2021年1月29日金曜日

宅配してくださる方々に感謝! ~山本一力『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
お休み前のひととき、本の話題でどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは宅配をご利用されていらっしゃいますか。
凛はよくお世話になっています。(^-^)

新型コロナウィルスの影響により、不要不急の外出を控えてご自宅でお過ごしの方も多い昨今。
宅配とは、買物に行かずに済み、自宅や会社などで受け取ることができる便利なシステムですね。
どんな悪天候でも、年中休まずいつでもお届けしてくださる配送業者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです!m(_ _)m

ひと昔の時代ですと、自宅への配達はデパートからの贈答品、お中元やお歳暮のほか、特別なお届け物が多かったのではないでしょうか。
ネットショッピングなどの普及により、昨今では日常の食料品をはじめ、お仕事や生活に関するあらゆる物が宅配により簡単に手にすることが可能な時代になりました。

日本中だけでなく、世界中に張り巡らされた物流のシステムは、人間でいえば血流と同じで、絶えず流れ続けています。
この物流のシステムのどこかに支障をきたしますと、一瞬で普段の生活ができなくなる恐れがあります。
物流に関わる方々の努力のおかげに成り立つ宅配サービスというシステムの恩恵を、日常的に当たり前として受けられるということに、心からありがたく思う凛です。\(^o^)/

今回、凛がご紹介いたします本は、山本一力(やまもと いちりき)氏の小説『ずんずん!』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2020年)です。
「文庫化にあたり加筆修正」されていると、文庫版初版の奥付の前頁(462頁)に掲載されています。
時代小説で有名な作家ですが、この作品は現代小説となっています。

この文庫本とは、昨年秋に、凛がいつも利用している近くの書店の文庫本の新刊コーナーで出合いました。
文庫本の表紙は、川上和生氏のイラストです。
住宅地の石段の坂道から海が見えていて、海の向こう側にはビルなどの街が見られ、遠くに山があります。
セーラー服の女子学生が、牛乳配達の白い帽子の男性が坂道の石段を上がって行っている様子を、石段の下手から振り返って見つめている光景が描かれています。
女子学生は、石段の途中ですれ違ったであろう牛乳配達の男性の笑顔がよい表情であることから、ほっこりとして彼を振り返っているのかもしれません。

文庫本初版の帯の表表紙側には、「毎日、コツコツ。(以下省略)」と紹介されています。
裏表紙側には、「配達するひとの尊さを(以下省略)」と書いてある言葉から、凛は、ああ、そうだった!と、忘れかけていた衝撃を受けることになります。
裏表紙の説明文には、「宅配物語」と書いてあります。
表紙と帯から、お届けしてくださる方たちを巡る心豊かになれる物語であろうということが想像できます。

この小説は、牛乳の宅配業に関わる人々の物語です。
毎朝、自宅の玄関前に瓶入りの牛乳をお届けする業者を中心とするお仕事小説でもあり、また人情物語でもあります。

物語は、第一章、第二章、終章の構成になっています。
第一章では、東京都中央区の日本橋浜町で牛乳販売店を営む纏(まとい)ミルク浜町店の店長こと纏亮介(まとい りょうすけ)を中心として、家族や配達員たちの仕事を細かく描いています。
2014年を迎えたばかりの1月6日午前4時、新年の仕事始めの朝の引き締まった空気感がよく伝わります。

纏ミルクは、亮介の曽祖父が明治初期に創業した老舗で、亮介は四代目にあたります。
亮介の父である三代目から、隅田川こと大川の西側から東側に移転し、深川萬年橋付近に本店を置きます。

纏という名前は火消し組『は組』(文庫版、12頁)を受け継いでおり、江戸の伝統を重んじる家として位置付けられています。
隅田川にかかる多くの橋が出てくるのも特徴です。

牛乳配達は朝が早くて、まだ暗い夜のうちに動きます。
凛は、配達員の方が顧客の玄関先の箱に収めて、使用した瓶を回収するにに至るまで、ご近所に迷惑な騒音とならないように細やかな配慮をしていることなど、気づかされることが多かったです。
瓶の牛乳を入れる小さな箱には、顧客との交流が詰まっているものなのですね。
一人暮らしの高齢の女性のお客様のいつもと違う様子が箱からわかるなど、感動の人情物語が綴られています。

ところが人情話だけで終わらないのがこの物語の特徴です。
毎朝、通勤途中で店先で瓶入りの牛乳を飲みに立ち寄る女性を巡って、毎日玄関先に届けられる牛乳配達と新聞配達が日本独特の文化であることを、映像でアメリカ市場に伝えるという国際的な話に発展していきます。
国際ビジネスの緊張感の中で、登場する人物たちの相関図が人情がらみで描けるほどに見事な展開を示します。
もちろん、善良な人たちばかりではなく、悪い人たちも登場します。

第二章では、尾道が舞台になっています。
尾道は海の幸が大変豊かで、人情も重ねて熱い地域として描かれています。
国際ビジネスの関連から、呉、鹿児島、鎌倉などを読者は旅することもできますよ~

終章では、亮介の恋の行方もあり、どのような結末になるのかは、あなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。

全編にわたって、牛乳は人が口にするものですから、多くの関係者の愛情が込められていることがわかります。
生産者、会社、販売店を経て、消費者である玄関先に毎朝配達される牛乳の新鮮で美味しそうなことといったらたまりません!
あなたも読み進んでいくうちに、きっと瓶入り牛乳が飲みたくなりますよ~
凛はミルクコーヒーも飲みたくなってきました。(^-^)

文庫版の最後に、作者の山本一力氏から「いまだからこその、作者あとがき」(459頁~461頁)があります。
昨年の8月にご執筆されています。

2020年の新型コロナウィルス関連に寄せて、「今の時代」を共に生きている読者に対して、作者の思いが込められていて、とても納得できる文章となっています。
山本氏からコロナ禍を生きている読者への熱いメッセージが文庫版で3頁の中に凝縮されています。(^_^)v
是非、お読みくださることをお勧めします。

作者の山本一力氏は、時代劇の大人気作家として知られています。
1997年、中篇集『蒼龍』(文藝春秋、2002年、のち文春文庫、2005年)で、第77回オール讀物新人賞を受賞☆彡し、デビューされました。

2002年、時代小説『あかね空』(文藝春秋、2001年、のち文春文庫、2004年)で、第126回直木三十五賞を受賞☆彡☆彡されて、大ベストセラーとなりました!
この作品は映画化され、2007年、浜本正機監督作品で、内野聖陽さん、中谷美紀さんの出演となってヒットしました。

時代小説シリーズとして、『損料屋喜八郎始末控え』(文藝春秋、2000年、のち文春文庫、2003年)ほか多数の作品が刊行されています。

メディアにも進出されており、テレビのコメンテーターとしての一面もお持ちですので、ご存知の方も多いかと思います。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここで、ちょっとブレイクタイムです。
今回も購入しました書店のお話です。
凛がよく利用する近所のこの書店は、東京都内に本店を置き、全国に数多く出店している大手書店です。
売り場面積はさほど広くはないものの、並べ方などとても吟味されているなあと、行く度に感心しています。
本棚の本たちが居心地が良さそうなので~す。(^-^)

この書店で付けて下さる無料のオリジナルの紙製のカバーのデザインが落ち着いた感じで、凛はとてもお気に入りで~す!(^o^)
レジ袋は有料なのですが、無料の書店オリジナルの紙の袋に入れてくださって、それがなんとも昔懐かしい感じがして実に気分が良いですね。
書店巡りがお好きでしたら、どこの書店なのか、すぐにおわかりになられるかも……

以前の街の個人書店では、出版社や文具メーカーなどの紙製の袋に入れていただいてましたねえ。
今度はどんな楽しい世界がいっぱい詰まっているのだろうと、ワクワクしながら紙製の袋を胸に抱いて帰宅していました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆

あなたは瓶入りの牛乳はお好きですか。
凛はとても好きです!
凛は学生の頃、瓶入りのコーヒー牛乳をよく飲んでいました。
瓶入りの乳飲料は懐かしい感じがいたします。
普段はスーパーで紙パックの牛乳を購入することが多い凛ですが、瓶入りの飲料は新鮮で美味しさが詰まっているようで特別感がありますね!(^o^)

最後に、牛乳の宅配だけでなく、あらゆる配達員の方々に感謝の気持ちを込めて。
いつもありがとうございます!!m(_ _)m
これからもよろしくお願いいたします!\(^o^)/

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/9/24山本一力(著)
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2021年1月18日月曜日

誰しも歴史の重みを刻んでいます ~柴崎友香『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2021年になりました。
令和3年、丑年。
今年もよい年でありますように!
今年も凛を何卒よろしくお願いいたします。m(_ _)m

あっという間に今年も1月の後半となりました。
時が経つのは本当に早いものですね。

今年も新型コロナウィルス感染増加により、都市部では緊急事態宣言が発令されました。
自粛生活にも慣れてきた方も多いのではありませんか。
降雪で寒さもあり、外出にも制限がある地域の方もいらっしゃるでしょう。
あなたのお住まいの周辺はいかがでしょうか。
免疫力を高めていきましょう!

社会の変化とともに暮らし方も変わりそうな2021年。
そのような社会情勢の中において、本と向き合える時間はとても幸せだと思います。
活字を追い、読書ができる、とても幸せな時間。
今年も本とともに有意義な時間をもちたいと願う凛です!(^o^)

ここでちょっとブレイクタイム、嬉しいお知らせで~す!
この度、アフィリエイト掲載を始めました!\(^o^)/

これまで公開しております全ての投稿欄の最後に、本の画像と全国大手ネット書店のサイトを掲載しています。
昨年までは文章ばかりでしたので、ちょっと地味だったかも…(-_-;)

本の表紙の画像が入りますと、パッと画面が明るくなったような気がしている凛で~す。
表紙の説明もより具体的にわかりやすくなるかと思います。

りんりんらいぶらり~はスマホなどのモバイルバージョンとPC画面のウェブバージョンと二つあります。
二つのアフィリエイトの画面が若干異なりますが、どちらもクリックされますと同じサイトに繋がりますので、ご興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします!m(_ _)m
これからもりんりらいぶらり~を何卒よろしくお願いいたしますね。(^_^)v

前置きが長くなってしまいました。(^-^;
本題に入りましょう。

凛が今回ご紹介いたします本は、柴崎友香(しばさき ともか)氏の小説『千の扉』(中央公論新社、2017年、のち中公文庫、2020年)です。

凛はいつもの近くの書店の文庫本の新刊本コーナーで見つけました。
そのときは一度手にしてみたのですが、他の本を購入してしまい、後からこの本のことがとても気になってしまって……(-_-;)

本の帯は大事ですね!
文庫本初版本の帯の表紙側に紹介されている「戦後70年の時間を旅する」という言葉が記憶されていて、後から「読みたい!」という欲求がわきあがってきたのです。

あなたには凛と同じ体験はありませんか。
探しているものが気になって仕方ないときがありませんか。

いつもの書店では既に売り切れており、他の書店で探してもそういうときに限ってなかったりするものなのですよねえ。
ああ、しまった~!あのときに買っておけばよかった~と思い、今回はネット書店で購入いたしました。(^^♪
いつもの書店に依頼するのもよかったのですが、、
ネット書店も便利ですよね。

物語は東京都の副都心、新宿区の築40年になる都営住宅でのお話です。
大阪出身の主人公である千歳(ちとせ)が、団地内で暮らしてきた夫の祖父から、かつて団地内で関わったことがある男性を探して欲しいという「人探し」を依頼されるお話です。

団地には低層階や高層階などいくつもの棟があります。
同じ規格、同じ間取りで暮らしている住民たちの中で、特定の人物を探すことは相当困難なことでしょう。
また、個人情報の面だけでなく、防犯上からも「人探し」には相当な覚悟が必要かと思われます。

主人公の千歳も大阪の団地で育ちました。
場所は違えども同じ様な間取りの団地で、彼女が育ってきた環境と似ていて、記憶が混合するような不思議な感覚の中で夫との暮らしを始めました。
千歳の夫もこの団地で育ちました
つまり、夫の生育した環境がそのまま継続となっており、二人とも似た環境で現在進行形で暮らしているという形になっています。

小説には多くの登場人物が出てきます。
夫の友人たち、ご近所の人、団地内の飲食店、団地内に居住する中学生や高齢者、千歳の職場の人たちなどとの様々な交流の場面があります。
彼らには思い思いの暮らし方があり、それぞれに悩みも抱えています。
金属製の扉の向こう側にはどんな人たちがどんな思いで暮らしているのでしょうか。

築40年の団地には歴史が刻まれています。
夫の祖父の青年期は戦後の昭和の時代を駆け抜けています。
物語は、時系列で進んではいませんので、整理しながら読み進む技術が求められます。

また、団地にまつわる都市伝説のような不思議なお話も出てきます。
ミステリアスな要素もあり、楽しめますよ~

全編にわたって、千歳の大阪弁が読者をとても柔和にしてくれます。
果たして夫の祖父から依頼された千歳の「人探し」は成功するでしょうか。

文庫版の解説は、社会学者で、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授の岸政彦氏です。
日常の見過ごしがちな細かい視点に着目されています。

作者の柴崎友香氏は大阪府のご出身です。
小説『その街の今は』(新潮社、2006年、のち新潮文庫、2009年)で、2006年、第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞☆彡、同年、第23回織田作之助賞大賞を受賞☆彡、翌2007年、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞☆彡されました。

また、小説『寝ても覚めても』(河出書房新社、2010年、のち河出文庫、2014年、のち増補新版として同文庫、2018年)では、2010年、第32回野間文芸新人賞を受賞☆彡されています。
この作品は、2018年、濱口竜介監督で映画化されています。

そして、2014年、小説『春の庭』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2017年)で、第151回芥川龍之介賞を受賞☆彡☆彡されています。

小説『きょうのできごと』(河出書房新社、2000年、のち河出文庫、2004年)は、2004年に行定勲監督で映画化されています。
他にも多数の作品が刊行されており、大変ご活躍されていらっしゃいます。

あなたはどのような住宅にお住まいですか。
戸建て、マンション、団地、アパートなど、分譲、賃貸問わず、日本には様々な住宅があります。

凛はいつも利用する駅でよく思うことがあります。
多くの方が乗降している光景を目にして、皆さんお一人お一人どこから来られて、どこに帰宅されるのかしらと。

それぞれのご自宅でそれぞれの暮らし方がありますよね。
それぞれのご家族・兄弟・姉妹・両親・祖父母……。
ご親族の生きられた歴史があり、その歴史の上に幾重も折り重なって、今の人生があるのだと凛は思います。

そして、今を生きている人たちの人生が歴史となって、未来へと継続されていくのですね。
日常の中で、滔々と流れる歴史が刻まれてゆくという思いに気づかされます。
当たり前のことなのですが、人はこの世にある日一人で突然存在したのではありませんよね。
この当たり前ということが、案外普段は忘れがちなのではないでしょうか。

柴崎友香氏のオフィシャルサイトはこちらです!
ご興味のある方はどうぞ。

今夜も凛からおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/10/12柴崎友香(著)
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2020年12月29日火曜日

シネコンのバックヤード・ツアーです! ~畑野智美『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
凛とともにどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2020年も残すところ二日と数時間になりました。
あなたの2020年はどのような一年でしたか。

凛はおかげさまで4月に、ブログの南城 凛のりんりんらいぶらり~を立ち上げまして、8ヵ月続けることができました。
凛のりんりんらいぶらり~を訪れてくださるあなたのおかげで、励みとなって続けています。

凛は本が好きです!
街の書店巡りが好きな凛にとっては大変有益な一年でした。(^o^)

凛がご紹介させていただきました作品には、ベストセラーの有名な作家のものもあります。
またこれからきっとご活躍をされであろう期待感がある作家の作品もご紹介しています。
とても面白かった作品ばかりで、是非あなたにも読書の感動を共有していただけると嬉しく思います。

今年は新型コロナウィルスの影響で、全世界中の人々が巻き込まれ、未だ解決が見いだせておりません。
来年も引き続き、これまでの価値感など変化を求められる年になりそうですね。

ところで、あなたは映画はお好きですか。
今年は自粛の影響で、人々の生活に変化がみられました。
そのため、映画をお家で観られる方も増えたことでしょう。
レンタルショップだけでなく、ネット配信が増えてきている昨今です。

しかし、やはり、映画は映画館で観るのが最も楽しいですね!
まずは座席を予約するところから始まり、映画館に足を運ぶ時間から、映画の世界への旅は既に始まっているのです。

映画は巨大なスクリーンに映し出される映像と、ダイナミックな音声との融合がひとつの作品世界となっています。
映画に集中している約2時間前後は非日常の空間です。
映画館でご覧になられるあなたご自身の時間と空間、そして作中の時間と空間、この二重の融和があなたを映画の虜とさせてくれるでしょう。

今年は吾峠呼世晴原作、外崎春雄監督の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットで、全国の映画館が大盛況でしたね!
映画館の興行収入が大幅に増えたことは明るい話題となりました。
あなたはご覧になられましたか。
凛の友人は上映されると即座に映画館に行き、とても感動してきたと話していました。
まだまだこの映画の人気は続きそうです。

今回、凛がご紹介いたします小説は、シネマコンプレックスこと「シネコン」と呼ばれている映画館の仕事に従事している人たちのお話です。
多くの映画ファンに親しまれているシネコンでバイトをしている人たちに光をあてた作品です。

畑野智美(はたの ともみ)氏の連作短編集『シネマコンプレックス』(光文社、2017年、のち光文社文庫、2020年)です。
この作品は、作者の畑野智美氏がシネコンでバイトをしていた経験から描かれている小説です。

映画がお好きなあなたは、シネマコンプレックスをご利用されることもあるのではないでしょうか。
全国にあるシネコンは、単館やミニシアターとはまた違ったアミューズメントの楽しみがあるといった感じでしょう。

メディアなどの宣伝との連動で、主演俳優の舞台挨拶、ネットでの予約から、関連グッズの買い物、飲み物や食べ物の販売など、すべてがシステム化されているシネコン。
今回の作品は、このシネコンという広い空間と厳格なシステムの中で、真摯に取り組んで働く人たちのお仕事小説です。

凛は、いつもの近くの書店の文庫本の新刊コーナーでこの作品を見つけて、光文社文庫の2020年10月20日付の初版1刷を購入しました。
文庫版の表紙は、めばち氏のイラストで、映画フィルムを背景に、シネコンの制服を着た一組の男女が手を取り合っています。
女性の頭には赤いとんがり帽子が可愛らしくのっています。
二人は互いに見つめ合って、ダンスをしているようにも見えて、温もりのある雰囲気が漂っています。

文庫本初版の帯の表表紙側からは、仕事や恋、夢について一歩踏み出すことを躊躇している読者に対して勇気をもらえる小説であることがわかります。
物語は、クリスマス・イブの郊外のシネコンの舞台裏に焦点をあて、働く者たちの「等身大」(文庫本帯の表表紙側)として描かれているお仕事小説です。

帯の裏表紙には、シネコンが六つのセクションから成り立っていることが紹介されています。
「フロア」は、チケットのもぎり、案内、清掃など。
「コンセッション」は、飲食の売店。
「ボックス」は、チケット販売担当。
「ストア」は、パンフレット、関連グッズの販売。
「プロジェクション」は、映写機の操作担当。
「オフィス」は、備品管理、電話応対などをする事務所。

お客さまがシネコンで映画作品を楽しむためには、これだけのセクションがあり、様々な人たちの働きの中で「映画を楽しむ」という行為が成立しているのだということがわかります。
それらのどのセクションも重要であり、ひとつでも欠けるとお客さまが「映画を楽しむ」という行為が成り立たないということに繋がります。

文庫版の裏表紙からわかることは、この小説の舞台となっている郊外のシネコンには100人近い人たちが関わっていることに凛は大変驚きました。
実際、映画館に足を運んでも、上映される作品の時間帯の前後のスクリーンに関わる関係者しか普段は見えません。
シネコンではそれほど多くの人たちが働いているのかとあらためて思い知らされました。

映画ファンのための映画作品そのものや監督、俳優陣などに関する情報は多くありますが、シネコンの仕事に携わっている人たちの小説は、この作品で凛にとっては初めてでしたので、大変興味がわきました。
この作品は、或る年の日曜日のクリスマス・イブの日という特別な一日の舞台裏を描いています。
したがって、日常の業務に加えて、一年のうちの格段に忙しい一日であると容易に想像できます。
しかも、当日は舞台挨拶もあり、特別なイベント上映もあるという「大忙し」(文庫版、裏表紙)の日です。

物語は、七篇からなります。
六つの各セクションの細部にわたるバイトの規則が丁寧に描かれています。
シネコンでの就業規則をバイトの視点で具体的に紹介していますので、バイトのための活きた就業マニュアルのようでもあります。

バイトは学生だけでなく、主婦もいます。
各人が個々人の悩みを抱えながら、人間関係の問題ををくぐり抜けて、シネコンという職場の立ち位置に居場所を求めています。
その誰もが映画が好きであることが描かれており、彼らのシネコンに対する「映画愛」がこめられていることが伝わります。
映画がお好きな方でしたら、各人の「映画愛」に関するエピソードが楽しめるしかけが楽しめます。

シネコンにはもちろん社員もいますので、社員とバイトの間に流れている溝がみられます。
また、バイト同士の微妙な関係もあり、いろいろと考えさせられます。
郊外のシネコンですから、本社のある東京からきた社員との確執なども事細かく描かれています。
長く勤めているバイトの人たちと、新人との軋轢もあります。
実際にシネコンでバイトを体験した作者ならではの視点が活かされています。

物語には、数年前に起きたクリスマス・イブでの職場での或る出来事がミステリーの要素となって全体に流れています。
この出来事の謎の部分が最後にあかされる仕組みになっていますので、お楽しみに。

それぞれの人生をシネコンという共同の職場で、悩みながら映画に携わっている人々の生の声がよく伝わります。
各篇の最後は、なるほど、そのような道があったのか!ということも。

映画ファンにとりましては、シネコンの知られざるバックヤードがわかりますよ。
さらに、映画フィルムなどの技術変遷の歴史もわかります。
映画だけでなく、お仕事小説として捉えることができます。
映画ファンのみならず、これからシネコンでバイトする方や、映画関係で働く方には必読の書となりそうな小説だと凛は考えます。

作者の畑野智美氏は、映画館や出版社のバイトなどを体験されていらっしゃいます。
2010年、小説『国道沿いのファミレス』(集英社、2011年、のち集英社文庫、2013年)で、第23回小説すばる新人賞☆彡を受賞されて、翌年の2011年に作家デビューされました。
2013年、連作中編集『海の見える街』(講談社、2012年、のち講談社文庫、2015年)で、第34回吉川英治文学新人賞の候補となりました。
また、翌年2014年にも、連作短編集『南部芸能事務所』(講談社、2013年、のち講談社文庫、2016年)で、第35回吉川英治文学新人賞の候補となっていて、シリーズ化されています。
2018年、文藝春秋刊行の小説『神さまを待っている』は、読書メーター OF THE YEAR 2019にランクインしています。

あなたの今年のクリスマス・イブはいかがでしたか。
これからお正月を迎えて、お休みの方には映画を観る機会も増えそうですね。

凛は、これからは映画の旅を楽しむときに、影の力となってくださっている映画館のスタッフに優しく接していきたいと考えました。
決して、観たばかりの映画の最後について「あーあ、つまらなかった」などと言いながら、ポップコーンをポイと投げるようにスタッフに手渡すことだけはしたくないなと思います。
席でポップコーンを落とさないように注意したいですね。

この作品でシネコンのバックヤードも知ることができ、館内のスタッフに感謝しながら、これからも映画がますます好きになっていくことでしょう。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

晩秋からブログの掲載が若干遅くなっておりまして、申し訳ございません。
今回が今年最後の更新となりました。
4月に立ち上げまして8ヵ月の間、凛にお付き合いくださり、誠にありがとうございました!
来年も続けてまいりたいと思っておりますので、今後も凛のりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたします!m(_ _)m

あなたもよいお年をお迎えくださいませ。\(^o^)/
お身体にはくれぐれもご自愛くださいませ。
あなたにとって、来年もよい年でありますように。
では2021年も南城 凛(みじょう りん)のりんりんらいぶらり~であなたとお会いしましょう。(^O^)/

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2020年12月11日金曜日

一歩前進したくなります! ~伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社、2016年、のち光文社文庫、2018年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

今年も早いもので師走となりました。
街ではクリスマスのイルミネーションがキラキラ☆☆と輝いています。
クリスマスソングが流れて、クリスマス商戦たけなわですね~

凛は賑やかな街の様子を見て、クリスマスの楽しい気分に誘われました。
あなたはいかがですか。

凛はホッとしました。
理由は、新型コロナウィルスの影響が現在も継続中であるため、クリスマスなど例年通りに楽しんでよいものかという気分になっていました。
輝くイルミネーションの光☆☆を浴びて、心身とも明るくいきましょう。(^o^)

自粛などの影響もあり、業種にもよると思いますが、お仕事で大変な方も多くいらっしゃることでしょう。
これから経済的な面での影響が出てくるのではないかと思います。
中にはクリスマス気分どころではない方もいらっしゃるかもしれません。
元々、日本では暮れがおしせまると、どうしても気ぜわしくなりがちです。
さらに、今年は漠然とした不安感や、不透明感が伴って先が見えずにすっきりしない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

読後に一歩前進できる小説が読みたいなあ。
ファイトが出る小説が読みたい。
明るく元気になれる物語と出合いたい。
爽やかな気分になれる小説が読みたい。

そのような作品をご希望のあなたに、凛が、主人公が厳しい現実から如何にして脱却していくのか、その過程を読ませてくれる小説をご紹介しましょう。
伊吹有喜(いぶき ゆき)氏の小説『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社、2016年、のち光文社文庫、2018年)です。

あなたはこのタイトルに「ええっ?今がunluckyなのは嫌だなあ」と思っていらっしゃいませんか。
実は凛も最初、よく利用している近所の書店の文庫本の書架でこの本の背表紙を見たとき、すぐにそう思ったのです。
新刊本や話題の本など平積みされている目立つ棚のところではなく、出版社別に並べられている文庫本の書架の片隅にひっそりとこの本がありました。
「凛さ~ん!読んでください。手にしてください。楽しめますよ~」とこの本からビビビと熱いメッセージが伝わりました。

そっとこの文庫本を手に取ってみますと、表紙のカバーが丹地陽子氏のイラストでした。
表紙には、40代くらいの男性が野外で座って、珈琲のマグカップを持っています。
その横顔と背中に漂う空気感に、哀愁と未来が混濁した感じが含まれています。
何よりも男性の横顔に笑みが浮かんでいたので、よい未来が待っていそうな感じがしました。

文庫本の奥付を見ますと、2018年11月の初版で、2020年9月には第5刷の発行となっています。
増刷のペースが早いというのは、それだけ売れている証拠ですね!

第5刷の文庫本の帯の表表紙側には、「このコーヒーを飲んだら、もう一回、歩き出してみようか。」と。
帯の裏表紙側に記されている「人生の中間地点」にいる人たちであるからこそ「見えた」ものとは何でしょうか。

文庫本の裏表紙の解説文には、主人公の男性が「思いがけない人生の『敗者復活戦』に挑むことになる」物語であると説明されています。
なるほど、ここから市井の人々に読んで欲しい作品であることがわかりました。

目次を開きますと、7篇の物語と、文庫本の解説が文芸評論家の北上次郎(きたがみ じろう)氏ではありませんか!
これは読みごたえがありそうだなと思い、凛はすぐに書店のレジに向かいました。

物語は、立花浩樹(たちばな ひろき)という元・自然写真家の現在から始まります。
彼は華々しいメディアの世界で人気を博した「『ネイチャリング・フォトグラファーのタチバナ・コウキ』」(文庫本、20頁)という過去をもっています。
1980年代後半に彼が東京の私立大学の学生のときに出会った所属事務所の社長が、彼のプロデューサーを手掛けていました。

しかし、バブルの終焉と共に、彼は連帯保証人であったため、社長の負債を負うことになってしまったのです。
どれくらいの借金があったのかは明確にはわかりませんが、返済し終えて、他人には言えない艱難辛苦を体験した過去を背負って、心身ともぼろぼろの状態で今に至っています。
華やかなメディアからは消えて、世の中の人々からは忘れられた存在となっています。

第一篇目は、現在の立花浩樹が主人公です。
地元に戻って荒れた生活ぶりが彼の表情や身体全体に表れており、輝かしい過去と現在との比較が容赦なく描かれています。
彼の母親の息子に対するもどかしい気持ちと、母親の友人とその息子との関わり方が非常に現実的で厳しく、読者も苦しくなります。

母親の友人の写真を撮影することがきっかけとなり、彼は再び東京に出ることになります。
そのとき、母親が彼にかけたひと言、これはあなたが読まれてのお楽しみにとっておきましょう。(^_-)-☆
読者にもよい展開となる予感を抱かせます。

第二篇目からは、彼をめぐる人々が各篇で主人公となった連作長編です。
これ以降、立花浩樹が脇役となるのが、この作品の特徴です。
それぞれの登場人物の「現実の厳しさ」がこれでもかというくらいに連打されます。

目黒区の『ナカメシェアハウス』(同書、96頁)に住むことになった彼と住人たちの関わりは、必然性ともいえるでしょう。
第二篇目では、立花浩樹の母親の友人の息子のシビアな結婚生活が描かれています。
第三篇目では、美容のスペシャリストを目指している女性に、作者は容赦なく厳しい現実を突きつけます。
この二篇で、厳しい現実の中において彼らが獲得してきた職業的特性を、写真家である立花浩樹を中心にして活かされていくのです。
この過程がぐいぐいと読者を引きつけてくれます。

第四篇目は、希望する結婚を目指すために、立花浩樹から写真を撮ってもらった女性のおかれた現実と海外旅行での甘い夢が愛おしくなります。
第五篇目は、大学で立花浩樹と同じ探検部に所属していた仲間だった男性の郷愁が切なく描かれています。
第六篇目で、大学の元仲間の男性は愛犬と共に、立花浩樹と野外活動で大活躍します。
ここまでで、人生の再生には人とのつながりが必ず必要であることと、人生の折返し地点に立ってからは、激変し続けている現代において、これまで生きて来た時代の価値感の共有が特に必要なのだと作者が描いていると、凛は考えました。

そして、第七篇目は、立花浩樹が再び登場しますが、一体彼はどのような行動をとるのでしょうか。
最後に、第一篇の母親からのひと言からの呼応として、素敵な言葉が描かれています。
これもあなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。(^_-)-☆

作者の伊吹有喜氏は、2008年、永島順子の筆名で応募した小説「夏の終わりのトラヴィアータ」で第3回ポプラ社小説大賞特別賞☆彡を受賞されました。
2009年、筆名とタイトルを改めて、小説家デビューされました。
この作品は、伊吹有喜として『風待ちのひと』(ポプラ社、2009年、のちポプラ文庫、2011年)で刊行されています。

2010年、小説『四十九日のレシピ』(ポプラ社、2010年、のちポプラ文庫、2011年)では、2011年にNHKBSプレミアムでドラマ化がされています。
主演は、和久井映見さんです。
また、同作品は2013年には映画化もされて、タナダユキ監督で、主演は永作博美さんです。

伊吹氏の作品は、各文学賞の候補となっています。
2014年、小説『ミッドナイト・バス』(文藝春秋、2014年、のち文春文庫、2016年)が、第27回山本周五郎賞の候補、並びに第151回直木三十五賞の候補となっています。
そして、2018年に映画化されており、竹下昌男監督で、主演は原田泰造さんです。

2017年、小説『彼方の友へ』(実業之日本社、2017年)で、第158回直木三十五賞の候補、並びに第39回吉川英治文学新人賞の候補となっています。

2020年、小説『雲を紡ぐ』(文藝春秋、2020年)で、第163回直木三十五賞の候補となりました。

さらに、小説『カンパニー』(新潮社、2017年、のち新潮文庫、2019年)は、2018年に宝塚歌劇団月組公演で舞台化されました。
この作品は、2021年の1月から、NHKBSプレミアムドラマで、主演が井ノ原快彦主演でドラマ化される予定です。
以上のことから、伊吹氏は大変ご活躍されている実力のある作家であることがわかります。

文庫本の解説は、北上次郎氏です。
他に、目黒考二・群一郎・藤代三郎などの筆名で、私小説、文芸評論、競馬評論などで精力的にご活躍されていらっしゃいます。
2001年に、本の雑誌社を、椎名誠氏らと設立され、初期には群ようこ氏一人が社員でした。

文庫本の解説では、さすがに大御所の書評家らしく、伊吹氏の著作リストを挙げて、番号をうって整理されていらっしゃいます。
各作品をわかりやすく解説されて、最後に共通点をきちんとまとめてあるので、凛はさすがだなと感心いたしました。
北上氏の解説も是非お楽しみに~ (^o^)

バブル期を若い青年期に体験した40代の主人公はじめとする登場人物たちの現実の姿を、等身大として描いているからこそ、多くの読者に共感を得ているのだと凛は考えます。
若さもありますが、これから老いについても考えていかなければならない年代であります。
社会の現役世代として活躍を期待される彼らに、作者は寄り添っています。

また、作者はバブル期に流行したトレンドを上手く登場させており、その共感性がもうひとつの柱となっているとも凛は考えました。

仕事、離職、結婚、離婚、家族、介護、老後、借金、住宅、転落、恋愛、友情、そして、郷愁。
これらの問題を体験して、それぞれに過去を清算していく40代の再生の物語です。

読後感はすっきりとして、あなたも一歩前進したくなりますよ!\(^o^)/
爽快感が体験できます。
伸びしろが大いに期待できる伊吹有喜氏、これからも注目したい作家の一人です。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

☆☆☆2021.1.15追加☆☆☆
追加情報で~す!
この作品は映画化されます!\(^o^)/
全国の4カ所でロケです。
監督は、柴山健次氏で、脚本も担当されます。
詳細は、こちらです!
Zipang
今年の秋以降の上映予定です。
お楽しみに~(^o^)
☆☆☆追加はここまで☆☆☆

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2020年11月27日金曜日

「家で暮らす」ということ ~長嶋有『三の隣は五号室』(中央公論新社、2016年、のち中公文庫、2019年)~

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
と共にどうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

大変ご無沙汰いたしております。
お久しぶりでございま~す。

凛のりんりんらいぶらり~をお休みしておりました。m(_ _)m
凛は今年の4月にブログのりんりんらいぶらり~をたちあげまして、おかげさまで第20弾まで続けてまいりました。
ここ最近、私的なことで忙しくなり、りんりんらいぶらり~はしばらくお休みさせていただいておりました。まことに申し訳ございません。
その期間も多くの方々にご閲覧に訪れていただき、誠に感謝しております。
ありがとうございます。m(_ _)m

おかげさまでしっかり充電させていただきました。
凛も風邪などもひかず、元気ですよ~ 
今後は極力休まず続けていけるように努力いたしたいと思っています。
これからも凛をよろしくお願いいたします。(^o^)

季節は移ろいまして、晩秋から冬を迎えるようになりました。
11月も下旬です。
今年もあと1ヵ月と数日になりました。
時間の経つのは早く、あっという間ですね~ (^-^;

これから街中が忙しくなりますので、どうしても気ぜわしくなりますよね。
新型コロナウィルスの感染者も増えているようです。
体調管理にはくれぐれも注意していかなければと思っています。

あなたはお引越しの経験がおありですか。
凛は数回ありますよ~
中には生まれてからずっと同じ家にお住まいの方もいらっしゃるでしょう。
引越しの有無、賃貸住宅や分譲住宅、戸建てやマンションなどに関係なく、屋内で過ごすことは同じですよね。

今年は新型コロナウィルスの関係で自粛を求められ、お家で過ごす時間が増えた方も多いのではないでしょうか。
「家で暮らす」ということは、起きてから寝るまでのあらゆる場面を「家屋」という形状の中で生活をすることであり、連続して続きます。
それが生きていくことであると凛は考えます。

それは、同居するご家族がいる、いないにせよ、同じです。
つまり、人が屋根の下で過ごすことですね。
その連続性が「家で暮らす」ということであり、「生きていくこと」であります。

「いえ、私は食事はほとんど外で済ませていますので、帰宅したらあとは寝るだけですから、暮らすなどというほどの大げさなことではないんですよ~」
「家屋といってもワンルームマンションなので、部屋が狭いですし~」
という方もいらっしゃることでしょう。
しかし、例え寝るだけのために帰宅しても、家の中での細かい家事は必ずありますし、お部屋の面積などにも関係なく、屋内でやらなければならないことは多々あります。

あなたはお家の中で気になることがありませんか。
凛にはたくさんあります。
具体的に、家の中で暮らすことで気になる点を挙げてみましょう。

水道の蛇口のレバーがゆるくなって使いづらくなってきた。
エアコンの室外機の音が大きくなってきたので、ご近所の迷惑にならないか気になる。
台所の換気扇の汚れが気になる。

電気製品を一度に使い過ぎて、ブレイカーが落ちて停電にならないかと気にする。
大雨の時、屋根や出窓に雨粒が当たる音が気になって落ち着かない。
ドアの開閉時にきしみ音が出てきたので気になっている。

お隣や階上の住人の生活音が気になる。
風呂場のシャワーの出方が気になる。
大型車が通る度に窓ガラスのビリビリと響く音が気になる。

家電品を設置する時、延長コードを使ったほうがよいかどうか迷う。
フローリングの床につけた傷が気になる。
障子や襖の破れが気になっている。

断捨離を考えているが、押入の収納方法が気になって仕方がない。
効率的な動線ではないので疲れやすいのか、間取りがいつも気になっている。
電球の取り換えをしたいけれども面倒だ。

和室の畳のへこみが気になっている。
いつも転びそうになる場所がある。
今後のことを考えてリフォームをしたい気持ちはあるけれど、迷っているところである。

などなど、数えきれないほど気になることが出てくるものですね。(^-^;

今回は、「家で暮らす」ということをテーマにした小説をご紹介いたしましょう。
長嶋有氏の小説『三の隣は五号室』(中公文庫、2019年)です。
2016年、中央公論新社から単行本として刊行されています。
2016年、第52回谷崎潤一郎賞☆彡受賞作品です。

この小説は、賃貸アパート、第一藤岡荘の五号室に、半世紀の間に居住した初代から十三代までの各々の時代の住人たちと家屋や部屋や生活用品などとの関わりが描かれています。
五号室に焦点を充て、その部屋で暮らす人々の生活の様子が断片的に読者に伝わるように構成されています。

第一藤岡荘五号室は、二階建てアパートの二階の真ん中にあります。
一階は二部屋ですが、二階は三部屋となっています。

五号室の間取りは少し変わっているようです。
玄関のところに「玄関の間」があり、六畳と四畳半の和室、各和室には一間と半間の押入があります。
あとは台所、風呂、トイレがあります。
奥の六畳の和室には窓がついています。
玄関から入って、最も奥の六畳の和室に行くための動線が四通りあるのが、変わった間取りとして扱われています。

凛が持っている2019年12月刊行の文庫本の初版の帯には、「アパート小説の金字塔!」と紹介されています。
これまで人と人との関わりを描いた小説がほとんどの中において、「家で暮らす」ことに対する着眼点が異色といってよい小説でしょう。

長嶋有氏の着眼点が異色な点について、凛は三点、興味をもちました。

一点目は、第一藤岡荘五号室の半世紀にわたる歴代の住人の名前が数字で表されているので、読者に居住者の順番がわかりやすいことです。
しかも各居住者の居住年も示されているので、時代がわかり、内容が理解しやすくなっています。

居住者の初代は、藤岡一平(1966年~1970年居住)で、両親がこの第一藤岡荘の持ち主です。
二代目は、二瓶敏雄・文子夫妻(1970年~1982年居住)のご夫婦で、翌年、長男の瑛太が誕生します。瑛太はこの部屋で育ち、最も長く居住しました。
三代目は、三輪蜜人(1982年~1983年居住)。
・(省略)
九代目は、九重久美子(1995年~1999年居住)で、彼女が出た後で、リフォームされます。
十代目は、十畑保(1999年~2003年居住)はリフォーム後に居住しました。
・(省略)
最後の住人である十三代目は、諸木十三(2012年~2016年居住)です。

まるで半世紀分の年表が作成できそうです。(^-^)
凛は居住者たちの名前と居住年をメモをとりながら読みました。
決して居住者の名前及び居住年の順番に出てくるわけではありませんので、メモをとったり、付箋紙を貼りながら読むと理解しやすくなるかと思います。

居住者たちは、学生、夫婦、社会人、無職、職業不詳、外国人留学生など様々で、中には亡くなった方も数名います。

二点目は、文庫本の目次が最初に構成されていないことです。
文庫本では、本文はいきなり第一話から始まります。
第二話の最初に作品名と作者名を紹介した「扉」があり、第一藤岡荘五号室の「間取り図」の次に「目次」が入っています。

一般的には本編に入る前に目次などが構成されていますが、この作品では第一話が終わってから、第二話の前にこれらが挿入されています。
非常に珍しい構成ですね~
作品は全十話で構成されています。

三点目は、第一藤岡荘五号室に居住者が残した跡と、その後の居住者との見えない関わり方が楽しめたことです。
例を挙げますと、第六話の「ザ・テレビジョン!」(文庫本初版、113頁~138頁)のテレビとアンテナについてです。
作品は半世紀にわたっての話ですから、テレビの技術が進むにつれ、テレビやアンテナ線も変わっていきます。

初代の藤岡一平(1966年~1970年居住)は、アンテナ内臓の10インチの白黒ポータブルテレビを奥の六畳間で視聴します。
二代目の二瓶敏雄・文子夫妻(1970年~1982年居住)は、14インチダイヤル式テレビを六畳間で視聴します。
三代目の三輪蜜人(1982年~1983年居住)は、奥の間の六畳に引き込まれていたアンテナ線の銅線にケーブルを足して延長して、14インチのテレビとビデオデッキで映画放送を録画して、台所で視聴します。
四代目の四元志郎(1983年~1984年居住)は、アンテナ線を奥の六畳間に戻して、18インチテレビをリモコンで視聴します。

このように居住者各人の暮らし方や好みもありますが、時代とともにテレビ設置もそれぞれに変遷します。
加えて、その当時のテレビ番組も紹介されていますので、昭和から平成のテレビ番組史ともいえる一面があります。
このあたりがさすがにサブカルチャーの長嶋有氏ですね~

地デジ対応のアンテナ工事がされないままの物件となった第一藤岡荘の最後の住人である諸木十三(2012年~2016年居住)がどんなテレビで視聴したのかは、あなたが読まれてからのお楽しみにとっておきましょう。

文庫本の解説は、作家の村田沙耶香氏です。
村田氏は、『コンビニ人間』(文藝春秋、2016年、のち文春文庫、2018年)で2016年、第155回芥川龍之介賞☆彡☆彡を受賞されました。
彼女の解説文は、ご自身が納得しながら読者にわかりやすく表現されていますので、是非お楽しみに!(^o^)

作者の長嶋有氏は、2001年、小説「サイドカーに犬」(『文學界』2001年6月号〔文藝春秋〕)で第92回文學界新人賞☆彡を受賞後、作家デビューされました。
この作品は、第125回芥川龍之介賞の候補となっています。

翌2002年の小説「猛スピードで母は」(『文學界』2001年11月号〔文藝春秋〕で、2002年、第126回芥川龍之介賞☆彡☆彡を受賞されました。
この二作品は『猛スピードで母は』(文藝春秋、2002年、のち文春文庫、2005年)として刊行されています。

小説『夕子ちゃんの近道』(新潮社、2006年、のち講談社文庫、2009年)は、2007年、第1回大江健三郎賞☆彡の受賞作品です。
文庫本の解説は、1994年にノーベル文学賞☆彡☆彡☆彡を受賞された大江健三郎氏が担当されています。

長嶋氏の小説には映画化された作品もあります。
先に挙げた『サイドカーに犬』は2007年、根岸吉太郎氏監督作品で、竹内結子さん主演です。
また、2008年、『ジャージの二人』(集英社、2003年、のち集英社文庫、2007年)は、中村義洋氏監督作品、堺雅人さんと鮎川誠さん主演の映画で、父親と息子の役が評判となりました。

さらに、長嶋有氏は、ブルボン小林氏として漫画評論活動もされており、また俳人としても幅広くご活躍されています。

「家で暮らす」ことは、決して間取りの問題だけではありません。
台所のガス管のホース、ベランダに設置しているエアコンの室外機の位置、タンスの置き場所、シンクの下の整理、トイレの掃除、風呂の水漏れなどというように、物や建具などに細かな愛着を持つことでもありますね。
賃貸住宅の場合は、人が住んでいた痕跡を見つけると、居住者の直前に住んでいた「幻の人」として意識しますが、実は案外それ以前の居住者のことでもあったりして、長嶋有氏の繊細な視点に納得させられました。

凛は、この作品は、電気・ガス・水道のライフラインに携わる方の他、不動産業、建築や設備などの関係の方、引越し業者、ホームセンターに関わる方、そして家電に関わる方などにもおすすめしたいですね。
「住まうこと」に対して、半世紀に及ぶ技術革新が人々の暮らし方に大変影響を及ぼしていく様子がわかりました。

「家で暮らす」ということは、すなわち生活することに直結しています。
天井や壁、柱、また生活用品などの物との関わりについても、ひとつひとつに愛着を持って大切にしていきたいなと思いました。
それらの積み重ねが人生をつかさどっていくものなのだなと凛は考えました。
時代による生活スタイルの変遷も楽しめますよ~

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2019/12/19長嶋有(著)
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2020年10月20日火曜日

京都の絶品!究極のグルメ小説です

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

秋も深まってまいりましたね。
暑かった夏も過ぎ去り、温かさを求めたくなる季節になりました。
過ごしやくなった秋を満喫したいですね。
勉強、スポーツ、旅行、映画、美術、音楽、書道、もちろん読書、そしてグルメ!
あなたはこの秋に何に夢中になりたいですか。

実りの秋です。
美味しい食べ物がたくさんあなたを待っています。
凛も秋になると、ますます美味しい食べ物をいただきたくなりま~す!(^-^;

今年は新型コロナウィルスの関係で、ホテル、街のレストランや食堂、専門店など多くの外食産業の営業に多大な影響が及びました。
中には老舗の有名店が閉店となった事態も報じられています。
Go To イートなどの政策も行なわれております。
これまでの外食の概念が変わってきそうな感じもいたします。

自粛やリモートワーク、オンライン授業などにより、ご自宅で調理する機会が増えた方も大勢いらっしゃるでしょう。
あなたはお料理に興味がありますか。
凛は最近、炊飯器を新しく買い換えました。
只今美味しいお米の炊き方を研究中です。
自宅で調理して食事を摂るのは生活の上で基本であろうと思います。

しかし、何と言ってもプロの料理人の手による味を堪能するのは気分が違いますよね。
またはお仕事で外食をご利用されたり、お昼ご飯をお店でいただいたりする方も多いでしょう。
或いは夕飯をお店でお酒と共に楽しんだり、なじみのお店を予約したり、ガイドブックで美味しそうなお店を探したりする方もいらっしゃることでしょう。

ぶらりと歩きながら、一度も利用したことがなかったけれど、雰囲気がよさそうなお店だなと外から眺めて、思い切って「えいっ!」と気合を入れてお店のドアを開けて入ることもあるでしょう。
「いらっしゃいませ!」
ワクワク!これから新しい世界を体験するという期待感がありますよね!

それから旅に出て、ホテルや旅館はもとより、地元のお店で解放感に浸りながら、地元の食材を堪能するのは最高の贅沢ですね!

自炊と異なり、外食は、立地、看板、店構え、店内の雰囲気、価格、味、食材、食器類、人材、接客など、いくつもの要素をクリアして、そのお店とご縁をもつことの不思議さがあります。
お気に入りとなれば、リピーターとなって何度も足を運ぶことになるでしょう。
それにはやはりお料理の味が最も重要ではないかと凛は思います。
ご家庭では絶対に創り出せないプロのレシピがあってこその外食の楽しみでありましょう。

食欲の秋でもあることですし、美味しいグルメ小説を読んで楽しみたい!
凛はそのようなことを考えながら、近所の書店の新刊文庫本の棚で出合った本が今回のグルメ小説です。

柏井壽(かしわい ひさし)氏の短編集『祇園白川 小堀商店 いのちのレシピ』(新潮文庫、2020年)です。
この作品は、全部で六話で構成されています。
このうちの第二話から第五話までは、新潮社刊行の文芸誌『yomyom』vol.56(2019年6月号)~vol.58(2019年12月号)に連載されています。
第一話は、同社刊行の文芸誌『小説新潮』2019年3月号に掲載された短編1篇です。
第六話は、書き下ろし作品です。
単行本の刊行はなくて、文庫本の刊行となっています。

凛が書店で手にした2020年9月発行の文庫本初版の帯には、今やメディアで大活躍の放送作家、小山薫堂氏の推薦の言葉が掲載されています。
「京都通も唸る絶品のグルメ小説!(以下、省略)」(同書)とあり、なるほど京都が舞台のグルメに関する小説だということがわかります。
いやはや、これはプロの料理人にまつわる物語が読める期待感が大です!

文庫本の裏表紙の紹介文では、「絶品グルメ小説集」(同書)と書いてあります。
帯の裏には、「小堀商店が集めた、唯一無二のメニュー(以下、省略)」(同書)と書いてあります。
「京都」「祇園」「絶品グルメ」とまさに美味を追求するキーワードが連なって、これは面白い小説に違いないぞと思い、書店のレジに向かった凛でした。

先にご紹介いたしましたように、この作品は全六話から構成されています。
帯の裏表紙にメニューが紹介されています。
「うどんカレー」「鯖飯茶漬け」「明石焼」「まる(すっぽん)蕎麦」「もみじ揚げ」「南蛮利久鍋」(同書)

どうやら家庭ではなかなかできそうにないプロのメニューで、メニューを見ただけでも美味しそう!
これらのメニューを見ただけで「美味しそうだな!食べてみたいな!」とつぶやく凛でした。

読み始めますと、第一話が花街(かがい)の芸妓さんの京都弁で始まりますので、気分はすぐに京都への旅人になります。
芸妓さんのふく梅さんの言葉がとても柔らかくて、はんなりとした気分にさせてくれますよ。
京都の春から冬までを舞台に、四季折々の芸妓さんのしきたりなどについての説明もあります。
お料理を享受する側の目線だけでなく、プロの料理人の視点に立って描かれており、その世界の厳しさが綴られています。

「小堀商店」というのは、様々な事情を抱える料理人たちから、後世に遺したい遺産としてひとつのレシピを買い取るというシステムを掲げている非営利の組織です。
メンバーは、「洛陽百貨店」の元経営者である小堀善次郎がボスとなり、彼の元部下であり、現在は京都市役所の「なんでも相談室」に勤務する木原裕二、宮川町の芸妓さんのふく梅、「和食ZEN」の料理人である森下淳の三人で運営を担っています。
加えて、「和食ZEN」のスタッフの山下理恵が準構成員となっています。

料理店を営むには相当なエネルギーが必要なものなのですね。
今年は自粛もあって、新型コロナウィルスで外食に携わる方々の悩める問題が大きくクローズアップされました。

プロの料理人の方々には日頃から営業継続を疎外する様々な要因が伴います。
この要因とは、交通事故、病気、店舗の移転問題、後継者問題に加えて、昨今のグルメ通やメディアの取り上げ方に対する店主の考え方の違いや、次世代に愛されるため新メニューを考慮したい老舗旅館などの諸難問です。
各篇の中で、それぞれの難問が彼らの前に大きくたちはだかります。

さらに、小堀善次郎の百貨店時代における全国の物産展にまつわる事件が絡む話も出てきます。
高級店や老舗店だけではなく、低価格の大衆食堂も登場し、美味しいとお客さんに評判の人気店ばかりです。
凛は、どのお店にも行って食べてみたい!と強く思いました。

小堀善次郎を中心とするメンバーで、これらの悩める料理人たちの話を聞き、レシピを買い取るのですが、その前に料理人たちはメンバーの前で調理をしなければなりません。
彼ら全員から「美味しい!」という満足感と、遺産として充分価値のあるレシピであるというお墨付きを得なければ、レシピ買取の契約は成立しません。

決定を下すのは小堀善次郎です。
まるで大岡裁きのようであり、実に「お見事!」という判定には唸らせてくれます。
人生を賭けた難問を前にして、料理人たちと「小堀商店」のメンバーとの対峙する場面の緊張感が読者にぴりぴりと伝わります。

様々なメニューのレシピについて、非常に細かく説明がされています。
読んでいて、明らかに家庭料理とは一線を画していると思われますが、美味しい秘訣が随所に込められていますので、お料理にご興味のある方には参考になる部分も大いにあるでしょう。

言えることは、プロの美味しいお料理には下準備に余念なく手も心もこめられており、料理に対する愛情が非常に繊細であるということです。
お店に足を運んで、「美味しい!」と思ってお金を出して喜んで食べてくださるお客様のお顔を思って、料理に愛情を注ぐプロの料理人たちのレシピを遺して欲しいと願わずにはいられません。(^-^)

作者の柏井壽氏は、京都市内で歯科医院を営んでいらっしゃる傍ら、小説やエッセイも執筆されています。
文庫の巻末の澤木政輝(さわき まさてる)氏(毎日新聞記者、京都芸術大学非常勤講師)の解説によりますと、柏井氏の小説には実在する名店が登場することもあるし、または仮名の場合もあると説明されています。

柏井氏は、桂木圭一郎(かつらぎ けいいちろう)のペンネームでも小説を執筆されています。
『名探偵・星井裕の事件簿』はシリーズ化されており、『京都大文字送り火 恩讐の殺意』(小学館文庫、2008年)をはじめとするミステリー小説が多く刊行されています。

また、本名である柏井壽(かしわい ひさし)の名義では、エッセイやガイド本を執筆されており、京都の観光案内に寄与されています。
『京都の通りを歩いて愉しむ〈通〉が愛する美味・路地・古刹まで』(PHP新書、2019年)など多く刊行されており、京都のカリスマ的案内人としてご活躍されています。
柏井壽名義での小説『鴨川食堂』(小学館、2014年、小学館文庫、2015年)シリーズ化されています。

「小堀商店」については、前作の短編集『祇園白川 小堀商店 レシピ買います』(新潮文庫、2018年)も合わせて読みたいですね。
とびきりのレシピに、あなたも読者審査員となって対峙するのも楽しいでしょう。

読了後は、帯の小山薫堂氏の推薦の言葉が納得できます。
きっとあなたも「うどんカレー」と「カレーうどん」の違いがわかるようになりますよ。

それにしても、芸妓さんのふく梅さんの実に細やかな心遣いには感服いたします。
ふく梅さんはきっとお着物が似あって所作も優雅で、お綺麗なのでしょうね。
凛もふく梅さんにお会いしたくなりました。(^o^)
一見さんは無理なのでしょうけれど。

凛も京都を旅して、はんなりとした味、上品な味を堪能してみたくなりました。
それから、京都から近場の旅の他に、佐賀県唐津市までの旅もあり、観光案内もしっかりと込められてますよ。
グルメに、旅、京都案内も合わせて、究極の絶品!グルメ小説を、秋の夜長にあなたも楽しまれてはいかがでしょう。

今夜も凛からのおすすめの一冊でした。(^-^)

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2020年10月8日木曜日

名作と医療小説が同時に楽しめます

こんばんは。
南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださいましてありがとうございます。
と共にどうぞおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

秋も深まってきましたね。
朝晩はだいぶ涼しくなってきました。
あなたはお風邪などひかれていらっしゃいませんか。

今年は新型コロナウィルスの影響で、例年よりもさらに健康に留意されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
入店時などアルコール消毒や体温チェックをする機会も随分増えました。
相変わらずマスクは必需品です。
普段の暮らし方も昨年とは様変わりしましたね。

あなたも日常的に健康に気をつけていらっしゃることでしょう。
学校や職場での健康診断や人間ドックなどで判明した数値とにらめっこしながら、気をつけるべき点をかかりつけ医とご相談されていらっしゃいませんか。

まずは毎日の食事の面から、栄養を考えることは必須でしょう。
また、サプリメントをとりいれたり、運動などで日頃から健康を意識していらっしゃることでしょう。
次に、気持ちを明るくして、ポジティブに考えることも必要です。
さらに、計算をしたり、記憶力を高めるための努力も求められましょう。

しかし、いくら健康に気をつけてはいても、様々な病に罹患することがあります。
伝染性の疾患だけでなく、日々の暮らし方による生活習慣病もありますし、遺伝的な要素を含めての病気もありましょう。
意図しない癌などがそろりそろりと知らないうちにしのびよってくることもあります。
或いは、不慮の事故などによる怪我もあります。
目や歯科の検査や治療も大事ですね。

加えて、高齢化社会が進んでいる社会では、認知症などの問題もあります。
ご自分の健康だけでなく、近年は高齢者の介護も深刻です。
介護難民や介護離職、老々介護なども社会問題化しています。
若い世代の人口減により、高齢者を支えていく社会において考えるべき課題が多々あります。
我が身が高齢になってどこでどのように過ごすのか、日頃から考えておかないといけないとは頭の中で理解はしていても、なかなか簡単には結論を出せずに迷いが生じて、逡巡しながら時だけが経っていくようにも思えます。
これらの問題のひとつひとつをクリアすることが、安心して暮らせる社会をつくることになります。
なかなか難しいものですね。

実際に医療従事者の視点ではどう考えていらっしゃるのでしょうか。
現実に日々患者さんやそのご家族とどのように応対されていらっしゃるのでしょう。
果たして、医者としての本音は?
医者個人としての考え方と、病院という組織や、医学界という大きな枠組みの中での考え方には違いがあるのでしょうか。
などと凛はしばしば疑問に思うのですが、あなたはいかがでしょうか?

このような深刻になりがちな医療の諸問題を、医者の観点から描いた医療小説があります。
今回、凛がおすすめするのは、一般的な医療小説ではなく、有名な文学作品をパロディ化した小説で、基になる文学作品と二重に楽しめる作品です。
久坂部羊(くさかべ よう)氏の短編小説集『カネと共に去りぬ』(新潮文庫、2020年)です。
この作品は、2017年に新潮社より単行本として刊行されています。

まずは表題の『カネと共に去りぬ』には、1939年に公開されたアメリカ映画の『風と共に去りぬ』(ヴィクター・フレミング監督)をすぐに思い浮かべる方がほとんどでしょう。
映画は日本では1952年に公開されました。
原作は、マーガレット・ミッチェル氏の長編小説で、1936年に出版され、翌年の1937年にピューリッツァー賞小説部門の受賞☆彡☆彡☆となっています。

最近、よく利用するようになった老舗書店の文庫本新刊の棚でこの文庫本を発見したとき、凛は思わず微笑んでしまいました。(^-^)

その理由は、表紙に興味をひかれたからです。
2020年8月に刊行された文庫版初版のカバー装画は浅賀行雄氏のものです。
表紙が映画のポスターのようになっています。

表紙は、レッド・バトラーに似たようなご高齢の男性が、ケイティ・スカーレット・オハラに似たような深紅のドレスをまとったご高齢の女性を抱えている絵です。
表紙の下の方には、「列戸馬虎」「小原紅子」の他に、「入楠明日礼」「入楠女良」「玉井安子」と書かれてあります。
「原作 久坂部羊」で、「配給 新潮文庫」と書いてあります。
まさに映画のポスターのようで、小説のファンのみならず、映画ファンにもなじみやすいように工夫を凝らしてあるのがわかります。

また、帯の表には「劇薬医療エンターテインメント!」と凛のアンテナをピピピと刺激してくれる紹介がなされていましたので、そのまま書店のレジに直行いたしました。

この短編集には、7編の短編小説が収められています。
「医呆人」
「地下室のカルテ」
「予告された安楽死の記録」
「アルジャーノンにギロチンを」
「吾輩はイヌである」
「変心」
「カネと共に去りぬ」
以上の7篇です。

この中で、あなたはいくつの名作がおわかりになられましたか。
文庫本の最後に、書評家の大矢博子氏の解説が掲載されています。
その解説の中にも、各短編の元になった名作の7人の作家の名前が紹介されていますので、ご一読ください。

凛がこの短編集を読んで、久坂部羊氏という作家の、医療と文学に対して真摯に向き合っている姿勢に感心した点が二点あります。

第一は、医療の点です。
凛は、どの短編にも「あらまあ、なるほどそうだったのか!」と医者の本音が率直に描かれていることに感心しました。
もちろん医療従事者としての久坂部氏個人のお考えであって、全ての医者がこのように考えていることではないと考えられます。
しかしながら、社会では本音と建て前がある中で、患者の生命に対する尊厳というものが大前提にありますから、医療現場ではなかなか聞くことができない話でしょう。

第一篇目の「医呆人」は、1942年に刊行されたアルベール・カミュ氏の『異邦人』(窪田啓作訳、新潮社、1951年のち新潮文庫、1954年、改版、2014年他多数)が元になっています。
亡くなられた患者の真万(ママン)さんの死について、主人公の村荘(むらそう)医師はご遺族の息子さんに向けて、真万さんの死を肯定する言葉を放ちます。
上司である外科部長や医長が激怒するのは当然でしょうね。
それは、今後の病院運営が絡むことが理由で、医師の評価や出世、世間の評判、ご遺族からの訴訟など複雑な問題が根底に流れています。
しかし、村荘医師は彼らにも実にそっけない態度を貫きます。

ここでは村荘医師の医者としての本音と、上司たちの建て前との対比がよく描かれています。
医師が患者に寄り添うこと、患者とご家族の立場を理解すること、患者が苦しまないこと、患者やご家族の不安を払拭すること、検査と治療を繰り返すことなどについての課題が挙げられています。
それらの課題に対して、医師としての久坂部氏の意思が反映されているものであると、凛は考えます。

1957年にノーベル文学賞を受賞☆彡☆彡☆彡されたカミュ氏の不条理小説と呼ばれる代表的な小説『異邦人』のムラソーと同様に、この村荘医師は周囲に対して常に温もりに欠ける態度をとります。
そして、ショッキングな結末を読者に提供します。

第二に、文学に対する視点です。
凛は、これらの7篇の短編が、各文学作品ごとに原作を重視して、描き方もそれぞれに細部にわたり変えていることで、七つの違う小説として充分楽しむことができました。

例を挙げますと、第5篇目の「吾輩はイヌである」は、夏目漱石氏の長編小説『吾輩は猫である』が基盤になっていることはおわかりの方も多いことと思います。
この作品は、夏目漱石氏にとって処女小説であり、俳句雑誌の『ホトトギス』に、1905年(明治38年)の1月から翌年の8月まで連載されました。
のち1905年、夏目金之助『吾輩ハ猫デアル』上巻が大倉書店より刊行され、1906年に同書店から中巻、1907年に同書店から下巻だけでなく、他多数刊行されています。

久坂部氏の「吾輩はイヌである」のほうですが、ビーグル犬の「マダナイ」(文庫版、198頁他)という名前が主人公になっています。
書きだしが夏目の小説と非常によく似ています。
そして、夏目氏の猫のほうの小説が第十一話で終わるのと同様に、久坂部氏のイヌの小説も十一で終わっています。

ビーグル犬の「マダナイ」は動物実験用として生を受けています。
大学病院の循環器内科の医局に売られてきて、収容施設で同じビーグル犬の先輩から自分たち実験用動物の行く末を教えられます。

「マダナイ」は「幸運の星」(同書、205頁)と呼ばれ、新しいゲージに移されて、何やら怪しげな実験を受けるのです。
「マダナイ」は実験で具合が悪くなっても、治すのが目的なのだからと希望をもち続けています。
この研究室に出入りする医師たちの名前も非常にユニークです。

そして、彼らの日頃の会話から垣間見える医療現場の実態について、「マダナイ」はゲージの中で見聞きし、理解していきます。
ある時は彼らに共感し、またある時は彼らの関係生を皮肉に思いながら、「マダナイ」は医学界における様々な側面に対して冷静に受け止めていきます。

最後の十一では、、
凛はこれが実に切なくなって、胸にジーンときてしまいました。

作者の久坂部羊氏は、医者であり、作家です。
外科医、麻酔科医を経て、外務省に入省、在外公館で医務官を務められました。
のちに作家になられ、2014年、長編小説『悪医』(朝日新聞出版、2013年、朝日文庫、2017年)で、第3回日本医療小説大賞を受賞☆彡されました。
医師として務めながら、多くの小説を創作されていらっしゃいます。
長編小説『神の手』(上・下)(日本放送出版協会、2010年、幻冬舎文庫、2012年)など、のちに映像化された作品もあります。

久坂部氏は短編集『芥川症』(新潮社、2014年、新潮文庫、2017年)でも文学作品を基にしてパロディ化した医療小説を創作されていらっしゃいます。
医療業界の闇と光を、大衆にわかりやすくそれらの実態を医師としての視点から訴えていらっしゃる姿勢に、文学作品としても決してエピゴーネンではないことがいえましょう。

また、久坂部氏は本名の久家義之氏として、『大使館なんかいらない』(幻冬舎、2001年、幻冬舎文庫、2002年)などのエッセイも出版されていらっしゃいます。

誰しも健康を大切にと願うのは同じでしょう。
この短編集を読んで、凛も生命の尊厳とは何かなど、様々なことを考えされられました。
医療小説として、また文学作品として二重に楽しめる短編集です。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(日本語)文庫-2020/7/29久坂部羊(著)
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