2021年7月27日火曜日

ドローンと名探偵が大活躍します ~早坂 吝『ドローン探偵と世界の終わりの館』(文藝春秋、2017年、のち文春文庫、2020年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

東京2020オリンピック競技大会が始まりましたね。
7月23日夜の開会式では1800機以上ものドローンが夜空を舞い、大変話題になりましたね~
あなたはその場面をTVなどでご覧になられましたか。
ドローンたちはキラキラと輝いていてとても綺麗でした!\(^o^)/

凛はちょうどドローンが活躍するミステリー小説を読み終えたばかりでしたので、これは奇遇だなととても驚きました。(^o^)
早速その小説をご紹介いたしましょう。

今回の本は、早坂 吝(はやさか やぶさか)氏のミステリー小説『ドローン探偵と世界の終わりの館』(文藝春秋、2017年、のち文春文庫、2020年)です。
大学の探検部の部員たちが訪れた廃墟で、迷宮ともいえる中で起こる殺人事件に、探偵がドローンを駆使して犯人に挑むミステリー小説です。

まずは、本の入手についてです。
凛が持っている本は、2020年7月10日付の文庫版の初版です。
この文庫本は、ちょうど一年前の夏、いつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで見つけて購入しました。
書店で手にして「ドローンと探偵」、ミステリー小説は数あれど、最新の技術のドローンを用いた小説を凛はこれまで読んだことがなかったので珍しいなと思ったものです。

この文庫本も出番を待っている本たちの仲間でした。
一年待たせてしまいました。
でも、まだ早いほうで、何年も待ち続けている本たちがいっぱいです……。(^-^;

次に、本の装丁です。
文庫本の表紙に描かれているアイドルっぽい若い男性の横顔がとってもキュートです。
主人公の飛鷹六騎(ひだか ろっき)でしょう。
彼を空から見守っているように見えるドローンがいます。

イラストは、焦茶(こげちゃ)氏です。
昨年、25歳の若さで亡くなられています。
デザインは、山本翠(やまもと みどり)氏です。

凛が持っている文庫本初版では、帯の表表紙側に「ドローン×名探偵」と書かれています。

同じく文庫本の帯の裏表紙側には著者の早坂 吝氏の読者へのメッセージが書かれています。
「今回諸君らに取り組んでいただくのは、そのトリックが何かを当てるということである。」(帯の裏表紙側)
その文章の次の行に、「騙されたくなければ、あなたも飛ぶしかない。」と。(同上)
早坂氏からの挑戦的な言葉に、それならば、飛んでやろうじゃありませんか!と思った凛でした。(^o^)

それでは内容に入ります。
文庫本の目次より、本作品は第5章で構成されていることがわかります。

目次の次の頁には、「ヴァルハラ周辺図」(文庫版4~5頁)が掲載されています。
2頁の見開きにわたる図には、事件の舞台である廃墟の館の内部と周辺が表されています。

次の頁では、「主な登場人物」(同6頁)が紹介されています。
東京都立北神(ほくしん)大学の探検部員として7名。
最初に紹介されている主人公のドローン探偵こと飛鷹六騎のところに《黒羽(くろばね)を継ぐ者》(同6頁)と書いてあります。
彼は北神大学の学生ではありませんが、迷宮の館を探検する探検部の一員として仲間になります。

他の部員が六名紹介されていますが、どの部員も名前に凝っています。
例えば、兵務足彦(へいむ たるひこ)は、二年生で副部長、ヴァルハラの館がある三豆ヶ村(みずがむら)の出身です。

部員の他には、三名の男性の名前が出ています。
この人たちも名前と職業が少々凝っていますよ。
御出院(おでいん)氏はヴァルハラを建てた資産家で、残りの二人は内閣官房長官と俳優です。

本編に入っていきなり、著者の早坂氏から「読者への挑戦状」が文庫版2頁にわたり掲載されています。
まずドローンの説明がなされ、次に読者に対するトリックの挑戦について、二つの理由を書いてあります。
先に紹介しました帯の部分でもわかりますように、この挑戦状には作者の編み出したトリックに対する自信がとても強く込められているというのが凛の印象ですね。

第一章から読み進むにつれて、だんだんと主人公の飛鷹六機の生い立ちと、ドローン探偵と呼ばれるようになったのかがわかってきます。
彼は「黒羽」を継ぐことをとても意識しています。
それから、テレビに出るほどの有名人になっていることも。

小説では、ドローンと人間は会話ができるんですって!
「Hel(ヘル)」(同20頁他)と名付けられた「彼女」はとても六騎のことを思ってくれる心優しいドローンさんです。
他にも2機のドローンたちが登場します。

部員の国府玲亜(こくふ れいあ)は、二年生です。
彼女の父親が政府の内閣官房長官であるため、お嬢様として他の部員たちから一目置かれています。
彼女は「ノブレス・オブリージュ」(同26頁他)というフランス語を用いて、富裕層としての責務ということで、他の部員よりも多くの支出をしますが、主人公の六騎を除いた部員一人一人に彼女に対する複雑な思いがあります。

物語は「北欧神話」がキーワードになって進行します。
三豆ヶ村にある高台の明日ヶ台(あすがだい)に資産家の御出院氏が、やがて来る「最終戦争(ラグナロク)」(同47頁)に備えて「核シェルター(ギムレー)付きの洋館(ヴァルハラ)」(同48頁)を建てます。

探検部員たちはその館を探検することになります。
彼らが訪れると、いきなり天候も荒れてきました。
もう館の外には出られません。
いかにもミステリー小説らしい怪しい設定ができました。
これからは読者が作者からの挑戦に向かっていかなければなりません。

探検部の部員たちが、一人殺され、また次に殺され……。
一体何人が殺されていくのでしょうか……。
犯人は誰?
犯人は何のために殺人を犯すのでしょう?

部員の一人一人に動機がありそう……。
他にも館に誰かが隠れていそう……。
もちろん六騎とドローンは大活躍します。

怖いけれど、先に読み進みたいのは読者の心理ですね~
ミステリー小説ですから、詳しくはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^_-)-☆

ところで帯や本編の最初に書かれている作者からのトリックに対する挑戦の言葉を思い出してみましょう。
作者はあらゆるところに伏線をはっています。
それを見つけることができるでしょうか。
読者は自ら物語の主人公になった感覚で作者に挑みましょう。

うーん、凛は予想したトリックは見事にはずしてしまいました……。(T_T)
ええーーーっ、そうだったのぉーーー?? (◎_◎;)

最近は映像化できそうな文学作品が多いですよね。
しかし、この小説はトリックを考えると、果たして映像化できるか、どうか……。
映像化はかなり難しいのでは。
つまり、唯一小説だけで楽しめるミステリーであると凛は考えました。
おっと、いけない、いけない、これ、大きなヒントに繋がってしまいそう……。(-_-;)

文庫本の解説は、文芸評論家の細谷正充(ほそや まさみつ)氏です。

作者の早坂 吝氏は、2014年、ミステリー小説『○○○○○○○○殺人事件』(講談社ノベルス、2014年、のち講談社文庫、2017年)で第50回メフィスト賞を受賞☆彡されてデビューされました。
同作で、2015年版「ミステリが読みたい!」新人賞を受賞☆彡されています。
ノベルス版と文庫版では殺人事件の数が異なっているとか。
他にも本格ミステリーなど多くの作品を発表されています。

最後に、まとめです。
冒頭の作者からの読者への挑戦状には天晴れです!(^○^)
探検場所の設定や、荒天、北欧神話との絡みも含み、登場人物の誰もが怪しく、読者を大いに惑わせてくれます。
最新技術を用いたドローンを駆使して殺人事件に挑む主人公飛鷹六騎の生き様と、ドローンとの友情ともいえる交流がとても和やかで新鮮でした。

トリックは作者にしてやられましたが、頁を戻してはられた伏線を辿ると、なるほど~と思える箇所がいくつもありました。
自由な発想ができることが求められますね。
凛はあっという間の読書時間で、退屈することなく楽しめましたよ~
あなたも早坂 吝氏からの挑戦状に挑んでみられてはいかがでしょう。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(文春文庫)文庫-2020/7/8早坂吝(著)
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