2021年3月16日火曜日

お墓について考えてみる ~堀川アサコ『ある晴れた日に、墓じまい』(角川文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

唐突ですが、今回はお墓についてのテーマです。

あなたは人生の終着駅をどうしたいのか決めていらっしゃいますか。
あなたが現在健康そのもので、何ら先行きに不安がなければ、あれこれと考える機会は少ないかもしれません。
ところが、あなたご自身が健康を害されたときや、ご家族などに変化が生じた場合、これまでの安定した関係性が崩れる可能性が起こり得ることが考えられます。

凛の周辺には、最近は家族葬や直葬のお葬式が増えているようです。
それから、親戚が集まる法事も少人数で簡素化される傾向になっています。
少子・高齢化の影響で空き家が増えていますし、お墓の管理も大変になってきました。
お墓が遠方にありますと、なかなかお参りに行けないという話も耳にします。

最近は「終活」が盛んになってきましたね。
葬儀だけでなく、お墓も本人やご家族が元気に生きている間に納得いくような形で進めたいと願う方が増えています。
宗教観や倫理観、土地やご親族の慣習などがありますので、皆が納得できるようにまとめるにはさまざまなことを克服しなければならないのが現状でしょう。
これは中高年以上の方々の課題だけではなく、若い方にも当てはまることに普段はなかなか気づきません。

昨年、凛はとっても大切な友人を病気で失いました。(T_T)
今まで彼女の存在が当たり前のように思っていただけに、喪失感がとても大きいです。

凛は今のところ不自由なく動けていますが、いつ、どこで、どうなるかは誰にもわかりませんよね。
それだけに健康でいるときにこそ、人生の終着駅をどのようにするのかを考えてみるのは必要なことではないでしょうか。
それが大人としての必須条件ではないかと思う今日この頃です。

後のことは残った人が自由に決めればよい、ということではないでしょう。
このようなとても大切なことを、亡くなった友人が教えてくれているのだなと思っています。

決して今すぐに結論を求めなくてもよく、漠然とした輪郭だけでもよいと思います。
時が過ぎてゆく中で、凛を巡る環境も、自身の気持ちにも変化が生じて、価値感も変わることも考えられます。
納得できる候補としていくつかあげて、条件を満たすものを選択するという方法もありますよね。

人生の終着駅に対して、具体的には、お墓をどうするのかについて、まだ考えていらっしゃらない方や、これから考えたい方、また、現在悩んでいらっしゃる方におすすめの小説があります。

凛が今回ご紹介いたします本は、堀川アサコ(ほりかわ あさこ)氏の小説『ある晴れた日に、墓じまい』(角川文庫、2020年)です。
この小説は、書き下ろし作品です。

とてもわかりやすいタイトルですね。
バツイチの44歳の古書店を経営する女性が、乳癌の摘出手術後に、実家のお墓を整理するというお話です。

この本とは、いつもの近所の書店で、昨秋頃、文庫本の新刊コーナーで出合いました。
凛はこの本を購入してからすぐには読まずにいましたが、春のお彼岸を前にしたからなのか、急に読みたくなりました。

文庫本新刊の帯に「イマドキの家族小説!」と描かれていますように、いろいろな難題が彼女の前に立ちはだかります。
カバーのイラストは、茂刈 恵(もがり けい)氏で、主人公の正美(まさみ)さんを中心にして、彼女の周囲に5人と犬が1匹描かれています。
黒いワンピースを着ている正美の頭の上には「和」と刻まれているお墓が乗っているではありませんか!( ゚Д゚)
きゃああ~~!これ、まじでシビアだわ!(@_@。

ご安心ください。(^o^)
ホラー小説ではありませんよ~
正美の柔和な性格があるからか、全体的に穏やかでほっこりできる世界となっています。

正美さんの実家は小児科の医院ですが、頑固で気難しい父親が院長のためか、患者さんが非常に少ないです。
兄夫婦は父親と喧嘩して家を出て別の事業を営んでいますし、姉は障害者の施設に入居しています。
正美さんも兄夫婦と同様、実家の父親とは疎遠になっています。
ですから実家の医院の跡継ぎはいません。
ある日突然、この厳格な父親が急逝し、弁護士から父親からの遺言内容が言い渡されるのですが……。

タイトルや表紙のイラストからも想像できますように、現代日本のお墓を巡る事情を読者に伝えてくれます。
家族間のもめごとや、故人を巡る他者との関係があからさまに噴出します。
ご先祖様代々のお墓の移転に伴う様々な手続きなど、読者はやんわりした小説世界に浸りながら、情報として知ることができます。

作者の堀川アサコ氏は、深刻で暗くなりがちなお墓の話題を、ユーモアを交えた文体で、あっという間に読者をラストに導いてくれます。
読後は、爽やかな気持ちになり、正美さんの営む古書店の続編を願う凛でした。(^-^)
もちろん、正美さんの健康を願ってやみません。

堀川アサコ氏は、2006年、小説『闇鏡』(新潮社、2006年)で、第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞☆彡を受賞され、デビューされました。
小説『幻想郵便局』(講談社、2011年、のち講談社文庫、2013年)などの「幻想シリーズ」で人気があります。
他にも多数の作品をご執筆されています。

凛には亡くなった友人との思い出があります。
「私たち、これからが本当の人生よね。長くお付きあいしていこうね。ずっとお友だちでいようね」
と握手して、某駅の新幹線の改札口で見送ってくれた彼女の優しい笑顔が忘れられません。
彼女と一緒に温泉旅行に行きたかったなあ。
旅先で温泉に入って、美味しいものを頂いて、ひと晩じゅうお喋りしてみたかったなあ。

ちょうど日本は春のお彼岸入りを迎える時期でもあります。
ご先祖様に感謝して、「今」を元気でいられることが何よりもありがたく思います。

岐路に立たされたときにうろたえる前に、元気な間に終着駅をどうしたいのかを考えておくのもよいなあ、と思うこの頃の凛です。
そのうちに、いつか、な~んて言ってる間にあっという間に時間が経ちますものね。

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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(角川文庫)文庫2020/8/25堀川アサコ(著)
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