2021年7月13日火曜日

「旅友」と物語を紡ぐ ~原田マハ『ハグとナガラ』(文春文庫、2020年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

暑いですね~
あなたもお元気でお過ごしでしょうか。

凛は夏バテしないように気をつけなければと思っています。
すっかり自粛に慣れてしまいましたねえ。
暑さもあり、外出を控えて家で過ごすことが増えると、食欲と運動のバランスが崩れそうです……。(^-^;

特に、凛は冷たいドリンクなどを摂りすぎるとカラダが冷えて調子が悪くなりやすい体質なので、できるだけ熱いものを摂るように心がけています。
あなたはどんな暑さ対策をなさっていらっしゃいますか。

ところで、あなたは旅がお好きですか。
一人旅、ご家族との旅もよいですが、楽しい旅の共有ができる「旅友」はいらっしゃいますか。
忙しい日常から解放され、非日常の中でくつろいで心から話ができる「旅友」がいたら、それはとても幸せな時間でしょう。

凛には「旅友」はいませんねえ。
3年ほど前の話になりますが、全国大手書店の企画の懸賞日帰りバス旅行が当たったときは一人で参加しました。
意外と一人旅の方も大勢いらっしゃって安心しました。
昼食のときもお一人様用の席で10名ほど一緒のテーブルで食事をしました。
自由時間も各々距離を上手くとりながら楽しみました。

そのときの旅行会社のツアーガイドの方がバスの車内で、「最近は『バス友』が流行っていますよ。お客様方のお隣のお席の初対面の方と『バス友』になられることもございますよ」と仰っていたのが印象的でした。
担当の方の説明では、「バス友」とは、バス旅行のときだけのお友だちだそうです。
要するに、普段のお付き合いはせずに、バス旅行のときだけ一緒に申し込んで一緒に楽しむのだそうです。
凛は、そのような新しいお友だち関係もあるのかと納得しました。

凛も旅は好きなのですが、最近は自粛優先ですから、旅とはすっかりご無沙汰いたしております。
そろそろどこかに行きたいなあ、と心の誘惑がそろりそろりと凛を襲ってくるような感覚……。
旅を描いた小説で楽しむのはいかがでしょう。
読者を文学の旅にいざなってくれますよ~ (^○^)

今回の本は、原田マハ(はらだ まは)氏の連作短編集『ハグとナガラ』(文春文庫、2020年)です。
この文庫本は、文春文庫のオリジナルです。
過去に他社の文庫本や文芸誌に収録された作品を文春文庫に一冊にまとめて刊行されたものです。

主人公ハグは、大学時代からの友人である女性ナガラと共に「旅友」として旅を楽しみます。
二人共仕事をもつ独身女性です。
時代が進むにつれて二人の境遇も変わってゆきますので、当然ですが旅の内容にも変化がみられます。
合わせて、旅先の紹介や、知り合った人々との邂逅など、旅ならではの楽しさも味わえます。
作者は折々の旅での二人の心境を行間にたくさん織り込みながら、読者に共感を与えてくれます。

まずは、この文庫本の入手についてです。
昨年の秋、凛はいつもの近所の書店の文庫本新刊コーナーで見つけて購入しています。
2020年10月10日第1刷です。

「凛さ~ん、やっと私の出番ですね~」という声がこの文庫本から聞こえてきそうです。
凛には出番を待っている本たちがたくさんいるんですよ~ (^-^;

表紙には、地図の上に立つ二人の女性、ハグとナガラと思われますが、二人とも旅のキャリーバッグと共に笑って青空を見上げている姿の絵が描かれています。
二人の笑顔が実にいいですねえ。
笑顔を見ている凛も「明日もきっといいことあるよね!」と元気が出ます!

カバー絵は、アメリカのジェーン・デュレイ氏による作品「ハグとナガラ」(2020年)です。
原田マハ氏はキュレーターもされていらっしゃったので、ひゃあ、さすがです!!(^^)v

凛が持っている文庫本の帯の表表紙側には、「折返し地点から動き出す」と紹介文が載っています。
物語がいっぱい詰まっていそうな感じがしますよね~

帯の裏表紙側には、ナガラからハグに旅へのお誘いのメール文が掲載されています。
「旅に出よう」というタイトルで、
「元気?
(中略)
 もう、行けるかな。そろそろかな。
 ね、行かへん? どこでもいい、いつでもいい。」(帯の裏表紙側より)

このナガラの書く言葉がまたいいんですよね~ 
作中でハグとナガラは関西弁でやりとりをします。
なんだかとっても温かみがあるんです!

以上、表紙のカバー絵の明るさと、帯の紹介文によって、凛は書店のレジに直行しました。

では、内容に入ります。
最初に、原田マハ氏による「まえがきにかえて『ハグとナガラ』が文庫化された理由」が掲載されています。

原田マハ氏には「旅人ネーム」(9頁)を呼び合う「旅友」の存在を明かしていらっしゃいます。
「旅友」との思い出を作品にして不定期で発表していらっしゃったのですが、コロナ禍で一冊の文庫本にまとめることになった動機を書かれています。
あなたが作品を読まれる前後に、この文章は是非読んでいただきたいですね。

目次を見ますと、6篇の短編が収録されています。
「旅をあきらめた友と、その母への手紙」
「寄り道」
「波打ち際のふたり」
「笑う家」
「遠く近く」
「あおぞら」

二人の旅の物語だと思ったのに、いきなり「旅をあきらめた友」というタイトルが出てきて凛は驚きました。
お一人様の旅で始まるんですよ。

6篇を通して、とても重要なキーワードが複数あります。
しかし、キーワードがいくつあるのかは読者自身に委ねられていると凛は考えます。
ここでは凛がキーワードと考えたうちの五つだけをご紹介します。

一つ目のキーワードは、「時間」ですね。
この連作短編は、時系列に沿って編まれています。

文庫本の奥付の前の頁に、「出典」が掲載されており、各々の作品の刊行年が紹介されています。
刊行年は2008年~2020年までですので、逆算して、各作品の社会状況とハグとナガラの年齢と置かれた環境が概ねわかります。

二人は三十代から始まり、四十代、五十代と、環境の変化に伴って、彼女ら自身にも心身の変化がみられます。
そのため旅との向き合い方も変わってきます。
だんだんと旅をしている場合ではなくなってきます。
時間の流れは誰にも抗えません。
その変化が読者にひしひしと伝わってきます。

二つ目のキーワードは、「仕事」です。
彼女らは「男女雇用機会均等法の一期生」(121頁)でバリバリと働いた「キャリア・ウーマン」(同頁)です。
ハグが密かに敷いていた思惑が崩れてからの努力がそれはもう大変です。
会社という組織から離れた者の哀歌が聴こえてきます。
ハグの生活に直結します。

他方、ナガラのほうは一見順風満帆に上昇していますが、本人だけにしかわからない大変さがあるようです。
二人の仲も少し距離を置かざるを得ない時期もありますが、距離の置き方が絶妙なのです。

三つ目のキーワードは、「介護」です。
二人共に母親と娘との関係が如実に描かれています。
「時間」の経過は、老親のケアという「現実」が迫ってきます。
ナガラが先でしたが、ハグにも仕事との関係が問題となり、旅どころではなくなります。

四つ目のキーワードは、「旅先での出会い」です。
これは旅そのものの楽しさですね!
凛は作中に出てくる地名に緑色の小さな付箋紙を貼ったところ、40ヵ所を超えていました。(重複の地名を含みます。)
凛は地図を見ながら読むのが好きです。
主人公と一緒に旅をしている気分になれます。
これぞ旅文学!\(^o^)/

旅先でのタクシーやバスの運転手さんたちとのやりとりでは、旅慣れしているなあ、と感心します。
2篇目の「寄り道」では、バスの隣席に座った若い女性とのエピソードには胸がジーンと熱くなります。

五つ目のキーワードは、「友情」ですね。
やはり「旅友」!
ハグもナガラもお互いの人生に欠かせない大切な親友でしょう。
かと言って常にべったりではなく、距離感をとても適切にしているのがよくわかります。
連絡の方法も、携帯電話のメールから、スマホのLINEへと変わってゆきます。
しかし何と言っても伝達手段の最高のツールは……。
それは、あなたが読まれてからのお楽しみに。(^_-)-☆

巻末の文庫本の解説は、阿川佐和子氏です。
「アガワ」(198頁)流の「女旅」(196頁)にはほろ苦味も加味されています。
名エッセイスト・人気作家としてのひとつの作品としても楽しめますよ~(^o^)

作者の原田マハ氏は大変な人気作家ですから、書店で多くの作品が平積みされているのをご覧になられることも多いでしょう。
多くの作品を刊行されていますので、ここでは少しだけご紹介しますね。

デビュー作は、小説『カフーを待ちわびて』(宝島社、2006年、宝島社文庫、2008年)で2005年、第1回日本ラブストーリー大賞を受賞☆彡されています。
この作品は、2009年、中井庸友監督、玉山鉄二さん主演、マイコさん共演で、同名で映画化されています。

小説『楽園のカンヴァス』(新潮社、2012年、新潮文庫、2014年)では、2012年、第25回山本周五郎賞を受賞☆彡されていますし、第147回直木三十五賞の候補ともなっています。
これは凛がとっても大好きな作品です。
あなたがまだ未読でしたら、是非おススメします!!

また、小説『リーチ先生』(集英社、2016年、集英社文庫、2019年)で、2017年第36回新田次郎文学賞を受賞☆彡されています。

他にも直木三十五賞の候補作をはじめ、エッセイ、映画化、ドラマ化された作品など多数刊行されています。
ご存知の方も多いとは思いますが、作家の原田宗典(はらだ むねのり)氏マハ氏の実兄です。

まとめ。
小説『ハグとナガラ』は、主人公ハグと「旅友」ナガラが共に旅を楽しみ、謳歌し、そして抗えない時間の経過に伴う苦しみ、哀しみと向き合います。
人生も後半であることを意識すると、大人としての旅を体験します。
二人はあらゆるスパイスと共に素敵な人生の旅の物語を紡いでいるのでしょう。

前も少しだけ書きましたが、凛には「いつか時間ができたら必ず旅をしようね!私たちはこれからだよね!」と新幹線駅の改札口で誓った女性の友人がいました。
凛は彼女と絶対にいつかは旅ができると勝手に思っていたのかもしれません。
温泉でゆっくりしたかったなあ。
一度も実現することなく、彼女は亡くなりました。(T_T)
「いつか」と機会が訪れるのを待つのではなく、もっと貪欲になって彼女と強引に旅をしたかったなあと思うこの頃です。

「人生を、もっと足掻こう。」(20頁、90頁他)
「足掻く」……凛の胸にぐさっと突き刺さります。
「足掻き」ながら、「寄り道」(47頁)することも必要ですね。(^o^)

この作品で、あなたにはいくつのキーワードが刺さりますでしょうか。

今夜も凛からあなたにおすすめの一冊でした。(^-^)

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(文春文庫は40-5)文庫2020/10/7原田マハ(著)
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