2023年5月25日木曜日

いっぱい胸キュンしたいあなたへ ~山本文緒『自転しながら公転する』(新潮社、2020年、のち新潮文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本では爽やかな初夏からだんだんと夏が近づいてきています。
地域のお祭りやイベントなどが久しぶりに再開され、賑わいをみせています。
街には楽しみが待っていますねえ。\(^o^)/

ところで、5月の大型連休の後、7月17日の海の日までは祝日がありません……。(^^;
しばらくの間、大半の方々にはお仕事や学校生活など通常通りの日々が続きます。
凛には日々のルーティンが変わらないほうが読書の計画が立てやすくて良いかなあ、とポジティブに捉えています。
あなたはいかがですか。

小説には様々なジャンルがありますが、凛は恋愛小説は好きですね~
こんな恋愛をしてみたいなあ、このような出会いがあると毎日がドキドキして素敵だろうなあ、な~んてね。(^_-)-☆

「うーん、何だかねえ、他人の恋愛なんか気にしてどうするの。パートナーがくっついたり、離れたりしてさ、まどろっこしいことに時間かけていちいち付き合ってられないよぉー」
という方もいらっしゃるでしょう。
いえいえ、文学は疑似体験ができて、自分に置き換えたらどうするかなどと考えることができる最高の脳トレなんですよ~ (^^)v

今回ご紹介いたします小説は、山本文緒(やまもと ふみお)氏の長編小説『自転しながら公転する』(新潮社、2020年、のち新潮文庫、2022年)です。
読後に胸キュンしたいあなたへお贈りいたします。

恋愛小説なので、物語が終わるまでハラハラドキドキするのはもちろんのことです。
それだけでなく、「あら、それって私も同じ境遇なのよ!」と、現代の日本において家庭や職場の問題を抱えながら生きている人々に、直球で共感できることが多い小説といえます。
どなたにも楽しんでいただける小説である、と凛は考えます。

はじめに、凛がこの小説を知ることになったきっかけは、複数の文学系ユーチューバーが「この作品がベストです!」と紹介していたことから、近所の書店で購入しました。

凛はタイトルにとても興味をひかれましたね~
宇宙のお話と恋愛が関係あるのかな?と。
山本文緒氏の作品は以前はよく読んでいましたが、しばらくの間は触れていなかったので、凛には久しぶりの出合いとなりました。

山本氏は2021年10月にご病気のため亡くなられました。
あらためて山本文緒氏のご冥福をお祈りいたします。

次に、帯や表紙についてです。
凛が持っている文庫本は、2022年11月発行の初刊です。

文庫本初版の帯の表表紙側には、「恋愛、仕事、家族のこと。全部がんばるなんて、無理!」と目立つように表記されています。
それだけでも読者に共感を呼ぶ感じがします。

さらに帯には「第16回中央公論文芸賞受賞!」「第27回島清恋愛文学賞受賞!」「2021年本屋大賞ノミネート!」の三つのおめでとう☆彡☆彡☆彡が!!!(同上)\(^o^)/
これだけでものすごい情報量ですね!

表表紙は、写真ですね。
ビルの屋上でしょうか。
茶色い花柄のワンピースらしき姿の女性がフェンスに立っています。
彼女は後ろに沿って顔は空側に向けていますが、目は閉じているようです。
その表情には悩みがあるのか、疲れているように見えます。
彼女がたたずんでいる向こう側にはビルや建物が林立しています。
空には白い雲がありますが、青空も見えています。

表表紙のカバー写真は、コハラタケル氏です。
デザインは、新潮社装幀室です。

裏表紙の説明文によりますと、32歳になる都(みやこ)は母親の看病のために実家に戻り、近くのアウトレットモールでアパレルの契約社員として働いています。
職場ではスタッフとの問題を抱えています。
寿司職人の貫一(かんいち)と付き合いますが、結婚が見えません。

「母の具合は一進一退。正社員になるべき?運命の人は他にいる?」(同書)
なるほど、親の介護、契約社員と正社員、彼女自身の年齢もあり、この先、どうするのか、悩み多き主人公と等身大の方も多いかと察しがつきますね。
「ぐるぐると思い悩む都がたどりついた答えとは──。」(同書)
まだ本文を読んでいない凛も都の答えが知りたくなりました! (^▽^;)

では、内容に入ります。
物語はプロローグから始まります。
文庫本でわずか11ページで、結婚式のシーンが描かれています。(同書、5頁~15頁)

プロローグの「私」(同書、5頁以下多数)は、ベトナム人のパートナーと共に暮らしてゆくという、彼女自身の今後の人生に強い意志を表明しています。
ここでの「私」の強い表明が印象深く読者に刺さります。
これは作者の意図するところでありましょう。
凛は本文を読み進むうちに、何度もプロローグを読み返しました。

当然ですが、本文の最後にエピローグ(同書、635頁~654頁)があります。
凛は読了後にすぐにプロローグに戻り、またエピローグを読み返す行為を数回繰り返しました。
そして、そうだったのか!と大いに納得いたすことになりました。(^O^)

プロローグの後の本文ですが、裏表紙の紹介文で書かれている通り、主人公の与野都(よの みやこ)は郊外のアウトレットモールでアパレルのお店で働いています。
一人娘の都は実家を出て東京のアパレル会社で働いていましたが、母親が重い更年期障害を患ったために、父親からの要請があり、仕事を辞めて実家に戻ってきました。

ある日、同じモール店内にある回転寿司屋さんで働く羽島貫一(はしま かんいち)と出会いました。
「貫一おみやって言ったら金色夜叉じゃん」(同書、72頁)
「金色夜叉ってなんでしたっけ」(同上)
「熱海の海岸を散歩したり、ダイヤモンドに目がくらんだりするアレだよ」(同上)
この時の二人の会話には性格が非常に表れていると思いました。

一見、明治時代に人気を博した尾崎紅葉(おざき こうよう)作の読売新聞連載小説『金色夜叉』(1897年1月1日~1902年5月11日)を素材として扱っているようでもありますが、『金色夜叉』は未完に終わっていることもあり、都と貫一の二人の今後の行方が大変気になる、という伏線が張られているものと考えられます。

この小説には多くの現代の日本人が直面している問題を描いている社会小説としてとらえることができます。
都の前には様々な事柄が立ちはだかります。

第一に、都の家族です。
都は一人娘で、少子高齢化の問題に直面します。
母親の更年期障害、父親の仕事との葛藤など、都と同じ悩みを抱えていらっしゃる方も多いでしょう。
両親の高齢化による介護などの不安な要素が詰まっています。

第二に、都の仕事です。
都はファッションが好きだからこそアパレル会社に携わっています。
東京で活躍を続けていたかったけれども、実家の事情で叶わなかった思いを払拭しなければならない、という気持ちの切り替えが彼女には求められます。
同じ職場に勤務していても、スタッフ各人の立場や立ち位置が異なるため、会社や仕事に対する心構えが違います。
複雑な人間関係にもまれて綻び、彼女には疲れが生じてきます。

第三に、結婚についてです。
都は32歳になるので、自身の今後の人生設計を考えることが求められます。
結婚するのか、否か。
逡巡している彼女には、結論を出さねばならないという時間が迫ってきます。
両親や世間が求める都にふさわしい夫とはどのような男性なのでしょうか。
職業、年収、出自、家族、学歴、年齢、性格……。
貫一は都のことをどのように捉えているのか、いまいち掴めていません。

都の中でこれらの要素が同時にぐるぐると回転してしまうのです。
このような彼女の状態に共感される読者も多いでしょう。
悩める都は優先順位をどのようにつけたらよいのでしょうか。

ある日、ふっと都の前に現れるベトナム人が! 
さて、都はどうなりますか!! (@_@;)

後半は、話がめまぐるしく展開します。
後はあなたが読まれてからのお楽しみに! (^_-)-☆

作者の山本文緒氏は、1999年、小説『恋愛中毒』(角川書店、1998年、のち角川文庫、2002年)で第20回吉川英治文学新人賞を受賞☆彡されました。\(^o^)/
2000年、小説『プラナリア』(文藝春秋、2000年、のち文春文庫、2005年)で第124回直木賞を受賞☆彡☆彡されました。\(^o^)/
多くの作品を刊行されており、多くの読者ファンがいらっしゃいます。

文庫本の解説は、書評家の藤田香織(ふじた かおり)氏です。
解説の最初に書かれていた事柄から、山本文緒氏の作品が久しぶりの刊行だったことに、凛はなるほどと納得しました。
この小説の単行本が発刊されたのが2020年9月なので、前作品から実に7年ぶりの刊行だったということが書かれていました。
そのことから、凛が山本氏の作品を読むのが久しぶりだったのだ、と気づいたわけなのです。

山本氏がすい臓がんで亡くなられたことから、藤田氏山本氏の作品群に対して、冷静に、深く、濃く、見つめていらっしゃいます。
哀切を込めて……。(T_T)

最後に。
この小説は、主人公の都だけでなく、周りの登場人物たちの現実のありのままの姿を丁寧に鋭く抉り出して、臨場感をもって読者にリアル感を持たせます。
また、日本における価値観が必ずしも定位置ではないという点で、読者に向けて「俯瞰して見る」という選択を作者はプレゼントしています。
都に寄り添って読み進んでいくうちに、彼女たちと共に時間と空間を自在に飛びまわっていくことに読者は気づかされます。
読後感は、爽やかさの中に切なさもあり、柔らかく温かい気持ちになれます。

あらためて「読む」という楽しみ方を与えていただいた山本文緒氏に感謝でいっぱいになった凛でした。
もう、新作は出ないのですね。 (T_T)
凛は山本氏の作品群を是非とも再読したいと思いました。
読後の胸キュンと山本文緒氏への感謝で胸が熱くなることは言うまでもありません。

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2023年4月27日木曜日

あなたにとって新しくなった日常とは ~相原瑛人『ニューノーマル 1』(ファンギルド、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

初夏の爽やかな季節ですね~
さあ!日本ではGW(ゴールデン・ウィーク)がもうすぐ訪れます。
あなたはどこかへお出かけされますか。
これまでコロナ禍で外出も控えめにされていた方も多かったことでしょう。
各地のお祭りも今年からはコロナ前に戻って開催される所が多いようです。
街が活気づくのは楽しくなりますね!\(^o^)/

現在、あなたはマスクを外していますか。
凛は臨機応変で対応しておりますよ。

日本では3月13日からマスクを外すことについては個人の判断に委ねられるようになりました。
お仕事中は職場からの指示があるため外せない方々が大半ではありますが、買い物するお店や道行く人々の中にはマスクを外している方も日々見かけるようになりました。
春の花粉症でお悩みの方々も夏に向けてだんだん減っていくかと思われます。
これから暑くなってくれば、人々のマスク姿の光景に変化が訪れていくことが予想されます。

余談ですが、凛は鏡を見て、顎がコロナ前に比べて随分丸くなってきたなあと感じる今日この頃です……。(^^;
ある程度の緊張感は大事ですね~
この3年間ほどマスクで顔を覆ってきたため、ここにきて顎の輪郭が気になってくるとは……。(T_T)

あなたにとってコロナ前と現在では何か変化が生じましたか。
例えば、凛の周辺では冠婚葬祭を家族の少人数で行うようになったことが挙げられます。
それから最近、使いかけの口紅やリップクリームの古いものを処分し、新しいもので気分一新しました。
もう一つ挙げますと、少し遠出をして温泉に入る機会がありましたねえ。

世界中を震撼させたパンデミック後の新しい世界秩序はどのような新しい価値観を生み出していくのでしょうか。
世の中はどんどん変化していきます。
その速度がどんどん加速していっているように感じるのは凛だけでしょうか。

このままマスクをしたままで生涯過ごさなければならくなったとしたら……。
自分以外の他人の顔全体を見る機会が無くなったとしたら……。

今回ご紹介いたします本は、りんりんらいぶらり~で初めてのコミックとなります。
相原瑛人(あいはら あきと)氏のコミック『ニューノーマル 1』(ファンギルド、2021年)です。

コロナとは異なりますが、よく似たウィルスのパンデミックからおよそ20年くらい先のごく近い未来の日本を舞台にして、他人とは距離を置き、自分以外の人の顔はマスク姿しか知らない高校生たちがどのような価値観の中で暮らしているのかを問うている物語です。

はじめに、凛がこの作品を知ったきっかけについてご説明いたしましょう。
コミックは好きなのに最近はあまり触れることがなかった凛が何故この作品を知ったのかといいますと、YouTubeの動画を見たことからによります。

東京都書店商業組合のYouTubeチャンネル「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」(https://www.youtube.com/@tokyo-shoten)(ココ音が急激に出ることがありますのでご注意!)という動画が好きで凛は最近よく見ております。
出版不況といわれる昨今、東京で書店を営んでいる店主さんたちのインタビューと書店内を紹介している動画です。

そのYouTubeの動画の中から2022年3月5日にupされている「八王子市旭町・くまざわ書店八王子店」(https://www.youtube.com/watch?v=4AHF-iJamZs&t=3s)(ココ)(音が急激に出ることがありますのでご注意!)の書店員さんがこのコミックを紹介していました。

動画撮影の時点ではコロナ禍でしたが、早くもコロナ後の世界を描いたコミックということで、凛にはとても新鮮に思えました。
動画の中ではまだ第2巻までの刊行というお話でした。
作品は現時点では第4巻まで刊行されています。

コミックアウル(https://owl-comic.jp/book/)(ココ)は電子コミック配信の出版社ですが、凛の本は4巻とも紙の本で、街の駅ビル内の書店で購入しました。

次に、帯についてです。
凛が持っている第1巻は、2021年7月19日初版第1刷の発行になります。

帯の表表紙側では、「〈パンデミック後〉の世界を生きる若者たちを描く、最新型の‘’近未来SF青春群像劇‘’開幕──!」と描かれています。
「今、コロナ禍を生きる私たちと、未来を生きる君たちへ。」という帯のメッセージが印象深いですね。

本の裏表紙側の紹介文には、「僕たちが生まれる少し前、ひとつの感染症が世界を変えた」と描いてあります。

それでは、第1巻から帯の紹介と内容の説明に入ります。
現在から約20年後と予測される近未来、高校生たちは生まれた時からマスクで覆われた顔しか他人を見ないで育っているため、自分以外の口元に対する「見たい!」という欲求が現在を生きる我々とは計り知れなく大きな隔たりがあるものとして描かれています。

中央第二高校の女子生徒の夏木(なつき)さんと男子生徒の秦(はた)くんはクラスメートの顔だけでなく、家の中でも口元を覆うことが日常となっています。
夏木さんは自宅で両親から若かった頃の話を聞き出したり、昔の映画をこっそり見たりしています。

徹底した感染予防で管理される社会で、二人は傘に隠れてマスクを外した顔を見せ合います。
ある時、公園で二人はまたマスクを外します。
そこへ武装整備をした防疫隊が突然やって来ます……。
二人はどうなるのでしょうか!

後はあなたが読まれてからのお楽しみに!(^^)v

以下は、凛が持っている第2巻から第4巻までの発刊日と帯を裏表紙の説明文の一部を説明いたしますね。

第2巻は、2021年11月17日、初版第1刷発行です。
帯の裏表紙側には、「国内外から反響多数!!!!」
「新しい日常と変わらない、私たちの常識。」と紹介されています。
「コミックシーモア 電子コミック大賞2022エントリー作品」と紹介されています。

この巻の裏表紙側の説明文には、「僕が明日いなくなっても、世界は何事もなく続くんだろうな」と書かれています。
この巻では、防疫隊隊員の男性の過去の話が出てきて非常に興味深く読めます。

第3巻は、2022年7月19日、初版第1発行です。
帯の裏表紙側には、「第25回文化庁メディア芸術祭 審査員会推薦作品選出!!!」と紹介されています。

裏表紙側の説明文には、「今の世界はだいぶ、窮屈だ。だから、こんな場所があってもいい」という紹介文が書かれています。
この巻では、夏木さんは同じ高校の望月(もちづき)さんから誘われて某危険な集会に参加することになりますが……。

第4巻は、2023年3月17日、初版第1刷発行です。
帯の裏表紙側には、「外国語翻訳版 刊行続々!!!!」と出ています。
「フランス語、スペイン語、トルコ語、タイ語、韓国語他」と世界へ作品が紹介されているのも電子コミック配信サイトの利点でしょうか。
もしかしたら紙の本も外国で販売されているのかもしれません。

第4巻の裏表紙側の説明文では、「私たちは今、世界流行(パンデミック)の危機に再び直面している」と書いてあることから、急激な展開が予測されます。
果たして、反マスク団体‘’TEETH(ティース)‘’を取り締まる防疫隊との緊迫した世界で、夏木さんと秦くんは今後どうなっていくのでしょうか。

作者の相原瑛人氏は、2017年に講談社のモーニング・ゼロで奨励賞を受賞☆彡されています。
2018年から2019年にかけて同社のモーニングKCから『美魔女の綾乃さん』を連載、2巻に分けて2018年と2019年に発刊されました。

相原氏の作品はとても丁寧で綺麗に描かれています。(^-^)
主人公たちがのびのびとしていて動きもあり、SF的な話題で展開も早く、現代とも共通する場面も多いので、凛のようにコミックが久しぶりのに読者にも受け入れやすいのではないでしょうか。

最後に。
この『ニューノーマル』という作品は近未来の日本という設定で、現代からそう遠くはない、まさにすぐ近くに訪れる将来の物語です。
現在マスクをつけ続けて暮らしていけば、いずれはこのような未来の若者たちが出現することも想像できます。

今を生きている私たちが知らない間に、気づけば将来はこのような事態に世の中がなっているかもしれないとハラハラドキドキする場面が多い中、公園でおにぎりを一緒に食べようとマスクを外す高校生カップルの自然な姿にはとても近しい気持ちになれました。

新しくなった日常……。
現在の私たちの姿が様々な形で近未来の人々に多大な影響を及ぼしていくのかもしれません。

まだ第4巻までの刊行なので、この先がどうなっていくのか大変気になります。
コミック作者の相原瑛人氏は常に過去から未来までの地球のストーリーを俯瞰しているかの如く存在しているように感じます。
今後の展開に是非期待したいですね!(^O^)

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2023年3月29日水曜日

「夢」の旅の始まりは屋根からだった

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

春になりました。日本では桜前線が急上昇中です。
あなたはお花見にお出かけされますか。
陽気な春の暖かさの中、どこかへ旅に出かけて行きたくなられる方も多いのではないでしょうか。\(^o^)/

旅に関するエッセイや小説、或いは壮大な冒険の旅の物語は数多くありますが、凛が今回おススメいたします作品は少々異なります。
恋人ではなく分別ある中高年の男女の大人が、互いの夢の中で自由自在に旅を重ねてゆく物語で、純文学の旅はいかがでしょう。(^o^)
もちろんおどろおどろしい幻想小説とも異なりますので、怖い話が苦手な方も安心して楽しんでいただけますよ。

村田喜代子(むらた きよこ)氏の長編小説『屋根屋』(講談社、2014年、のち中公文庫、2022年)です。

凛からあなたへ二つの質問があります。

一つ目の質問です。
あなたのお住まいは戸建てですか。
建て主の意向によって建物の様相は各々で異なりますよね。
屋根ひとつとっても地域によっての異なりもありますし、その時々の流行であったり、業界の流れという影響もあり、また築年数によっても実に様々です。
最近では屋根にソーラーパネルを付けるなど住宅への話題は尽きません。

凛はマンションの中層階に居住しているためか、住宅の屋根に関しては日頃直接関りがなく暮らしています。
凛の親族宅は築年数の古い戸建てが多く、時折訪ねて行くと、夏は二階がものすごく暑くなったり、冬は一階の床が冷えたりします。
また風雨の音も直に気になりますね。
昨今の新しい戸建ては機能的にできているようなので、そのようなことはないかもしれませんね。(^-^)

二つ目の質問です。
あなたは寝ている時に夢を見ますか。
凛も夢は時々見ますが、起きる時には覚えていないことが多いものです。
たまに見た夢を覚えていても、起きて活動しているうちに忘れてしまうことがほとんどです。
人生を変えるほどの夢のお告げなどは、凛にはこれまでご縁がないですね~ (^-^;

今回の小説は、これら「屋根」と「夢」の二つが重なった物語です。
戸建てに住む専業主婦が屋根の修理を依頼した個人で営んでいる業者との何気ない会話の中から、お互いに見る夢の中で待ち合わせをして共に旅を始める、というお話です。

凛が持っている文庫本は、2022年7月25日発刊の初版本です。
凛は以前から村田喜代子氏の大ファンで、今回は街の中心部の駅ビルにある書店で文庫本を購入しました。

まず、文庫本の帯と表紙からご紹介します。
凛の持っている初版本の帯は赤い地色で、表表紙側には「さあ。飛びますか」と大きな文字で書かれています。
「夢を自在に操る屋根屋の永瀬と『私』は夢の中で落ち合い、共に旅を重ねてゆくが……」(同)
なぬなぬ、これは主婦と屋根の修理業者との恋愛、不倫小説なのか?
とちょっと興味をそそられますが。(*^^*)

帯の裏表紙側には、本文からの抜粋で、「眠るということは水深の深い所へ下りていくことに似ている。」(同)
「奥さんと私と、どっちが先に着くかはわかりまっせんが、向こうの屋根で落ち合いまっしょう。」(同)
「夢のドッキングですたい」(同)と。

カバーの裏表紙の解説文には、雨漏りの修理を依頼された永瀬は妻が亡くなった後、夢日記を付け始めたことが紹介されています。
主婦である「私」は永瀬と夢の中で旅を始め、「現実とのあわいの」(同)中の「場所なき場所」(同)で二人の時間を深めていくことになってゆきます。

カバーの表表紙は、大変格調高い絵で、日本画のようです。
二人の人間が一羽の鳥になって飛んでいる姿のように見えます。
それもそのはず、カバー画が江戸末期の狩野一信(かのう かずのぶ)の「五百羅漢図」で、六道・天(部分)、増上寺蔵であると紹介されています。
ひゃあ、お宝のような表紙ですね!\(^o^)/
カバーデザインは、毛利一枝(もうり かずえ)氏です。

カバーの裏表紙には、黒い鳥の羽が1本描かれています。
何やら意味深ですね……。
読後にはその意味がわかる仕掛けになっています。
是非、あなたが読まれてからのお楽しみに。(^-^)

解説は、芥川賞作家の池澤夏樹(いけざわ なつき)氏です。
文学界の重鎮の解説もなるほどと納得できます!(^_^)v

次に、内容に入ります。
専業主婦の「私」は、築18年になる木造二階建の住宅の雨漏りの修理を専門業者「永瀬工務店」に依頼しました。
業者は数あれど、隣町に住んでいる兄の紹介なので「私」や家族には安心感があったのも当然といえます。
「永瀬屋根屋」(文庫版初版、10頁他)は、50代半ばの大柄で、実直そうな職人さんです。

「私」はご主人と長男の三人家族で戸建てに住んでいます。
ご主人は仕事で大変忙しく、ゴルフが好きな会社員で不在がち、身長が180cmに成長した長男は塾通いで部活や勉学の日々を送っています。

家事に勤しんでいる専業主婦にとって、ダイニングキッチンは日常の居場所。
突然雨が降ったので、食卓テーブルで職人さんの休憩にお茶を提供するのはよくある光景でしょう。
「私」は永瀬から専門家としての屋根の話題を提供されます。

さらに、永瀬が妻を亡くして10年経つこと、彼が心に不安を抱えたことや、独立した過去の話などを「私」は彼から聞きます。
これまでの専業主婦として生きてきた日常に対して、静寂だった池の中にピシッと小さな石ころが投げ入れられたような、ほんの少しの変化が生じたことに「私」はまだ気づいていません。
しかし、まだここまでは常識の範囲であると凛は思います。

ところが、ここからが村田氏の物語の世界へと読者を誘ってくれるのです!
永瀬は治療の一環として、医者から「夢日記」を勧められ、毎日付けていることを「私」に話し始めます。
「夢日記?」(同、29頁)と「私」が尋ねます。
「どんなことを書くんですか」(同、30頁)
永瀬の提供する話題に「私」の興味は尽きません。

「屋根の上で彼は人形(ひとがた)の影絵になって動いている。」(同、35頁)
屋根の上で働いている永瀬の姿を表していますが、この一文が物語全体を象徴するのだな、と凛は捉えました。

「私」はフランスの町の屋根に上がっていた夢を見ました。
それには「私」が心にひっかかる何かがあったのかもしれません。
そのことを「私」は永瀬に話します。
永瀬は一気に話さず、徐々に「私」が気になるように夢の旅へと誘ってゆきます……。

いよいよ屋根の修理が終わり、支払いをしますが、その時に「私」と永瀬は夢の話を続けます。
二人には名残惜しさがあったのか、夢についての話題は現実味を帯びてきます。

これは決して「同床異夢」の元の意味ではありません。
永瀬と「私」が夢を見る状態は、互いに別々の住居で眠り、夢の向こうで落ち合って共に旅をしましょう、ということなのです。

「私」と永瀬の夢の話はどんどん飛躍していきます。
日本国内の歴史的建造物の屋根の話からフランスの大聖堂まで。
屋根にまつわる話題だけでなく、とんでもない方向へ進んでゆきますが……。

村田氏の力量は素晴らしいの一言です!(^o^)
物語の面白さを読者に直球で投げてくれます。

「私」とは誰なのか。
永瀬はどうなるのか。
二人には友情が芽生えたのか、若しくは大人の恋愛の対象として意識しているのか。
謎の部分もしっかり残してあるので、読後の余韻もあります。

さらに、屋根や建造物に関する蘊蓄的な要素も網羅されていますので、老若男女どなたにも楽しめる物語です。
文庫本の本文の後に、参考資料と村田氏のメッセージが掲載されています。
そこからは、村田氏のこの作品に対する真摯さが出ていることが大変よく伝わります。

作者の村田喜代子氏は、1977年、小説「水中の声」で第7回九州芸術祭文学賞最優秀作を受賞☆彡、本格的に執筆活動に入られました。

1987年、小説「鍋の中」で第97回芥川賞を受賞☆彡☆彡されました。
この作品は、1991年に黒澤明監督、リチャード・ギア主演『八月の狂詩曲』として映画化されています。

「水中の声」と「鍋の中」は、1987年に出版された『鍋の中』(文藝春秋、1987年、のち文春文庫、1990年)に収録されています。

その後のご活躍は大変素晴らしく、女流文学賞、紫式部賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞、泉鏡花文学賞他多数の受賞歴をお持ちです。☆彡☆彡☆彡
また、2007年に紫綬褒章、そして2016年には旭日章綬章を受けていらっしゃます。☆彡☆彡☆彡

最後に。
主婦の「私」と自宅の屋根の修理を担った「永瀬屋根屋」(同)との互いの夢の中で国内外を自在に旅をしていく物語です。
二人が飛び立った空間から自在に俯瞰して見るのは、屋根だけでなく、建造物の構造にも及びます。
「私」と永瀬にあるものは大人としての友情なのでしょうか。
または、そこから二人の愛情が芽生えていくのでしょうか。
二人が同時に見る「夢」はどんどん膨らみ、進んでゆきますが……。

そもそも時間と空間が自由自在に繰り広げられる「夢」とは一体何なのでしょうか。
「夢」をずっと見続けることはできないからこそ楽しくもあり、また儚いものです。
もしかしたら、物語全体が「夢」なのかもしれません。
原点に回帰する瞬間、「夢」の余韻をあなたはどのように受けとめるでしょう。

凛は村田喜代子氏の放つ文学世界に酔いしれました。
あなたもお休み前のひととき、村田氏の「夢」の物語を堪能しませんか。(^-^)

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2023年2月28日火曜日

やはりお金のことは気になりますよねえ ~原田ひ香『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

早いもので2023年も6分の1を過ごしました。
まだまだ寒さがありますが、街では春色のふんわりやさしい色合いのお洋服がディスプレイされています。

日本の春は、卒業・入学・入社・転勤など異動が多い季節です。
別れと出会いを体験することで、あなたを強くさせてくれるかもしれませんね。
これから新しい世界があなたを待っていま~す!\(^o^)/

などと期待感のある中、一方では、確定申告や医療費還付申告など税務署に関わる現実の世界があります。
今年から「インボイス制度」の導入により、事業者の方々には新たな知識と対応が必要となります。
コロナ融資の返済で厳しい環境に置かれ、対策を考えていらっしゃる方々も多いのではないかとお察しいたします。

また、昨年からあらゆる商品の物価の値上げが実施されています。
凛もスーパーにお買い物に行く度に、あれあれ?前回と価格が違うような気がするけど底値はいくらだったかなあ、と商品棚に付いているプライスカードを前にして考えることが増えました。(-_-;)
さらに、電気代やガス代などインフラ関係の値上げにより、生活者として圧迫を受けていらっしゃる方も多い昨今です。

スーパーやコンビニではセルフレジ設置のお店も日に日に増えてきています。
支払方法も現金払いだけではなく、クレジットカード払い、「~PAY」などスマホを用いた電子決済、交通系ICカード払いなどなど、実に様々な支払いのアイテムが増えてきました。

凛はお店で支払う時、お財布から直接現金を出すことが減ってきています。
キャッシュレスの時代が当たり前になってきていることの証でしょうか。
凛は金色の貯金箱を持っていますが、最近は小銭を入れる時に鳴るチャリ~ン♪という音を聞くことが減りましたねえ……。(^-^;
それは実に心地よい音なのですが……。

あなたは日頃お金とどのように向き合っていらっしゃいますか。

今回は、ずばり!お金の使い方をテーマにした小説をご紹介いたします。
原田ひ香(はらだ ひか)氏の連作長編小説『三千円の使いかた』(中央公論新社、2018年、のち中公文庫、2021年)です。

この小説の文庫本は、街のあらゆる書店の店頭に並べられていることが多く、大ベストセラーとなっています。
小説を読みながら節約できる、とネットでも話題になっているようです。

凛は大ベストセラーの本は話題になっている時は読まずにいて、後になり少し落ち着いてから読むタイプです。
理由は、流行している時のキラキラしたフィルターを外して、本当に多くの読者に読まれる価値のある本なのかを見定めたいからです。
ですから、この本が書店で平積みされている光景を横目にして、いつも後になってから読もう、と思っておりました。

ところがある日、タイトルが気になって、やはり読んでみようかな、と街の書店で文庫本を購入しました。
読みだしたら頁をめくる手が早くなり、あっという間に読了しました。

凛が持っている文庫本は、2023年1月25日付の第22刷発行です。
文庫本の初版が2021年8月25日ですので、うひゃあ、やはりすごく売れているのがわかりますよね~ (*'▽')

まず、文庫本の帯と表紙からご紹介いたします。
凛の文庫本の第22刷では、縦に幅広い帯で、表表紙側には、「2022年 年間ベストセラー第1位 80万部突破!」と大きく目立つように紹介されています。
民放の東海テレビ・フジテレビ系列の全国ネットでドラマ化されており、主演の葵 わかな(あおい わかな)さんの写真が掲載されています。

帯の裏表紙側には、こちらも大ベストセラー作家の垣谷美雨(かきや みう)氏が「絶賛!」とお言葉を寄せていらっしゃるではありませんか。
「知識が深まり絶対『元』もとれちゃう『節約』家族小説!」と帯の表現にひかれたのか、日頃からお金のことで気になっている凛を呼び寄せたのでした。

表紙には、千円札風の三枚のお札に絵が描かれています。
一番上は、夫婦と女の子が公園で笑顔でいる姿、真ん中には、女性が自宅らしき部屋でティータイムをしている姿が描かれています。
一番下は、キッチンにエプロン姿の女性が二人立ち、高齢者の女性が一人椅子に座っており、テーブルに並べられたたくさんのお料理を前にして三人で楽しく会話をしている様子が描かれています。
このような優しいタッチの絵が描かれた千円札ですと、お財布の中がほっこりしそうな感じがしますね~

カバーイラストは、ながしま ひろみ氏です。
カバーデザインは、田中 久子(たなか ひさこ)氏です。

裏表紙の説明文では、就職して一人暮らしをしている妹の美帆(みほ)の貯金が30万円、結婚している姉・真帆(まほ)の貯金額が600万円、母の智子(ともこ)の貯金が100万円弱、祖母の琴子(ことこ)の貯金は1千万円と具体的に数字で示されており、御厨(みくりや)家の女性陣がどのように今後の人生を歩んでいくのかということが紹介されています。

「お金を貯めて、どう使うのか?」(文庫本、22刷)
この小説はお金に関する指南書なのでしょうか。
なるほど、「読みたい!」と読者の興味をひきますよね。(^○^)
第3話は、「目指せ!貯金一千万!」
第4話は、「費用対効果」
第5話は、「熟年離婚の経済学」
第6話は、「節約家の人々」(以上、同書、3頁) 
目次からも大変興味がそそられますよね。

解説は、作家の垣谷 美雨氏です。
「『他人(ひと)は他人、自分は自分』と、あなたは心の底から割り切れていますか?」(同書、339頁)というタイトルの解説です。
垣谷氏は帯にも登場されていらっしゃいますが、この解説は是非ともおすすめします!(^^)v
垣谷氏の創作に関わる意見も納得のいく文章で描かれていますよ。
垣谷氏のファン必読です! (^o^)

では、内容に入ります。
第1話は、御厨家の次女、美帆の物語です。
彼女は中学生の時に、祖母の琴子から「三千円の使い方」(同書、9頁)をどのようにするのか、それは人生を決めるほどの大きな意味を成す、というアドバイスを受け取ったことを思い出しました。
24歳の彼女は就職して念願の一人暮らしを始めたものの、職場で先輩が退職を余儀なくされる姿を目にして、先々のことを真剣に考えることになります。
ここから御厨家の人々のお金に関しての物語が始まります。

第2話は、祖母の琴子の物語です。
73歳の琴子は1千万円を貯金していますが、老いた先のことを不安に思い、仕事を探そうかと考えます。

第3話では、美帆の姉の真帆が中心となります。
真帆は結婚を機に証券会社を辞めて専業主婦となり、公務員である夫と娘の3歳になる佐帆(さほ)と三人で暮らしています。
彼女は娘の子育てをしながら節約に励み、「プチ稼ぎ」や「ポイ活」(同書、114頁)に勤しんでおりました。
短大時代の友人たちとの女子会での会話から、幸せだと思っていた結婚生活に不安がよぎりました。

第4話では、祖母の琴子と知り合った40代の男性が登場します。
彼は、定職に就かず、自由を求めてバイト生活をしています。
所謂しがらみに束縛されたくないタイプの男性ですが、交際している彼女との今後がどうなりますか……。

第5話は、母親の智子の物語になります。
智子は会社員の夫の妻として、戸建てに住み、夫と二人暮らしで専業主婦を続けていましたが、55歳で手術を終えて退院した時、目の前の家事についてあらためて見つめます。
友人が熟年離婚をすることになり、智子は今後の人生について熟慮することになりました。

最終話では、美穂と交際している男性が背負っている大学時代の奨学金返済の問題から、御厨家の人々は解決策をどのように見出すのかが描かれています。

6話を読んで良かった点として、三点あげます。
一点目は、御厨家の女性たちが主となって、人生のパートナーとの問題、結婚、仕事、暮らし、健康、住宅、老後など様々な問題を抱えて生きており、幅広い年代ですので、彼女たちが直面している問題のどこかに当てはまる点を発見し、共感を得ることです。
二点目として、家計や年金、貯蓄額など具体的な数字で表してありますので、そうなのか、と読者に直接伝わることです。
三点目は、物語に登場する専門家の助言が読者に活かされていくことです。

凛が気づいたのが、御厨家のご主人は常に脇役である、ということですね。
第4話では、祖母の琴子と知り合った男性が登場してきますが、御厨家の智子のご主人として、また真帆と美帆の父親の視点で描かれる章を読みたくなりました。
定年を前にして現役で働いている男性の意見も聞きないなあ、と素直に思った凛です。
合わせて、真帆のご主人、現役公務員としての視点で読みたいな、と思います。

家族の姿はどんどん変化していくものです。
御厨家の数年後の姿の続編も期待したいです。

男性の読者には、女性たちが暮らしそのものや暮らし方について、どのように考えているのか、彼女たちの本音が伝わってくるのではないか、と大いに期待いたします。

作者の原田ひ香氏については、「ラジオはお好き?」(ココ)の項でご紹介しています。
是非ご覧くださいね~ (^o^)

最後に。
全編にわたり、お金を背景にして、登場人物の生き方のどこかに読者の共感を得られる物語です。
お金は人生の目的か、手段なのか。
読者に、人生の主役は何なのかという大切なことをあらためてつきつけます。
「ラジオ小説」でご活躍された原田ひ香氏ならではの伝達の具体性が効果を表している小説である、と凛は考えます。
本当にそうだよね~、と多くの読者に共感を得られる作品であることに納得いたしました。

あなたは三千円をどのように使われますか。
凛は本の購入に充てるでしょうねえ。 (^_-)-☆

今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。 (^-^)

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2023年1月28日土曜日

えぐり、えぐられて ~井上荒野『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版、2019年、のち朝日文庫、2022年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「鬼は~外、福は~内」
2月3日は節分ですね。

あなたは節分に豆まきをされますか。
凛は毎年豆まきをしています。
今年も鬼のお面が入った豆を準備していますよ~

「大豆は香ばしくて美味しいなあ」と毎年思っています。
一年経つごとにお口に入れる大豆の数が増えていくことよりも、大豆の美味しさのほうが気になる凛です。(#^^#)
何はともあれ、今年も家内安全、無病息災を願って豆まきをします!

鬼は怖いもの。
凛は極力鬼とは関わり合いたくないですねえ。(>_<)
中には怖いもの見たさで、鬼と出合いたいもいらっしゃるかもしれません。
あなたはいかがですか。

今回は、題名に「鬼」がつく小説をご紹介します。
井上荒野氏の長編小説『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版、2019年、のち朝日文庫、2021年)です。

この作品は、朝日新聞出版の季刊誌『小説トリッパー』の2016年冬号~2018年秋号まで連載された後に単行本化、さらに文庫化されました。
映画化されて2022年11月11日より公開されています。

井上荒野(いのうえ あれの)氏の父親である井上光晴(いのうえ みつはる)氏と、瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)氏得度する前の瀬戸内晴美(せとうち はるみ)氏時代からの不倫関係が基になって創作された小説です。

小説家同士の不倫を、井上光晴氏の妻の視点、瀬戸内氏の視点で描くという形をとっていますが、井上氏の娘である荒野氏の目線で描いているという、幾重にも絡んだ複雑な構造に読者が対峙することになります。

鬼は鬼でも、日本の昔話に出てくるような鬼さんとは違います。
「えーい、悪い子は食ってしまうぞ!」というような鬼さんではありません。
人の心の奥底の誰も踏み入れることのできない深いところに潜んでいるもの……。
ある意味において、最も怖~い鬼ではないでしょうか。ひゃあ……。(-_-;)

凛が持っている文庫本は、2022年5月20日付の第6刷です。
近所の書店で購入しました。

まずは、文庫本の帯と表紙からご紹介いたします。
凛が持っている第6刷では、裾まで長い黒い服をまとった女性が背中をこちらに向けて跪いて、両手をあげて踊るようなポーズをとっている絵になっています。

カバーの装幀は、芥 陽子(あくた ようこ)氏です。
カバーの装画は、Nikoleta Sekulovic氏です。


文庫本の帯の表紙側は、廣木隆一(ひろき りゅういち)監督による映画化の紹介になっています。
出演者の寺島しのぶ(てらしま しのぶ)さん、豊川悦司(とよかわ えつし)さん、広末涼子(ひろすえ りょうこ)さんの三人の顔写真が載っています。

また、瀬戸内寂聴氏からのメッセージ、「作者の父 井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった。」(同帯)と明記されています。
不倫関係は事実だった、と瀬戸内氏ご本人が証言されているのですね。

帯の裏表紙側には、作家・川上弘美(かわかみ ひろみ)氏による文庫本の解説から抜粋されて掲載されています。
「本書は、『井上光晴の妻』『瀬戸内寂聴』という二人の内面のみを描くことを目的にした小説ではない。」(同帯)
読者にとって最も気になる部分をずばり指摘されて、なるほどなあと納得できます。

つまりどういうことかというと、父親と不倫を重ねた女性作家との関係と、二人を見つめる母親の愛憎と葛藤を描くにあたり、作家である井上荒野氏自身と、両親との娘としての視点をどのように絡めて小説に表したのだろうか、という疑問が読者に容赦なく迫ってくるのです。
要するに、小説家であるけれど、実の娘として父親の不倫を描くことは苦しくないのだろうか、と一般読者として凛は率直に思うわけなのですよ。(-_-;)
荒野氏は作家としてどのように乗り越えて作品に仕上げたのでしょう。

帯には川上氏の解説の続きが載っており、「実際の父母とはことなるかれらを描くことは、実際の父母と重なってみえる誰かを描くことよりも、『本物』のかれらを表現することになるのだろうし、(以下、省略)。」(同帯)

文庫本の裏表紙には、「至高の情愛に終わりはあるのか?」と掲載されています。
映画化に伴って最新販売の文庫本の表紙や帯が変わっているようですので何卒ご了承くださいませ。

次に、内容に入ります。
作品は、帯による瀬戸内寂聴氏の言葉で示されているように、実在の作家たちの実際の不倫を基にした愛憎劇です。

井上光晴氏と想定できる白木篤郎(しらき あつろう)という男性と、瀬戸内晴美氏と想定できる長内みはる(おさない みはる)という女性との出会いが「Chaputer1 1966 春」という章に、「みはる」の視点で描かれています。
白木の徳島での講演旅行に随行するみはるの着物姿を、阿波浄瑠璃の二体の人形はどのような面持ちで見下ろしていたのでしょうか。

二人の出逢いには、白木の切り札ともいえる「トランプ」が出てきます。
白木によるみはるの今後の仕事についてのトランプ占いの結果は……。
このときの占いの結果について、当時暮らしていた真二(しんじ)に聞かれたとき、みはるは「本当のことは言わなかった。」(文庫本、21頁)という表現から、明らかにみはるの心は既に決まっていることがわかります。
白木とみはる、二人の関係は長年にわたります。

同じ「Chaputer1 1966 春」には、白木の妻の笙子(しょうこ)の視点で描かれてもいます。
幼稚園に通う海里(かいり)ちゃんの子育て中で、お手伝いのヤエさんも交えながら、作家の妻として家庭を守る主婦を務めています。
この海里ちゃんが後の井上荒野氏になります。
 
笙子には二人目の子どもができ、白木との出会いから結婚に至るまでを振り返っています。
文机で白木の助手を担いながら、創作もします。
作家という目線で、笙子の内面はどのように膨らんでいくのでしょうか。

白木にはみはるとの関係だけではなく、様々な女性たちとの関係が消えては現われます。
それらのことが豪快であるのか、逆に繊細なのかは凛にはわかりませんが、白木という一人の男の生き様が重くもあり、哀しくはかなげな印象すらいたします。

そして、長内みはるは得度して、長内寂光(おさない じゃくこう)になり、誰もが知る著名人となりました。
彼女が得度するに至るには、深い理由がありました。

やがて海里は成長し、小説の新人賞を受賞します。
寂光は優しいまなざしで海里を見つめます。
白木は病に侵されることになりますが……。

文庫本の解説は「訣別」という題名で、川上弘美氏が綴っています。
作家の視点から読者の疑問について、丁寧に解説されていますので、是非お読みくださいね。
同名の映画は凛はまだ観ていませんが、必ず観たいですね~ (^○^)

作者の井上荒野氏については、「昭和歌謡と恋愛模様」(ココ)の項でご紹介していますので、今回は省略させていただきますね。
彼女の作品にふれる度に素晴らしい作家であることを認識させられる凛です。

まとめ。
白木篤郎と長内みはるの不倫から生じた白木の妻の笙子との複雑な関係を、白木の娘の海里が成長して作家・井上荒野として小説に描いていることを読者は認識させられます。
生身をえぐられるほどの鋭利な現実と、長い時間の経過がタテ・ヨコ・ナナメに何重にも絡み合い、終いにはぐるぐると廻ります。
糸が決して緩むことなく、常にピンと張り詰めた状態で「生」を必死で営んでいる登場人物たち。
作中では「生」と隣り合わせである「死」についても言及しています。
荒野氏が編んだリアルとバーチャルの間を、読者は幾度となく往復しながら向き合っていかなければなりません。

読後は何かがふっきれるほどの清々しい晴天になるのか、或いは荒天になるのか、それは読み手であるあなたの受けとめ方次第でありましょう。
「鬼」の底知れぬ恐ろしさを知りたいあなたに、是非読書の醍醐味を味わっていただきたいです。

節分には豆まきをして邪気を払いたいですね~(^O^)/
今夜も凛からあなたにおススメの一冊でした。(^-^)

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2023年1月9日月曜日

ホテルマンと薬剤師が大活躍しますよ! ~塔山 郁『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫、2019年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださりまして、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2023年がスタートしました。
新たな気持ちで臨みますので、今年も凛のりんりんらいぶらり~をよろしくお願いいたしますね。m(_ _)m

あなたはどのような新年を迎えていらっしゃいますか。
凛は特に体調の変化などもなく、変わりなく過ごしています。

この世界には様々な病気が存在しますね。
極力病気とは関わらずにいたいものですが、なかなかそうも言っていられません。
うがい、手洗いなどで予防しているつもりでも、気づかないうちに病に侵されていることもあります。
病気や怪我などは「ある日、突然に」身の周りに起こるということがほとんどではないでしょうか。

あなたは調剤薬局にお世話になったことがおありでしょうか。
調剤薬局には薬剤師の方が働いていらっしゃいます。
或いは、市販薬を販売している薬局にも薬剤師の方がいらっしゃいますね。
中には、生まれてこのかた一度も薬剤師からお薬をいただいたことがありません、という方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方は凛の周囲には皆無ですねえ。(^-^;

日本では、基本的に医薬分業というシステムになっています。
診察後に医者から処方箋をいただき、調剤薬局に処方箋を提出してお薬を受け取ることになっています。
その際、薬剤師から丁寧な説明を受けますよね。
帰り道では安堵感が広がると共に、健康の大切さを痛感することが多い凛です。

あなたは調剤薬局や薬剤師にまつわる話に関心がありますか。
凛が今回おすすめする小説は、主人公のホテルマンの男性が、調剤薬局勤務の薬剤師の女性と共に身近に起きた事件に挑んでいきながら、薬や薬剤師に関する情報も得ていくというミステリー小説です。
日常に起こりそうな事件を通して、ホテルマンの職場の実情と合わせて、薬剤師の活躍を知ることができます。
思わず二人を応援したくなる4篇の謎解きに夢中になれますよ~

塔山 郁(とうやま かおる)氏のミステリー小説『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫、2019年)です。
毒島花織には、「ぶすじま かおり」とルビが書かれています。
この作品は、4篇の中で、第1話と第2話は宝島社から刊行されている雑誌『『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK Vol.21』と同誌のVol.23、2誌とも2018年の初出で、のち改題、第3話と第4話は文庫本書き下ろしとなっています。

凛が持っている文庫本は、2019年8月刊行の第3刷です。
初版が同年5月ですから、ファンが多いことがわかりますね。(^-^)

まずは、文庫本の帯と表紙の紹介からいたします。
第3刷では、オレンジ色の帯の表表紙側に「その薬にはウラがある」と大きな文字で描かれています。
右上の丸い枠の中に、「病院・薬剤師・薬との付き合い方もわかります」なるほど、まるで健康雑誌の棚が合いそうなメッセージですね。
「「このミス」大賞シリーズ累計3100万部突破!」ということは、現在ではさらに増えていることが予想できます。

文庫本の裏表紙の説明文には、ホテルマンの水尾は薬剤師の毒島とともに、「薬にまつわる様々な事件に挑む!」と書かれています。

文庫本の表紙には、毒島花織と思われる白衣姿で、長い髪をひとつにまとめ、黒縁の眼鏡をかけた女性が両手を組んで、とても真剣な顔で立っています。
手には錠剤を包んだPTP包装シートを持っています。
彼女の後ろには、薬品が入っている茶色や灰色の瓶がたくさん並んでいます。

表紙のカバーイラストは、遠藤拓人(えんどう たくと)氏です。
カバーデザインは、鈴木大輔(すずき だいすけ、ソウルデザイン)氏です。

次に、内容に入ります。
第1話に入る前に、短いストーリーがあります。
神楽坂にあるホテル・ミネルヴァに勤務する水尾爽太(みずお そうた)は、昼休みにナポリタンを食べに入った喫茶店「〈風花〉(かぜはな)」(文庫本、7頁)で黒縁眼鏡の女性を初めて見ます。
二人の女性が会話していますが、黒縁眼鏡の女性が突然会話に割り込んできて……。

第一話は、「笑わない薬剤師の健康診断」(同、17頁)です。
水尾爽太は足の痒みに襲われて我慢できなかったため、勤務先のホテルの休み時間を利用してクリニックに行きます。
彼はクリニックから出された処方箋を持って、「〈どうめき薬局・どちらの処方箋でも受け付けます〉」(26頁)の看板を見つけて、薬を受け取ることにしました。
クリニックの院長の診断に疑問をもった薬剤師の毒島さんの説明が大変にお見事でして、そこから思わぬ展開があります。

第二話は、「お節介な薬剤師の受診勧奨」(同、71頁)です。
フロント係を担当している水尾は、娘と二人で宿泊している母親のほうからクレームを受けました。
二人で外出している間に、部屋に置いていたアトピー性皮膚炎の塗り薬が紛失しているということです。
外出から戻ったのが土曜日の午後3時過ぎだったので、病院や調剤薬局はほとんど閉まっているところが多いので、さてどうしたらよいでしょう。

第三話は、「不安な薬剤師の処方解析」(同、133頁)です。
水尾は、喫茶店風花でどうめき薬局に勤務する薬剤師の刑部(おさかべ)さんから毒島さんの私的な部分を聞きます。
刑部さんは薬局のご常連さんの70代の女性から「薬が足りないのですぐに来て欲しい」という緊急の電話を受けたので、その方の自宅まで説明しに行くことになったというのです。
水尾は刑部さんと一緒に電話の主の女性の自宅まで行くことにしました。
玄関のインターホンを鳴らして、やっと出てきたのは電話した女性ではなく、こわもての男性でした。

第四話は、「怒れる薬剤師の疑義照会」(同、177頁)です。
水尾が第一話で受診したクリニックには或る疑惑があり、水尾と毒島さんは銀座まで行くことになりますが……。

ミステリー小説なのでこのくらいにします。
うーん、もっと先が読みたい!(^-^;
と思われたあなたは是非文庫本でお読みくださいね。

作者の塔山 郁氏は、ミステリー小説『毒殺魔の教室』(宝島社、2009年、のち宝島社文庫、上下巻、2010年)で、第7回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞☆彡を受賞されています。
第3刷の帯の裏表紙側には、受賞作の『毒殺魔の教室』が大きな文字で描いてあります。
ミステリー作家としてご活躍されています。

今回の作品は「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズ化されていて、全5巻中の第1巻目です。
5巻とも全て文庫本です。
最新刊は、同社から2022年12月に刊行されたばかりの『薬は毒ほど効かぬ 薬剤師・毒島花織の名推理』です。
第1巻で水尾は毒島さんと友人となりましたが、この後の展開が気になりますね。

一般的に意外と知られていない薬剤師の担う役割の多いことに凛は驚きました。
お薬を受け取る待ち時間ばかり気にせずに、調剤薬局の見方が少し変わるかもしれませんよ。
「あら、そうだったのかぁ」と薬に関する基礎的な知識も得られます。

また、薬剤師と並行して、主人公水尾のホテルマンとしての責務の大変さに彼を応援したくなります。
ホテルに勤務する他のスタッフとの人間関係も描かれています。
つまり、この作品は調剤薬局に勤務する薬剤師と、ホテルに勤務するホテルマンのお仕事小説ともいえますね。(^○^)

水尾と毒島さんとの関係も気になるところです。
シリーズ化されているので、凛も続きを読みたいです。

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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2022年10月29日土曜日

表情を読み取りながら楽しめるミステリー ~平野啓一郎『ある男』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
どうぞごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

こんばんは。(^-^)
あなたはお変わりありませんか。
凛はまたもや所用のために、大変ご無沙汰いたしております。m(_ _)m

前回の2作品ご紹介いたしました季節の盛夏はとっくに過ぎ去り、秋も深まっていく今日この頃です。
四季のある日本では三か月毎に季節が変わります。
半袖から長袖へ、朝晩は軽めのコートも必需品となりました。
本当に月日の経つのは早いものですねえ。

秋の夜長にミステリー小説を楽しまれていらっしゃるあなたへおすすめの小説があります。
芥川賞受賞・純文学作家が描くミステリー小説はいかがでしょう。
謎解きはもちろんのことですが、人物像が深く描かれており、登場人物の心理状態を知りたくなる世界に浸ってみませんか。

読者を先へ先へと導いてくれる小説をご紹介いたしましょう。
平野啓一郎(ひらの けいいちろう)氏の長編小説『ある男』(文藝春秋、2018年、のち文春文庫、2021年)です。

凛が持っている文庫本は、2021年10月15日付で第2刷です。
文庫本の第1刷が2021年9月10日付ですので、平野氏が如何に人気作家であることが良くわかりますね。

まずは、文庫本の帯の紹介です。
凛が持っている第2刷の文庫本の帯には、「読売文学賞受賞の感動作 映画化決定!(2022年公開)」と紹介されています。
「愛したはずの夫は全くの別人だった──」
書店でこの文庫本を手にして、ふむふむ、妻にとって夫の正体は一体何者だったのだろう?という素朴な疑問がわくように誘導されますよね!

帯には映画の出演者である安藤サクラさん、妻夫木聡さん、窪田正孝さんの写真が掲載されています。
凛が好きな俳優さんばかりなので映画も楽しみたいなと思いました。

帯の裏には「愛にとって過去とは何か?人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。」
なるほど、純文学の平野啓一郎氏が描くミステリー小説なのだな、という期待感が出ます。

裏表紙の説明文からは、再婚して幸せな家庭を築いていた折、夫がある日突然事故で亡くなるのですが、夫が「全くの別人だったという衝撃の事実が……。」と興味をそそる文言が。
果たして夫は誰だったのか?
残された妻の葛藤が容易に想像できます。

文庫本の表紙は、積み木のように重ねて並べた男性のような人物が腰から折り曲げて佇み、頭を抱えて悩んでいるように思えます。
まるでモザイクのように見えます。
カバー彫刻は、アントニー・ゴームリー氏です。
デザインは、大久保明子(おおくぼ あきこ)氏です。

小説の内容に入る前に、予めひと言述べさせていただきます。
正直に告白いたしますが、凛は平野啓一郎氏の小説が長い間苦手でした。
平野氏が大学在学中の芥川賞受賞作品☆彡☆彡である小説『日触』(新潮社、1998年、のち新潮文庫、20002年)を読了して以来ですから、きっと食わず嫌いだったのかもしれません。
最後まで読まずに途中であきらめたこともしばしばありました。
凛にはなかなか平野氏作品の世界に入れなかったのです。

その理由はわかりませんが、凛とは合わなかったということでしょうか。
悲しいかな、凛の読書能力が平野氏の世界に到達できていなかったのでしょうね。

今回の作品の前の長編小説『マチネの終わりに』(毎日新聞出版、2016年、のち文春文庫、2019年)は最後まで読みましたが、恋愛小説にも関わらずあまり感動もなく、映画も観ておりません。
やはり合わないのかなあ、と……。(-_-;)

ところが、今回の『ある男』は表紙のデザインから入って、何だかとても面白そう、とビビビときたのです!
「凛さ~ん、読んでくださ~い。この作品は必ず楽しませてくれますからね!」と近所の書店の棚に並べられている文庫本が凛を呼んでいるのがわかりました。(^_^)v
凛は文庫本から届いた声を聴き、即座にレジに向かいました。

次に、作品の内容に入ります。
凛は映画出演の俳優さんたちを思い浮かべながら読みました。
苦手と思っていた作家の場合、顔の設定が明確になって読みやすいのではないか、と思ったからなのです。

「序」で、物語の主人公は「城戸さん」であると、「私」が語っています。
城戸(きど)という弁護士が出てきて、「私」との接点を語りますが、そこから怪しさもありますね。
この「序」の項は読了後、また戻って読み返す読者も多いかと思います。
凛は何度も読み返しました。

宮崎県のS市に在する老舗の文房具屋を営む実家に、離婚して一人息子の悠人(ゆうと)を連れて出戻りしてきた里枝(りえ)は、移住して林業に従事した谷口大祐(たにぐち だいすけ)と再婚しました。
里枝は横浜の大学に進学、就職し、建築家の卵と結婚していましたが、次男の遼(りょう)を病気で亡くしたことで夫と意見が合わずに離婚していましたので再婚になります。

里枝の実家の父親が急逝したこともあり、彼女は宮崎県の実家に戻ってくることを決意しました。
再婚した谷口大祐との間には花(はな)という女の子も生まれています。
里枝は実家の母親と同居し、文房具店を切り盛りしながら一家五人で暮らしていました。

谷口大祐の出自は群馬県の伊香保温泉にある旅館の次男坊ということでした。
彼は兄と折り合いが合わず、実家を出ました。
里枝と結婚した大祐は、真面目に働き、林業の社長さんにも気に入られていましたが、山で事故に遭い、突然亡くなってしまいました。

連絡を受けた大祐の兄の谷口恭一(たにぐち きょういち)が里枝の家を訪れてみると、弟であったはずの大祐の遺影が違うことに気がつきます。
では、亡くなった夫は誰なのでしょうか?
里枝と暮らしていた夫は「"X"」となっていました……。(文庫本、87頁以降)

横浜市在住の弁護士・城戸章良(きど あきら)は里枝の離婚調停の代理人を受けていた関係で、相談を受けたのでした。
そこから城戸の活躍が始まります。
城戸自身も出自と家庭内の問題を抱えながら、多忙な中、各地を飛び回って調べてゆきますが……。

予想だにしなかった事実が次々と明らかになっていく中で、里枝にも城戸にも疲労が溜まってゆきます。
さらに里枝の息子の悠人も育ちざかりな故、問題が出てきます。
過去と現在が複雑に絡まり、進んでは立ち止まり、また進んでゆきます。
凛も読みながら、先がとても気になり、頁をめくる動きが早くなりました。(^○^)

「序」では城戸が主人公として扱っていますが、凛は、城戸だけでなく里枝や大祐もこの物語の主人公であると思いました。
三人の登場人物の顔を、里枝役は安藤サクラさん、谷口大祐役は窪田正孝さん、城戸役は妻夫木聡さんという俳優さんたちに想定して読むと、表情など具体性があって内容が理解しやすかったです。
映画の俳優さんたちはどのような演技をするのかな、と映像を予想しながら読むという楽しみもありました。

例えば、文庫本97頁で、里枝は名無しの夫"X"となった遺影の目を見つめていますが、そのときの里枝の表情はどんなものであったでしょうか。
演じていらっしゃる安藤サクラさんの表情を想像すると、原作と映画との二重の楽しみが増えますね~ (^o^)

後はあなたが読まれてのお楽しみに。

作者の平野啓一郎氏は、前出しました小説『日触』を初めとして多くの作品を世に出されています。
お若い頃から作家として大活躍されていらっしゃいます!

今回の小説『ある男』は、2018年第70回読売文学賞☆彡を受賞されています。\(^o^)/
前年の2017年、小説『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞☆彡を受賞されています。

平野氏は「分人(ぶんじん)主義という独自の考え方をもたれており、上記の二作品もその中で存在を示されています。
これら二作品の先には小説『本心』(文藝春秋、2021年)があります。
一人の人間に備えもった様々な多面性を平野氏の視点で追求されていらっしゃるのでしょう。

凛は昨年、講演会で平野氏を直に拝見いたしました。
とても穏やかな表情でしたが、明確にご自分の意見をわかりやすく伝えていらっしゃいました。
今年47歳になられた平野啓一郎という大人の作家の作品を、過去の作品と共に読んでみようと思っています。
新たな発見を見出すのもまた読書の楽しみの一つですね。(^-^)

小説と同名作品の映画は、石川慶(いしかわ けい)監督、脚本は向井康介(むかい こうすけ)氏です。
11月18日(金)全国ロードショウです。
映画の公式サイトは、こちらです。
公開がとても楽しみですね~!
最近書店に並べられている文庫本の帯も映画の紹介のデザインに変わっていました。

今夜も凛からあなたへおすすめの一冊でした。(^-^)

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