2023年2月28日火曜日

やはりお金のことは気になりますよねえ ~原田ひ香『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早いもので2023年も6分の1を過ごしました。
まだまだ寒さがありますが、街では春色のふんわりやさしい色合いのお洋服がディスプレイされています。

日本の春は、卒業・入学・入社・転勤など異動が多い季節です。
別れと出会いを体験することで、あなたを強くさせてくれるかもしれませんね。
これから新しい世界があなたを待っていま~す!\(^o^)/

などと期待感のある中、一方では、確定申告や医療費還付申告など税務署に関わる現実の世界があります。
今年から「インボイス制度」の導入により、事業者の方々には新たな知識と対応が必要となります。
コロナ融資の返済で厳しい環境に置かれ、対策を考えていらっしゃる方々も多いのではないかとお察しいたします。

また、昨年からあらゆる商品の物価の値上げが実施されています。
凛もスーパーにお買い物に行く度に、あれあれ?前回と価格が違うような気がするけど底値はいくらだったかなあ、と商品棚に付いているプライスカードを前にして考えることが増えました。(-_-;)
さらに、電気代やガス代などインフラ関係の値上げにより、生活者として圧迫を受けていらっしゃる方も多い昨今です。

スーパーやコンビニではセルフレジ設置のお店も日に日に増えてきています。
支払方法も現金払いだけではなく、クレジットカード払い、「~PAY」などスマホを用いた電子決済、交通系ICカード払いなどなど、実に様々な支払いのアイテムが増えてきました。

凛はお店で支払う時、お財布から直接現金を出すことが減ってきています。
キャッシュレスの時代が当たり前になってきていることの証でしょうか。
凛は金色の貯金箱を持っていますが、最近は小銭を入れる時に鳴るチャリ~ン♪という音を聞くことが減りましたねえ……。(^-^;
それは実に心地よい音なのですが……。

あなたは日頃お金とどのように向き合っていらっしゃいますか。

今回は、ずばり!お金の使い方をテーマにした小説をご紹介いたします。
原田ひ香(はらだ ひか)氏の連作長編小説『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)です。

この小説の文庫本は、街のあらゆる書店の店頭に並べられていることが多く、大ベストセラーとなっています。
小説を読みながら節約できる、とネットでも話題になっているようです。

凛は大ベストセラーの本は話題になっている時は読まずにいて、後になり少し落ち着いてから読むタイプです。
理由は、流行している時のキラキラしたフィルターを外して、本当に多くの読者に読まれる価値のある本なのかを見定めたいからです。
ですから、この本が書店で平積みされている光景を横目にして、いつも後になってから読もう、と思っておりました。

ところがある日、タイトルが気になって、やはり読んでみようかな、と街の書店で文庫本を購入しました。
読みだしたら頁をめくる手が早くなり、あっという間に読了しました。

凛が持っている文庫本は、2023年1月25日付の第22刷発行です。
文庫本の初版が2021年8月25日ですので、うひゃあ、やはりすごく売れているのがわかりますよね~ (*'▽')

まず、文庫本の帯と表紙からご紹介いたします。
凛の文庫本の第22刷では、縦に幅広い帯で、表表紙側には、「2022年 年間ベストセラー第1位 80万部突破!」と大きく目立つように紹介されています。
民放の東海テレビ・フジテレビ系列の全国ネットでドラマ化されており、主演の葵 わかな(あおい わかな)さんの写真が掲載されています。

帯の裏表紙側には、こちらも大ベストセラー作家の垣谷美雨(かきや みう)氏が「絶賛!」とお言葉を寄せていらっしゃるではありませんか。
「知識が深まり絶対『元』もとれちゃう『節約』家族小説!」と帯の表現にひかれたのか、日頃からお金のことで気になっている凛を呼び寄せたのでした。

表紙には、千円札風の三枚のお札に絵が描かれています。
一番上は、夫婦と女の子が公園で笑顔でいる姿、真ん中には、女性が自宅らしき部屋でティータイムをしている姿が描かれています。
一番下は、キッチンにエプロン姿の女性が二人立ち、高齢者の女性が一人椅子に座っており、テーブルに並べられたたくさんのお料理を前にして三人で楽しく会話をしている様子が描かれています。
このような優しいタッチの絵が描かれた千円札ですと、お財布の中がほっこりしそうな感じがしますね~

カバーイラストは、ながしま ひろみ氏です。
カバーデザインは、田中 久子(たなか ひさこ)氏です。

裏表紙の説明文では、就職して一人暮らしをしている妹の美帆(みほ)の貯金が30万円、結婚している姉・真帆(まほ)の貯金額が600万円、母の智子(ともこ)の貯金が100万円弱、祖母の琴子(ことこ)の貯金は1千万円と具体的に数字で示されており、御厨(みくりや)家の女性陣がどのように今後の人生を歩んでいくのかということが紹介されています。

「お金を貯めて、どう使うのか?」(文庫本、22刷)
この小説はお金に関する指南書なのでしょうか。
なるほど、「読みたい!」と読者の興味をひきますよね。(^○^)
第3話は、「目指せ!貯金一千万!」
第4話は、「費用対効果」
第5話は、「熟年離婚の経済学」
第6話は、「節約家の人々」(以上、同書、3頁) 
目次からも大変興味がそそられますよね。

解説は、作家の垣谷 美雨氏です。
「『他人(ひと)は他人、自分は自分』と、あなたは心の底から割り切れていますか?」(同書、339頁)というタイトルの解説です。
垣谷氏は帯にも登場されていらっしゃいますが、この解説は是非ともおすすめします!(^^)v
垣谷氏の創作に関わる意見も納得のいく文章で描かれていますよ。
垣谷氏のファン必読です! (^o^)

では、内容に入ります。
第1話は、御厨家の次女、美帆の物語です。
彼女は中学生の時に、祖母の琴子から「三千円の使い方」(同書、9頁)をどのようにするのか、それは人生を決めるほどの大きな意味を成す、というアドバイスを受け取ったことを思い出しました。
24歳の彼女は就職して念願の一人暮らしを始めたものの、職場で先輩が退職を余儀なくされる姿を目にして、先々のことを真剣に考えることになります。
ここから御厨家の人々のお金に関しての物語が始まります。

第2話は、祖母の琴子の物語です。
73歳の琴子は1千万円を貯金していますが、老いた先のことを不安に思い、仕事を探そうかと考えます。

第3話では、美帆の姉の真帆が中心となります。
真帆は結婚を機に証券会社を辞めて専業主婦となり、公務員である夫と娘の3歳になる佐帆(さほ)と三人で暮らしています。
彼女は娘の子育てをしながら節約に励み、「プチ稼ぎ」や「ポイ活」(同書、114頁)に勤しんでおりました。
短大時代の友人たちとの女子会での会話から、幸せだと思っていた結婚生活に不安がよぎりました。

第4話では、祖母の琴子と知り合った40代の男性が登場します。
彼は、定職に就かず、自由を求めてバイト生活をしています。
所謂しがらみに束縛されたくないタイプの男性ですが、交際している彼女との今後がどうなりますか……。

第5話は、母親の智子の物語になります。
智子は会社員の夫の妻として、戸建てに住み、夫と二人暮らしで専業主婦を続けていましたが、55歳で手術を終えて退院した時、目の前の家事についてあらためて見つめます。
友人が熟年離婚をすることになり、智子は今後の人生について熟慮することになりました。

最終話では、美穂と交際している男性が背負っている大学時代の奨学金返済の問題から、御厨家の人々は解決策をどのように見出すのかが描かれています。

6話を読んで良かった点として、三点あげます。
一点目は、御厨家の女性たちが主となって、人生のパートナーとの問題、結婚、仕事、暮らし、健康、住宅、老後など様々な問題を抱えて生きており、幅広い年代ですので、彼女たちが直面している問題のどこかに当てはまる点を発見し、共感を得ることです。
二点目として、家計や年金、貯蓄額など具体的な数字で表してありますので、そうなのか、と読者に直接伝わることです。
三点目は、物語に登場する専門家の助言が読者に活かされていくことです。

凛が気づいたのが、御厨家のご主人は常に脇役である、ということですね。
第4話では、祖母の琴子と知り合った男性が登場してきますが、御厨家の智子のご主人として、また真帆と美帆の父親の視点で描かれる章を読みたくなりました。
定年を前にして現役で働いている男性の意見も聞きないなあ、と素直に思った凛です。
合わせて、真帆のご主人、現役公務員としての視点で読みたいな、と思います。

家族の姿はどんどん変化していくものです。
御厨家の数年後の姿の続編も期待したいです。

男性の読者には、女性たちが暮らしそのものや暮らし方について、どのように考えているのか、彼女たちの本音が伝わってくるのではないか、と大いに期待いたします。

作者の原田ひ香氏については、「ラジオはお好き?」(ココ)の項でご紹介しています。
是非ご覧くださいね~ (^o^)

最後に。
全編にわたり、お金を背景にして、登場人物の生き方のどこかに読者の共感を得られる物語です。
お金は人生の目的か、手段なのか。
読者に、人生の主役は何なのかという大切なことをあらためてつきつけます。
「ラジオ小説」でご活躍された原田ひ香氏ならではの伝達の具体性が効果を表している小説である、と凛は考えます。
本当にそうだよね~、と多くの読者に共感を得られる作品であることに納得いたしました。

あなたは三千円をどのように使われますか。
凛は本の購入に充てるでしょうねえ。 (^_-)-☆

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2023年1月28日土曜日

えぐり、えぐられて ~井上荒野『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版、2019年、のち朝日文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「鬼は~外、福は~内」
2月3日は節分ですね。

あなたは節分に豆まきをされますか。
凛は毎年豆まきをしています。
今年も鬼のお面が入った豆を準備していますよ~

「大豆は香ばしくて美味しいなあ」と毎年思っています。
一年経つごとにお口に入れる大豆の数が増えていくことよりも、大豆の美味しさのほうが気になる凛です。(#^^#)
何はともあれ、今年も家内安全、無病息災を願って豆まきをします!

鬼は怖いもの。
凛は極力鬼とは関わり合いたくないですねえ。(>_<)
中には怖いもの見たさで、鬼と出合いたいもいらっしゃるかもしれません。
あなたはいかがですか。

今回は、題名に「鬼」がつく小説をご紹介します。
井上荒野氏の長編小説『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版、2019年、のち朝日文庫、2021年)です。

この作品は、朝日新聞出版の季刊誌『小説トリッパー』の2016年冬号~2018年秋号まで連載された後に単行本化、さらに文庫化されました。
映画化されて2022年11月11日より公開されています。

井上荒野(いのうえ あれの)氏の父親である井上光晴(いのうえ みつはる)氏と、瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)氏得度する前の瀬戸内晴美(せとうち はるみ)氏時代からの不倫関係が基になって創作された小説です。

小説家同士の不倫を、井上光晴氏の妻の視点、瀬戸内氏の視点で描くという形をとっていますが、井上氏の娘である荒野氏の目線で描いているという、幾重にも絡んだ複雑な構造に読者が対峙することになります。

鬼は鬼でも、日本の昔話に出てくるような鬼さんとは違います。
「えーい、悪い子は食ってしまうぞ!」というような鬼さんではありません。
人の心の奥底の誰も踏み入れることのできない深いところに潜んでいるもの……。
ある意味において、最も怖~い鬼ではないでしょうか。ひゃあ……。(-_-;)

凛が持っている文庫本は、2022年5月20日付の第6刷です。
近所の書店で購入しました。

まずは、文庫本の帯と表紙からご紹介いたします。
凛が持っている第6刷では、裾まで長い黒い服をまとった女性が背中をこちらに向けて跪いて、両手をあげて踊るようなポーズをとっている絵になっています。

カバーの装幀は、芥 陽子(あくた ようこ)氏です。
カバーの装画は、Nikoleta Sekulovic氏です。


文庫本の帯の表紙側は、廣木隆一(ひろき りゅういち)監督による映画化の紹介になっています。
出演者の寺島しのぶ(てらしま しのぶ)さん、豊川悦司(とよかわ えつし)さん、広末涼子(ひろすえ りょうこ)さんの三人の顔写真が載っています。

また、瀬戸内寂聴氏からのメッセージ、「作者の父 井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった。」(同帯)と明記されています。
不倫関係は事実だった、と瀬戸内氏ご本人が証言されているのですね。

帯の裏表紙側には、作家・川上弘美(かわかみ ひろみ)氏による文庫本の解説から抜粋されて掲載されています。
「本書は、『井上光晴の妻』『瀬戸内寂聴』という二人の内面のみを描くことを目的にした小説ではない。」(同帯)
読者にとって最も気になる部分をずばり指摘されて、なるほどなあと納得できます。

つまりどういうことかというと、父親と不倫を重ねた女性作家との関係と、二人を見つめる母親の愛憎と葛藤を描くにあたり、作家である井上荒野氏自身と、両親との娘としての視点をどのように絡めて小説に表したのだろうか、という疑問が読者に容赦なく迫ってくるのです。
要するに、小説家であるけれど、実の娘として父親の不倫を描くことは苦しくないのだろうか、と一般読者として凛は率直に思うわけなのですよ。(-_-;)
荒野氏は作家としてどのように乗り越えて作品に仕上げたのでしょう。

帯には川上氏の解説の続きが載っており、「実際の父母とはことなるかれらを描くことは、実際の父母と重なってみえる誰かを描くことよりも、『本物』のかれらを表現することになるのだろうし、(以下、省略)。」(同帯)

文庫本の裏表紙には、「至高の情愛に終わりはあるのか?」と掲載されています。
映画化に伴って最新販売の文庫本の表紙や帯が変わっているようですので何卒ご了承くださいませ。

次に、内容に入ります。
作品は、帯による瀬戸内寂聴氏の言葉で示されているように、実在の作家たちの実際の不倫を基にした愛憎劇です。

井上光晴氏と想定できる白木篤郎(しらき あつろう)という男性と、瀬戸内晴美氏と想定できる長内みはる(おさない みはる)という女性との出会いが「Chaputer1 1966 春」という章に、「みはる」の視点で描かれています。
白木の徳島での講演旅行に随行するみはるの着物姿を、阿波浄瑠璃の二体の人形はどのような面持ちで見下ろしていたのでしょうか。

二人の出逢いには、白木の切り札ともいえる「トランプ」が出てきます。
白木によるみはるの今後の仕事についてのトランプ占いの結果は……。
このときの占いの結果について、当時暮らしていた真二(しんじ)に聞かれたとき、みはるは「本当のことは言わなかった。」(文庫本、21頁)という表現から、明らかにみはるの心は既に決まっていることがわかります。
白木とみはる、二人の関係は長年にわたります。

同じ「Chaputer1 1966 春」には、白木の妻の笙子(しょうこ)の視点で描かれてもいます。
幼稚園に通う海里(かいり)ちゃんの子育て中で、お手伝いのヤエさんも交えながら、作家の妻として家庭を守る主婦を務めています。
この海里ちゃんが後の井上荒野氏になります。
 
笙子には二人目の子どもができ、白木との出会いから結婚に至るまでを振り返っています。
文机で白木の助手を担いながら、創作もします。
作家という目線で、笙子の内面はどのように膨らんでいくのでしょうか。

白木にはみはるとの関係だけではなく、様々な女性たちとの関係が消えては現われます。
それらのことが豪快であるのか、逆に繊細なのかは凛にはわかりませんが、白木という一人の男の生き様が重くもあり、哀しくはかなげな印象すらいたします。

そして、長内みはるは得度して、長内寂光(おさない じゃくこう)になり、誰もが知る著名人となりました。
彼女が得度するに至るには、深い理由がありました。

やがて海里は成長し、小説の新人賞を受賞します。
寂光は優しいまなざしで海里を見つめます。
白木は病に侵されることになりますが……。

文庫本の解説は「訣別」という題名で、川上弘美氏が綴っています。
作家の視点から読者の疑問について、丁寧に解説されていますので、是非お読みくださいね。
同名の映画は凛はまだ観ていませんが、必ず観たいですね~ (^○^)

作者の井上荒野氏については、「昭和歌謡と恋愛模様」(ココ)の項でご紹介していますので、今回は省略させていただきますね。
彼女の作品にふれる度に素晴らしい作家であることを認識させられる凛です。

まとめ。
白木篤郎と長内みはるの不倫から生じた白木の妻の笙子との複雑な関係を、白木の娘の海里が成長して作家・井上荒野として小説に描いていることを読者は認識させられます。
生身をえぐられるほどの鋭利な現実と、長い時間の経過がタテ・ヨコ・ナナメに何重にも絡み合い、終いにはぐるぐると廻ります。
糸が決して緩むことなく、常にピンと張り詰めた状態で「生」を必死で営んでいる登場人物たち。
作中では「生」と隣り合わせである「死」についても言及しています。
荒野氏が編んだリアルとバーチャルの間を、読者は幾度となく往復しながら向き合っていかなければなりません。

読後は何かがふっきれるほどの清々しい晴天になるのか、或いは荒天になるのか、それは読み手であるあなたの受けとめ方次第でありましょう。
「鬼」の底知れぬ恐ろしさを知りたいあなたに、是非読書の醍醐味を味わっていただきたいです。

節分には豆まきをして邪気を払いたいですね~(^O^)/
今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。(^-^)

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2023年1月9日月曜日

ホテルマンと薬剤師が大活躍しますよ! ~塔山 郁『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫、2019年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2023年がスタートしました。
新たな気持ちで臨みますので、今年も凛のりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたしますね。m(_ _)m

あなたはどのような新年を迎えていらっしゃいますか。
凛は特に体調の変化などもなく、変わりなく過ごしています。

この世界には様々な病気が存在しますね。
極力病気とは関わらずにいたいものですが、なかなかそうも言っていられません。
うがい、手洗いなどで予防しているつもりでも、気づかないうちに病に侵されていることもあります。
病気や怪我などは「ある日、突然に」身の周りに起こるということがほとんどではないでしょうか。

あなたは調剤薬局にお世話になったことがおありでしょうか。
調剤薬局には薬剤師の方が働いていらっしゃいます。
或いは、市販薬を販売している薬局にも薬剤師の方がいらっしゃいますね。
中には、生まれてこのかた一度も薬剤師からお薬をいただいたことがありません、という方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方は凛の周囲には皆無ですねえ。(^-^;

日本では、基本的に医薬分業というシステムになっています。
診察後に医者から処方箋をいただき、調剤薬局に処方箋を提出してお薬を受け取ることになっています。
その際、薬剤師から丁寧な説明を受けますよね。
帰り道では安堵感が広がると共に、健康の大切さを痛感することが多い凛です。

あなたは調剤薬局や薬剤師にまつわる話に関心がありますか。
凛が今回おすすめする小説は、主人公のホテルマンの男性が、調剤薬局勤務の薬剤師の女性と共に身近に起きた事件に挑んでいきながら、薬や薬剤師に関する情報も得ていくというミステリー小説です。
日常に起こりそうな事件を通して、ホテルマンの職場の実情と合わせて、薬剤師の活躍を知ることができます。
思わず二人を応援したくなる4篇の謎解きに夢中になれますよ~

塔山 郁(とうやま かおる)氏のミステリー小説『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫、2019年)です。
毒島花織には、「ぶすじま かおり」とルビが書かれています。
この作品は、4篇の中で、第1話と第2話は宝島社から刊行されている雑誌『『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK Vol.21』と同誌のVol.23、2誌とも2018年の初出で、のち改題、第3話と第4話は文庫本書き下ろしとなっています。

凛が持っている文庫本は、2019年8月刊行の第3刷です。
初版が同年5月ですから、ファンが多いことがわかりますね。(^-^)

まずは、文庫本の帯と表紙の紹介からいたします。
第3刷では、オレンジ色の帯の表表紙側に「その薬にはウラがある」と大きな文字で描かれています。
右上の丸い枠の中に、「病院・薬剤師・薬との付き合い方もわかります」なるほど、まるで健康雑誌の棚が合いそうなメッセージですね。
「「このミス」大賞シリーズ累計3100万部突破!」ということは、現在ではさらに増えていることが予想できます。

文庫本の裏表紙の説明文には、ホテルマンの水尾は薬剤師の毒島とともに、「薬にまつわる様々な事件に挑む!」と書かれています。

文庫本の表紙には、毒島花織と思われる白衣姿で、長い髪をひとつにまとめ、黒縁の眼鏡をかけた女性が両手を組んで、とても真剣な顔で立っています。
手には錠剤を包んだPTP包装シートを持っています。
彼女の後ろには、薬品が入っている茶色や灰色の瓶がたくさん並んでいます。

表紙のカバーイラストは、遠藤拓人(えんどう たくと)氏です。
カバーデザインは、鈴木大輔(すずき だいすけ、ソウルデザイン)氏です。

次に、内容に入ります。
第1話に入る前に、短いストーリーがあります。
神楽坂にあるホテル・ミネルヴァに勤務する水尾爽太(みずお そうた)は、昼休みにナポリタンを食べに入った喫茶店「〈風花〉(かぜはな)」(文庫本、7頁)で黒縁眼鏡の女性を初めて見ます。
二人の女性が会話していますが、黒縁眼鏡の女性が突然会話に割り込んできて……。

第一話は、「笑わない薬剤師の健康診断」(同、17頁)です。
水尾爽太は足の痒みに襲われて我慢できなかったため、勤務先のホテルの休み時間を利用してクリニックに行きます。
彼はクリニックから出された処方箋を持って、「〈どうめき薬局・どちらの処方箋でも受け付けます〉」(26頁)の看板を見つけて、薬を受け取ることにしました。
クリニックの院長の診断に疑問をもった薬剤師の毒島さんの説明が大変にお見事でして、そこから思わぬ展開があります。

第二話は、「お節介な薬剤師の受診勧奨」(同、71頁)です。
フロント係を担当している水尾は、娘と二人で宿泊している母親のほうからクレームを受けました。
二人で外出している間に、部屋に置いていたアトピー性皮膚炎の塗り薬が紛失しているということです。
外出から戻ったのが土曜日の午後3時過ぎだったので、病院や調剤薬局はほとんど閉まっているところが多いので、さてどうしたらよいでしょう。

第三話は、「不安な薬剤師の処方解析」(同、133頁)です。
水尾は、喫茶店風花でどうめき薬局に勤務する薬剤師の刑部(おさかべ)さんから毒島さんの私的な部分を聞きます。
刑部さんは薬局のご常連さんの70代の女性から「薬が足りないのですぐに来て欲しい」という緊急の電話を受けたので、その方の自宅まで説明しに行くことになったというのです。
水尾は刑部さんと一緒に電話の主の女性の自宅まで行くことにしました。
玄関のインターホンを鳴らして、やっと出てきたのは電話した女性ではなく、こわもての男性でした。

第四話は、「怒れる薬剤師の疑義照会」(同、177頁)です。
水尾が第一話で受診したクリニックには或る疑惑があり、水尾と毒島さんは銀座まで行くことになりますが……。

ミステリー小説なのでこのくらいにします。
うーん、もっと先が読みたい!(^-^;
と思われたあなたは是非文庫本でお読みくださいね。

作者の塔山 郁氏は、ミステリー小説『毒殺魔の教室』(宝島社、2009年、のち宝島社文庫、上下巻、2010年)で、第7回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞☆彡を受賞されています。
第3刷の帯の裏表紙側には、受賞作の『毒殺魔の教室』が大きな文字で描いてあります。
ミステリー作家としてご活躍されています。

今回の作品は「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズ化されていて、全5巻中の第1巻目です。
5巻とも全て文庫本です。
最新刊は、同社から2022年12月に刊行されたばかりの『薬は毒ほど効かぬ 薬剤師・毒島花織の名推理』です。
第1巻で水尾は毒島さんと友人となりましたが、この後の展開が気になりますね。

一般的に意外と知られていない薬剤師の担う役割の多いことに凛は驚きました。
お薬を受け取る待ち時間ばかり気にせずに、調剤薬局の見方が少し変わるかもしれませんよ。
「あら、そうだったのかぁ」と薬に関する基礎的な知識も得られます。

また、薬剤師と並行して、主人公水尾のホテルマンとしての責務の大変さに彼を応援したくなります。
ホテルに勤務する他のスタッフとの人間関係も描かれています。
つまり、この作品は調剤薬局に勤務する薬剤師と、ホテルに勤務するホテルマンのお仕事小説ともいえますね。(^○^)

水尾と毒島さんとの関係も気になるところです。
シリーズ化されているので、凛も続きを読みたいです。

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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2022年10月29日土曜日

表情を読み取りながら楽しめるミステリー ~平野啓一郎『ある男』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

こんばんは。(^-^)
あなたはお変わりありませんか。
凛はまたもや所用のために、大変ご無沙汰いたしております。m(_ _)m

前回の2作品ご紹介いたしました季節の盛夏はとっくに過ぎ去り、秋も深まっていく今日この頃です。
四季のある日本では三か月毎に季節が変わります。
半袖から長袖へ、朝晩は軽めのコートも必需品となりました。
本当に月日の経つのは早いものですねえ。

秋の夜長にミステリー小説を楽しまれていらっしゃるあなたへおすすめの小説があります。
芥川賞受賞・純文学作家が描くミステリー小説はいかがでしょう。
謎解きはもちろんのことですが、人物像が深く描かれており、登場人物の心理状態を知りたくなる世界に浸ってみませんか。

読者を先へ先へと導いてくれる小説をご紹介いたしましょう。
平野啓一郎(ひらの けいいちろう)氏の長編小説『ある男』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)です。

凛が持っている文庫本は、2021年10月15日付で第2刷です。
文庫本の第1刷が2021年9月10日付ですので、平野氏が如何に人気作家であることが良くわかりますね。

まずは、文庫本の帯の紹介です。
凛が持っている第2刷の文庫本の帯には、「読売文学賞受賞の感動作 映画化決定!(2022年公開)」と紹介されています。
「愛したはずの夫は全くの別人だった──」
書店でこの文庫本を手にして、ふむふむ、妻にとって夫の正体は一体何者だったのだろう?という素朴な疑問がわくように誘導されますよね!

帯には映画の出演者である安藤サクラさん、妻夫木聡さん、窪田正孝さんの写真が掲載されています。
凛が好きな俳優さんばかりなので映画も楽しみたいなと思いました。

帯の裏には「愛にとって過去とは何か?人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。」
なるほど、純文学の平野啓一郎氏が描くミステリー小説なのだな、という期待感が出ます。

裏表紙の説明文からは、再婚して幸せな家庭を築いていた折、夫がある日突然事故で亡くなるのですが、夫が「全くの別人だったという衝撃の事実が……。」と興味をそそる文言が。
果たして夫は誰だったのか?
残された妻の葛藤が容易に想像できます。

文庫本の表紙は、積み木のように重ねて並べた男性のような人物が腰から折り曲げて佇み、頭を抱えて悩んでいるように思えます。
まるでモザイクのように見えます。
カバー彫刻は、アントニー・ゴームリー氏です。
デザインは、大久保明子(おおくぼ あきこ)氏です。

小説の内容に入る前に、予めひと言述べさせていただきます。
正直に告白いたしますが、凛は平野啓一郎氏の小説が長い間苦手でした。
平野氏が大学在学中の芥川賞受賞作品☆彡☆彡である小説『日触』(新潮社、1998年、のち新潮文庫、20002年)を読了して以来ですから、きっと食わず嫌いだったのかもしれません。
最後まで読まずに途中であきらめたこともしばしばありました。
凛にはなかなか平野氏作品の世界に入れなかったのです。

その理由はわかりませんが、凛とは合わなかったということでしょうか。
悲しいかな、凛の読書能力が平野氏の世界に到達できていなかったのでしょうね。

今回の作品の前の長編小説『マチネの終わりに』(毎日新聞出版、2016年、のち文春文庫、2019年)は最後まで読みましたが、恋愛小説にも関わらずあまり感動もなく、映画も観ておりません。
やはり合わないのかなあ、と……。(-_-;)

ところが、今回の『ある男』は表紙のデザインから入って、何だかとても面白そう、とビビビときたのです!
「凛さ~ん、読んでくださ~い。この作品は必ず楽しませてくれますからね!」と近所の書店の棚に並べられている文庫本が凛を呼んでいるのがわかりました。(^_^)v
凛は文庫本から届いた声を聴き、即座にレジに向かいました。

次に、作品の内容に入ります。
凛は映画出演の俳優さんたちを思い浮かべながら読みました。
苦手と思っていた作家の場合、顔の設定が明確になって読みやすいのではないか、と思ったからなのです。

「序」で、物語の主人公は「城戸さん」であると、「私」が語っています。
城戸(きど)という弁護士が出てきて、「私」との接点を語りますが、そこから怪しさもありますね。
この「序」の項は読了後、また戻って読み返す読者も多いかと思います。
凛は何度も読み返しました。

宮崎県のS市に在する老舗の文房具屋を営む実家に、離婚して一人息子の悠人(ゆうと)を連れて出戻りしてきた里枝(りえ)は、移住して林業に従事した谷口大祐(たにぐち だいすけ)と再婚しました。
里枝は横浜の大学に進学、就職し、建築家の卵と結婚していましたが、次男の遼(りょう)を病気で亡くしたことで夫と意見が合わずに離婚していましたので再婚になります。

里枝の実家の父親が急逝したこともあり、彼女は宮崎県の実家に戻ってくることを決意しました。
再婚した谷口大祐との間には花(はな)という女の子も生まれています。
里枝は実家の母親と同居し、文房具店を切り盛りしながら一家五人で暮らしていました。

谷口大祐の出自は群馬県の伊香保温泉にある旅館の次男坊ということでした。
彼は兄と折り合いが合わず、実家を出ました。
里枝と結婚した大祐は、真面目に働き、林業の社長さんにも気に入られていましたが、山で事故に遭い、突然亡くなってしまいました。

連絡を受けた大祐の兄の谷口恭一(たにぐち きょういち)が里枝の家を訪れてみると、弟であったはずの大祐の遺影が違うことに気がつきます。
では、亡くなった夫は誰なのでしょうか?
里枝と暮らしていた夫は「"X"」となっていました……。(文庫本、87頁以降)

横浜市在住の弁護士・城戸章良(きど あきら)は里枝の離婚調停の代理人を受けていた関係で、相談を受けたのでした。
そこから城戸の活躍が始まります。
城戸自身も出自と家庭内の問題を抱えながら、多忙な中、各地を飛び回って調べてゆきますが……。

予想だにしなかった事実が次々と明らかになっていく中で、里枝にも城戸にも疲労が溜まってゆきます。
さらに里枝の息子の悠人も育ちざかりな故、問題が出てきます。
過去と現在が複雑に絡まり、進んでは立ち止まり、また進んでゆきます。
凛も読みながら、先がとても気になり、頁をめくる動きが早くなりました。(^○^)

「序」では城戸が主人公として扱っていますが、凛は、城戸だけでなく里枝や大祐もこの物語の主人公であると思いました。
三人の登場人物の顔を、里枝役は安藤サクラさん、谷口大祐役は窪田正孝さん、城戸役は妻夫木聡さんという俳優さんたちに想定して読むと、表情など具体性があって内容が理解しやすかったです。
映画の俳優さんたちはどのような演技をするのかな、と映像を予想しながら読むという楽しみもありました。

例えば、文庫本97頁で、里枝は名無しの夫"X"となった遺影の目を見つめていますが、そのときの里枝の表情はどんなものであったでしょうか。
演じていらっしゃる安藤サクラさんの表情を想像すると、原作と映画との二重の楽しみが増えますね~ (^o^)

後はあなたが読まれてのお楽しみに。

作者の平野啓一郎氏は、前出しました小説『日触』を初めとして多くの作品を世に出されています。
お若い頃から作家として大活躍されていらっしゃいます!

今回の小説『ある男』は、2018年第70回読売文学賞☆彡を受賞されています。\(^o^)/
前年の2017年、小説『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞☆彡を受賞されています。

平野氏は「分人(ぶんじん)主義という独自の考え方をもたれており、上記の二作品もその中で存在を示されています。
これら二作品の先には小説『本心』(文藝春秋、2021年)があります。
一人の人間に備えもった様々な多面性を平野氏の視点で追求されていらっしゃるのでしょう。

凛は昨年、講演会で平野氏を直に拝見いたしました。
とても穏やかな表情でしたが、明確にご自分の意見をわかりやすく伝えていらっしゃいました。
今年47歳になられた平野啓一郎という大人の作家の作品を、過去の作品と共に読んでみようと思っています。
新たな発見を見出すのもまた読書の楽しみの一つですね。(^-^)

小説と同名作品の映画は、石川慶(いしかわ けい)監督、脚本は向井康介(むかい こうすけ)氏です。
11月18日(金)全国ロードショウです。
映画の公式サイトは、こちらです。
公開がとても楽しみですね~!
最近書店に並べられている文庫本の帯も映画の紹介のデザインに変わっていました。

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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2022年7月2日土曜日

「老後のマネー小説」2作品を読んでみた(その2) ~松村美香『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

前回の(その1)(ブログはこちらからの続きです。

凛は、「老後のマネー小説」2作品を読みました。
前回の(その1)からの説明が重複しますが、読んだ小説は以下の2作品です。
1作品目は、垣谷美雨(かきや みう)氏の小説『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)です。
2作品目は、松村美香(まつむら みか)氏の小説『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)です。

(その2)では、2作品目の松村美香氏の小説『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)をご紹介いたします。

凛はネット書店で購入しました。
タイトルの「家族」には「ファミリー」とルビがふってあります。
文庫本書き下ろしで、凛が持っている初版の文庫本には帯はついていません。

裏表紙の説明文からは、「崖っぷち」山田(やまだ)家の「財テクワールド」3,000万円!の奮闘劇が描かれているということがわかります。
なるほど、不安ばかりに覆われてはいけませんよね。
資産運用の話なのかなと期待できそうです。(^_^)v

文庫本の表紙は、全体が黄色の中、山田家の4人家族が机に横に並んで座っており、各人が腕を組んだり、ノートPCとにらめっこしたりなどして、金策を練っている様子がうかがえます。
机上には、ブタの貯金箱や電卓、筆記用具などいろいろな物がたくさん置かれてあります。
この四人の頭上をお札や硬貨がたくさん舞っています。

表紙のカバーイラストは、北極まぐ(ほっきょく まぐ)氏です。
カバーデザインは、bookwallです。

山田家のご主人は、メーカー勤務の技術畑で実直な50代の会社員です。
ご主人は会社の同僚の早期退職を知り、これまでの自身の生き方について考えさせられることになります。
何故ならば、計画的な資産運用で退職後の生活の目途をつけていた同僚の表情が実にさばさばしていて明るかったからです。

山田家の奥さんは45歳の専業主婦です。
長女は大学生で自宅から通学しています。
銀行員の長男が社会人となって家族も安心していた矢先、唐突に退職して実家にこもってしまったことから、山田家の人たちに様々な目覚めが生まれます。

さらに、ご主人は意図しない方向で転勤を命じられます。
ご主人はベトナムへ出張した折り、現地に派遣されていた先輩や後輩との出会いから、入社以来頑なだった会社や仕事に対する価値観に変化が生じてきます。

長男と図書館で出会った少年とその妹、そして少年らの母親との出会いが山田家には新たな発見が生まれます。
奥さんがパートで働き始めたコンビニでの青年スタッフとの出会いなど、様々な人々との交流から、凝り固まっていた価値観と心理状態がほぐれていく過程がわかります。

また、ご主人の実家の問題が生じますが、親族との軋轢はどこのご家庭にもありそうな会話が飛びかいます。
都内で美容室を多角経営しているご主人の姉の存在が光ります。

松村氏がこの小説で読者に伝えたい事柄は、作品の前半に集中して太字で描かれていることが特徴です。
全編において数字が具体的に出てくるので、投資への期待感があります。
「前へ、前へ」と背中を押される感じがあります。(^o^)
つまり、データが古いため、円安が進んでいる現在に適用できるかどうか決して定かではないということです。
やはり財テクを行なうには、個人の学びと責任が必要だと考えます。

この山田家の現在はどうなっているのでしょうか。
経済に詳しい読者には、逆に2017年当時の山田家の財テクが正しかったかどうか、検証できるという読み方もあるでしょう。

作者の松村美香氏は、国際開発コンサルタントとして、ビジネスの最前線で実践に研鑽を積まれていらっしゃる方です。
2008年に、小説『ロロ・ジョングランの歌声』(ダイヤモンド社、2009年)第1回城山三郎経済小説大賞を受賞☆彡されています。
この作品は改題して『利権聖域─ロロ・ジョングランの歌声』で2012年、角川文庫から出版されています。

大変な状況である中、目標を設定して、前向きに捉えて進む家族の姿に逞しさを覚えます。
様々な人々との出会いも「ご縁」ということで良い方向に進む山田家の各人の明るさには共感を覚える読者が大勢いらっしゃることでしょう。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

以上、(その1)と(その2)の2作品をご紹介いたしました。

最後に、(その1)と(その2)について、まとめます。
社会人となり、結婚して子供2人をもうけ、車と住宅を取得し、住宅ローンを払い続けながら定年まで勤めあげるという「中流意識」は、どこかの段階で崩壊するかもしれないということですね。
もしかしたら最初から「中流意識」など幻想に過ぎなかったのかもしれません。

まして、老親の問題が突然生じ、それに伴って親族との確執も乗り越えてゆかなければなりません。
成長した子供たちは不安定な時代を生きています。
加えて、家族の健康の問題もあります。
雇用の安定さえままならない現代群像劇の展開により、決して他人事ではない状況で両作品とも読者に迫ってきます。

「風の時代」の訪れとともに、これまで抱いてきた「安定」「中流」という価値観について、読者に問うている小説であると凛は考えます。
果たしてお金だけに価値を置いてよいものでしょうか。
しかしながら「老後のマネー」は現実の問題として老いとセットで確実に迫ってきます。
現代の日本人には決して避けては通れない道でしょう。

あなたはどのように受け入れていかれますか。

凛は、やはり宝くじは買い続けていこうと思いました! ( ;∀;)
宝くじの制度がなくなったら、あら、どうしましょう。

今夜も凛からあなたへおすすめの小説、2作品でした。
今回はいつもの2倍、ちょっと長かったでしょうか~
次回もまたよろしくお願いいたしますね。 (^-^)

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「老後のマネー小説」2作品を読んでみた(その1) ~垣谷美雨『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お元気でいらっしゃいますか。
はて、梅雨はあったのかしら、と思ってしまうくらいにあっという間に6月が過ぎ去り、日本はすっかり真夏となりました。
アイスが食べた~い!
アイスコーヒーが飲みた~い!
あまり冷たいものばかりをいただくと体が冷えてしまいますね……。(^-^;

メディアを通して電力逼迫による節電を毎日呼び掛けられて、余計に暑さを感じてしまうのは凛だけでしょうか。
家電量販店ではエアコンの品不足だとか。
熱中症の対策も然り、部屋の換気不足によるコロナ対策も然り、運動不足による体力問題と、次々に不安材料が増している現状ですねえ。

おまけに円安も加わって、食料品や日用品の値上げが次々と発表されています。
買物に行って、少しずつの値上がりを感じますねえ。
いずれも生活必需品ですので、日々の積み重ねによって、やがては生活に支障を来すことに!
なんてことにもなりかねない漠然とした不安感で覆われる昨今……。(-_-;)

かつて老後2,000万円問題も報じられましたね。
凛にはまだまだ先の話かとも思っておりましたが、「光陰矢の如し」と時の経つのは早いですから、必ず凛にも老後が訪れるのは明らかですものね。
それ故に、文学作品を通して「老後のマネー」について考えてみようと、「老後のマネー小説」2作品を読んでみました。

1作品目は、垣谷美雨(かきや みう)氏の小説『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)です。
2作品目は、松村美香(まつむら みか)氏の小説『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)です。
後者は文庫本書き下ろしで、タイトルの「家族」には「ファミリー」とルビがふってあります。

凛が何故「老後のマネー」という同じテーマを扱った2作品を連続して読んだのかと申しますと、両作品には共通点が多く、一見似たような家族の設定ですが、書き手によってどのような「老後のマネー」問題を迎えて対策をとるのかについて興味をもったからです。
世間では両作品と似た構造のご家族が多くいらっしゃると思いますが、中に入ってみるとそれぞれに事情があるかもしれません。
世間様に容易には話せない現状を赤裸々に描いているという点で、読者が「我が家もそうです!」「どこも同じようなものですな」と共感を呼ぶ作品といえるでしょう。

2作品の家族設定は、4人家族で夫は50代の会社員、60歳の定年まであと数年というところが共通しています。
妻はパート勤務と、専業主婦です。
両家とも長男と長女がいて、社会人と大学生。
両家とも都会に持ち家があり、戸建てとマンションの違いはありますが、住宅ローンの返済ももうすぐ終わるという設定です。
一見老後はまずまず安泰とも思える設定なのですが、物語はここからジェットコースターのように激しく乱高下していくのです。
さて、両家にはどのような展開が待っているでしょうか。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

まずは1作品目です。
垣谷美雨(かきや みう)氏の小説『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)です。
垣谷氏については、「断捨離」編で(ブログはこちら)でご紹介しておりますので、割愛させていただきますね。

凛が持っている本は文庫本の初版です。
街の書店の新刊コーナーで発見して購入しました。

凛の初版本の黄色い帯の表表紙側には、「お金がない!」と太くて大きな文字で目立つように描かれています。
「頑張る家計応援小説」ということで、単行本化された2015年当時では珍しいテーマだったのかもしれませんね。
また、この文庫本の解説文を書いている室井佑月(むろい ゆづき)氏が帯で「熱く推薦!」されています。

文庫本の表表紙の絵には、一家の奥さんが中心にいて悩みを抱えている様子がうかがえます。
奥さんの周りに背広姿のご主人、伴侶と仲良く並んだ娘の結婚式と立派なウェディングケーキ、舅の遺影と香典、そして椅子にデンと座ってお茶を飲んでいる姑が描かれていて、何枚ものお札がひらひらと空中を舞っているのがわかります。

文庫本のカバーイラストは、高寄尚子(たかより なおこ)氏です。
カバーデザインは、田中久子(たなか ひさこ)氏です。

あらすじとしては、後藤(ごとう)家は都心部のマンション暮らしで、当初1,200万円の貯蓄がありました。
ご主人の定年まで残り数年ですし、ご主人の退職金も出る予定ということで、「安泰な老後」がご夫婦には予測されていました。

しかし、さにあらず!
ここからが一家には人生の急展開となるのです!!(@_@)

安定しているものと信じていたご主人と奥さんの仕事がなくなります。
暫くの期間に失業保険があるとはいえ、それが切れた後は無収入となるのです。
長女の豪華な結婚式、舅の葬儀と墓の建立で多額の出費が重なり、貯蓄は減り続けるばかりです。
大学生の長男の学費もあります。

姑は浅草の家を処分して得た2億円の資金で高級な老人施設に舅と入居して贅沢な暮らしを続けていましたが、舅の死により施設を退去して、後藤家の四人が暮らすマンションに同居することになりました。
ご主人の妹夫婦との軋轢もあり、てんやわんやの忙しい日々を送ります。
さあ急に家計が逼迫した後藤家はどうなりますか……。

物語の後半からの展開が「え?まさか!そちらの方向にいっちゃうの?」と読者の予想を見事に裏切るかもしれません。
姑の行動や長女の婚姻後の暮らしに対して、奥さんと長年交際している友人や、明朗快活な長男の存在が光を放つことになりますか。

文庫本の解説は、作家の室井佑月氏です。
解説のタイトルは「こういう本が読みたかった」です。
室井氏が再婚される前の解説文でしょうか。

垣谷氏の作品のタイトルやテーマにはセンセーショナルな題材が多く、いつもドキッとさせられます。
この作品も一般的な主婦目線で描かれており、後藤家の奥さんを等身大と感じる女性の読者も多いのではありますまいか。

作品は「老後のマネー」がテーマですから、当然「お金」は家族を構成するための要となります。
後藤家の奥さんはいつも「お金がない」ことを意識して暮らしています。
凛が後藤家の奥さんだとしたら、どのような対策をとるかしら……。 ((+_+))

しかし、視点を変えてみると、「お金」だけでは得られない新しい価値観が生まれてくるのではないかなとも考えたりしました。
この作品を10年後に再読してみると、また違った感覚になるのではないかと、新しい時代の到来という期待感ももちました。
ひゃあ、実際はもっと大変だったりして……。(@_@。

この作品は、2021年に同名のタイトルで映画化されていますね。
前田哲(まえだ てつ)監督、天海祐希(あまみ ゆき)さんの主演です。
凛はまだ観てませんが、あなたはご覧になられましたか。

(その2)へつづく。

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2022年5月30日月曜日

この地球に生まれて何を思う ~三島由紀夫『美しい星』(新潮社、1962年、のち新潮文庫、1967年、42刷改訂版、2003年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お久しぶりです。
日本は春から初夏の爽やかな季節を経て、これから梅雨、やがて猛暑が予想できる夏を迎えようとしています。
あなたはお元気でお過ごしでしょうか。
凛は充電期間……、おっと前回から結構長~く充電しておりますねえ。(^-^;

この間、地球はまさに揺れ動いている状況です。
戦争、流行病、政治、経済不安、株価、半導体、労働、飢餓、貧困、格差、気候変動、地震、大規模火災、火山噴火、海底火山噴火、食糧不足、水問題、洪水、脱炭素、民族問題、宗教、メディア、多様性……。
多くの人々を不安にし、暮らしの営みを窮地に陥れる項目を挙げればきりがありません。

混沌としているこの地球に生まれて、あなたは何を思われますか。
凛はこの先も健康で日々を平穏無事に暮らしてゆきたいと願っています。
恐らくはほとんどの人々が凛と同じ思いを抱いているのではないでしょうか。

凛はよく空を見上げます。
特に夜空の星々を眺めるのが好きです。
星の光の具合の変化を楽しみながら……。(^_-)-☆

あの星の向こうには何があるのだろう。
天体に浮かび上がる星々から地球はどのように見えているのだろう。
宇宙人はいるのかな。

凛はSF的なアニメや物語が好きです。
『スター・ウォーズ』などのSF映画も楽しんでますね~

さて、今回の本は、三島由紀夫(みしま ゆきお)著の小説『美しい星』(新潮社、1962年、のち新潮文庫、1967年、42刷改訂版、2003年)です。
初出は雑誌『新潮』の1962年1月号~11月号に掲載され、同年に新潮社から単行本で出版されました。
その後、文庫化されて、改訂版の後も増刷されています。

凛が持っている文庫本は、この春に整理した凛の書棚からタイトルに惹かれて手にしました。
「美しい星」とは地球のことなのかな。
今、読みたい!
「凛さ~ん、どうぞ読んでくださ~い!」
「は~い!わかりました!あなたの出番ですよ~」
本からおすすめの声が聞こえてきましたよ~ (^_^)v

凛が持っている文庫本は、2013年(平成25年)53刷です。
街の中心部にある全国大手書店の一角で時折催される古書祭りで入手したものです。

表表紙には、男性2名と女性2名の上半身の絵が描かれており、彼らの上空には3機の円盤らしき謎の物体が飛行しています。
装画は、牧野伊三夫(まきの いさお)氏です。

帯の表表紙側には、「没後45年── 新しい三島を体験する。」
「(省略)に怯える日本をミシマは予見していた!」(文庫版53刷)

帯の裏表紙側には長い文章が書かれています。
「今や人類は自ら築き上げた高度の文明との対決を迫られており、(省略)二つに一つの決断を迫られている」(同上)

裏表紙の紹介文には、「宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、(省略)人類の滅亡をめぐる現代的な不安を」描き、「大きな反響を呼んだ作品。」と書かれています。(同上)

何やら難しそう……。
今から9年前の文庫本ですので、現在の表紙は装丁が若干変わっていますが、絵は同じですね。
帯も変わっているかもしれません。
以上に掲げた(省略)の部分がとても重要になっていると凛は考えています。
これらの重要な部分は、あなたが作品を読まれてから、改めてお考えいただくことをおすすめいたします。

では、内容に入ります。
埼玉県飯能市在住の大杉家の家族四人は各人別々の星から来た宇宙人だと信じています。
父の大杉重一郎は火星、母の伊余子(いよこ)は木星、長男の一雄は水星、長女の暁子(あきこ)は金星から、この地球に飛来してきたと家族間で信じています。

自分たち家族四人は地球の人間ではなく、地球の滅亡の危機から救うために動き始めます。
周囲からは変人扱いされている一家ですが、父の重一郎は世間からの評判など一切気にせず、自分の主義を曲げません。
彼は「宇宙友朋会」(うちゅうゆうほうかい)(同上、126頁他)を立ち上げて世界平和のために活動します。

長女の暁子は美しい娘で、彼女と同じ金星人という竹宮青年と文通で知り合い、金沢まで会いに行きます。
後に妊娠がわかり、彼女は処女懐胎であると主張します。

大学生の長男の一雄は、衆議院議員・黒木の私設秘書になります。
一雄は、黒木との関係から、仙台市の羽黒助教授、銀行員の栗田、理髪師の曽根という三人が上京した際に、彼らの東京案内をします。

羽黒ら三人は、一雄の父の重一郎を敵視しており、そこからの展開が圧巻です!
政治、経済、社会、文化、宗教……。
三人と重一郎との激しい応酬を、三島は作品の後半で多くの頁を割いています。
欲望にうごめく人間の醜さを抉り出しています。

以上、あらすじとして説明するには不透明すぎてわかりにくいかもしれませんね。

作品の内容が硬くて、当時の政治や世界情勢が絡み、難解な部分もありますが、結構ユーモラスな箇所も多々あります。
例えば、第二章で、長男の一雄が女性とデートしているところに妹の暁子が表れて女性に嫉妬している場面はとても愉快で笑えます。

人間の普遍的であろうと思われる点もたくさんあります。
例えば、同じ第二章で、「地球人の病的傾向」(同上、60頁)として、「民衆というものは、どこの国でも、まことに健全で、適度に新しがりで適度に古めかしく吝嗇(けち)で情(じょう)に脆(もろ)く、危険や激情を警戒し、しんそこ生ぬるい空気が好きで、……しかもこれらの特質をのこらず保ちながら、そのまま狂気に陥るのだった。」(同上、60頁)
という考えを重一郎に語らせています。
さすが、三島による鋭い洞察力です。

果たして、この地球上に人間がいなくなったら……。
宇宙人から見た地球は「美しい星」なのでしょうか。

文庫本53刷巻末の解説、奥野健男(おくの たけお)氏によると、作品発表時37歳の三島由紀夫は、「地球の外に、地球を動かす梃子(てこ)の支店を設定」(同、367頁)したことにより、結果、宇宙人の視点によって、客観的に地球を眺めることができると説明しています。

作者の三島由紀夫に関しては、世に出された多々の作品が幅広い年代層に支持され、また論じられてきました。
ここでの説明は省略させていただきます。

最後に、45歳で亡くなった三島由紀夫がもしも現代に蘇っているならば、2022年のこの地球上に起きている様々なことを見て何と思うのでしょうか。
「当時と全く変わっていないじゃないか」
それとも「人間力が弱くなってはいないか」

読後、凛はあらためて帯の説明文に納得しました。
再読すると、また違った発見があるように思えてなりません。

余談ですが、この作品は同じタイトルの『美しい星』で2017年に映画化されています。
吉田大八(よしだ だいはち)監督、リリー・フランキーさんの主演です。
作品のHPはここ!です。
原作とは異なり、地球の危機を「地球温暖化」として脚色されています。

凛は映画はまだ観てませんが、この機会に是非観たいなと思います。
映画鑑賞も読書ができることも地球が平和であることが大前提ですね。

本日も凛からおすすめの一冊でした。(^-^)

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