2023年12月6日水曜日

うわっ!究極の選択!どうするあなた? ~荒木あかね『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

師走になりました。
世の中が日に日に慌ただしくなり、「急ぎなさい!」と追い立てられるような空気感でいっぱいになる時期です。
このような時こそ慌てず落ち着いて臨みたいところですね。
年内にしなければいけないことはなるべく早めに着手して、ゆとりを持ちたいと思う凛です。

まあ何とかなるだろう、その時になって対処すればいいじゃないの、という方も多くいらっしゃるかと思います。
凛は「時」に迫られて慌てるのが嫌なので、年末はなるだけ早めに行動したいと考えるタイプですねえ。(^^;
あなたは歳末をいかがお過ごしですか。

今を生きている世界が安泰な時には一日が穏やかに過ぎてゆくものです。
それを「平穏」と表現いたしましょう。

ところが、各人の性格や考え方など全く及ばず、真の選択を迫られた世界で生きなければならなくなったとしたら……。
この地球上で突然に平穏な日々を営むことができなくなった時、人々はどのように生を捉えるのでしょうか。
恐怖、絶望、悲観、諦め、閉塞感、開き直り、無の心境……。
これらは極力避けたいことばかりですが、近いうちに訪れるという負の予測がほぼ確実であるならば、あなたはどのように思考し、行動しますか。

Xdayに向かって、地球人として絶対に体験しなければならない尋常ではない日々。
これまでは非日常と漠然と捉えていたことが、突然確実な負の日常に変わった時、いわゆる最悪の状況設定の中で、日本の福岡県で連続殺人が起こる小説があります。
極限の状態で起こる連続殺人事件に、果敢にも挑む女性二人の物語です。

今回ご紹介いたします作品は、荒木(あらき)あかね氏の長編小説『此の世の果ての殺人』(講談社、2022年)です。
今のところ単行本のみで、文庫化はされていません。
この小説は、2022年、第68回江戸川乱歩賞を受賞☆彡作品で、著者の荒木あかね氏は史上最年少の受賞者として各メディアで話題になりました。\(^o^)/

はじめに、この本との出合いについてです。
凛がこの本を知ったのは一作目が各メディアで話題になった時でした。
「とっくに読んでますよ~」というミステリーファンも多いかと思います。

何故今頃、紹介するの?という疑問をもたれたあなたへ。
凛はベストセラー作品は話題になっている期間ではなく、少し落ち着いてから読むことが多いです。
話題性というメディアの発信の枠内から出たところで、じっくりと味わいたいという気持ちがあるからです。
文庫化されるのを待つことも本音ではありますねえ。(^^;
ということで、この作品の単行本の購入を控えておりました。

今夏の8月に、荒木氏の二作目『ちぎれた鎖と光の切れ端』(講談社、2023年)が出版されました。
しばらくして秋に某ラジオ番組で著者について高評価していたことから、少し離れた大型書店に様子を見に行ってみました。
一作目はその大型書店にはなかったこともあり、ネット書店で購入しました。
ああ、一作目を入手するまで何ともどかしい凛ですこと……。 (^^;

凛が購入した一作目の本は、2022年12月1日付の第4刷発行のものです。
初版が2022年8月22日付なので、相当話題になったことがわかりますね~ (^^)v

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
凛が購入した第7刷の帯の表表紙側には、赤い帯の地色に「読書メーター注目本ランキング 単行本部門2022年10月 第1位」と目立っておりますよ。
他には「第68回 江戸川乱歩賞受賞 史上最年少、満場一致」
「大重版、新人なのに5万部突破!」など、期待感がモリモリです!

帯の裏表紙側には、「正義の消えた街で、悪意の暴走が始まった。」と。
その文字の下に細かい文字で説明文が4行書いてあり、実に衝撃的な内容です! (@_@)

「小惑星『テロス』が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。」
「そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり大宰府で自動車の教習受け続けている。」
(省略)
「年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見した。」
「教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める──。」(以上、同書)

裏表紙側には、京極夏彦(きょうごく なつひこ)氏を含めて5名の著名な作家の感想が一文ずつ紹介されています。

二番目は表紙について。
水たまりのある荒廃した土地に女性が二人、遠くの空を見つめています。
一人はコンクリートらしき建造物に座り、もう一人は立っています。
青い空に、赤く染まった雲や灰色の雲が見られます。
女性たちの周囲には電柱や信号機が斜めになっているものもあり、道路は壊滅しています。

この光景は裏表紙側に続いており、裏表紙の右端の下側には、大宰府自動車学校の教習車が半分ほど描かれています。
空には白く発光した帯状の「物体」が地上に向かっており、かなりのスピードであることがわかります。

装画は、風海(かざみ)氏です。
装丁は、bookwallです。

それでは、内容に入ります。
通常は内容に少しだけ触れているのですが、今回は先に述べました帯の裏表紙側の説明文だけで十分ではないかと思います。m(__)m

読者は、小春とイサガワ先生の二人の周辺が尋常ではない環境下に置かれていることに気づきます。
小春の家族と自宅、自動車教習所、警察、個人医院など、様々な伏線が張られています。
二人は福岡県内を大胆に動き回ります。
移動には自動車教習車を使って。

ミステリー小説なので、後はあなたが読まれてからのお楽しみに~ (^O^)

凛の感想といたしまして、四点挙げます。
一点目は、舞台が福岡県という限定的な地域密着型であること。
これは、著者の荒木あかね氏が福岡県在住であることが大きいでしょう。
例えば、6頁では宝満山(ほうまんざん)や英彦山(ひこさん)に触れるなど、地元の読者が喜ぶであろう場所が多々描かれています。

二点目は、天体に関してリアリティに迫っていることです。
作品の前半25頁から通称『テロス』」について詳しい説明が入ります。
既に帯の説明文で挙げていますが、地球に小惑星が衝突することが発表されます。
人々のパニックが!
頁をめくる度に様々な登場人物とエピソードで絡み合って進んでゆきます。

三点目は、イサガワ先生の言動の切れ味がユーモラスで小気味よいことです。
地球が終わるかもしれないという極限の時に起こる残忍な連続殺人事件を追って、イサガワ先生はこう言い放ちます。
例えば、「まだ地球は終わってないんでね」(同、112頁)

要はタイトルの「此の世の果て」とはどういう状態なのかということが重要かと凛は考えした。
極限の状態でこのようなセリフが言えるなんて!
現実にはこの言葉を言う機会が訪れないことを祈るばかりですが……。(-_-;)

四点目は、巻末に江戸川乱歩賞の沿革並びに選考経過、選評が掲載されていることです。
プロの作家の見解を知ることで、読者には受賞作品の重厚感が増すでしょう。
第1回(昭和30年)からの受賞リストを見て、歴史感を凛は認識しました。

著者の荒木あかね氏に関しては、先に述べました通りです。
荒木氏は1998年生まれのZ世代。

最後に。
小惑星が衝突して地球が滅亡するかもしれないという極限状態の中で、福岡県を舞台にした連続殺人事件を追う小春とイサガワ先生の行動力が基軸となっている作品です。
また、解決を追うことで出会う人たちの個々の物語でもあります。
もう後がないことがほぼ確実であるという超極限状態の中で、人の心理と行動がわかってしまう、いわば最も恐ろしい話です。

二人は「此の世の果て」から逃れられるのでしょうか?
それとも逃げずに向かっていくのでしょうか?
では、あなたはどうしますか?

凛は、物語の最後の数行、小春とイサガワ先生の会話を何度も読み返し、表紙の絵をじっと見つめました。
映像作品にできそうですねえ。

荒木氏の二作目の本が出版されて、凛が向かった大型書店では目立つように二作目が売り場のど真ん中にデーンと難十冊も平積みされていました。
「Z世代のアガサ・クリスティー」とPOPが添えられていました。
書店の対応もお見事ですね!

凛は一作目の時と違って、二作目は即買いしました。(^_-)-☆
荒木あかね氏の今後のご活躍に大いに期待します!(^O^)

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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講談社2022/8/24荒木あかね(著)
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2 件のコメント:

マーティーの工房日誌 さんのコメント...

ブログ頑張っておられますね~
太宰府の近くの自動車学校ですかあ
1つしかないのですぐに特定できますよね~
福岡県内を大胆に動き回るとのことで
色々と知ってる所が登場すると、現実味を帯びてきて、不安も高まって・・・
その場所に行けなくなるかもですが(゚Д゚;)
読みたくなってきました(^^)
もしかしたら、その教習所には、昔~し、イサガワ先生って方がほんとに居たのかも(^^;

南城 凛 さんのコメント...

マーティーさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!(^-^)
システムの関係で返事が遅くなり大変申し訳ございません。

謎めいた部分のあるイサガワ先生の行動力に、凛はとても魅力を感じました。
小説のラストに胸がジーンと熱くなりました……。
Z世代、荒木あかね氏の世界を是非ご堪能いただけたらと思います。(^O^)/