2022年7月2日土曜日

「老後のマネー小説」2作品を読んでみた(その1) ~垣谷美雨『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

お元気でいらっしゃいますか。
はて、梅雨はあったのかしら、と思ってしまうくらいにあっという間に6月が過ぎ去り、日本はすっかり真夏となりました。
アイスが食べた~い!
アイスコーヒーが飲みた~い!
あまり冷たいものばかりをいただくと体が冷えてしまいますね……。(^-^;

メディアを通して電力逼迫による節電を毎日呼び掛けられて、余計に暑さを感じてしまうのは凛だけでしょうか。
家電量販店ではエアコンの品不足だとか。
熱中症の対策も然り、部屋の換気不足によるコロナ対策も然り、運動不足による体力問題と、次々に不安材料が増している現状ですねえ。

おまけに円安も加わって、食料品や日用品の値上げが次々と発表されています。
買物に行って、少しずつの値上がりを感じますねえ。
いずれも生活必需品ですので、日々の積み重ねによって、やがては生活に支障を来すことに!
なんてことにもなりかねない漠然とした不安感で覆われる昨今……。(-_-;)

かつて老後2,000万円問題も報じられましたね。
凛にはまだまだ先の話かとも思っておりましたが、「光陰矢の如し」と時の経つのは早いですから、必ず凛にも老後が訪れるのは明らかですものね。
それ故に、文学作品を通して「老後のマネー」について考えてみようと、「老後のマネー小説」2作品を読んでみました。

1作品目は、垣谷美雨(かきや みう)氏の小説『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)です。
2作品目は、松村美香(まつむら みか)氏の小説『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)です。
後者は文庫本書き下ろしで、タイトルの「家族」には「ファミリー」とルビがふってあります。

凛が何故「老後のマネー」という同じテーマを扱った2作品を連続して読んだのかと申しますと、両作品には共通点が多く、一見似たような家族の設定ですが、書き手によってどのような「老後のマネー」問題を迎えて対策をとるのかについて興味をもったからです。
世間では両作品と似た構造のご家族が多くいらっしゃると思いますが、中に入ってみるとそれぞれに事情があるかもしれません。
世間様に容易には話せない現状を赤裸々に描いているという点で、読者が「我が家もそうです!」「どこも同じようなものですな」と共感を呼ぶ作品といえるでしょう。

2作品の家族設定は、4人家族で夫は50代の会社員、60歳の定年まであと数年というところが共通しています。
妻はパート勤務と、専業主婦です。
両家とも長男と長女がいて、社会人と大学生。
両家とも都会に持ち家があり、戸建てとマンションの違いはありますが、住宅ローンの返済ももうすぐ終わるという設定です。
一見老後はまずまず安泰とも思える設定なのですが、物語はここからジェットコースターのように激しく乱高下していくのです。
さて、両家にはどのような展開が待っているでしょうか。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

まずは1作品目です。
垣谷美雨(かきや みう)氏の小説『老後の資金がありません』(中央公論新社、2015年、のち中公文庫、2018年)です。
垣谷氏については、「断捨離」編で(ブログはこちら)でご紹介しておりますので、割愛させていただきますね。

凛が持っている本は文庫本の初版です。
街の書店の新刊コーナーで発見して購入しました。

凛の初版本の黄色い帯の表表紙側には、「お金がない!」と太くて大きな文字で目立つように描かれています。
「頑張る家計応援小説」ということで、単行本化された2015年当時では珍しいテーマだったのかもしれませんね。
また、この文庫本の解説文を書いている室井佑月(むろい ゆづき)氏が帯で「熱く推薦!」されています。

文庫本の表表紙の絵には、一家の奥さんが中心にいて悩みを抱えている様子がうかがえます。
奥さんの周りに背広姿のご主人、伴侶と仲良く並んだ娘の結婚式と立派なウェディングケーキ、舅の遺影と香典、そして椅子にデンと座ってお茶を飲んでいる姑が描かれていて、何枚ものお札がひらひらと空中を舞っているのがわかります。

文庫本のカバーイラストは、高寄尚子(たかより なおこ)氏です。
カバーデザインは、田中久子(たなか ひさこ)氏です。

あらすじとしては、後藤(ごとう)家は都心部のマンション暮らしで、当初1,200万円の貯蓄がありました。
ご主人の定年まで残り数年ですし、ご主人の退職金も出る予定ということで、「安泰な老後」がご夫婦には予測されていました。

しかし、さにあらず!
ここからが一家には人生の急展開となるのです!!(@_@)

安定しているものと信じていたご主人と奥さんの仕事がなくなります。
暫くの期間に失業保険があるとはいえ、それが切れた後は無収入となるのです。
長女の豪華な結婚式、舅の葬儀と墓の建立で多額の出費が重なり、貯蓄は減り続けるばかりです。
大学生の長男の学費もあります。

姑は浅草の家を処分して得た2億円の資金で高級な老人施設に舅と入居して贅沢な暮らしを続けていましたが、舅の死により施設を退去して、後藤家の四人が暮らすマンションに同居することになりました。
ご主人の妹夫婦との軋轢もあり、てんやわんやの忙しい日々を送ります。
さあ急に家計が逼迫した後藤家はどうなりますか……。

物語の後半からの展開が「え?まさか!そちらの方向にいっちゃうの?」と読者の予想を見事に裏切るかもしれません。
姑の行動や長女の婚姻後の暮らしに対して、奥さんと長年交際している友人や、明朗快活な長男の存在が光を放つことになりますか。

文庫本の解説は、作家の室井佑月氏です。
解説のタイトルは「こういう本が読みたかった」です。
室井氏が再婚される前の解説文でしょうか。

垣谷氏の作品のタイトルやテーマにはセンセーショナルな題材が多く、いつもドキッとさせられます。
この作品も一般的な主婦目線で描かれており、後藤家の奥さんを等身大と感じる女性の読者も多いのではありますまいか。

作品は「老後のマネー」がテーマですから、当然「お金」は家族を構成するための要となります。
後藤家の奥さんはいつも「お金がない」ことを意識して暮らしています。
凛が後藤家の奥さんだとしたら、どのような対策をとるかしら……。 ((+_+))

しかし、視点を変えてみると、「お金」だけでは得られない新しい価値観が生まれてくるのではないかなとも考えたりしました。
この作品を10年後に再読してみると、また違った感覚になるのではないかと、新しい時代の到来という期待感ももちました。
ひゃあ、実際はもっと大変だったりして……。(@_@。

この作品は、2021年に同名のタイトルで映画化されていますね。
前田哲(まえだ てつ)監督、天海祐希(あまみ ゆき)さんの主演です。
凛はまだ観てませんが、あなたはご覧になられましたか。

(その2)へつづく。

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