴う様々な手続きなど、読者はやんわりした小説世界に浸りながら、情報として知ることができます。

作者の堀川アサコ氏は、深刻で暗くなりがちなお墓の話題を、ユーモアを交えた文体で、あっという間に読者をラストに導いてくれます。
読後は、爽やかな気持ちになり、正美さんの営む古書店の続編を願う凛でした。(^-^)
もちろん、正美さんの健康を願ってやみません。

堀川アサコ氏は、2006年、小説『闇鏡』(新潮社、2006年)で、第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞☆彡を受賞され、デビューされました。
小説『幻想郵便局』(講談社、2011年、のち講談社文庫、2013年)などの「幻想シリーズ」で人気があります。
他にも多数の作品をご執筆されています。

凛には亡くなった友人との思い出があります。
「私たち、これからが本当の人生よね。長くお付きあいしていこうね。ずっとお友だちでいようね」
と握手して、某駅の新幹線の改札口で見送ってくれた彼女の優しい笑顔が忘れられません。
彼女と一緒に温泉旅行に行きたかったなあ。
旅先で温泉に入って、美味しいものを頂いて、ひと晩じゅうお喋りしてみたかったなあ。

ちょうど日本は春のお彼岸入りを迎える時期でもあります。
ご先祖様に感謝して、「今」を元気でいられることが何よりもありがたく思います。

岐路に立たされたときにうろたえる前に、元気な間に終着駅をどうしたいのかを考えておくのもよいなあ、と思うこの頃の凛です。
そのうちに、いつか、な~んて言ってる間にあっという間に時間が経ちますものね。

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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(角川文庫)文庫2020/8/25堀川アサコ(著)
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2021年3月5日金曜日

奪われてしまうことの大きさに気づくか ~桐野夏生『日没』(岩波書店、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは自由気ままな生き方を望んでいらっしゃいますか。
誰にも束縛されずに、誰からも咎められることもなく、我が道を思う如く生きていく。
ああ、自分の思うままに生きていけたらなあ。
などと、ロマンを感じる方も多いでしょう。

「自由」……とても深くて、簡単には説明ができないものですね。
この「自由」が、あるとき一瞬で奪われるとしたら!
あなたも日常における様々な「不自由」なことを想像してみましょう。

施設での一時滞在とはいえ、社会との接触を強制的に遮断されて、徹底的に管理された生活を強いられたとしたら、どうしましょう。

また、食事、睡眠、行動、言動など、これまでの生き方や考え方などを管理体制側の考えるうに方向転換させられるとしたら、窮屈なところではありません。
学校の部活の合宿や、新入社員の研修などとは違うのです。
そのようなディストピア的な体験を読者に知らしめてくれる小説があります。

今回、凛がご紹介いたします本は、桐野夏生(きりの なつお)氏の小説『日没』(岩波書店、2020年)です。

主人公の小説家であるマッツ夢井(ゆめい)は、ある時、国家の総務省文化局の文化文芸倫理向上委員会」(10頁)から召喚状が届き、施設に向かいます。
一時的な滞在であるということでしたが、そこは厳格な徹底管理主義の施設でした。
B98号という名前で、作家として、管理体制側の思考に合致する小説を書かされることになり、彼女は理解に苦しみながら、もがいていきます。

りんりんらいぶらり~では、前回に続き、今回も単行本のご紹介となりました。
今回もいつもの近所の書店の単行本の新刊コーナーで見つけました。
既に新刊ではなくなる時期だったようで、残り2冊が端っこにひっそりと佇んでいました。
「凛さ~ん、面白いですよ。買ってくださ~い」と本が自己主張しているのがわかりました。

手にとってみると、初版でした。
初版の帯の表表紙側には、「断崖に聳える収容所を舞台に(省略)戦慄の警世小説」と描いてあります。
ひゃああ、怖そう!でも、面白そう!( ;∀;)

裏表紙側には、「終わりの見えない軟禁の悪夢。」と描いてあります。
ますます怖そうで面白そう!!( ;∀;)

そして、裏表紙側の帯の上のほうに大きな文字で、「あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。」と目立つように描かれています。

そもそも小説の良し悪しとは、誰が判断するのでしょう。
出版社の編集者?
文学賞の審査員の先生方?
作家自身?
それとも読者?
ひとつの作品は、時代の変遷によっても評価は異なっていくものでしょう。

作家が主人公となる物語で、収容所に強制収監されて、いろいろと体験する物語です。
お気に入りの桐野夏生氏の作品でしたし、内容がとても気になり、凛はすぐに読んでみたくなりました。
文庫本になるまで待てません。
単行本でしたが、エイッ!と思い切ってレジに行きました。(^-^)

表紙は、大河原愛氏の油彩画「深窓の森」(2016年)で、白黒で表現された人の上半身の後ろ姿が描かれています。
その人物の周りを黒い墨のような絵の具で塗られているように見えます。

やはり、桐野作品は読みだしたら止まりません!
ミステリー仕立てですので、先が気になり、一気に読めますよ!
ストーリーはあなたが読まれてからのお楽しみになさってください。

この作品で、凛が気になった点を四つあげますね。

一点目は、主人公の生き抜いていく力強さと脆さが気になりました。
彼女は強く反抗したり、時には従順であったり、試行錯誤しながら時が過ぎていく間に、様々なことを発見し、理解していきます。
瞬間的な判断能力が研ぎ澄まされていく過程がよくわかります。

二点目は、主人公が収容所内で書かされる小説の内容が興味深いです。
架空の家族関係を書いていますが、内面を鋭くえぐっています。

三点目は、施設での人間関係の不気味なことです。
収容所の所長との対峙だけでなく、職員たちとの接触がピリピリとしており、一触即発で瞬間的にトラブルが起こるような緊張感があります。
また、仲間であるはずの者が敵か味方かも不明です。

四点目は、食事の大切さですね。
貧弱な食事内容に適合していく彼女の身体の変化がみられます。
食べることに対して、全神経が研ぎ澄まされていく主人公の変貌ぶりが激しいです。
やはり栄養摂取は大切だなと気づかされます。

以上の点から、突然自由を奪われ、軟禁状態に置かれた環境下にある閉塞感の中で、人の心身がどのように変化していくのかを執拗に読者に提示しているのだと凛は考えました。

「作家」という職業に籍をおく桐野夏生氏の筆力が、息苦しくなるほどの圧倒感をもって読者にぐんと迫ってきます。
そして、自由を失うことの意味や、あらゆるものを奪われることの不条理さに、凛は慄然となりました。

お休み前のひとときですが、あなた自身を別のシチュエーションに置き換えて考えてみるのも読者の「自由」ですよね。
例えば、もしも病院で一時的に入院することがあるとしたら、などと身近なことに考えてみるのもよいかもしれません。

時代はどんどん先へ進んでいきますので、いろいろなことに気づきを与えてくれる小説です。
作家だけでなく、読者に対しても、「大切なもの」を奪われてしまうことの大きさについて、桐野氏からの問いかけが込められています。
最後に、この作品のタイトルの意味について、痛烈に考えさせられた凛でした。

桐野夏生氏は、非常に多くの賞を受賞された人気作家です。
1998年、小説『OUT』(講談社、1997年、のち講談社文庫(上下巻)、2002年)で、第51回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞☆彡されています。
この作品は、2004年、エドガー賞最優秀賞作品賞にノミネートされています。
2002年に映画化され、平山秀幸監督、原田三枝子さん主演でご覧になられた方も多いしょう。

1999年、小説『柔らかな頬』(講談社、1999年、のち文春文庫(上下巻)、2004年)で、第121回直木三十五賞を受賞☆彡☆彡されています。

桐野氏は以上のほか、ここでは書ききれないくらい受賞歴があります。
また、2015年には紫綬褒章を受章☆彡☆彡☆彡されています。

常に時代の先端に視点を置き、鋭い感性で問題提起をされて、小説として読者に提供されている桐野氏は、女性のファンが多いです。
いつだったか忘れましたが、凛は桐野氏のサイン会で握手を求めたことがありました。
「ファンです!」とご挨拶すると、桐野氏は聞こえないくらいの小さな声で笑顔でお答えになられて、とってもシャイな方なんだなと思いました。
握手していただいた手の感触がとても柔らかでした。(^-^)

桐野氏の作家としての目線が力強く主張されている作品であると凛は捉えました。
作家・桐野夏生氏からの強力なメッセージをがっしりと受け止める体力を備えて、この本と向き合いましょう。
読み始めたら、ラストまで直行です!
あっという間に時間が経ちます。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

桐野夏生氏のHPの-BUBBLONIA-は、こちらです。

岩波書店『日没』特設サイトは、こちらです。
https://www.iwanami.co.jp/sunset/

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(日本語)単行本-2020/9/30桐野夏生(著)
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2021年2月20日土曜日

一気読みした後の達成感は格別です ~百田尚樹『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはミステリー小説はお好きですか。
あなたにはお気に入りのミステリー作家はいらっしゃいますか。

ミステリー小説は作者と読者との対峙でもあります。
犯人のアリバイや仕掛けられたトリックの見分け方、張り巡らされた伏線の発見と、広げた風呂敷の最後のまとめ方、探偵や刑事さんたちの大胆な推理や行動などの活躍に魅了されます。
先が気になって、頁をめくる手がとまりません。
夢中になる間に、気がつけば朝になっていた……( ゚Д゚)
な~んてことがよくありますので、翌日がお仕事や学校などがある日に読まれるには充分お気をつけくださいませ。

凛は久しぶりにミステリー小説を読みました。
このジャンルが好きなのですが、読みだしたら止められずにどんどん読み進んでしまいたくなります。
睡眠不足が翌日に響くのは困りますので、最近はあまり読んでいなかったですね。
あなたはいかがですか。

さて、凛が今回ご案内させていただきます本は、百田尚樹(ひゃくた なおき)氏の初挑戦であるミステリー長編小説『野良犬の値段』(幻冬舎、2020年)です。
今やメディアなどで大活躍の百田尚樹氏をご存知の方は大変多いことでしょう。
凛は寝る間も惜しむほどに没頭、ついに一気読みしてしまいました!

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーを見た後、その隣の単行本の新刊コーナーの前に立ったとき、この本が目に入りました。
人気の作家さんですから、増刷されているだろうなと思って手にしたところ、なんと初版でした!
そのときは初版が4冊、棚に重ねてありました。

本好きの者にとって、初版は魅力のあるものです。
近年発刊された初版本に希少価値がどれほどあるかどうかよくわかりませんが、、(^-^;
もちろん増刷された本も良いのですけれど、凛は初版は好きなんですよね~

書店内で既に新刊の文庫本を2冊選んで手に持っていたものですから、新刊の単行本の棚の前でこの本を買おうかどうか逡巡していた凛の前に、凛よりも年上の男性客が現れて、その方が迷わずこの本を手にして、レジにさっと行かれたのです。
その男性客の動きが実に潔くて、残り3冊の中、凛も即座に1冊手にしてレジに行きました。

単行本から文庫本になるまでは最短で約2年かかることが多いので、それまで待てません……
凛は男性客の購入の様子につられたのもあり、えーい!と思い切って、久しぶりに単行本を買っちゃいました。
先に選んでいた文庫本2冊も同時に購入しました。

余談ですが、凛は書店で購入する本は大体一度に3冊くらいが多いですね~
あまり冊数が多いと重いですし、、

この本の表紙は黒を基調に、男性が傘をさして雨の路地を歩いている背中が見えます。
初版本の帯の表表紙側には「前代未聞の『劇場型』誘拐事件」と紹介されています。
帯の裏表紙側には「突如としてネット上に現れた、謎の『誘拐サイト』。」であると説明されています。

6人の男性が誘拐されて、「誘拐サイト」に突如顔写真と名前が公表されます。
これがネット上で話題となり、テレビや新聞、雑誌などの大手メディアを巻き込んで身代金要求事件と発展していきます。
ミステリー小説ですからストーリーの説明はここまでにいたします。
これから先はあなたが読まれてからのお楽しみになさってくださいね。(^-^)

478頁、こ~んなに分厚い本なのに、凛が何故すらすらと読めたのかを三点考えてみました。

第一点目は、大手テレビ局、大手新聞社、雑誌社などのメディアとネットを絡ませた事件で、デジタル社会に於ける昨今の大衆の誰もが興味をひく話題性があることです。
各メディアでご活躍で発信力もある百田尚樹氏であるからこそ描けた内容であると思います。

日本の格差社会の暗部も引き出されています。
作者はメディアの持つ虚と実を縦・横・斜めに織り交ぜて、大衆の視点を集中、或いは逸らせて、巧みに操っているのだと凛は考えました。

第二点目は、視点を変えてみると新たな発見があるという点です。
人生には実に様々な悩みがあったり、躓きをしたりと決して順調にはいかないことがあるでしょう。
その時、少し視点をずらしてみると、見え方が違ってきます。
これは生きていく上で非常に大切な点ではないでしょうか。
事象に於ける表側と裏側を考えること。
このように凛は新たな発見を覚えながら、どんどん先に読み進むことができました。

第三点目は、すっきりとした文章で、映像として同時に楽しめることです。
文学表現に必要とされる修飾や、形容などの描写を省略し、読者がすんなりと移入できるように、実に巧みに表現されています。
登場人物の描写も、余分な描写はなく、会話で心理作戦を施す技術は素晴らしい能力を要します。
読者は読みながら、映像として同時進行で進むことができます。
作者は後のドラマ化や映画化を考慮されているのかもしれないなあと想像しながら読む楽しみがあります。

百田尚樹氏は、関西の朝日放送テレビのバラエティ番組『探偵ナイトスクープ』の放送作家として長年ご活躍されました。

2006年、小説『永遠の0』(太田出版、2006年、のち講談社文庫、2009年)で小説家デビューされました。
この作品は、漫画、テレビドラマ、映画化されましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
2013年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で映画化され、大ヒットしました。

2013年、小説『海賊とよばれた男(上下)』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2014年)は第10回本屋大賞を受賞☆彡されました。
のちに映画化され、2016年、山崎貴監督、岡田准一さん主演で大ヒットしました。
同様に、テレビドラマ化や漫画化されています。

両作品とも映画などでご覧になられた方も多いと思います。
凛も映画で観ましたが、日本人としての誇りを思い、胸に迫る思いをいたしました。

さらに、2009年には、小説『BOX!』(太田出版、2008年、のち上下巻として講談社文庫、2013年)が第30回吉川英治文学新人賞候補となっています。

ミリオンセラー作家である百田尚樹氏は各メディアなどで現在進行形で大変ご活躍をされています。
発信力も強いので、小説を含めてファンが多くいらっしゃいます。

凛は話題の新刊の単行本を読み終えて、気分も盛り上がりました。
「今」という時代性を感じることも大切だなと思いました。

先日、近くの書店の新刊の単行本コーナーを見ますとこの本が並べられていました。
そっと手にして奥付を見たら、第2刷でした。
初版を持っている!という気持ちと合わせて、うふふふ、既にこの作品の結末は知っているのだ!という優越感でいっぱいの凛でした。

あなたもこの作品で一気読みされませんか。
日常のいろいろなことを忘れて、作品の世界に集中しませんか。
ハラハラ、ドキドキしている内に、気がつけばあっという間にラストを迎えます!
読破した後の達成感は読書の醍醐味ですよ~

但し、翌日のことを気にしなくてすむ日、一日家にいてお出かけしない日、お休みの日か、お休みの前日などに読まれることをおすすめいたします。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)単行本-2020/12/24百田尚樹(著)
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2021年2月11日木曜日

クローゼットの中は夢がいっぱい ~千早 茜『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本のお話でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたはファッションに興味がありますか。
お洋服がお好きですか。
あなたのクローゼットにはどのようなお洋服が出番を待っているでしょうか。

2月でまだまだ寒い季節ですが、ファッションの業界では早くも春物が出回っています。
冬物のセールは既に最終処分で、かなり大幅な値引きしているお店が多いので、ラッキー!とお買い得品に出合う方もいらっしゃることでしょう。
ショー・ウィンドウのマネキンが纏っている明るいパステルカラーの春服を見ると、心も軽やかになれそうな気がしてきますから、実に不思議ですよね~

凛はコロナの自粛のため、出かけることが急激に減りましたので、普段着で過ごすことが増えました。
ご近所にお買い物に行くのに、冬のコートの下はリラックスできる服のままで外出しています。
外出先でコートを脱ぐこともなく帰宅しますので、他人にはコートの中まではわからないだろうと思ってしまいます。(^-^;

このようにあまりにもだらり~んと過ごしていると、心身までビシッと引き締まることがないようにも思えてきます。
やはりファッションは気合でしょうか。
頭から足下まできちんと感があると、背筋がまっすぐに上に伸びて気持ちがシャキッとします。(^^)v
意識して適度に身体に緊張感を与えていかないといけないですね。

さて、凛が今夜ご紹介いたします本は、千早 茜(ちはや あかね)氏の小説『クローゼット』(新潮社、2018年、のち新潮文庫、2020年)です。
小説の内容は、タイトルどおりお洋服にまつわる物語です。

凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで、この文庫本を購入しました。
表紙は、石井理恵氏の装画で、全体が淡い水色を基調に、高貴な女性が纏ったドレスの下に付けるコルセットが真ん中に描かれています。
昔のお姫様や高貴な女性たちは、美しくふわりと裾が大きく広がったドレスの中に、このようなコルセットを付けていたのでしょう。

初版の文庫本の帯が紺色で、水色と紺色の青系の濃淡がすっきりとしています。
帯の表表紙側には、「消せない心の傷みに寄り添う、」の次に大きな文字で「再生の物語。」と描かれています。

裏表紙の説明文からは、十八世紀を中心にした約一万点を超える洋服類が収蔵されている服飾美術館で洋服補修士として働いている纏子(まきこ)と、デパートで働いている男性店員の芳(かおる)を中心とした話であることがわかります。
二人には子供の頃にそれぞれに傷ついた過去をもっていて、互いに何やら遠い記憶の中にあった過去が浮彫となります。
洋服を共通のテーマにした心温まるお話、という読後の期待感をもたらせてくれます。

物語は、母親の洋服がたくさん収納されているクローゼットの中が夢ふくらむとっておきの場所であった女の子の話から始まります。
本編からは芳と纏子の話が交互に描かれています。
各章で、芳の話はハンガーの絵から、纏子の話は人台(じんだい)の絵から始まります。
人台とは、洋服を縫製するときや販売するときに用いる人体の模型のことです。

芳は、子供の頃からデパートの婦人服売り場を母親に連れられて歩くのが好きな男の子でした。
彼は煌びやかなデパート、そして、女の子が身に纏う美しいドレスに興味を抱いていました。
実際に女の子のドレスを着て外に出たため、それがいじめられた原因となって、傷ついた過去をもっています。
今ではすっかり高身長でイケメンの青年に成長していますが、デパートのカフェの勤務でイマイチ満たされないものを感じながら働いていました。

纏子は、歴史のある夥しい洋服たちを後世に残すため、補修をする仕事に従事しています。
よく絵画や映画、舞台などで目にしたことがある方が多いかと思いますが、華やかな社交界で、男女問わず貴族たちの美への追求を最大限に活かした洋服たち。
様々な時代を反映させてきた洋服たちを、次の世代まで残すために、粛々と服と向き合って補修を続けている日々を送っています。

二人は芳の勤務先のデパートの展示会の準備で出会います。
芳は纏子が勤めている「青柳服飾美術館」(文庫版58頁)でバイトをすることになります。

服飾美術館では、様々な人たちが働いており、また古き時代のドレスたち、現代のデザイナーズブランドの服たちが彼を迎えます。
そして、彼はこれまで知らなかった服飾文化の歴史や決まりごとなどに触れることになります。
それは洋服だけでなく、靴や小物にも及びます。

「あら、昔の男性のレースって豪華だったのかあ」
「へえ、靴って昔は左右の概念がなかったんだね」
などと驚くことがたくさんあります。(^o^)

アパレル関係に従事する方々(デザイン、製糸、生地製造、縫製、流通、倉庫、販売など)や、服飾の歴史などを学んでいらっしゃる学生さん方にもおすすめしたい本です。
服飾に関するお仕事小説として学べる点が多いと思いますよ~

さて、纏子と芳の二人の再生とはどうなるでしょう。
それはあなたの読後のお楽しみとして残しておきますね。

文庫本の巻末には、文庫化記念として、作者の千早 茜氏と、公益法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のキュレーターの筒井直子氏との対談が掲載されています。
千早氏による財団での綿密な取材がこの小説の起爆となったことがわかります。
筒井氏の説明がとても丁寧で、小説の全容が理解できます。

小説を先に読まれてもよろしいですし、小説よりも先にこちらの財団のHPを見られると、小説のイメージづくりがよりわかりやすくなるかもしれません。
あなたのお好きな順番でどうぞ。

公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)のHPはこちらです。

文庫版の解説は、作家の谷崎由依(たにざき ゆい)氏です。
洋服の歴史を知ることは、フランス革命など世界史と密接に関係していることが非常によくわかります。

谷崎由依氏は、2007年、小説「舞い落ちる村」で、第104回文學界新人賞受賞☆彡されています。
この作品は、小説「冬待ち」を併録して、2009年に『舞い落ちる村』として文藝春秋から刊行されています。
また、2019年、短編集『鏡のなかのアジア』(集英社、2018年)で、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されています。

作者の千早 茜氏は、幼少期をアフリカのザンビアで過ごされています。
2008年、『魚神(いおがみ)』(「魚」改題、集英社、2009年、のち集英社文庫、2012年)で、第21回小説すばる新人賞を受賞☆彡し、作家デビューされました。
翌2009年、同作で第20回泉鏡花文学賞を受賞☆彡されています。

2013年、連作短編集『あとかた』(新潮社、2013年、のち新潮文庫、2016年)で、第20回島清恋愛文学賞受賞☆彡されました。
また、同作品は第150回直木三十五賞の候補となっています。

さらに、2014年には、小説『男ともだち』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回直木三十五賞の候補となり、同年に、第1回新井賞を受賞☆彡されています。
また、翌年の2015年に、同作で第36回吉川英治文学新人賞の候補にもなっています。
他、多くの作品を世に出されています。

よそゆきの一張羅、とっておきのドレスを纏って心ときめきたい!\(^o^)/
洋服は着る人の心を映すものです。
綺麗に見せてくれるものです。

あなたのクローゼットのお洋服たちもあなたを美しく見せてくれるでしょう。
インスタ映えしたら、すぐにおさらば!という方もいらっしゃるのかな。

凛は、普段のカジュアルな服もよいけれど、時には素敵なドレスでお洒落をしてみたくなりました。
しかし、繊細なドレスは丁寧に扱っていきたいものです。
その前に、凛はクローゼットの中身をもう少し整理しなくては……

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/11/30千早茜(著)
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