2025年8月31日日曜日

美味しいパンには愛があります! ~土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)~

こんばんは。南城 凛(みじょう りん)です。
今宵も凛のりんりんらいぶらり~にようこそお越しくださり、ありがとうございます。
お休み前のひとときに、本の話題でごゆっくりとおくつろぎくださいませ。(^-^)

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

いや~、今年の夏も暑いですね!!
「暑かった」と過去形ではなくて、現在も進行中の暑さです。( ;∀;)

あなたはご体調にお変わりありませんか?
日中の気温が40℃だなんて、冗談では済ませられなくなってきましたよ。
「そのうち40℃になるかもしれませんねえ」と初夏になった頃に話していましたが、本当に40℃になるとは……。
暑さ対策でエアコンが必需品になりましたね。

9月以降もまだまだこの暑さは続くのでしょうか。
お~い、日本の秋さ~ん!
涼しい秋はいつ頃訪れるのですかぁ。 (^o^)丿
この暑さでへこたれるわけにはいきません。
美味しいものを食べて、ほっこりしたいものですねえ。(^O^)

あなたはパンはお好きでしょうか。
凛はパンが大好きです!
パン屋さんに入ると、香ばしいパンがずらりと並んでいますよね。
凛もお気に入りのパン屋さんで好みのパンを選んでいるときの幸福感がたまりません!!

今回ご紹介いたします作品は、パン屋でアルバイトをしている大学生の女性が日常で遭遇した謎を解く「美味しい」ミステリー小説です。
土屋(つちや)うさぎ氏の連作ミステリー小説『謎の香りはパン屋から』(宝島社、2025年)です。
2024年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作です。☆彡
単行本のみの刊行となっています。

この作品は今年の1月24日に発行されてから人気が広がりました。
既に読まれている方も多くいらっしゃるでしょう。
ミステリーといっても全然おどろおどろしい話ではありません。
日常の身近なことや、ふとしたことから生じる疑問についての謎解きです。

また、パン屋で働くパン職人さんたちのお仕事小説でもあります。
クロワッサンやカレーパンなど人気のあるパンの紹介やプロのパン作りについてなど、パンが食べたくなる要素がふんだんに盛り込まれています。
読みながら、焼きたての香ばしいパンをほおばりたくなります。(^O^)

はじめに、この単行本の入手についてです。
凛が聴いている地元のラジオ番組の本の紹介コーナーに、著者の土屋うさぎ氏が電話で登場したことで書店に直行したのでした。
各書店ではこの本が目立つようにたくさん並べられていて凛は気になっていたのですが、ラジオで著者ご本人の生の声を聴いて、読みたくなったのは言うまでもありません。
凛が持っている本は、2025年1月24日付の初版です。

次に、帯や表紙についてです。
一番目は、帯について。
帯の表表紙側には、もちろん目立つように「『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作」とデーンと書いてあります。
その下に「クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン… 焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!」
さらに下には、「選考委員絶賛!」と翻訳家・書評家の大森 望(おおもり のぞみ)氏「全体を包む空気感が魅力的」をはじめ、著名な方々のメッセージが書いてあります。(以上、初版本帯)

帯の裏表紙側には、「"美味しい"ミステリー、召し上がれ!」と8名の書店員さんからのメッセージが実名入りで掲載されています。
こちらも本作品への愛を感じてやみません。
小説の読後に再度目を通すと「はい、確かに!」と納得した凛です。

二番目は、表紙について。
全体の色が焼いたパンの色を彷彿とさせる茶色の濃淡となっているのが印象的です。
中心部に主人公らしき女性が、オーブンから出したトレーの焼きたてのパンを店内のかごに並べている絵となっています。
女性の顔は笑顔で、パンに対する愛情が描かれています。
表紙を見ただけで、凛はパンが食べたくなりますね。 (^^;

装画は、出水(でみず)ぽすか氏です。
扉絵は、著者の土屋うさぎ氏です。
装幀は、菊池 祐(きくち ゆう)氏です。

それでは、内容に入ります。
1頁の目次を見ますと、五つの章とエピローグがあります。
各章のタイトルに思わず「パンが食べた~い!」と食欲と葛藤する凛でした。(^^;

第一章は、「焦げたクロワッサン」
第二章は、「夢見るフランスパン」
第三章は、「恋するシナモンロール」
第四章は、「さよならチョココロネ」
第五章は、「思い出のカレーパン」
最後に「エピローグ」となっています。(同書)

どのパンも好物ですね~
あなたはどのパンがお好きですか?

では、あらすじです。
第一章から。
主人公の市倉小春(いちくら こはる)は、大阪の豊中市の大学一年生で、漫画家を目指しています。
彼女は大学に入学した春から一人暮らしを始めたので、同市内にあるパン屋の『ノスティモ』でアルバイトをすることにしました。
何故パン屋のアルバイトを始めたかというと、「売れ残りのパンが貰えるからだ。」です。(同書、6頁)

ノスティモは、従業員数15名未満の個人経営店で、パンの他にケーキも製造しています。
二階にカフェがあり、「居心地のよさと上品さが合わさった」「オシャレなお店」(同書、同頁)です。
「青を基調とした店内は、いつもパンとコーヒーの香りで満たされており、大学の近くにあるため学生にも人気がある。」(同書、同頁)
ここを読んだだけでも行ってみたくなるお店ですね~

ノスティモは最寄りの駅「石橋阪大前駅から徒歩十分」(同書、同頁)と書いてありますので、もしかしたら実在する店舗なのでは?と思ってしまいます。
四十代半ばの男性、堂前(どうまえ)店長と、女性社員の福尾(ふくお)さんたちとのコミュニケーションもなかなか良い雰囲気で、ぎすぎすしていない人間関係が出ています。

美味しいパンやケーキには、作り手側の感情は経営戦略のひとつとして大切な要素であると凛は考えます。
とはいうものの、凛はパン屋やケーキ屋を営んだことはありませんので、あくまでも消費者側から見ての考え方です。
やはり美味しさあってのパンやケーキではないでしょうか。

小春の親友、由貴子(ゆきこ)は、先にノスティモにアルバイトとして入っており、小春にアルバイト先として紹介しました。
小春にとっては「恩人」(同書、15頁)の由貴子でした。
仲良しの二人だったので、小春にとってはいつまでもノスティモで一緒にアルバイトできると信じていたのでした。

ところが、由貴子がノスティモを辞めると言い出しました。
そこから二人には少しずつ距離感が出てきます。

『想剣演舞』(そうけんえんぶ)(同書、17頁)のライブビューイングを一緒に観るという約束をしていて、二人とも楽しみにしていました。
ところが、前日になって急に由貴子が行けなくなったと小春に告げます。
その理由は、由貴子がノスティモのシフトに入ることになったと言うのです。
シフト表では個性的なレナ先輩が入る予定になっていたはずです。

何故に、由貴子はレナ先輩の変わりに急にシフトを交替することになったのか?
これが第一章での謎解きのテーマになります。
この謎解きから、何故に由貴子がノスティモを辞めることになるのか?につながります。

レナ先輩の代わりにシフトの交替をすることになったと主張する由貴子。
悶々とした感情の中、サンドイッチに用いるたまごフィリングの状態があまりよくなかったことからも余計に小春の内面は落ち着きません。

合コンがあったからシフトに入れなかったというレナ先輩と小春とのやりとり。
レナ先輩は天王寺動物園に行った動画を二人のスマホに送信しましたが、由貴子はスマホの充電が少なくポケットの中にしまい込みました。

ライブビューイングが観られなかった由貴子のために、小春は由貴子の部屋でライブの見逃し配信を一緒に観ようと提案しました。
小春からの提案を受けた由貴子とバイトからの帰り道のこと。
小春は由貴子に、サーティワンのアイスクリームの誕生日無料クーポン券を使ったのかと尋ねます。

「あっ!使うの忘れてた」(同書、29頁)と由貴子の意外な返事。
そんなのあり得ない。
一人暮らしの学生にとって、無料のクーポン券は大変貴重なものなのに。
いつもとは違う由貴子の態度に、小春の心の中で呟くのでした。

「──ねえ、ゆっこ。あなたは何を隠しているの?」(同書、31頁)

由貴子の部屋には「推し」のハセピー(同書、20頁他)グッズがたくさんありました。
パソコンのディスプレーを通して『想剣演舞』に魅入る二人の会話の中に、謎解きのヒントが……。

あとはあなたが読まれてからのお楽しみに。(^.^)

このように、日常のちょっとした疑問、ふとした違和感、あれ?といった感覚を小春は細かく分析し、追究してゆきます。
章が進むにつれて、パンの作り方の他、歴史や説明、店内の人間関係、常連客とのやりとり、同業の他店舗の研究など、頁が進みます。
気がつけばあっという間にエピローグとなります。

パン屋のアルバイト体験は、小春の今後の人生に大いに役に立つことでしょう。
大学の卒業とプロの漫画家を目指す小春の活力にエールを送ります! \(^o^)/

著者の土屋うさぎ氏は、プロの漫画のアシスタントを兼ねるプロの漫画家です。
2023年、『あぁ、我らのガールズバー』で集英社・第98回赤塚賞順入選☆彡ほかにも受賞されています。
2024年、『文系のキミ、理系のあなた』(一迅社『コミック百合姫』2024年6月号)で第30回百合姫コミック大賞翡翠賞を受賞されています。☆彡

同年、本作品で第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞☆彡され、小説家としてデビューされています。\(^o^)/
土屋氏の小説、漫画と楽しみが増えますね。

巻末には、第23回『このミステリーがすごい!』大賞選考結果(同書、245頁)と、前述の大森望氏、コラムニストの香山二三郎(かやま ふみろう)氏、ライターの瀧井朝世(たきい あさよ)氏による選評(同書、246頁~253頁)が掲載されています。
ミステリー好きなあなたへ、是非こちらもお楽しみに! \(^o^)/

最後に。
大学一年生になり、親元を離れて一人暮らしを始めた市倉小春は、パン屋でアルバイトを始めました。
パン屋をめぐって起きた日常のちょっとした出来事や異変、違和感などから生じた謎解きに小春は活躍します。
そして、彼女はパン作りや販売、リサーチなどを通して社会の一員として認識をしてゆきます。

謎解きの楽しさと主人公の小春の鋭い観察眼に読者は納得するばかりです。
漫画家を目指すという小春。
著者のプロフィールと重なり、今後も読者からの応援が励みになることでしょう。

美味しいパンには愛が必要なのだなと凛は思いました。
読後はパン屋に行って、香ばしいパンの香りに包まれたくなりました! (^O^)

暑い日が続いていますが、日の入り時刻は確実に早くなっています。
あなたも秋の夜長に読書を楽しみましょう。

今夜もあなたにおすすめの一冊でした。(^O^)/

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土屋うさぎ(著)宝島社(2025/01発売)
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